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「ごきげんようテオ。」
お父様譲りの黒髪に、お母様譲りだという翡翠の瞳。自信が溢れ出るその表情は整っていて、並の女性ならイチコロでしょう。
私とは1歳しか違わないのに姉のように慕ってくれる優しいいい子です。
私が微笑みかけると、テオは嬉しそうに笑って私の手を取りました。
「食堂に行くんでしょ?僕もライラねぇ待ってたらお腹減っちゃったから、一緒に食べよ!」
「まぁ、態々私のことを待っててくれたの?」
私の質問に、先を歩いていたテオはくるりと振り返って「うん!」と嬉しそうに笑いました。
嗚呼、本当にテオは良い子ですわ。
いつの間にか私よりも伸びた背も、まだライアンお兄様程筋肉質ではありませんがこれから成長していくのでしょう。
「テオにお嫁さんができるのが楽しみですね。」
きっと良い家庭を築くのでしょう。
私は妊娠が出来ないから、テオの将来が楽しみですわ。
ふふっと笑いながらそう言うと、楽しそうに歩いていたテオの足はピタリと止まりました。
「僕に…嫁?ライラねぇ以外の…?」
?私とテオの嫁に、一体何が関係あるというのでしょうか。
嗚呼もしかして、私がテオの嫁を虐めるかもしれないと思っているのですね。
「大丈夫ですよテオ。私はあなたが大切に思う人を、同じくらい大切にしますから。」
テオの不安を消そうとそう言いましたが、どうやら違っていたようです。
私の体はあっという間にテオと壁の間に挟まれてしまいました。
両サイドはテオの腕で囲まれていて、私は正面で俯いているテオの顔を見ていることしかできません。
「ライラねぇは何も分かってない…。」
何も分かってない?
一体私は何をわかっていないのでしょうか。
それすらも分からずに、私はテオの頬に手を添えて、その顔を上げました。
「まぁ、テオ…。」
テオは今にも泣き出しそうな顔をしていました。今までどの試練でもこんな表情の彼を見たことはありません。私は思わず彼のことを抱き締めました。
母性本能というものでしょうか。
「ごめんなさいテオ。私、あなたを傷つけるようなことを言ってしまったのね。なんでも言うことを聞くから泣かないで頂戴。」
「本当に?じゃあ僕から絶対離れないでね。」
私の背中へと回っていた彼の手はいつの間にか離れ、私の両頬に添えられていましたわ。
さっきまでの泣き顔も嘘のように、にこりと笑ってテオはそう言います。
嗚呼、もしかしたら嵌められたのかもしれませんね。
まぁ可愛いテオの言うことですから良しとしましょう。
私が微笑んで頷くと、テオは嬉しそうに私の口へとキスを落として食堂へと私の手を引いていきました。
「ライアンお兄様もいらっしゃったのですね。」
食堂に着くと、そこには先程別れたばかりのライアンお兄様が着席されておりました。
そしてどうやら私がここに来るのを待っていたようで、肝心の食事を食べていた様子はありません。
「お待たせして申し訳ありません。」
私はそう言ってライアンお兄様とは正反対の位置に腰掛けました。テオは隣の椅子を引いて真隣まで持ってきて腰掛けています。
何故かライアンお兄様の視線が痛いですが、まさかここでも私でストレスを発散しようとしているのでしょうか。
さすがにそれは困りますわね。私もお腹が空きましたもの。
「別にあいつと約束してた訳じゃないんだから、ライラねぇが謝る必要なんてないよ。」
テオはそう言っていますが、この2人は仲が悪いのかしら。いえ、テオが一方的に敵対視している様にも見えますわね。だってライアンお兄様は他人にも興味がありませんもの。
どうせ今私のことを見ているのも、自分の玩具が他人に取られたことが許せないだけでしょう。
私とテオが着席して直ぐに料理が運ばれてきました。
他の方々の料理とは違い、私の料理には鮮やかな花が盛り付けられています。
口に含んでみると、朝食べた花よりも強い痺れが舌を刺激します。どうやら私のメイドはちゃんと研究者達に毒の強化を伝達してくれていたようです。
お父様譲りの黒髪に、お母様譲りだという翡翠の瞳。自信が溢れ出るその表情は整っていて、並の女性ならイチコロでしょう。
私とは1歳しか違わないのに姉のように慕ってくれる優しいいい子です。
私が微笑みかけると、テオは嬉しそうに笑って私の手を取りました。
「食堂に行くんでしょ?僕もライラねぇ待ってたらお腹減っちゃったから、一緒に食べよ!」
「まぁ、態々私のことを待っててくれたの?」
私の質問に、先を歩いていたテオはくるりと振り返って「うん!」と嬉しそうに笑いました。
嗚呼、本当にテオは良い子ですわ。
いつの間にか私よりも伸びた背も、まだライアンお兄様程筋肉質ではありませんがこれから成長していくのでしょう。
「テオにお嫁さんができるのが楽しみですね。」
きっと良い家庭を築くのでしょう。
私は妊娠が出来ないから、テオの将来が楽しみですわ。
ふふっと笑いながらそう言うと、楽しそうに歩いていたテオの足はピタリと止まりました。
「僕に…嫁?ライラねぇ以外の…?」
?私とテオの嫁に、一体何が関係あるというのでしょうか。
嗚呼もしかして、私がテオの嫁を虐めるかもしれないと思っているのですね。
「大丈夫ですよテオ。私はあなたが大切に思う人を、同じくらい大切にしますから。」
テオの不安を消そうとそう言いましたが、どうやら違っていたようです。
私の体はあっという間にテオと壁の間に挟まれてしまいました。
両サイドはテオの腕で囲まれていて、私は正面で俯いているテオの顔を見ていることしかできません。
「ライラねぇは何も分かってない…。」
何も分かってない?
一体私は何をわかっていないのでしょうか。
それすらも分からずに、私はテオの頬に手を添えて、その顔を上げました。
「まぁ、テオ…。」
テオは今にも泣き出しそうな顔をしていました。今までどの試練でもこんな表情の彼を見たことはありません。私は思わず彼のことを抱き締めました。
母性本能というものでしょうか。
「ごめんなさいテオ。私、あなたを傷つけるようなことを言ってしまったのね。なんでも言うことを聞くから泣かないで頂戴。」
「本当に?じゃあ僕から絶対離れないでね。」
私の背中へと回っていた彼の手はいつの間にか離れ、私の両頬に添えられていましたわ。
さっきまでの泣き顔も嘘のように、にこりと笑ってテオはそう言います。
嗚呼、もしかしたら嵌められたのかもしれませんね。
まぁ可愛いテオの言うことですから良しとしましょう。
私が微笑んで頷くと、テオは嬉しそうに私の口へとキスを落として食堂へと私の手を引いていきました。
「ライアンお兄様もいらっしゃったのですね。」
食堂に着くと、そこには先程別れたばかりのライアンお兄様が着席されておりました。
そしてどうやら私がここに来るのを待っていたようで、肝心の食事を食べていた様子はありません。
「お待たせして申し訳ありません。」
私はそう言ってライアンお兄様とは正反対の位置に腰掛けました。テオは隣の椅子を引いて真隣まで持ってきて腰掛けています。
何故かライアンお兄様の視線が痛いですが、まさかここでも私でストレスを発散しようとしているのでしょうか。
さすがにそれは困りますわね。私もお腹が空きましたもの。
「別にあいつと約束してた訳じゃないんだから、ライラねぇが謝る必要なんてないよ。」
テオはそう言っていますが、この2人は仲が悪いのかしら。いえ、テオが一方的に敵対視している様にも見えますわね。だってライアンお兄様は他人にも興味がありませんもの。
どうせ今私のことを見ているのも、自分の玩具が他人に取られたことが許せないだけでしょう。
私とテオが着席して直ぐに料理が運ばれてきました。
他の方々の料理とは違い、私の料理には鮮やかな花が盛り付けられています。
口に含んでみると、朝食べた花よりも強い痺れが舌を刺激します。どうやら私のメイドはちゃんと研究者達に毒の強化を伝達してくれていたようです。
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