史上最悪の王妃は2度目の人生を与えられました

oro

文字の大きさ
上 下
13 / 18

私は特別②

しおりを挟む

最初は不安もあったけど、私はいつの間にかこのゲームの世界に慣れて順調にアルバート達との仲を深めていった。
やっぱりアルバートは他のキャラよりは手強いけど、思ったよりちょろいじゃん!なんて浮かれてたのだ。
周りからの視線も気持ち良かった。
例え彼らの視線にどんな感情が宿っていようとも、前世の私では到底得られないものだったから。
そういえば、ストーリーを進めていく中でゲームとは少しだけ違うところがあった。

それは最難関攻略対象であり私の最推しの一人でもあるケネスと、私達の恋路の邪魔をする悪役キャラのリリス。
ケネスはやっぱりイラストよりも実物の方が美しくて、教室で彼のことを見つけた時は嬉しくて卒倒してしまいそうだった。
アルバートも捨て難いけど、やっぱりケネスが1番ね!
ケネスは他の攻略キャラを全員制覇しないと出てこない最高難関のキャラ。更に彼のルートが解放されるイベント発生率は低確率で、彼とハッピーエンドを迎えるためには早くから手を打っておかないといけない。
おまけに彼の好感度は上がりにくくて下がりやすい。まさにラスボス級の攻略キャラだ。
…まぁ実際、本当にゲームの裏ボスなんだけどね。

今はこうして人間に紛れて学園に通っているけれど、彼の本性は生まれながらの魔王だ。

その性格は冷徹無比で極悪非道、目的の為ならば手段を選ばない、まさに悪の化身。
しかしゲームでは好感度の上がった主人公にだけはデレるという、その極端なギャップの虜になる女は多かった。もちろん私もその1人。

彼を攻略するためにも、学園にいるうちから積極的に声をかけておいた。
ゲームの主人公はイベント以外でケネスと関わることは無かったけれど、私は我慢できなかったのだ。
ケネスもケネスで最初はまるで興味が無いというような反応をしていたけれど、最終的には私の取り巻きの1人になっていた。
彼は正直私に興味が無いように見える。それどころか私じゃない誰かを目で追っている様だったけど、きっと考え過ぎだろう。だって私の取り巻きの1人になったのだから。
私はゲームの主人公ですらできなかったことやってのけたのだ。
…もしかしたら前世のヤツらがおかしいだけで、私には十分な魅力があるのかもしれない。

そして私の恋の刺激役、リリスもゲームとは違っていた。
やはり彼女もゲームのイラストより何倍も美しく、ただそこにいるだけで注目を浴びるような容姿だった。まさに前世の私が羨み妬んでいた存在。
だか彼女の第一印象は死人のような女、だった。
イラストよりも青白い肌に、光を宿さない微妙な色の瞳。
傍から見ても異常だとわかるその姿を、彼女は持ち前の傲慢さで隠していた。
彼女の人生がどんなものなのかは知らない。
確か前世では彼女のストーリーが追加コンテンツとして発売されていたけれど、私は脇役になんて興味が無いから買わなかった。

皆から忌み嫌われ注目を集めるリリスと、皆から天使のようだと持て囃されるフローラ。
どちらを選ぶかなんて悩むまでもない。

彼女がゲームと大きく違ったところは、私をいじめてこなかったことだ。
ゲームではアルバートルートを選択すると、彼女は常識も知らず傍若無人に振る舞い、そして自分の婚約者と仲が良いフローラを虐げる。
そしてそれに気づいたアルバートが彼女を断罪し、フローラは彼と結ばれるというのがエンディング。
けれどどれだけ私がアルバートと親密になろうとも、リリスは手を出してこなかった。
それどころかまるで私など認識していないかのように、誰彼構わず虐げた。
残虐な行為を躊躇いなく行い、自分に歯向かうものには容赦しない。
ゲームのリリスよりも悪役らしい彼女の振る舞いに、私は焦った。
このままじゃケネスルートに行けないじゃない!
ケネスルートに行くためにはアルバートも攻略しなければいけないというのに。
そこで私は、アルバートにいじめの虚偽申告をすることにした。
きっと彼女の振る舞いを知っている皆ならば、誰も疑うまい。
いじめの内容はゲームと同じものにする。
これ以上ストーリーから外れたら何が起こるかわからないから。

着々と皆の好感度を上げていって、あとのイベントは卒業パーティでリリスの断罪だけ。
私はケネスと結ばれるその日を楽しみに、全てが終わるのを待っていた。
あの時はたしかに幸せだった。
皆に愛され、未来への希望を持って…。
けれど現実は…。












「なんで…どうして?」

私の声は誰かに届くことも無く薄暗い部屋に響いた。
ここは王妃の寝室。
私は無事王妃になって、そしてケネスに迎えに来てもらう筈だったのに。
ケネスルートへのイベントが一向に発生しない。
あんなにも好感度上げを頑張ったのに、ケネスはあの日以降私やアルバートの前に姿を現さない。
そう。何故か起こらなかったリリスの断罪パーティを実行するべく、私がアルバート達を説得してリリスを殺したあの日から。
よくよく考えたら、ケネスは最初からリリスの断罪に乗り気ではなかった。
あの時はただ私にかまって欲しくて皆と違うことを言っているのかと思ったけれど。

「ぁ…あぁ…。」

そう言えば、ケネスは在学中ずっと誰かを目で追っていた。
ふと彼の視線の先見た時、そこに居たのは…。

「どうして?どうして私じゃないの?」

私は皆から愛されるべき存在なのに。
幸せになることが確約された存在なのに。
私はケネスを探し回った。
彼に会うべく。彼と幸せになるために。
そして私は再会した。

この国を呑み込んだ闇魔法の中で。
魔王ケネスの、魔法の中で。












気がついた時には、2度目の人生が始まっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです

珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。 そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた 。

下げ渡された婚約者

相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。 しかしある日、第一王子である兄が言った。 「ルイーザとの婚約を破棄する」 愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。 「あのルイーザが受け入れたのか?」 「代わりの婿を用意するならという条件付きで」 「代わり?」 「お前だ、アルフレッド!」 おさがりの婚約者なんて聞いてない! しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。 アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。 「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」 「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

わたしは不要だと、仰いましたね

ごろごろみかん。
恋愛
十七年、全てを擲って国民のため、国のために尽くしてきた。何ができるか、何が出来ないか。出来ないものを実現させるためにはどうすればいいのか。 試行錯誤しながらも政治に生きた彼女に突きつけられたのは「王太子妃に相応しくない」という婚約破棄の宣言だった。わたしに足りないものは何だったのだろう? 国のために全てを差し出した彼女に残されたものは何も無い。それなら、生きている意味も── 生きるよすがを失った彼女に声をかけたのは、悪名高い公爵子息。 「きみ、このままでいいの?このまま捨てられて終わりなんて、悔しくない?」 もちろん悔しい。 だけどそれ以上に、裏切られたショックの方が大きい。愛がなくても、信頼はあると思っていた。 「きみに足りないものを教えてあげようか」 男は笑った。 ☆ 国を変えたい、という気持ちは変わらない。 王太子妃の椅子が使えないのであれば、実力行使するしか──ありませんよね。 *以前掲載していたもののリメイク

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

わたし、何度も忠告しましたよね?

柚木ゆず
恋愛
 ザユテイワ侯爵令嬢ミシェル様と、その取り巻きのおふたりへ。わたしはこれまで何をされてもやり返すことはなく、その代わりに何度も苦言を呈してきましたよね?  ……残念です。  貴方がたに優しくする時間は、もうお仕舞です。  ※申し訳ございません。体調不良によりお返事をできる余裕がなくなっておりまして、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じさせていただきます。

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

幼なじみの親が離婚したことや元婚約者がこぞって勘違いしていようとも、私にはそんなことより譲れないものが1つだけあったりします

珠宮さくら
恋愛
最近、色々とあったシュリティ・バッタチャルジーは何事もなかったように話しかけてくる幼なじみとその兄に面倒をかけられながら、一番手にしたかったもののために奮闘し続けた。 シュリティがほしかったものを幼なじみがもっていて、ずっと羨ましくて仕方がなかったことに気づいている者はわずかしかいなかった。

婚約者とその幼なじみがいい雰囲気すぎることに不安を覚えていましたが、誤解が解けたあとで、その立ち位置にいたのは私でした

珠宮さくら
恋愛
クレメンティアは、婚約者とその幼なじみの雰囲気が良すぎることに不安を覚えていた。 そんな時に幼なじみから、婚約破棄したがっていると聞かされてしまい……。 ※全4話。

処理中です...