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第73話 強化イベント
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「うふふふ……。さあナオヤ様、素直に直結致しましょうね」
なんて言うヴァイダと共に、ゼアルとアウロラが俺にせまってくる。この見覚えしかない光景を前に……。
「ヴァイダさん、だから言い方! ただ単に二人が加護を授けてくれるってだけでしょ!!」
魔王の魂を運ぶ任務は過酷を極める。
魔族から襲撃されるのは当然として、それ以外にも色々と想定しきれないような危険があるはずだ。
それらから身を守るためには、特にゼアルの守りが必須なのだが、離れていては守りの力なんて届きっこない。だから加護を、という話になったのだが……。
「そうは仰いますがナオヤ様。自らの魂の一部をナオヤ様に分け、ぐちゃぐちゃのドロドロに混ぜ合ってしまうのですよ? それはもう性交よりも凄い交わりなのでございますから、この程度の言い方などむしろ生ぬるいくらいなのですよ」
天使と人間とは感性の違いもあるだろう。ゼアルの表情を見れば、相当に緊張している事が分かるため、恐らくそうなのかもしれなかった。
「ちなみに私は研究の為、研究員全員に加護を授けておりますので、最早やりまくりのビッチですね」
「そんな恥ずかしがるような事でないならわざわざいやらしい言い方する必要なくね!?」
「そこは私の趣味にございます」
相変わらずのヴァイダ節が炸裂し、俺は思わず肩をこけさせてしまった。
ただ、あまり大したことが無いとヴァイダが言う割にはゼアルは異常に緊張している。俺にはそれが不思議でならなかった。
「どうした、ゼアル」
「な、なんでもねえよっ」
ゼアルは頬を紅潮させ、唇を引き結んでいる為、どう見ても何かある。
もしかして本当に物理的に直結するのかな、なんてちょっと期待してしまって……。つい、ヴァイダは思考が読める事を失念してしまっていた。
「ゼアルさんは加護を与えるのが初めてだから緊張しているのですよ。ナオヤ様は相変わらずドスケベでございますね。肉体同士の直結を想像なさるなんて」
「うぐっ」
「ナオヤのえっち!」
「おまっ、オレが緊張してただけでそんな事思ってやがったのかよ!」
女性陣からの非難が痛い……。
はい、ごめんなさいスケベです。でも男だから仕方ないだろ!? なんてのは逆切れか。
よし、素数を数えて心を落ち着けて……もう変な事は考えない。賢者モードだ。
行くぞっ。
「ちなみに魂を混ぜるのですから、意識を高ぶらせながら酩酊状態になる性交は、手段としても理にかなっているのでございますよ」
「だから言わないでくれぇっ!!」
もう思考がピンク一色に染まっちゃうだろ!
ちくしょう、ゼアルは普段から露出が高い服装だってのに……。
可愛いおヘソとかシミ一つない肌とか眩しい肩だとかの健康的なエロスがマジヤバいんだって。
以前まではアウロラは小さい、平たいで安全圏だったのに、そういう対象で見られてるって分かってからアウロラが安全じゃなくなっちゃったんだよォォ。
くぅっ、こういう時は……よし、ガンダルフ王の筋肉を思い浮かべればいいな。
マッチョ……ムキムキ……。おーけー、どんどん萎えて来たぞ。
もう何を言われても俺の思考にはこの筋肉がある。絶対エロい方向に流されないからな。
「騒いだかと思ったらしゃがみ込んでブツブツ呟いてからまた騒ぐって、危ない人みたいだよ、ナオヤ」
「絶対ヴァイダさんのせいだからな」
アウロラにきっぱりと言い返してから立ち上がると、ゼアルを正面から見据える。
今度はさすがにヴァイダもからかってきたりはしなかったので、ようやく進められそうだった。
「よし、やろう。俺は何をすればいいんだ?」
「そのまま立ってりゃいい」
「分かった」
分かったと言いつつ俺の頭は筋肉一色である。
他の事を考える余地を残してしまえば確実に18歳未満はお断りな思考に支配されてしまいそうだった。
そんな俺の思考などつゆ知らず、ゼアルは俺の前に立つと、赤い顔のまま「いくぞ」と言って――。
「なっ――」
俺に抱き着いて来た。
しかも普通の抱き着き方とは違って、胸と胸を擦りつけるようにしてくるのだ。
俺は必死で筋肉筋肉と脳内で唱え続けるが、ゼアルの柔らかさとか体温とか臭いとかもうたまらなくて……。
「なるべく心を空っぽにしろよ」
無理です。
「じゃあ、行くぞ」
いくとか言わないでください別の事を想像してしまいます。
ぷすっとヴァイダさんが噴き出すのが聞こえる。きっと俺の思考を笑われたのだろうが……。
仕方ないだろ! 彼女居ない歴イコール年齢で、キスもまともにした事が無い童貞なんだから免疫力ゼロなんだよ!
……あ、今のでちょっと頭冷えたかも。
なんて事をやっているうちに、だんだんと不思議な光がゼアルから沸き上がって来て、俺を包み込んでくる。
目の前に居る少女だけが視界の中を占め、それ以外の物が全て遠くに行ってしまう様な感覚に陥ってしまう。ゼアルが触れている感覚も、嗅覚も、全てがゼアル一人の事だけに支配されているような感じがして……。
暖かい光に包まれながら、俺の意識は可愛い守護天使に吸い込まれるように消えて行ってしまった。
「…………あ」
いつの間に俺は眠ってしまっていたのだろう。アウロラとゼアルが使っている寝具の中で目を覚ました。
窓から見える景色は暗く、かなり長い時間意識を失っていた様だ。
少し重さを感じる体に喝を入れながら起き上がると――。
「起きたか」
「のようですね」
部屋の隅に据え付けられた机と椅子に座り、将棋をさしていた二人の守護天使がこちらへ顔を向けた。
「あれ?」
俺と彼女たちの距離は遠い。だというのに、何故か息遣いまで聞こえて来そうなぐらい、二人を傍に感じられる。
特にゼアルなんかは今でも抱き着かれているのかと勘違いしてしまいそうなほど近くに。
「それが魂を混ぜた状態です。それでナオヤ様は、私とゼアルさん、二人の力の一端を扱う事が出来る様になりました」
「つってもほんの少しだけどな。人間にオレらの力はでかすぎる」
「具体的にはどんな力なんだ?」
手を握ったり開いたりしてみるが、ほとんど何も変わらない。体内の魔力が少し増えた様な気がするが、そんな劇的に増えたという感じもしなかった。
「普通なら魔法・魔術的な攻撃に対して抵抗、防御力が上がるだけだな」
肩を竦めてこともなげにゼアルが言う。
……それってもしかしなくても今までのと同じ?
「その通りでございます。ですからゼアルさんは誰にも加護を与えたことがございませんでした」
なるほど。近づいて直接バリア張ればいいだけだもんな。あの光の膜みたいなので覆われたらだいぶ長い時間守ってもらえるみたいだったし。
でも、これからはそうもいかないからこうして加護をつけたと。
「ちなみに私の加護は、魔術の制御力や魔力そのものの増加です。そちらは今も感じられると思いますよ?」
「ああ、それは何となく分かった」
「ナオヤ様は三重魔術まで操れるとの事でしたので、四重か五重程度は補助式無しで操れるようになったのではないでしょうか」
「へー」
そりゃすごいな……っと、そう言えばアウロラはどこだ?
ふといつも共に居てくれる少女の事に思い至り、部屋の中を見回すと……。
「んー……」
もぞもぞっと、俺の腰辺りで何かが動いた。
そうだ。確か俺は、少し体が重いなって感じて――。
「ねむ……ひ……」
「あう――!」
驚いた俺は思わず大声を上げそうになったのだが、素早く自身の手で自らの口を覆う。行き場を失った息が喉の奥で爆発し、焼ける様な痛みを生む。
そんな俺の様子をヴァイダはおかしそうに眺めながら、
「私達は心で繋がりましたが、アウロラ様はそうではありませんので、この際体の方で繋がってみてはと思いまして……」
なんて悪戯っぽく笑う。
まったく、余計なお世話だっ。
アウロラが同じ布団で寝てたってのは驚いたけど、さすがに慌てふためくほどではない、かな。まだ心臓がバクバクいってるけど。
「残念です」
俺の反応がおかしかったのか、ヴァイダはくすくすと笑い……やがて笑いを納めると、相変わらず楽しそうな顔で、
「それではナオヤ様。この加護を受けたナオヤ様にしか出来ない実験に付き合ってくださいますか? 試したい魔術がございますので」
なんて言ってきて、俺はやっぱりヴァイダさんだなぁ、というため息しか出てこなかった。
なんて言うヴァイダと共に、ゼアルとアウロラが俺にせまってくる。この見覚えしかない光景を前に……。
「ヴァイダさん、だから言い方! ただ単に二人が加護を授けてくれるってだけでしょ!!」
魔王の魂を運ぶ任務は過酷を極める。
魔族から襲撃されるのは当然として、それ以外にも色々と想定しきれないような危険があるはずだ。
それらから身を守るためには、特にゼアルの守りが必須なのだが、離れていては守りの力なんて届きっこない。だから加護を、という話になったのだが……。
「そうは仰いますがナオヤ様。自らの魂の一部をナオヤ様に分け、ぐちゃぐちゃのドロドロに混ぜ合ってしまうのですよ? それはもう性交よりも凄い交わりなのでございますから、この程度の言い方などむしろ生ぬるいくらいなのですよ」
天使と人間とは感性の違いもあるだろう。ゼアルの表情を見れば、相当に緊張している事が分かるため、恐らくそうなのかもしれなかった。
「ちなみに私は研究の為、研究員全員に加護を授けておりますので、最早やりまくりのビッチですね」
「そんな恥ずかしがるような事でないならわざわざいやらしい言い方する必要なくね!?」
「そこは私の趣味にございます」
相変わらずのヴァイダ節が炸裂し、俺は思わず肩をこけさせてしまった。
ただ、あまり大したことが無いとヴァイダが言う割にはゼアルは異常に緊張している。俺にはそれが不思議でならなかった。
「どうした、ゼアル」
「な、なんでもねえよっ」
ゼアルは頬を紅潮させ、唇を引き結んでいる為、どう見ても何かある。
もしかして本当に物理的に直結するのかな、なんてちょっと期待してしまって……。つい、ヴァイダは思考が読める事を失念してしまっていた。
「ゼアルさんは加護を与えるのが初めてだから緊張しているのですよ。ナオヤ様は相変わらずドスケベでございますね。肉体同士の直結を想像なさるなんて」
「うぐっ」
「ナオヤのえっち!」
「おまっ、オレが緊張してただけでそんな事思ってやがったのかよ!」
女性陣からの非難が痛い……。
はい、ごめんなさいスケベです。でも男だから仕方ないだろ!? なんてのは逆切れか。
よし、素数を数えて心を落ち着けて……もう変な事は考えない。賢者モードだ。
行くぞっ。
「ちなみに魂を混ぜるのですから、意識を高ぶらせながら酩酊状態になる性交は、手段としても理にかなっているのでございますよ」
「だから言わないでくれぇっ!!」
もう思考がピンク一色に染まっちゃうだろ!
ちくしょう、ゼアルは普段から露出が高い服装だってのに……。
可愛いおヘソとかシミ一つない肌とか眩しい肩だとかの健康的なエロスがマジヤバいんだって。
以前まではアウロラは小さい、平たいで安全圏だったのに、そういう対象で見られてるって分かってからアウロラが安全じゃなくなっちゃったんだよォォ。
くぅっ、こういう時は……よし、ガンダルフ王の筋肉を思い浮かべればいいな。
マッチョ……ムキムキ……。おーけー、どんどん萎えて来たぞ。
もう何を言われても俺の思考にはこの筋肉がある。絶対エロい方向に流されないからな。
「騒いだかと思ったらしゃがみ込んでブツブツ呟いてからまた騒ぐって、危ない人みたいだよ、ナオヤ」
「絶対ヴァイダさんのせいだからな」
アウロラにきっぱりと言い返してから立ち上がると、ゼアルを正面から見据える。
今度はさすがにヴァイダもからかってきたりはしなかったので、ようやく進められそうだった。
「よし、やろう。俺は何をすればいいんだ?」
「そのまま立ってりゃいい」
「分かった」
分かったと言いつつ俺の頭は筋肉一色である。
他の事を考える余地を残してしまえば確実に18歳未満はお断りな思考に支配されてしまいそうだった。
そんな俺の思考などつゆ知らず、ゼアルは俺の前に立つと、赤い顔のまま「いくぞ」と言って――。
「なっ――」
俺に抱き着いて来た。
しかも普通の抱き着き方とは違って、胸と胸を擦りつけるようにしてくるのだ。
俺は必死で筋肉筋肉と脳内で唱え続けるが、ゼアルの柔らかさとか体温とか臭いとかもうたまらなくて……。
「なるべく心を空っぽにしろよ」
無理です。
「じゃあ、行くぞ」
いくとか言わないでください別の事を想像してしまいます。
ぷすっとヴァイダさんが噴き出すのが聞こえる。きっと俺の思考を笑われたのだろうが……。
仕方ないだろ! 彼女居ない歴イコール年齢で、キスもまともにした事が無い童貞なんだから免疫力ゼロなんだよ!
……あ、今のでちょっと頭冷えたかも。
なんて事をやっているうちに、だんだんと不思議な光がゼアルから沸き上がって来て、俺を包み込んでくる。
目の前に居る少女だけが視界の中を占め、それ以外の物が全て遠くに行ってしまう様な感覚に陥ってしまう。ゼアルが触れている感覚も、嗅覚も、全てがゼアル一人の事だけに支配されているような感じがして……。
暖かい光に包まれながら、俺の意識は可愛い守護天使に吸い込まれるように消えて行ってしまった。
「…………あ」
いつの間に俺は眠ってしまっていたのだろう。アウロラとゼアルが使っている寝具の中で目を覚ました。
窓から見える景色は暗く、かなり長い時間意識を失っていた様だ。
少し重さを感じる体に喝を入れながら起き上がると――。
「起きたか」
「のようですね」
部屋の隅に据え付けられた机と椅子に座り、将棋をさしていた二人の守護天使がこちらへ顔を向けた。
「あれ?」
俺と彼女たちの距離は遠い。だというのに、何故か息遣いまで聞こえて来そうなぐらい、二人を傍に感じられる。
特にゼアルなんかは今でも抱き着かれているのかと勘違いしてしまいそうなほど近くに。
「それが魂を混ぜた状態です。それでナオヤ様は、私とゼアルさん、二人の力の一端を扱う事が出来る様になりました」
「つってもほんの少しだけどな。人間にオレらの力はでかすぎる」
「具体的にはどんな力なんだ?」
手を握ったり開いたりしてみるが、ほとんど何も変わらない。体内の魔力が少し増えた様な気がするが、そんな劇的に増えたという感じもしなかった。
「普通なら魔法・魔術的な攻撃に対して抵抗、防御力が上がるだけだな」
肩を竦めてこともなげにゼアルが言う。
……それってもしかしなくても今までのと同じ?
「その通りでございます。ですからゼアルさんは誰にも加護を与えたことがございませんでした」
なるほど。近づいて直接バリア張ればいいだけだもんな。あの光の膜みたいなので覆われたらだいぶ長い時間守ってもらえるみたいだったし。
でも、これからはそうもいかないからこうして加護をつけたと。
「ちなみに私の加護は、魔術の制御力や魔力そのものの増加です。そちらは今も感じられると思いますよ?」
「ああ、それは何となく分かった」
「ナオヤ様は三重魔術まで操れるとの事でしたので、四重か五重程度は補助式無しで操れるようになったのではないでしょうか」
「へー」
そりゃすごいな……っと、そう言えばアウロラはどこだ?
ふといつも共に居てくれる少女の事に思い至り、部屋の中を見回すと……。
「んー……」
もぞもぞっと、俺の腰辺りで何かが動いた。
そうだ。確か俺は、少し体が重いなって感じて――。
「ねむ……ひ……」
「あう――!」
驚いた俺は思わず大声を上げそうになったのだが、素早く自身の手で自らの口を覆う。行き場を失った息が喉の奥で爆発し、焼ける様な痛みを生む。
そんな俺の様子をヴァイダはおかしそうに眺めながら、
「私達は心で繋がりましたが、アウロラ様はそうではありませんので、この際体の方で繋がってみてはと思いまして……」
なんて悪戯っぽく笑う。
まったく、余計なお世話だっ。
アウロラが同じ布団で寝てたってのは驚いたけど、さすがに慌てふためくほどではない、かな。まだ心臓がバクバクいってるけど。
「残念です」
俺の反応がおかしかったのか、ヴァイダはくすくすと笑い……やがて笑いを納めると、相変わらず楽しそうな顔で、
「それではナオヤ様。この加護を受けたナオヤ様にしか出来ない実験に付き合ってくださいますか? 試したい魔術がございますので」
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