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第39話 こんな私にでも出来ること
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既にヘリは逃走先である神戸へと到着していた。
ほとんどの人が既に降り、神戸にある阪神基地隊で保護を受けている。
でも私は動く事が出来ないでいた。
「中村管理官、早く降機願います!」
私の名前を呼ばれたところでそれに応える気力も、意志も、何も在りはしなかった。
ただ視線を目的も無く彷徨わせ、ながら思考の海へ潜る。
私はそれ以外、何もしたくはなかった。
「ゆい……と……」
失って初めて気付くことがある。
何のことは無い。
私は彼にここまで依存していたのだ。
彼を救わないといけないから、私は必死に生きて来た。
心を凍らせて、研究に邁進し、研究と嘘をついて仮面を被り、唯人の真似をしてあの子たちの相手をしていた。
それだけ。
私が生きる目的は、唯人と一緒に居る事で、唯人を支えるふりをしてすがることだったのだ。
そんな唯人が、死んだ、死んでしまった。
私の生きる目的が無くなってしまって、私の心もほとんど麻痺してしまっていた。
嫌だよ唯人。
あなたの願いを叶える事なんて、私には重すぎる。
唯人が居ない世界なんて、生きるのには辛すぎる。
唯人の居ない世界に、私は生きていたくない。
「唯人……唯人ぉ……」
寂しいよ。
苦しいよ。
辛いよ。
もう、死にたい。
私は彼の名前を何度もつぶやきながら、頭を抱えてその場にうずくまる。
自衛隊員の一人が私の肩を揺さぶって、何事か言ってきているが知った事か。
私はただ全てを閉ざして、甘い過去の思い出に閉じこもって居たかった。
『――こちら呉。こちら呉。神戸、応答願う! こちら呉……』
突然、ヘリコプターに搭載された通信機ががなりたてる。
でも、その内容を無視することなど私にはできなかった。
体を起こすと、操縦桿に引っかけてあったマイクとヘッドホンが付いたヘルメットを急いで被る。
「呉ってどうなってるの!? お願い、教えて!!」
『えー、貴女はもしや中村女史ですか? 近くに司令官が居られるのでしたら……』
「いいから教えてっ」
恐らく通信相手は何らかの権力を握っている相手と話がしたいのだろう。
しかし私にはそんな事どうでも良かった。
呉が未だ無事というのなら、唯人も――。
『現在、オームは撤退した模様です。数が減り過ぎたために、侵攻を中止したものと思われます』
そして、何故かはわからないのだが、その人は私にとっての希望の言葉を付け加えてくれた。
『自爆があってからしばらく経っても戦闘が行われた気配はありません。相馬担当官も爆発に巻き込まれていなければ……』
――ああ。
ああ、もう。
良かった。本当に良かった。
生きてるかもしれないんだ。
そう思ったら、なんだか涙があふれて止まらなくなってしまった。
「そう、ありがとう。あなたは救援が欲しいのよね」
『はい、そうなります』
理由はある。
そして私は一刻も早く唯人に会いたい。
なら、行動するのには十分な理由だ。
「分かったわ。今すぐ掛け合ってくるから」
『――ありがとうございますっ』
「一応、あなたも通信は続けて」
私は指先で眦を擦りながら告げると、ヘルメットを投げ捨てて機外へと走り出る。
行先は、呉の司令官が保護された部屋がいいだろう。
これだけの心労を私に与えたのだ。あの男には償ってもらわなければならない。
「待ってて、唯人。今行くから」
それから私は呉と神戸、2人の司令官を説得し、出来る限りの速度で呉へと戻った。
唯人の為に。
そして――。
「…………嘘よね」
私は、絶望の淵へと叩き込まれた。
治療が行われている仮設テントの一番奥に、唯人の体は安置されていた。
安置――そう、眠るように体を横たえている唯人の胸には、冗談のように大きな穴が空いており、あるべき場所にあるべき物が無かったのだ。
私の全てが。
私がこの残酷な世界で一番大切にしていた存在が。
亡くなって、しまった。
「いや……ダメよ……唯人……」
波間に弄ばれている小舟にでも乗っているかのように、グラグラと視界が揺れる。
その原因が、覚束ない足取りで唯人へと近づいているためだと、まるで他人事であるかのように私の頭が私に告げた。
そのまま、私の頭は私の感情を無視して冷静に唯人の体を観察・分析し始める。
もうかなりの時間が経過しているのだろう。その穴には凝固した血と絆創膏の切れ端がぐちゃぐちゃになった塊がこびりついている。当然、血の流れどころか細胞組織そのものが死滅していて蘇生なんて不可能だ。
完全に、誰が見る間でもなく、相馬唯人は死んでしまっていた。
「唯人…………唯人……唯人、唯人唯人唯人唯人――」
これは夢だろうか。
夢であったらどれほどいいだろうか。
私の行動は完全に無駄で、私の願いは踏みにじられたのだ。
なんて、酷い、嫌な、世界なんだろう。
この世界は理不尽だ。
死んではいけない人ほど死んでいく。
そして、死んでいい人ほど死ににくい。
「ああぁぁ……うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
他にも大勢人が居るというのに、虚勢も、空元気も、理性も、何もかもを投げ捨てて私は唯人に縋りつく。
血で汚れるのも構わず、彼の胸元に顔を押し付ける。
――固い。
その固さが、余計に彼の死を知らしめてくるようで……。
「なんでよぉ! なんで唯人が死ななきゃいけないのよぉぉっ! なんで? なんでよっ!!」
「――私のためだよ」
声と同時に、熱い塊が私の背中にぶつかって来る。
私はその温度を、体温を、よく知っていた。
唯人だけしか見えていなかったが、たぶん彼の傍にずっとついていたのだろう。
「美弥……ちゃん?」
ああ、そうだ。
唯人ならきっとそうするだろう。
唯人が命をかけるなんて、その理由が一番しっくりくる。
一番しっくりくるだけで、きっと唯人は自分以外の命にならば、いくらでも命を投げ捨てるのだろうけど。
「私を守ろうとして死んじゃったのっ」
美弥は私の体に小さな腕を回して、告解を続ける。
「先生は、私を逃がそうとしてオームに素手で向かって行ったの! 私のせいなのっ! 私のせいで先生がぁっ!! せんぜいがぁ~~……」
「……美弥ちゃん」
美弥のせい。
確かにそうだろう。
唯人は美弥の為に命を差し出した。
でもだから美弥が悪いわけではない。
美弥はこれっぽっちも悪くはない。悪いのはそれをしたオームと、唯人を死地に追いやった人たち。
私と、司令官と、内地で安穏と暮らしている人達と……つまり、唯人以外を除いた全ての人間だ。
私は体を捻って、彼女の背中へと手を伸ばす。
私の手が彼女の背中に触れた瞬間、びくんと跳ね、
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
美弥は謝罪を始めてしまった。
きっと美弥は罪の意識でいっぱいなのだろう。
泣いて泣いて、苦しんで。
自分を責めて責めて責めて。
どれだけ地獄に追いやっても足りない位に後悔して。
何か出来ないかって必死だったから、これもやってみたのだろう。
唯人の胸の傷口に、沢山絆創膏を貼ったのは美弥だ。
どんな想いでこれをしたのだろう。
無駄だと分かっていても、それでもやらずにはおれなかったのだろう。
それを考えると、私の胸はとても切なくなって……。
「美弥ちゃんは悪くないの」
私は美弥を胸に抱きしめていた。
それでも私の言葉は彼女に届かない。届くわけがない。
だって、許しなんて望んでいないから。
辛すぎて、苦しすぎて。
狂ってしまいそうなほど猛烈な罪悪感に押しつぶされて、それでも後悔から狂気には逃げられない。
きっと美弥が望んでいるのは私と同じで――死、だけ。
罰として、贖罪として、私達は誰かに殺されたかった。
「唯人はあなたを助けたんでしょ? 恨み言なんて言わなかったでしょ?」
「そうだけど……そうだけどぉ……」
「なら、美弥ちゃんが今生きてることは唯人が望んだ結果なの」
そうだ。私達が死ぬことだけは、唯人が絶対に望まない事だから。
唯人は美弥に生きてて欲しいと願ったのだ。
唯人は私に幸せになって欲しいと言ったのだ。
難しいけれど。
私はそれをこれっぽっちも望んでいないのだけど。
でも――。
「美弥ちゃん。唯人はなんて言った?」
「せんせいは……」
私がどう望むかなんて関係ない。
私の願いなんて必要ない。
唯人が私に望んだのだ。
唯人だけじゃない。由仁も、陽菜も、それ以前の子ども達や、名前すらない生体誘導機たち。それに、死んでいった顔も名前も知らない多くの自衛隊員たち。
私達の為に死んでいった全ての存在が言っているのだ。
――生きろ。
命というバトンを預けられた私は、どれだけそれが嫌でも持ち続けるしかない。いつか訪れる次の人に渡すために。
「生きてくれって。生きさせてくれって……」
「でしょ」
だったら私の出来る事は一つだけ。
私はそれをするためだけに生きるんだ。
美弥の為だけに。
それが私の出来る、たった一つの――。
ほとんどの人が既に降り、神戸にある阪神基地隊で保護を受けている。
でも私は動く事が出来ないでいた。
「中村管理官、早く降機願います!」
私の名前を呼ばれたところでそれに応える気力も、意志も、何も在りはしなかった。
ただ視線を目的も無く彷徨わせ、ながら思考の海へ潜る。
私はそれ以外、何もしたくはなかった。
「ゆい……と……」
失って初めて気付くことがある。
何のことは無い。
私は彼にここまで依存していたのだ。
彼を救わないといけないから、私は必死に生きて来た。
心を凍らせて、研究に邁進し、研究と嘘をついて仮面を被り、唯人の真似をしてあの子たちの相手をしていた。
それだけ。
私が生きる目的は、唯人と一緒に居る事で、唯人を支えるふりをしてすがることだったのだ。
そんな唯人が、死んだ、死んでしまった。
私の生きる目的が無くなってしまって、私の心もほとんど麻痺してしまっていた。
嫌だよ唯人。
あなたの願いを叶える事なんて、私には重すぎる。
唯人が居ない世界なんて、生きるのには辛すぎる。
唯人の居ない世界に、私は生きていたくない。
「唯人……唯人ぉ……」
寂しいよ。
苦しいよ。
辛いよ。
もう、死にたい。
私は彼の名前を何度もつぶやきながら、頭を抱えてその場にうずくまる。
自衛隊員の一人が私の肩を揺さぶって、何事か言ってきているが知った事か。
私はただ全てを閉ざして、甘い過去の思い出に閉じこもって居たかった。
『――こちら呉。こちら呉。神戸、応答願う! こちら呉……』
突然、ヘリコプターに搭載された通信機ががなりたてる。
でも、その内容を無視することなど私にはできなかった。
体を起こすと、操縦桿に引っかけてあったマイクとヘッドホンが付いたヘルメットを急いで被る。
「呉ってどうなってるの!? お願い、教えて!!」
『えー、貴女はもしや中村女史ですか? 近くに司令官が居られるのでしたら……』
「いいから教えてっ」
恐らく通信相手は何らかの権力を握っている相手と話がしたいのだろう。
しかし私にはそんな事どうでも良かった。
呉が未だ無事というのなら、唯人も――。
『現在、オームは撤退した模様です。数が減り過ぎたために、侵攻を中止したものと思われます』
そして、何故かはわからないのだが、その人は私にとっての希望の言葉を付け加えてくれた。
『自爆があってからしばらく経っても戦闘が行われた気配はありません。相馬担当官も爆発に巻き込まれていなければ……』
――ああ。
ああ、もう。
良かった。本当に良かった。
生きてるかもしれないんだ。
そう思ったら、なんだか涙があふれて止まらなくなってしまった。
「そう、ありがとう。あなたは救援が欲しいのよね」
『はい、そうなります』
理由はある。
そして私は一刻も早く唯人に会いたい。
なら、行動するのには十分な理由だ。
「分かったわ。今すぐ掛け合ってくるから」
『――ありがとうございますっ』
「一応、あなたも通信は続けて」
私は指先で眦を擦りながら告げると、ヘルメットを投げ捨てて機外へと走り出る。
行先は、呉の司令官が保護された部屋がいいだろう。
これだけの心労を私に与えたのだ。あの男には償ってもらわなければならない。
「待ってて、唯人。今行くから」
それから私は呉と神戸、2人の司令官を説得し、出来る限りの速度で呉へと戻った。
唯人の為に。
そして――。
「…………嘘よね」
私は、絶望の淵へと叩き込まれた。
治療が行われている仮設テントの一番奥に、唯人の体は安置されていた。
安置――そう、眠るように体を横たえている唯人の胸には、冗談のように大きな穴が空いており、あるべき場所にあるべき物が無かったのだ。
私の全てが。
私がこの残酷な世界で一番大切にしていた存在が。
亡くなって、しまった。
「いや……ダメよ……唯人……」
波間に弄ばれている小舟にでも乗っているかのように、グラグラと視界が揺れる。
その原因が、覚束ない足取りで唯人へと近づいているためだと、まるで他人事であるかのように私の頭が私に告げた。
そのまま、私の頭は私の感情を無視して冷静に唯人の体を観察・分析し始める。
もうかなりの時間が経過しているのだろう。その穴には凝固した血と絆創膏の切れ端がぐちゃぐちゃになった塊がこびりついている。当然、血の流れどころか細胞組織そのものが死滅していて蘇生なんて不可能だ。
完全に、誰が見る間でもなく、相馬唯人は死んでしまっていた。
「唯人…………唯人……唯人、唯人唯人唯人唯人――」
これは夢だろうか。
夢であったらどれほどいいだろうか。
私の行動は完全に無駄で、私の願いは踏みにじられたのだ。
なんて、酷い、嫌な、世界なんだろう。
この世界は理不尽だ。
死んではいけない人ほど死んでいく。
そして、死んでいい人ほど死ににくい。
「ああぁぁ……うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
他にも大勢人が居るというのに、虚勢も、空元気も、理性も、何もかもを投げ捨てて私は唯人に縋りつく。
血で汚れるのも構わず、彼の胸元に顔を押し付ける。
――固い。
その固さが、余計に彼の死を知らしめてくるようで……。
「なんでよぉ! なんで唯人が死ななきゃいけないのよぉぉっ! なんで? なんでよっ!!」
「――私のためだよ」
声と同時に、熱い塊が私の背中にぶつかって来る。
私はその温度を、体温を、よく知っていた。
唯人だけしか見えていなかったが、たぶん彼の傍にずっとついていたのだろう。
「美弥……ちゃん?」
ああ、そうだ。
唯人ならきっとそうするだろう。
唯人が命をかけるなんて、その理由が一番しっくりくる。
一番しっくりくるだけで、きっと唯人は自分以外の命にならば、いくらでも命を投げ捨てるのだろうけど。
「私を守ろうとして死んじゃったのっ」
美弥は私の体に小さな腕を回して、告解を続ける。
「先生は、私を逃がそうとしてオームに素手で向かって行ったの! 私のせいなのっ! 私のせいで先生がぁっ!! せんぜいがぁ~~……」
「……美弥ちゃん」
美弥のせい。
確かにそうだろう。
唯人は美弥の為に命を差し出した。
でもだから美弥が悪いわけではない。
美弥はこれっぽっちも悪くはない。悪いのはそれをしたオームと、唯人を死地に追いやった人たち。
私と、司令官と、内地で安穏と暮らしている人達と……つまり、唯人以外を除いた全ての人間だ。
私は体を捻って、彼女の背中へと手を伸ばす。
私の手が彼女の背中に触れた瞬間、びくんと跳ね、
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
美弥は謝罪を始めてしまった。
きっと美弥は罪の意識でいっぱいなのだろう。
泣いて泣いて、苦しんで。
自分を責めて責めて責めて。
どれだけ地獄に追いやっても足りない位に後悔して。
何か出来ないかって必死だったから、これもやってみたのだろう。
唯人の胸の傷口に、沢山絆創膏を貼ったのは美弥だ。
どんな想いでこれをしたのだろう。
無駄だと分かっていても、それでもやらずにはおれなかったのだろう。
それを考えると、私の胸はとても切なくなって……。
「美弥ちゃんは悪くないの」
私は美弥を胸に抱きしめていた。
それでも私の言葉は彼女に届かない。届くわけがない。
だって、許しなんて望んでいないから。
辛すぎて、苦しすぎて。
狂ってしまいそうなほど猛烈な罪悪感に押しつぶされて、それでも後悔から狂気には逃げられない。
きっと美弥が望んでいるのは私と同じで――死、だけ。
罰として、贖罪として、私達は誰かに殺されたかった。
「唯人はあなたを助けたんでしょ? 恨み言なんて言わなかったでしょ?」
「そうだけど……そうだけどぉ……」
「なら、美弥ちゃんが今生きてることは唯人が望んだ結果なの」
そうだ。私達が死ぬことだけは、唯人が絶対に望まない事だから。
唯人は美弥に生きてて欲しいと願ったのだ。
唯人は私に幸せになって欲しいと言ったのだ。
難しいけれど。
私はそれをこれっぽっちも望んでいないのだけど。
でも――。
「美弥ちゃん。唯人はなんて言った?」
「せんせいは……」
私がどう望むかなんて関係ない。
私の願いなんて必要ない。
唯人が私に望んだのだ。
唯人だけじゃない。由仁も、陽菜も、それ以前の子ども達や、名前すらない生体誘導機たち。それに、死んでいった顔も名前も知らない多くの自衛隊員たち。
私達の為に死んでいった全ての存在が言っているのだ。
――生きろ。
命というバトンを預けられた私は、どれだけそれが嫌でも持ち続けるしかない。いつか訪れる次の人に渡すために。
「生きてくれって。生きさせてくれって……」
「でしょ」
だったら私の出来る事は一つだけ。
私はそれをするためだけに生きるんだ。
美弥の為だけに。
それが私の出来る、たった一つの――。
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