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第36話 最期の言葉
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「時間的にはまだ空か? どうでもいい、早く応答しろ!」
僕はヘリコプターで逃げ出した司令官と通信を繋げてもらっていた。
文句を言う為……ではない。
一緒に居るはずの安寿さんと話をするためだ。
何をしてでも僕の口から伝えなければいけない事があったから。
「それとも話しにくいか? お前たちが見捨てた人間とは」
通信機は何も応えない。
ずっと無音のままだった。
「バツが悪いか? 意外だな。まさか痛む良心を持ち合わせていたとは思わなかったよ。それでもお前達はクズ以下だけどな」
その後も思いつく限りの罵詈雑言を並べ立て続けた。
こんなにも人を罵倒した事なんて、生まれて初めての事だ。それなのに、どれだけ罵倒しても尽きることなく僕の口から溢れ出して来る。
まあ、それだけ僕も色々溜まっていたのだ。
『――いい加減にしろ、耳障りだ』
やっと、出た。
通信機の向こう側に居る、あの年老いた司令官が、不機嫌そうな顔をしているのが容易に想像できた。
だがこれが目的じゃあない。そもそもコイツと話すことなんてないのだ。
僕はわざとらしくため息をついてみせる。
「言われるようなことをしているからだろう。大体、悪いと思っていないのなら始めから理由を説明して抗弁すればいい。出来ないのはやましいことがあるからだ」
『黙れ。貴様は戦う事も出来ない欠陥品だろう。後方でお人形遊びをして慰めるのが関の山のくせして生意気な事を抜かすな』
そんな風に思っていたのか。
僕のしていたことを。
まったく、小学校の先生に、子どもと遊んでいるだけで仕事として扱われるんだからいいですねと言うモンスターペアレントと同じ思考だな。
そんな程度の想像力しかないヤツが上にのさばって居られたのだからこんな状況に陥ってしまったのだろう。
だが――。
「――そうか、今はそんな事はどうでもいい。そこに安寿さんが居るんだろう。出せ」
『貴様は回線を私的に――』
「お前だって私的利用をいくらでもしてただろうが。輸送機でそういう女性を連れて来ていたことが噂になっていたぞ」
舌打ちが聞こえる。
「お前の為に命を捨てようとしている人間が、最期に恋人と話すことも出来ないのか? 女と寝るためには使えるが、遺言を遺すのはダメか。ハッ、よく出来た司令官殿だ」
『………………』
再びの、沈黙。そして――。
『唯人っ』
ようやく、ようやく、僕の人生において最愛の女性の声が聞こえて来た。
まだ離れて数時間しか経っていないのに、何年ぶりであるかのように聞こえる。
それほどまでに彼女の声は懐かしく、愛しくて、僕の心を震わせた。
「安寿さん……良かった……」
安寿さんは、生きている。
これからも生き延びられる。
それがはっきりと分かり、僕は心の底から安堵していた。
『唯人、唯人……ごめんなさい。私は断ったのに、拘束されて無理やり……』
安寿さんの声は、話す前から涙に濡れていた。
自分を責める必要なんてないのに。
彼女がこうなる事を望んでいなかったのは十二分に分かっているから。
「大丈夫、分かってるよ。……それよりも安寿さんに伝えたいことがあるんだ。よく聞いて」
『……うん』
本当は言いたい事がいっぱいあった。
安寿さん自身にお礼を言いたかったし、愛してると伝えたかった。
でも、そんな時間はない。
作戦――なんて立派な代物とは言い難い、ただの自爆の時間が迫っているから。
「恋からの伝言」
――お母さん、ありがとう。
それを伝えた瞬間、僕も涙がこぼれそうになってしまった。
でも、泣くわけにはいかない。
恋は泣きたくても、怖くても、自分の為すべきことだと受け入れて、やり遂げてくれたのだから。
『恋……ちゃん……。そんな……』
まだ伝えなければならない事は山のようにある。
僕は涙を飲みこみ、感情を凍らせて、言葉を、恋の想いを届けていく。
「嬉しかった。毎日がとっても楽しかった。博士さんがずっと傍に居てくれて幸せだった。お母さんって居たらこんな人なのかなってずっと思ってた」
通信機からは、嗚咽と涙をすする音が聞こえて来る。
恋。ほら、僕が言ったとおりだろ?
安寿さんはこんなにも喜んでるんだよ。恋がお母さんって呼んでくれた事が、こんなに嬉しいんだよ。
「だから、ありがとう。私は生きる事が出来て、幸せだったよ」
恋。僕からも、ありがとう。
いや、恋だけじゃない。由仁、陽菜……今まで僕たちの下に来てくれた全ての子ども達全員に……。
ありがとう。
君たちと一緒に生きて来られて、それだけで僕の人生には意味があったんだって、そう思える。
家族を失って、オームに復讐することも出来なくて、ただ無為に過ごしていた僕の人生を、君たちが素晴らしいものにしてくれた。
それなのに、そんな君たちに死を与える事しか僕にはできなかったのに、それでもお礼を言ってくれて、ありがとう。
「……安寿さん。恋が、そう言ってたんだ」
『うん……うん……くっひぐっ……うっ……ん……』
「安寿さん」
僕には言いたいことがある。
「これから先も、安寿さんは感情を持ってしまった子たちに関わっていくと思う。辛いと思う。悲しいと思う。でも、心を凍らせちゃダメだ。無感情になっちゃダメだ」
安寿さんは僕と違って一歩離れて接している様な節があった。
でもそういうの、子どもはすぐ見抜いてしまうよ。
あの子たちと接した先には辛い未来しか待っていない。
でも、それでも思うんだ。
あの一瞬のまたたきは、何ものにも負けない宝物だって。
あの子たちと過ごす時間は、何よりも幸せだったって。
「笑顔の仮面じゃなくて、そのままの安寿さんで、あの子たちと向き合ってあげてほしい。辛いかもしれないけど、これが僕の願いだよ」
『わか……った』
「それから……」
僕は手早く作戦の――作戦なんてのもおこがましい、三文映画のラストシーンみたいな自爆の事を伝えていく。
もちろん、限りなくゼロに近い生存率の事も。
だが、これで神戸の迎撃が間に合うだろうという事も。
「最期に、安寿さん」
ああ、もう、時間が無い。
まだ話したいことが沢山あるのに。
したいことだって。
安寿さんともっと抱き合っていたかった。
何度だって好きだって伝えたかった。
でも――。
「安寿さん。この世界で一番あなたの事を愛してました」
『――私も、私も唯人の事を愛してる。愛してるよ』
「だから、僕の事なんて忘れて、誰かまた別のいい人を見つけてください。幸せになって下さい」
『そんな事出来るわけないでしょ! 私には唯人しか居ないの。そんな人は唯人だけでいいの! だから、だから――』
それが出来たらどんなにいいだろう。
僕も、そうしたい。
でも、無理だから。
恐らく死んでしまう僕には出来ないから。
だから。
「安寿さんの幸せが、僕の幸せです」
『唯人っ! 私はゆ――』
安寿さんの言葉を、通信機を切って遮った。
もっと聞いていたかったけれど、これ以上聞いていたら、心が鈍ってしまうから。
情けなく安寿さんに縋りついて、生きたいと叫んでしまうかもしれないから。
そうしたら、きっと安寿さんは優しいから、次を見つける事が出来なくなってしまう。いつまでも僕に囚われてしまう。
それは、僕の望むところではないから。
それが分かっていても、僕は――。
「安寿さん……」
安寿さんはどんな時でも僕の心を支えてくれて、愛してくれて、理解してくれた女性。
そんな最愛の人との別れは、辛かった。
心が引き裂かれるなんてものじゃない。自分の中に在ったなにかが、まるごとそっくり失われてしまったかのような喪失感だった。
「今まで、ありがとう」
でも――。
「美弥、君だけは……」
僕は、立たなきゃいけない。
まだこの子が生きているから。
先がどれだけ細い道だろうとも、その先を歩いて行かなくちゃいけないんだ。
死ぬ準備は終わった。
これからは生きるために――あがこう。
僕はヘリコプターで逃げ出した司令官と通信を繋げてもらっていた。
文句を言う為……ではない。
一緒に居るはずの安寿さんと話をするためだ。
何をしてでも僕の口から伝えなければいけない事があったから。
「それとも話しにくいか? お前たちが見捨てた人間とは」
通信機は何も応えない。
ずっと無音のままだった。
「バツが悪いか? 意外だな。まさか痛む良心を持ち合わせていたとは思わなかったよ。それでもお前達はクズ以下だけどな」
その後も思いつく限りの罵詈雑言を並べ立て続けた。
こんなにも人を罵倒した事なんて、生まれて初めての事だ。それなのに、どれだけ罵倒しても尽きることなく僕の口から溢れ出して来る。
まあ、それだけ僕も色々溜まっていたのだ。
『――いい加減にしろ、耳障りだ』
やっと、出た。
通信機の向こう側に居る、あの年老いた司令官が、不機嫌そうな顔をしているのが容易に想像できた。
だがこれが目的じゃあない。そもそもコイツと話すことなんてないのだ。
僕はわざとらしくため息をついてみせる。
「言われるようなことをしているからだろう。大体、悪いと思っていないのなら始めから理由を説明して抗弁すればいい。出来ないのはやましいことがあるからだ」
『黙れ。貴様は戦う事も出来ない欠陥品だろう。後方でお人形遊びをして慰めるのが関の山のくせして生意気な事を抜かすな』
そんな風に思っていたのか。
僕のしていたことを。
まったく、小学校の先生に、子どもと遊んでいるだけで仕事として扱われるんだからいいですねと言うモンスターペアレントと同じ思考だな。
そんな程度の想像力しかないヤツが上にのさばって居られたのだからこんな状況に陥ってしまったのだろう。
だが――。
「――そうか、今はそんな事はどうでもいい。そこに安寿さんが居るんだろう。出せ」
『貴様は回線を私的に――』
「お前だって私的利用をいくらでもしてただろうが。輸送機でそういう女性を連れて来ていたことが噂になっていたぞ」
舌打ちが聞こえる。
「お前の為に命を捨てようとしている人間が、最期に恋人と話すことも出来ないのか? 女と寝るためには使えるが、遺言を遺すのはダメか。ハッ、よく出来た司令官殿だ」
『………………』
再びの、沈黙。そして――。
『唯人っ』
ようやく、ようやく、僕の人生において最愛の女性の声が聞こえて来た。
まだ離れて数時間しか経っていないのに、何年ぶりであるかのように聞こえる。
それほどまでに彼女の声は懐かしく、愛しくて、僕の心を震わせた。
「安寿さん……良かった……」
安寿さんは、生きている。
これからも生き延びられる。
それがはっきりと分かり、僕は心の底から安堵していた。
『唯人、唯人……ごめんなさい。私は断ったのに、拘束されて無理やり……』
安寿さんの声は、話す前から涙に濡れていた。
自分を責める必要なんてないのに。
彼女がこうなる事を望んでいなかったのは十二分に分かっているから。
「大丈夫、分かってるよ。……それよりも安寿さんに伝えたいことがあるんだ。よく聞いて」
『……うん』
本当は言いたい事がいっぱいあった。
安寿さん自身にお礼を言いたかったし、愛してると伝えたかった。
でも、そんな時間はない。
作戦――なんて立派な代物とは言い難い、ただの自爆の時間が迫っているから。
「恋からの伝言」
――お母さん、ありがとう。
それを伝えた瞬間、僕も涙がこぼれそうになってしまった。
でも、泣くわけにはいかない。
恋は泣きたくても、怖くても、自分の為すべきことだと受け入れて、やり遂げてくれたのだから。
『恋……ちゃん……。そんな……』
まだ伝えなければならない事は山のようにある。
僕は涙を飲みこみ、感情を凍らせて、言葉を、恋の想いを届けていく。
「嬉しかった。毎日がとっても楽しかった。博士さんがずっと傍に居てくれて幸せだった。お母さんって居たらこんな人なのかなってずっと思ってた」
通信機からは、嗚咽と涙をすする音が聞こえて来る。
恋。ほら、僕が言ったとおりだろ?
安寿さんはこんなにも喜んでるんだよ。恋がお母さんって呼んでくれた事が、こんなに嬉しいんだよ。
「だから、ありがとう。私は生きる事が出来て、幸せだったよ」
恋。僕からも、ありがとう。
いや、恋だけじゃない。由仁、陽菜……今まで僕たちの下に来てくれた全ての子ども達全員に……。
ありがとう。
君たちと一緒に生きて来られて、それだけで僕の人生には意味があったんだって、そう思える。
家族を失って、オームに復讐することも出来なくて、ただ無為に過ごしていた僕の人生を、君たちが素晴らしいものにしてくれた。
それなのに、そんな君たちに死を与える事しか僕にはできなかったのに、それでもお礼を言ってくれて、ありがとう。
「……安寿さん。恋が、そう言ってたんだ」
『うん……うん……くっひぐっ……うっ……ん……』
「安寿さん」
僕には言いたいことがある。
「これから先も、安寿さんは感情を持ってしまった子たちに関わっていくと思う。辛いと思う。悲しいと思う。でも、心を凍らせちゃダメだ。無感情になっちゃダメだ」
安寿さんは僕と違って一歩離れて接している様な節があった。
でもそういうの、子どもはすぐ見抜いてしまうよ。
あの子たちと接した先には辛い未来しか待っていない。
でも、それでも思うんだ。
あの一瞬のまたたきは、何ものにも負けない宝物だって。
あの子たちと過ごす時間は、何よりも幸せだったって。
「笑顔の仮面じゃなくて、そのままの安寿さんで、あの子たちと向き合ってあげてほしい。辛いかもしれないけど、これが僕の願いだよ」
『わか……った』
「それから……」
僕は手早く作戦の――作戦なんてのもおこがましい、三文映画のラストシーンみたいな自爆の事を伝えていく。
もちろん、限りなくゼロに近い生存率の事も。
だが、これで神戸の迎撃が間に合うだろうという事も。
「最期に、安寿さん」
ああ、もう、時間が無い。
まだ話したいことが沢山あるのに。
したいことだって。
安寿さんともっと抱き合っていたかった。
何度だって好きだって伝えたかった。
でも――。
「安寿さん。この世界で一番あなたの事を愛してました」
『――私も、私も唯人の事を愛してる。愛してるよ』
「だから、僕の事なんて忘れて、誰かまた別のいい人を見つけてください。幸せになって下さい」
『そんな事出来るわけないでしょ! 私には唯人しか居ないの。そんな人は唯人だけでいいの! だから、だから――』
それが出来たらどんなにいいだろう。
僕も、そうしたい。
でも、無理だから。
恐らく死んでしまう僕には出来ないから。
だから。
「安寿さんの幸せが、僕の幸せです」
『唯人っ! 私はゆ――』
安寿さんの言葉を、通信機を切って遮った。
もっと聞いていたかったけれど、これ以上聞いていたら、心が鈍ってしまうから。
情けなく安寿さんに縋りついて、生きたいと叫んでしまうかもしれないから。
そうしたら、きっと安寿さんは優しいから、次を見つける事が出来なくなってしまう。いつまでも僕に囚われてしまう。
それは、僕の望むところではないから。
それが分かっていても、僕は――。
「安寿さん……」
安寿さんはどんな時でも僕の心を支えてくれて、愛してくれて、理解してくれた女性。
そんな最愛の人との別れは、辛かった。
心が引き裂かれるなんてものじゃない。自分の中に在ったなにかが、まるごとそっくり失われてしまったかのような喪失感だった。
「今まで、ありがとう」
でも――。
「美弥、君だけは……」
僕は、立たなきゃいけない。
まだこの子が生きているから。
先がどれだけ細い道だろうとも、その先を歩いて行かなくちゃいけないんだ。
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