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番外編 相談
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最近僕にあることで悩んでいる。
元々カイルさんにはすごく優しくされていたが、そこになんていうか、甘さが加わり、どうしたらいいのかわからない。いや、嬉しいんだけど、恥ずかしさが上回る。
「おい、いつまでやるんだ。」
クロスさんから声がかかり、ハッとして手元を見ると、良い感じのミンチが出来上がっていた。
「どうした、なんか悩んでんなら聞くぞ。まだ時間あるし、どうせカイル様のことだろうけど。」
クロスさんが飽きれたように言う。こんなこと聞けるの、今の僕には目の前の人しかいない。意を決して、クロスさんに聞くことにする。
「あのですね、実は、今度のお休みにカイルさんのご両親に挨拶に行くって言われてて……。」
「おぉ、結婚の挨拶ってやつだな。で?」
興味深そうな顔で話の先を催促される。
「僕、カイルさんのご両親に、息子さんを僕に下さいって頭下げたらいいんですよね?」
ぶはっとクロスさんが吹き出した。そのままゲラゲラ笑い出す。
「ちょっと!僕、真面目に悩んでるのに!」
クロスさんはお腹を抑えて、くの字になって笑い続けてる。自分が聞いたくせにひどい。
だって結婚のご挨拶と言えば、それしか分からないし。
「だって、僕にはよく分からないけど、カイルさんっていいお家のお坊ちゃんなんでしょ?しかも長男だし。僕は迷い人だし、男だし、絶対反対されると思って。殴られる覚悟でそれくらいのこと、言わなきゃかなって思ってるんですけど。」
言葉が出ないくらい、クロスさんが「お坊っちゃん」、「殴られたら死ぬぞ。」とか言いながら、さらに笑い転げている。
最初、職人気質の怖い人かと思ったけど、確かに料理には妥協しないが、涙脆くて、笑い上戸なのが段々わかってきた。まだ涙目でひーひー言ってるので、憮然とした顔で収まるのを待つ。
「笑いすぎです。」
「悪い。あー腹痛て。まぁさ、カイル様は確かに名家の長男だけど、そのカイル様がお前と一緒になりたいって言ってんだから、自信持てよ。な?」
「そうだけど、他人事だと思って。跡取りだって……。」
「まぁ、子供はしょうがないさ。俺だって、出来れば産んでやりてーなーって思うこともあるけどさ、こればっかはどうしようもないんだよ。残酷な言い方かも知んないが、まだ存在してないものよりも、目の前の好きなヤツと一緒に生きることが、何より大事ってことだと俺は思うぜ?」
この国は同性も異性も結婚できる。けれど、なんとなく納得できなかった僕に、クロスさんは明るい顔できっぱり言った。
「え、俺だってって、クロスさんって……。」
「おう、旦那がいるぜ。」
「えーーー!そうなの?知らなかった!!」
思わず丁寧語も吹っ飛んでしまうほどの衝撃だ。この国は兄弟が多いこともあり、同性婚で、子供がいないパートナーでも特に問題はなく、1/3ほどが同性婚だと聞いていた。しかし、今までの常識で考えてしまうから想像できなかったけれど、こんなに身近にいたとは驚きだ。
ちょっと照れながら、誇らしげなクロスさんの顔を見てたら、少し心が軽くなった。
気を取り直して料理にむかう。挑戦しているのはハンバーグ。この国にはミンチ料理がないらしい。似たような材料を集めて今日は試作だけど、上手くいったらカイルさんに食べてほしい。
たとえ、僕が子供を産めなくても、カイルさんのいない未来は考えられないし、考えたくない。
だからいつか、カイルさんの家族にも料理を食べてもらえる日が来ると嬉しいのだけれど。
元々カイルさんにはすごく優しくされていたが、そこになんていうか、甘さが加わり、どうしたらいいのかわからない。いや、嬉しいんだけど、恥ずかしさが上回る。
「おい、いつまでやるんだ。」
クロスさんから声がかかり、ハッとして手元を見ると、良い感じのミンチが出来上がっていた。
「どうした、なんか悩んでんなら聞くぞ。まだ時間あるし、どうせカイル様のことだろうけど。」
クロスさんが飽きれたように言う。こんなこと聞けるの、今の僕には目の前の人しかいない。意を決して、クロスさんに聞くことにする。
「あのですね、実は、今度のお休みにカイルさんのご両親に挨拶に行くって言われてて……。」
「おぉ、結婚の挨拶ってやつだな。で?」
興味深そうな顔で話の先を催促される。
「僕、カイルさんのご両親に、息子さんを僕に下さいって頭下げたらいいんですよね?」
ぶはっとクロスさんが吹き出した。そのままゲラゲラ笑い出す。
「ちょっと!僕、真面目に悩んでるのに!」
クロスさんはお腹を抑えて、くの字になって笑い続けてる。自分が聞いたくせにひどい。
だって結婚のご挨拶と言えば、それしか分からないし。
「だって、僕にはよく分からないけど、カイルさんっていいお家のお坊ちゃんなんでしょ?しかも長男だし。僕は迷い人だし、男だし、絶対反対されると思って。殴られる覚悟でそれくらいのこと、言わなきゃかなって思ってるんですけど。」
言葉が出ないくらい、クロスさんが「お坊っちゃん」、「殴られたら死ぬぞ。」とか言いながら、さらに笑い転げている。
最初、職人気質の怖い人かと思ったけど、確かに料理には妥協しないが、涙脆くて、笑い上戸なのが段々わかってきた。まだ涙目でひーひー言ってるので、憮然とした顔で収まるのを待つ。
「笑いすぎです。」
「悪い。あー腹痛て。まぁさ、カイル様は確かに名家の長男だけど、そのカイル様がお前と一緒になりたいって言ってんだから、自信持てよ。な?」
「そうだけど、他人事だと思って。跡取りだって……。」
「まぁ、子供はしょうがないさ。俺だって、出来れば産んでやりてーなーって思うこともあるけどさ、こればっかはどうしようもないんだよ。残酷な言い方かも知んないが、まだ存在してないものよりも、目の前の好きなヤツと一緒に生きることが、何より大事ってことだと俺は思うぜ?」
この国は同性も異性も結婚できる。けれど、なんとなく納得できなかった僕に、クロスさんは明るい顔できっぱり言った。
「え、俺だってって、クロスさんって……。」
「おう、旦那がいるぜ。」
「えーーー!そうなの?知らなかった!!」
思わず丁寧語も吹っ飛んでしまうほどの衝撃だ。この国は兄弟が多いこともあり、同性婚で、子供がいないパートナーでも特に問題はなく、1/3ほどが同性婚だと聞いていた。しかし、今までの常識で考えてしまうから想像できなかったけれど、こんなに身近にいたとは驚きだ。
ちょっと照れながら、誇らしげなクロスさんの顔を見てたら、少し心が軽くなった。
気を取り直して料理にむかう。挑戦しているのはハンバーグ。この国にはミンチ料理がないらしい。似たような材料を集めて今日は試作だけど、上手くいったらカイルさんに食べてほしい。
たとえ、僕が子供を産めなくても、カイルさんのいない未来は考えられないし、考えたくない。
だからいつか、カイルさんの家族にも料理を食べてもらえる日が来ると嬉しいのだけれど。
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