拾われた後は

なか

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6.潜ってみました

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   結局、僕のお手伝いは却下された。
   保護してる者にそんなことはさせられないし、人手は間に合ってるとか色々言われてしまった。

   一般庶民の僕にとって、何もせず、世話をしてもらって生活するのは気が引ける。
   元々共働きの両親の元、家事もかなりしていたし、自分のことは自分でやってきた。さらに弟の世話も僕は喜んでやってたんだ。

   ちゃぷんと水音がする。

   僕はひとりお風呂で考えていた。お湯に浸かる文化でよかったなぁと幸せになる。
   かなり大きな浴槽を独り占めだ。

   しかし準備をしてくれたマリアさんに1人で入れるのかととても心配された。
   本当に子供だと思われてるのかな。それともものすごく心配性の国民性?

   しかもアヒルのおもちゃに似た、ぷよぷよしたおもちゃまで渡された。一度ちゃんとこの辺りはお話ししなくちゃじゃないのかな。

   ぷよぷよをにぎにぎしながら湯船に浸かる。浴槽がちょっと深いけど気持ちいい。
これ潜ってみてもいいかな?泳ぐのは無理だけど。
   ちょっと楽しい思いつきに思えて、僕は息を大きく吸い込んみ、ちゃぽんと身体全体をお湯の中に沈めた。


「ーーー!」

   何か物音がしたと思ったら、いきなり強い力で引き上げられた。

「ハルカっ!」

   ゲホゲホゲホッ

   水飲んだ!
   え、何?何が起こったの?

   パニックになりかけた僕の前には、軍服を脱いでラフなシャツ姿の、眉間にシワを寄せたそれはそれは怖い顔をしたカイルさんがいた。

「大丈夫か?」

  抱きしめられ背中を撫でられる。
いや、これあなたのせいですよね?とも言えず、息が整うまで少し時間がかかった。
   男前の不機嫌顔って整ってるだけに怖いものなんだね。至近距離で見て分かったよ。

「もう大丈夫です。」

   ようやく声を出す。びっくりした。けど、落ち着いてきたらこの状況、何?
   僕は裸で膝の上に抱えられていた。カイルさんの服はびしょ濡れ。

   急激に湧き上がる羞恥心。

「あのっ離して下さい。大丈夫ですから!」

   突然ジタバタし出した僕に構わず、さらにぎゅっと大きな胸に抱きしめられた。

「暴れるな。お前にはやはり浴槽が大きすぎたんだな。すまない。」

「え、いや、あの溺れたわけではないので!その離して下さい。あのちょっと。」

   疑うような目で僕を見る。顔がどんどん赤くなるのが分かる。泣きそう。

「湯あたりか?顔が赤い。」

   カイルさんは離そうとしない。

「あ、赤いのは恥ずかしいからです。その、1人で、もう大丈夫なので、外で待っててくれると、えっと、助かります。」

   助けようとしてくれたのに申し訳ないが、さすがにこれは居た堪れない。何とかそう言うと、カイルさんの視線が顔から足まで動いた。

「すまないっ」

   反射的にそう言うと、そっと僕の体を降ろしてくれた。こちらを見ないように後ろを向いて、大きなタオルを渡してくれる。

「着替えてくる。」

  そう言って浴室から出て言った。
あ、濡れたままだったけど大丈夫かな。その尻尾にはぴんと力が入ってた。
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