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午前3
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「話をそろそろ戻すわね。それでね、彼女の第一声は、『まあ、聞いてたよりも随分元気そうじゃないの』だった。すごいって思うのよ。どうしてそんなに上手に相手を嫌な気持ちにさせることができるのかわからない。だってそうでしょ、自分の言葉としては元気そうだという罪のない言葉にみせかけながらその一方で、誰か共通の知人とわたしのことをネガティブに語っていたということを巧妙に織り交ぜてるのよ?これこそ最もわたしを嫌な気分にさせる内容なの。自分のいないところで自分のことを語り合ってる図を想像するなんてとにかく滅入るわ。ポジティブな話題ですらいらないっていうのに。してくれなくていいし、いい気分になれない。それがネガティブな話題だと決まりきっているんだもの、そんな事実全く知りたくないのよ。それを丁寧に教えてくれるわけ。最初の一言で。わたしは誰かとあなたのことを話し合ったのよ、そしてその人はあなたのことを具合が悪そうだったとかやつれていたとか言ってたわって、顔合わせてすぐのタイミングで教えてくれるんだから参るわ。そこでこちらはもう白旗の気分なの、もういいやって。戦えませんからどうぞご自由にって」
「あなたは笑うだろうけど、わたしはこれで意外に口下手なの。こう言ってしまうとたしかに滑稽よね。だって今日はずっとわたしが喋り倒してるんだから。でも、なんていうのか、あなたには言いたいことがいっぱいあるの、だからよ。ごめんなさいね。でも聞き疲れたらいつでもいってほしいわ、うんざりしたとか率直な言い方でいいの、こんな話実際うんざりじゃない?そう?」
「ありがとう。でもね、わたしったらいざ、実際に不愉快なことが起きた時、うまくそれを捌くために話すことはとっても下手なのよ。後で考えれば、あそこでこういうべきだったというのは思い浮かぶのだけど、その場では無理で、ひたすら黙ってその時が通り過ぎるのを待つだけの木偶の坊と化してしまうの。だからそれからずっと彼女のくだらないだけではなくて不愉快きわまりないおしゃべりをずっと聞かされ続けたの。遮ったり帰ってと頼めばいいと思うかもしれないわね。でも、それができなかったの。彼女の語る話を聞いていて、いかに自分の入院が馬鹿げたことか、ありふれた病気で大げさに入院してるかを思い知らされてたわ。驚くことに彼女の周囲には難病患者が溢れてるらしいのよ。その患者たちをいかに彼女が励まして喜ばれただとか、彼らがどんなに真摯にその病気とむきあってるとかを延々と聞かされて、いかにわたしの問題なんてとるに足らないかこんこんと説いてくれるの。そう、確かにとるに足らないことなのよ。それはちょっとだけ同意したわ。今だから正直に言うけど。でも彼女の言い方だと、とるに足らないということがとても意味がないことのように響いてくるの。くだらないことに振り回されて悩んで、なんて愚かな女の子なんでしょうって、彼女の顔に書いてあるの。そして確かにそれは認めざるをえない事実なのだけど、それを思い知らされること、それもよりによって彼女に教えてもらうというのはね、とても素直に受け止められないわ。女の子ってわたしが言ったのがおかしい?たしかにね。自分のことをそう言うなんて笑えるわ。でも彼女にとってはわたしはとても愚かで幼い女の子で、実際のわたしもそれと大差ないの。ああやっぱりそれも事実みたいなものね。嫌だわ」
「あなたは笑うだろうけど、わたしはこれで意外に口下手なの。こう言ってしまうとたしかに滑稽よね。だって今日はずっとわたしが喋り倒してるんだから。でも、なんていうのか、あなたには言いたいことがいっぱいあるの、だからよ。ごめんなさいね。でも聞き疲れたらいつでもいってほしいわ、うんざりしたとか率直な言い方でいいの、こんな話実際うんざりじゃない?そう?」
「ありがとう。でもね、わたしったらいざ、実際に不愉快なことが起きた時、うまくそれを捌くために話すことはとっても下手なのよ。後で考えれば、あそこでこういうべきだったというのは思い浮かぶのだけど、その場では無理で、ひたすら黙ってその時が通り過ぎるのを待つだけの木偶の坊と化してしまうの。だからそれからずっと彼女のくだらないだけではなくて不愉快きわまりないおしゃべりをずっと聞かされ続けたの。遮ったり帰ってと頼めばいいと思うかもしれないわね。でも、それができなかったの。彼女の語る話を聞いていて、いかに自分の入院が馬鹿げたことか、ありふれた病気で大げさに入院してるかを思い知らされてたわ。驚くことに彼女の周囲には難病患者が溢れてるらしいのよ。その患者たちをいかに彼女が励まして喜ばれただとか、彼らがどんなに真摯にその病気とむきあってるとかを延々と聞かされて、いかにわたしの問題なんてとるに足らないかこんこんと説いてくれるの。そう、確かにとるに足らないことなのよ。それはちょっとだけ同意したわ。今だから正直に言うけど。でも彼女の言い方だと、とるに足らないということがとても意味がないことのように響いてくるの。くだらないことに振り回されて悩んで、なんて愚かな女の子なんでしょうって、彼女の顔に書いてあるの。そして確かにそれは認めざるをえない事実なのだけど、それを思い知らされること、それもよりによって彼女に教えてもらうというのはね、とても素直に受け止められないわ。女の子ってわたしが言ったのがおかしい?たしかにね。自分のことをそう言うなんて笑えるわ。でも彼女にとってはわたしはとても愚かで幼い女の子で、実際のわたしもそれと大差ないの。ああやっぱりそれも事実みたいなものね。嫌だわ」
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