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第一部 一章【大切な彼女と過ごす、第二の人生】
勇者だった頃よりも、はるかに幸せ
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「……ッ……ああぁ……」
揺ら揺らと目の前で影が乱れ狂っていた。
肉と血、そして体液独特の生臭さが混ざり合い、不快な臭いが充満している。
ようやく心を開いてくれたロト、家主であるリディ、そして彼の三人で、昨晩まで仲良く食事を摂ったテーブルは粉々に砕かれていた。
リディの誕生日に送った手製のドラフラワーのリースも彼女の血で真っ赤に染まっている。
いつも優しく彼の頭を撫でてくれたリディの左腕が剣を握ったまま、まるで別物のように床の上へ転がっている。
殺したい。助けたい。殺したい。殺したい! 殺したいっ!!
土足でいきなり踏み込んできて、今まさに床の上でリディを蹂躙し続けている邪悪なる存在を――魔物をこの手で殺したい。
そうしたい気持ちはある。しかしロトを抱きしめている腕が、なかなか離れてくれない。
明らかに怯えていた。勇気よりも恐れが勝ってしまっていた。
……だけど今はそんなことを言ってる場合ではない。
この場にいる男は自分だけ。今、彼女(リディ)を助け出すことができるのは自分だけ。
彼は意を決して、護身用にと腰に刺していた短刀の柄へ手を伸ばす。
「アアアアア――ッ!!」
またしてもリディの壮絶な悲鳴が上から降って来た。
もう何度、この苦しそうで獣じみた悲鳴を聞いたことか。
もはや我慢の限界。これ以上、師として、姉として、母として……そして1人の女性として慕ったリディを苦しませたくはない。
彼は指先の震えを堪え、わずかに差し込んでいる目の前の明かりへ手を伸ばす。
床板の隙間を少し開いた途端、ぶわぁっと、不快な匂いが襲いかかってきた。
吐き気が沸き起こり、目の前がぐらつく。
そしてあられもない姿で、首をもたげる虚げなリディと視線が重なった。
すでに生気を失っていた彼女の瞳が、一瞬だけいつも青さを取り戻す。
――出てはだめ……
リディは唇だけを震わせながら、ゆさゆさと、首を振ってみせた。
「――っ……あああああっ!!」
そうしてまた始まった醜悪な化け物【ローパー】による、彼女への無慈悲な蹂躙。
たくさんの思い出の詰まった家の中を、リディの悲鳴と嗚咽が支配している。
彼はその悍ましい光景を目の当たりにし、身体が再び竦んでしまった。
それ以上、彼が床下から出ることはなかった。できなかった。出たくても出られなかった。
目の前で大事な人が邪悪なるものに汚され、壊されてゆく。
もう何も見たくはない。聞きたくはない。
彼は床下へ戻ると、ロトを抱きしめ、耳目を塞ぐ。
早くこの地獄が終わることを願って……。
⚫️⚫️⚫️
「リディ様……マリーダ……俺は、俺は……」
視界が開け、世界が色を取り戻す。
暖かい風を肌に受けて心地よい。
小鳥の囀りが耳に心地よく、ふわりと香る花のような香りは安堵感を抱かせた。
どうやら久々に、“あの時のこと”を夢に見てしまったらしい。
眠りを取り戻してからというもの、時々この夢を見てしまうのだから参ってしまう。
そんなことを考えていたノルンの頬へ、ぽたりぽたりと熱い雫が頬へ落ちてきた。
「ノルン様、見えますか……? 私のことわかりますか……?」
「リゼル……?」
「よかった、本当に……ううっ……ひくっ……ノルン様ぁ……」
リゼルはノルンの右腕を掴んだまま、白いシーツの上へ泣き崩れた。
彼女の泣き顔はあまり見たくはない。リゼルは笑っている方がよく似合う。
しかし慰めようにも、少しでも身体を動かせば、全身へ鋭い痛みが走ってゆく。
「安心してくれ、リゼル。俺は生きている。もう大丈夫だ」
ノルンは僅かに動いた人差し指で、リゼルの柔らかい頬を撫でる。
リゼルは子供のようにわんわん泣きながら、彼の右手を大事なもののように胸に抱く。
(右手がリゼルの胸に挟まれている……むぅ……)
そんなことを考えながら、ドキドキするぐらい余裕のあるノルンなのだった。
ここは麓の村のハンマ先生の診療所のベッドの上だった。
ローパーを全て殲滅したノルンは倒れ、オッゴの背に乗せられて、ここへ運び込まれたらしい。
「お腹の傷もですが、左腕にも十分気をつけてください。あと少し傷口が深ければ太い血管が切れて出血死をしていたか、神経がボロボロになって腕を失うところだったんですよ?」
「そうか……」
「先日の火傷の件もありますし、ご自分の左腕をもっと大切にしてあげてくださいね。いずれにしても縫合したばかりですから、暫くは要安静です」
ハンマ先生は優しい口調だが鋭くそう言いつつ、左手の包帯を綺麗なものに変えている。
ずっとそばに寄り添っていたリゼルは、何か言いたげな様子だった。
しかしノルンが首を横へ振って見せると、再び腰を落ち着け、彼の右腕を抱きしめ直した。
「それで、この傷はどうしたんですか? 治療が優先でしたので、詳しく聞いていなかったもので……」
「……なんだ、その……少し飲みすぎて、坂を転げ落ちてしまったんだ。おかげでこの様だ。面目次第もない」
「酔ってたって……」
「本当のことなのだから仕方がない」
「……酔って暗い山道を歩くのは大変危険です。お酒もほどほどが良さそうですね、これからは……」
魔物の出現は敢えて黙っておいた。
まだその時では無いし、不要な不安を煽りたくはなかった。
ヨーツンヘイムには穏やかな空気がよく似合うし、ノルンもそれを望んでいるのだから。
「一週間ほどはここで過ごしていただきます。その間は絶対安静です。良いですね?」
「わかった。ハンマ先生、色々とありがとう」
「これが私の仕事……でもあるのですが、ノルンさん、あなたはもうヨーツンヘイムになくてはならない方なんです。そのことを重々承知しておいてくださいね」
ハンマ先生は「ノルンさんのことしっかり見張っていてくださいね」とリゼルに伝えて、病室を出て行くのだった。
「昨晩はどうしてあんなことになったんだ?」
ノルンは慎重にリゼルへ問いかける。
すると彼女は、ノルンの手を更に抱き寄せ、涙をこぼし始める。
「ごめんなさい……会議頑張ってきっと、ノルン様、お腹空いてるんじゃ無いかと思って……前に美味しいって言ってくださったシチューを作ってて……ハーブを入れたらもっと美味しくなるだろうなって……もっとノルン様が喜んでくださるんじゃ無いかって思って」
「それで夜の森に出たんだな?」
「それでちょっと暗いけど大丈夫かなって……すぐに戻れると思って……ひっく……」
またわんわん泣き出したリゼルの涙を、唯一動かせる人差し指で拭った。
「そうだったのか。ありがとう、色々と気を遣ってくれて。しかし、魔物がいなかったとしても夜の森は危険だ。これに懲りて、あまり夜、1人で出歩かないで欲しい」
リゼルは嗚咽を漏らしながら、何度も頷いてみせる。
そんな痛々しい彼女の姿を見て、今すぐにでも抱きしめてやりたくなった。
しかし今のノルンは重病人。そんなことできるはずもない。
勇者の頃ならば、常に自動回復(オートヒール)がかかっていて、この程度の怪我はあっという間に治っていた。
今後はハンマ先生の言う通り、もっと慎重に行動をしたほうが良さそうだと思う。
「ノルン様……」
「?」
「本当に……本当にありがとうございました。どれだけ感謝してもし尽くせません。だから改めて伝えさせていただきます。これからもずっと貴方へ尽くします。この身も、心も全て貴方に捧げます。だからこれからもどうか、お側に置いてください。一生懸命ご飯を作ります。ゴッ君の面倒もみます。お仕事のお手伝いもします。もう決してご迷惑はお掛けしないと誓います」
本当に真面目で、良い娘だと改めて思った。
同時に、時々こうして少し大袈裟になるところが玉に瑕とも。
「わかった、よろしく頼む。しかし、そんなに固くなるな。俺は、なんだ、その……いつもの君の方が……」
言葉が澱む。"好き"という言葉だけが、なぜか喉へつっかえる。
それに今のリゼルの宣言を、どう取ったら良いのか分からないのもある。
(今の宣言はやはり恩を感じているからか? いや、もしや、リゼルは俺と同じ気持ち……むぅ……)
と、その時、ばぁーんと扉が開いた。
「ノルン大丈夫か!? 腕あるよな!? 死んでねぇよな!?」
飛び込んできたグスタフは、怒っているのか泣いているのかよく分からない顔をして、飛び込んでくる。
「おい、ハンマ! ノルンは大丈夫なんだろな、おい!」
「本人が目の前にいるんだから、直接聞いてくれよ……」
なぜかガルスはハンマ先生の胸ぐらを掴んで、怒鳴り散らしている。
続いて、ゲマルク村長や、ギラ工場長、営林場の人たちや、イスルゥ塗の職人たち、果てやガルスの息子のジェイなども、続々と病室になだれ込んでくる。
「死んでは困りますぞ! 生きるのですぞノルン殿!」
「やだよ! やだやだ! ノルン死んじゃ嫌だぁ!!」
「管理人さん! まだあなたには指導を受けたいんです! だから、だから!」
――これだけ、今の彼はヨーツンヘイムの人々に愛されている。
「み、みんな少し落ち着いてくれ。確かに俺はこんな有様だが……その……とりあえず元気だぞ?」
胸がじんわりと暖かくなり、意図せず目がしがら熱くなる。
守りたい。
このヨーツンヘイムの平穏を。皆と過ごす、穏やかな日々を。
勇者だった頃よりも、はるかに幸せ。
ノルンははそう思うのだった。
揺ら揺らと目の前で影が乱れ狂っていた。
肉と血、そして体液独特の生臭さが混ざり合い、不快な臭いが充満している。
ようやく心を開いてくれたロト、家主であるリディ、そして彼の三人で、昨晩まで仲良く食事を摂ったテーブルは粉々に砕かれていた。
リディの誕生日に送った手製のドラフラワーのリースも彼女の血で真っ赤に染まっている。
いつも優しく彼の頭を撫でてくれたリディの左腕が剣を握ったまま、まるで別物のように床の上へ転がっている。
殺したい。助けたい。殺したい。殺したい! 殺したいっ!!
土足でいきなり踏み込んできて、今まさに床の上でリディを蹂躙し続けている邪悪なる存在を――魔物をこの手で殺したい。
そうしたい気持ちはある。しかしロトを抱きしめている腕が、なかなか離れてくれない。
明らかに怯えていた。勇気よりも恐れが勝ってしまっていた。
……だけど今はそんなことを言ってる場合ではない。
この場にいる男は自分だけ。今、彼女(リディ)を助け出すことができるのは自分だけ。
彼は意を決して、護身用にと腰に刺していた短刀の柄へ手を伸ばす。
「アアアアア――ッ!!」
またしてもリディの壮絶な悲鳴が上から降って来た。
もう何度、この苦しそうで獣じみた悲鳴を聞いたことか。
もはや我慢の限界。これ以上、師として、姉として、母として……そして1人の女性として慕ったリディを苦しませたくはない。
彼は指先の震えを堪え、わずかに差し込んでいる目の前の明かりへ手を伸ばす。
床板の隙間を少し開いた途端、ぶわぁっと、不快な匂いが襲いかかってきた。
吐き気が沸き起こり、目の前がぐらつく。
そしてあられもない姿で、首をもたげる虚げなリディと視線が重なった。
すでに生気を失っていた彼女の瞳が、一瞬だけいつも青さを取り戻す。
――出てはだめ……
リディは唇だけを震わせながら、ゆさゆさと、首を振ってみせた。
「――っ……あああああっ!!」
そうしてまた始まった醜悪な化け物【ローパー】による、彼女への無慈悲な蹂躙。
たくさんの思い出の詰まった家の中を、リディの悲鳴と嗚咽が支配している。
彼はその悍ましい光景を目の当たりにし、身体が再び竦んでしまった。
それ以上、彼が床下から出ることはなかった。できなかった。出たくても出られなかった。
目の前で大事な人が邪悪なるものに汚され、壊されてゆく。
もう何も見たくはない。聞きたくはない。
彼は床下へ戻ると、ロトを抱きしめ、耳目を塞ぐ。
早くこの地獄が終わることを願って……。
⚫️⚫️⚫️
「リディ様……マリーダ……俺は、俺は……」
視界が開け、世界が色を取り戻す。
暖かい風を肌に受けて心地よい。
小鳥の囀りが耳に心地よく、ふわりと香る花のような香りは安堵感を抱かせた。
どうやら久々に、“あの時のこと”を夢に見てしまったらしい。
眠りを取り戻してからというもの、時々この夢を見てしまうのだから参ってしまう。
そんなことを考えていたノルンの頬へ、ぽたりぽたりと熱い雫が頬へ落ちてきた。
「ノルン様、見えますか……? 私のことわかりますか……?」
「リゼル……?」
「よかった、本当に……ううっ……ひくっ……ノルン様ぁ……」
リゼルはノルンの右腕を掴んだまま、白いシーツの上へ泣き崩れた。
彼女の泣き顔はあまり見たくはない。リゼルは笑っている方がよく似合う。
しかし慰めようにも、少しでも身体を動かせば、全身へ鋭い痛みが走ってゆく。
「安心してくれ、リゼル。俺は生きている。もう大丈夫だ」
ノルンは僅かに動いた人差し指で、リゼルの柔らかい頬を撫でる。
リゼルは子供のようにわんわん泣きながら、彼の右手を大事なもののように胸に抱く。
(右手がリゼルの胸に挟まれている……むぅ……)
そんなことを考えながら、ドキドキするぐらい余裕のあるノルンなのだった。
ここは麓の村のハンマ先生の診療所のベッドの上だった。
ローパーを全て殲滅したノルンは倒れ、オッゴの背に乗せられて、ここへ運び込まれたらしい。
「お腹の傷もですが、左腕にも十分気をつけてください。あと少し傷口が深ければ太い血管が切れて出血死をしていたか、神経がボロボロになって腕を失うところだったんですよ?」
「そうか……」
「先日の火傷の件もありますし、ご自分の左腕をもっと大切にしてあげてくださいね。いずれにしても縫合したばかりですから、暫くは要安静です」
ハンマ先生は優しい口調だが鋭くそう言いつつ、左手の包帯を綺麗なものに変えている。
ずっとそばに寄り添っていたリゼルは、何か言いたげな様子だった。
しかしノルンが首を横へ振って見せると、再び腰を落ち着け、彼の右腕を抱きしめ直した。
「それで、この傷はどうしたんですか? 治療が優先でしたので、詳しく聞いていなかったもので……」
「……なんだ、その……少し飲みすぎて、坂を転げ落ちてしまったんだ。おかげでこの様だ。面目次第もない」
「酔ってたって……」
「本当のことなのだから仕方がない」
「……酔って暗い山道を歩くのは大変危険です。お酒もほどほどが良さそうですね、これからは……」
魔物の出現は敢えて黙っておいた。
まだその時では無いし、不要な不安を煽りたくはなかった。
ヨーツンヘイムには穏やかな空気がよく似合うし、ノルンもそれを望んでいるのだから。
「一週間ほどはここで過ごしていただきます。その間は絶対安静です。良いですね?」
「わかった。ハンマ先生、色々とありがとう」
「これが私の仕事……でもあるのですが、ノルンさん、あなたはもうヨーツンヘイムになくてはならない方なんです。そのことを重々承知しておいてくださいね」
ハンマ先生は「ノルンさんのことしっかり見張っていてくださいね」とリゼルに伝えて、病室を出て行くのだった。
「昨晩はどうしてあんなことになったんだ?」
ノルンは慎重にリゼルへ問いかける。
すると彼女は、ノルンの手を更に抱き寄せ、涙をこぼし始める。
「ごめんなさい……会議頑張ってきっと、ノルン様、お腹空いてるんじゃ無いかと思って……前に美味しいって言ってくださったシチューを作ってて……ハーブを入れたらもっと美味しくなるだろうなって……もっとノルン様が喜んでくださるんじゃ無いかって思って」
「それで夜の森に出たんだな?」
「それでちょっと暗いけど大丈夫かなって……すぐに戻れると思って……ひっく……」
またわんわん泣き出したリゼルの涙を、唯一動かせる人差し指で拭った。
「そうだったのか。ありがとう、色々と気を遣ってくれて。しかし、魔物がいなかったとしても夜の森は危険だ。これに懲りて、あまり夜、1人で出歩かないで欲しい」
リゼルは嗚咽を漏らしながら、何度も頷いてみせる。
そんな痛々しい彼女の姿を見て、今すぐにでも抱きしめてやりたくなった。
しかし今のノルンは重病人。そんなことできるはずもない。
勇者の頃ならば、常に自動回復(オートヒール)がかかっていて、この程度の怪我はあっという間に治っていた。
今後はハンマ先生の言う通り、もっと慎重に行動をしたほうが良さそうだと思う。
「ノルン様……」
「?」
「本当に……本当にありがとうございました。どれだけ感謝してもし尽くせません。だから改めて伝えさせていただきます。これからもずっと貴方へ尽くします。この身も、心も全て貴方に捧げます。だからこれからもどうか、お側に置いてください。一生懸命ご飯を作ります。ゴッ君の面倒もみます。お仕事のお手伝いもします。もう決してご迷惑はお掛けしないと誓います」
本当に真面目で、良い娘だと改めて思った。
同時に、時々こうして少し大袈裟になるところが玉に瑕とも。
「わかった、よろしく頼む。しかし、そんなに固くなるな。俺は、なんだ、その……いつもの君の方が……」
言葉が澱む。"好き"という言葉だけが、なぜか喉へつっかえる。
それに今のリゼルの宣言を、どう取ったら良いのか分からないのもある。
(今の宣言はやはり恩を感じているからか? いや、もしや、リゼルは俺と同じ気持ち……むぅ……)
と、その時、ばぁーんと扉が開いた。
「ノルン大丈夫か!? 腕あるよな!? 死んでねぇよな!?」
飛び込んできたグスタフは、怒っているのか泣いているのかよく分からない顔をして、飛び込んでくる。
「おい、ハンマ! ノルンは大丈夫なんだろな、おい!」
「本人が目の前にいるんだから、直接聞いてくれよ……」
なぜかガルスはハンマ先生の胸ぐらを掴んで、怒鳴り散らしている。
続いて、ゲマルク村長や、ギラ工場長、営林場の人たちや、イスルゥ塗の職人たち、果てやガルスの息子のジェイなども、続々と病室になだれ込んでくる。
「死んでは困りますぞ! 生きるのですぞノルン殿!」
「やだよ! やだやだ! ノルン死んじゃ嫌だぁ!!」
「管理人さん! まだあなたには指導を受けたいんです! だから、だから!」
――これだけ、今の彼はヨーツンヘイムの人々に愛されている。
「み、みんな少し落ち着いてくれ。確かに俺はこんな有様だが……その……とりあえず元気だぞ?」
胸がじんわりと暖かくなり、意図せず目がしがら熱くなる。
守りたい。
このヨーツンヘイムの平穏を。皆と過ごす、穏やかな日々を。
勇者だった頃よりも、はるかに幸せ。
ノルンははそう思うのだった。
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