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ジェシカへさらにバフを与えることに……

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「利用していたとはどういうことで?」

「私がトーガ君を王国魔術師に推薦したのは、元々、あいつを、ガトーへの復讐を果たすためだった……」

 どうやらジェシカさんは、俺と出会った時から、こちらの才覚を見抜き、ガトー討伐を手伝ってもらおうとしていたらしい。
確かに話がトントン拍子で進んだ感があったので、何かがあるなとは思っていたが……

「見事に私の思惑通り、王国魔術師になったあなたを、ガトーの三番隊に配属されるように意見したのも私なの……あなたならきっとうまく、アイツの懐に潜り込んでくれると思って……」

「つまり、俺は出会った時からずっと、ジェシカさんの手のひらの上で踊らされていたということですね?」

「そうね……そうなるわよね……だから、先にこのことをきちんと伝えておきたいと思って……本当にごめんなさい……」

「……」

「その上で改めてお願いなのだけれど……私に協力してくれる?」

「当たり前じゃないですか」

 俺は迷わずそう返す。別にジェシカさんの思惑通りに動かされたことに対して、悪い感情は抱いていない。
むしろ……

「俺を思惑通りに動かした……それはつまり、俺のことを信頼してくれているからでしょ? ガトーのことを持ちかけてきたのだって、俺だからこそ、勇気を出して伝えてくれたのでしょ? なら、俺はすごく嬉しいです。俺があなたのなかに頼られる人間として存在している。そのことがとても……」

「……ありがとう、トーガ君。あなたってすごく頼りになる、不思議な人ね……ほんと歳下だなんて、思えないわ……」

「……ジェシカさん?」

「すぅー……すぅー……」

背中からジェシカさんの穏やかな寝息が流れてくる。

 おそらく特訓の疲れと、俺が真実を受け入れたことに安堵して眠ってしまったらしい。

 俺はそんな彼女を起こさないよう別荘へ入り、彼女をベッドの上へ寝かしつけるのだった。

●●●

「大会まであと六日……他に何かできることはないだろうか……」

 シンと静まり返った別荘内へ、あえて今抱えている問題を言葉にして響かせる。

 頭で考え続けるよりも、こうした方が問題を客観視できるので、時々そうするようにしている。
そしてそうすれば、閃きが降りてくることがままあるのだが……今回はあいにく、そうではなかったらしい。

 だからこそ、今夜は持ちうるすべての知識を総動員して、ジェシカさんに対し、他にできることはないかと考える必要がある。

「トーガ君……」

 ふと、後ろからジェシカさんの声が聞こえた。

 そういえば夕食も取らずに彼女は眠りについたのだ。お腹が空いて、目覚めてしまったのかもしれない。

「夕食ですよね。少しまっていてくだーーっ!?」

 何気なく立ち上がり、後ろを振り返ると、白色の薄いベビードールを一枚羽織っただけのジェシカさんに出会した。

 やや生地の薄いソレは、緩やかな着心地であるにもかかわらず、彼女の美しいボディラインをくっきりと示していた。
普段は後ろで結っている金髪は、外気に晒されている綺麗な肩のラインへ無造作に落ちている。
ほんのり頬が赤く染まっていて、目が潤んでいるのは、気のせいか……?

「ど、どうしたんですか、そんな格好をして……? もしかして部屋が暑かったですか?」

 胸を高鳴らせながら、まずは問いかけてみる。

 ややあって、ジェシカさんは美しいブロンドの毛先を横へ揺り動かしてみせた。

「……と、もらえる……?」

 あまりに声が小さく、思わず「え?」と聞き返した。

 そんな俺へ、あられも無い姿のジェシカさんは、ヒタヒタと素足を鳴らしながら近づいてくる。

「もっと、トーガ君の……バフ、もらえる……?」

 ジェシカさんは俺の胸におでこをくっつけ、意外に華奢な肩を振るわせながら、か細い声でそう言ってくる。

「わ、わかりました。それじゃ……」

 ジェシカさんをグッと抱き寄せた。
彼女の柔らかさを味わいつつ、全身を使ってゆっくりと魔力を送り出す。

「これはこれで良いんだけど……もっと、その……ふ、深いのが……」

「ふ、深いって、まさか……!?」

 ジェシカさんは小さく頷いた。

「私はこれでも王国騎士の端くれよ。バフ効果の論文はちゃんと読んだことがあるし、それにその……どの方法が、1番効率的かも……だから……!」

「本当にいいんですか? それがどういうことなのか、自分が何を俺へ提案しているかわかっているんですよね?」

 ジェシカさんは言葉を返す代わりに、こちらの服をぎゅっと掴んで、頷いて見せた。

 これ以上詰問するのは、ジェシカさんの勇気と決断を踏み躙ることに他ならない。
こういう決断を下すほど、彼女は本気だと理解する。
そしてジェシカさんは、おそらく歴戦の猛者に見えて、こういうことはきっと初めてなのだろう。

 ならばこれからすることが、たとえ強くなるため一環であろうとも、ただそれだけの思い出にはしたくない。

 そう思った俺は、そっとジェシカさんを胸から引き離し、彼女の潤んだ青い瞳に自分自身を映し出す。

「ジェシカさん、俺は初めて出会った時から、あなたのことをとても綺麗な方だと思っていました。あの時、あなたが抱きしめてくれたのは今でもいい思い出で、思い出しただけで今でも胸が熱くなります。だから、これからすることが、あなたにとってのそういう思い出になるよう精一杯がんばります」

「ありがと……嬉しいわ……お願いね……」

 ジェシカさんはそっと瞳を閉じ、首を僅かにあげて、唇を向けてくる。

「んっ……!?」

 唇が触れ合った途端、ジェシカさんは驚いたかのように、ビクンと背筋を震わせた。
唇自体もプルプルと震えていて、奥で歯がその震えによってカタカタと音を鳴らしている。
おそらくすごく緊張しているのだろう。
 そんな彼女の緊張をほぐすべく、まずは何度も軽いキスを繰り返すことにした。

「んっ……んんっ……んっ……」

 何度もキスをしてゆくと、段々とジェシカさんの体から緊張が抜け始めた。
彼女の辿々しい様子ながら、こちらへキスをするようになってきている。

「んっ……んふぅっ……!?」

 しかし舌を差し入れた途端、ジェシカさんの唇の間から驚きの息が漏れ出ててくる。
 それでも構わず、俺は進行を止めず、どんどん彼女の中へ入り込んでゆく。

「はふっ……んっ、んはっ……むちゅ……んんっ……!」

 多少無理やりではあるが、ジェシカさんの中をくまなく探ってゆく。
最初こそ、こちらにされるがままだった彼女だが、やがて自分が何を返したら良いのか理解したのか、お返しをしてきてきてくれる。

 そんな辿々しくも、一生懸命な様子がとても愛らしいと思った。

「それじゃあ、ジェシカさん」

 十分なキスを終え、そろそろかと思い彼女にそう促す。

 しかしなぜかジェシカさんは動き出さず、すこし不満げな様子を見せている。

「ど、どうかしましたか?」

「ジェシカでいいわよ……」

「え?」

「と、というか、これからは"ジェシカ"って呼んで……いつまでも"さん"付けじゃ、なんかその……」

 まるで子供のような言い振りに、微笑ましさを覚えた。
そしてこの方も、こういう顔をするといった、新たな一面が見られて正直に嬉しい。

「わかりました。じゃあ、あっちへ行きましょうジェシカ」

「うん、よろしくね、トーガ……!」

ーーそれから俺たちは、近くにあったソファーの上で、バフを付与するとの名目の下、何度も深い交わり求め続ける。

 日中は実戦の指導。夜はおそらく毎日、こうしてバフを付与することになるのだろう。

 なんだか大変な一週間になりそうだと思った。

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