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ピルと獣たちとおでかけ
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「にゃむにゃ……とーがさまぁ……だぁいすきぃ……」
「ぐるあぁ、ふわぁ……」
「……」
とある日差しが暖かい昼下がりのこと。
木陰でピルは、ソードライガーのレオパルドくんのお腹の枕に、肩にはイービルアイのマスタングくんを止まらせて、お昼寝の最中だった。
レオパルドくんのお腹は白くてふわふわな毛で覆われているため、とても寝心地が良さそうだ。
気持ちよさそうに寝ているところ悪いし、ピルをデートに誘うのはまた別の日に……と思って、立ち去ろうとした時のこと。
「あ……とーがさまぁ!」
「うごっ!?」
目覚めるや否や、背中へいきなり飛びついてきたピル。
ピルは言動こそ拙いものの、れっきとした大人なわけで、むやみやたらに抱きつかれれると、結構いい感触が伝わってくるわけで……
「ぐるるる……」
「ーッ! ーッ!」
レオパルドくんも喉をゴロゴロ鳴らして体を擦り付けているし、マスタングくんも愛情表現なのか、俺の周囲を飛び回ってはしきりに巨眼をパチパチと瞬かせている。
この魔獣たちも、すっかり俺に好意を寄せてくれているらしい。
「とーがさま、今日お忙しかったんじゃないですか?」
ピルはギュッと抱きついたまま、そう問いかけてくる。
「その予定だったんだが時間ができたんだ。よかったら出かけないか?」
「おねえちゃんとモニモニも?」
「いや、ピルだけだが?」
「やったぁー! 行きましょ! すぐいきましょ!」
「がうぅん……」
「……っ」
嬉しそうなピルを尻目に何故か元気なく項垂れてしまったレオパルドくんとマスタングくん。
ああ、そうかこの2匹は置いてゆかれると想っているのか……
「安心しろ、レオパルドくん、マスタングくん! 今日は君たちも一緒だ!」
「がうううう!!」
「ーーっ! ーーっ!」
レオパルドくんは地面に背中を擦り付けながらお腹を見せ、マスタングくんはくるくると俺の周囲を飛び回る。
どうやら一喜んでくれたらしい。
こうして魔獣たちも一緒ということは、行くべきところはやはりーー
「がぁぁあぁぁ!!」
ピルと俺と乗せたレオパルドくんは、4本の足で軽快に大地を蹴り、満足そうに駆け抜けていた。
マスタングくんも追従できるほどの速度で飛んでいるものの、逐一遮蔽物や地形の変化などを俺とピルへアイコンタクトで伝えてくれている。
さすがにこの2匹を連れて街へ出るわけにはゆかず、俺たちは近くの野山をレオパルドくんの背中に乗って駆け抜けている。
ただそれだけだ。これがデートと言えるか、正直怪しいところではあるが……
「気持ちいいねぇ! あははは!」
「があぁぁぁ!」
「ーーっ! ーーっ!」
しかしピルと2匹はとても満足そうにしてくれている。
ならばこれはこれで良かった思い、俺をレオパルドくんの上で風を切り続けていた。
そうして暫く走り続けていた時のこと。
不意に、レオパルドくんが走るのをやめた。
そしてグルルル、と唸りを上げ始める。
「このけはいは……とーがさま、たぶんこの先の村が!」
「ああ、そうだな。行こう!」
ピルと俺もレオパルドくん同様に、魔空の枝道の存在を感知し、そこへ向かってゆく。
そして感知した通り、近くにあった村の上空には、黒い小さな渦ーー魔空の枝道ーーが発生し、そこから大量の魔物が溢れ出ている。
「ピルたちは村人と下の魔物を! 枝道は俺が叩くっ!」
「はぁーい!」
俺レオパルドくんの背中なら、風の精霊を力を借りて、宙へ舞い上がった。
「いっくよぉ、レオパルドくん、マスタングくん! 超獣進化ぁー!」
ピルの叫びと同時に輝きが溢れ、2匹の魔獣を変化させてゆく。
「がァァァァァァ!」
体毛を鎧のように変化させたレオパルドくんの鋭爪が魔物を引き裂き、次々と踏み潰す。
「ーーーーッ!!」
マスタングくんに至っては外見状の変化はないものの、代わりに体の大半を占める巨眼から熱線を放って、魔物を焼き切っていた。
普段は可愛いピルの魔獣たちも、ピルの力を受けて、強大な戦力として活躍してくれている。
そのおかげで、目下の魔物はあっという間に蹂躙されてしまった。
枝道からの魔物の発生も減少傾向にある。今が叩き潰すチャンス!
「ファイヤーボールっ!」
威力を高めるために、魔術の発動の鍵たる呼称のみを叫んだ。
手のひらから瞬時に、灼熱を秘めた火球が飛び出し、枝道の中へ吸い込まれてゆく。
そして吸い込まれてからいくばくもなく、黒い渦が赤く発光したかと思うと、空中で"ドンっ!"と爆散するのだった。
「あ、あなたはもしや……!?」
枝道の破壊を終え、地上へ降り立つや否や、村長と思しき人物がそう声をかけてくる。
俺はあえて、雑嚢から濃い紫色をしたマントを取り出し羽織る。
「王国魔術師のトーガ・ヒューズです。来て早々、村の中で大暴れしてしまって申し訳ない」
「いえいえい! 滅相もございません! まさかこんな辺境の村にまで、王国魔術師様が訪れてくださるなど初めてのことでございます! ありがとうございました!」
村人たちは一斉に傅き、敬意を露わにする。
ピルが側にいるのであまり情けない姿は見せたくないと思い平生を装ってはいるが……やはり内心では、いまだに、皆にこうして平伏されるのは慣れておらず、心臓バクバクである。
(そろそろ王城での王国魔術師の初会合があるし、そろそろこういうのにも慣れておかないとな……)
●●●
「えっと……"一緒に行きたかったです。次はぜひ誘ってください。ピルのことをよろしく頼みます。"か」
指先に止まったイービルアイのマスタングくんから、そう"パル"からの伝言を、意思といった形で受け取る俺だった。
ーー村を助けてお礼として、俺とピル、そして2匹の魔獣たちもまた熱烈な歓待を、長時間受けることとなった。
そのため結局、今夜は村長が用意してくれた空き家にとまることとなったので、一応パルのは状況を報告しておこうと思い、マスタングくんに伝言をお願いしていたのである。
「お疲れ様。お前も今夜はゆっくり休んでくれ」
そう告げるとマスタングくんは窓の外へ飛び去ってゆく。
どうやら表で丸まって寝ている、レオパルドくんのところへゆくらしい。
この2匹も、種族の垣根を超えて、かなり仲良しなようだ。
さてと、流石に今日は疲れたのでもう寝るかなと思い瞳を閉じる。
そして暫く経って、少しモゾモゾとした感触を得て、意識が覚醒する。
「起こしちゃいしましたか?」
何故か俺の布団の中にピルが潜り込んでいたピルが、俺の太もももに両手を添えながら、見つめてきている。
「ど、どうしたんだ、ピル……?」
「ちょっと、今日は魔力をつかいすぎちゃいました……」
「そ、そうか。で?」
「いただいても、いいですか?」
ピルは頬を赤ながらそう聞いてくる。
一応、ここは空き家だから、声を聞かれることもないだろうし、平気だろうとおもって体を起こそうとする。
「あ、あのっ! 今日は、とーがさまはだいじょうぶ、ですっ。ちょっと、わたしも、やってみたいことがあって……」
「やりたいこと?」
「前にとーがさま、おねえちゃんから、そのぉ……ここで……受けてましたよね……?」
そういってピルは、自身の小さな花びらのような唇を指で指し示す。
というか、アレさえも、ピルに見られてしまっていたとは……。
「ダメ、ですか?」
俺の無言が、拒否だとでも思ったのかピルは不安げにそう聞いてくる。
ダメではなく、むしろ……的なことを告げると、ピルは笑顔を浮かべてくれる。
「よかったです! おねえちゃんみたいに上手にできないかもしれませんけど、精一杯がんばりますね!」
そうしてピルはおずおずといった様子で、準備を進めてゆくのだった。
(さてと……明日あたり、またモニカの勉強もみてやらないとな……)
「ぐるあぁ、ふわぁ……」
「……」
とある日差しが暖かい昼下がりのこと。
木陰でピルは、ソードライガーのレオパルドくんのお腹の枕に、肩にはイービルアイのマスタングくんを止まらせて、お昼寝の最中だった。
レオパルドくんのお腹は白くてふわふわな毛で覆われているため、とても寝心地が良さそうだ。
気持ちよさそうに寝ているところ悪いし、ピルをデートに誘うのはまた別の日に……と思って、立ち去ろうとした時のこと。
「あ……とーがさまぁ!」
「うごっ!?」
目覚めるや否や、背中へいきなり飛びついてきたピル。
ピルは言動こそ拙いものの、れっきとした大人なわけで、むやみやたらに抱きつかれれると、結構いい感触が伝わってくるわけで……
「ぐるるる……」
「ーッ! ーッ!」
レオパルドくんも喉をゴロゴロ鳴らして体を擦り付けているし、マスタングくんも愛情表現なのか、俺の周囲を飛び回ってはしきりに巨眼をパチパチと瞬かせている。
この魔獣たちも、すっかり俺に好意を寄せてくれているらしい。
「とーがさま、今日お忙しかったんじゃないですか?」
ピルはギュッと抱きついたまま、そう問いかけてくる。
「その予定だったんだが時間ができたんだ。よかったら出かけないか?」
「おねえちゃんとモニモニも?」
「いや、ピルだけだが?」
「やったぁー! 行きましょ! すぐいきましょ!」
「がうぅん……」
「……っ」
嬉しそうなピルを尻目に何故か元気なく項垂れてしまったレオパルドくんとマスタングくん。
ああ、そうかこの2匹は置いてゆかれると想っているのか……
「安心しろ、レオパルドくん、マスタングくん! 今日は君たちも一緒だ!」
「がうううう!!」
「ーーっ! ーーっ!」
レオパルドくんは地面に背中を擦り付けながらお腹を見せ、マスタングくんはくるくると俺の周囲を飛び回る。
どうやら一喜んでくれたらしい。
こうして魔獣たちも一緒ということは、行くべきところはやはりーー
「がぁぁあぁぁ!!」
ピルと俺と乗せたレオパルドくんは、4本の足で軽快に大地を蹴り、満足そうに駆け抜けていた。
マスタングくんも追従できるほどの速度で飛んでいるものの、逐一遮蔽物や地形の変化などを俺とピルへアイコンタクトで伝えてくれている。
さすがにこの2匹を連れて街へ出るわけにはゆかず、俺たちは近くの野山をレオパルドくんの背中に乗って駆け抜けている。
ただそれだけだ。これがデートと言えるか、正直怪しいところではあるが……
「気持ちいいねぇ! あははは!」
「があぁぁぁ!」
「ーーっ! ーーっ!」
しかしピルと2匹はとても満足そうにしてくれている。
ならばこれはこれで良かった思い、俺をレオパルドくんの上で風を切り続けていた。
そうして暫く走り続けていた時のこと。
不意に、レオパルドくんが走るのをやめた。
そしてグルルル、と唸りを上げ始める。
「このけはいは……とーがさま、たぶんこの先の村が!」
「ああ、そうだな。行こう!」
ピルと俺もレオパルドくん同様に、魔空の枝道の存在を感知し、そこへ向かってゆく。
そして感知した通り、近くにあった村の上空には、黒い小さな渦ーー魔空の枝道ーーが発生し、そこから大量の魔物が溢れ出ている。
「ピルたちは村人と下の魔物を! 枝道は俺が叩くっ!」
「はぁーい!」
俺レオパルドくんの背中なら、風の精霊を力を借りて、宙へ舞い上がった。
「いっくよぉ、レオパルドくん、マスタングくん! 超獣進化ぁー!」
ピルの叫びと同時に輝きが溢れ、2匹の魔獣を変化させてゆく。
「がァァァァァァ!」
体毛を鎧のように変化させたレオパルドくんの鋭爪が魔物を引き裂き、次々と踏み潰す。
「ーーーーッ!!」
マスタングくんに至っては外見状の変化はないものの、代わりに体の大半を占める巨眼から熱線を放って、魔物を焼き切っていた。
普段は可愛いピルの魔獣たちも、ピルの力を受けて、強大な戦力として活躍してくれている。
そのおかげで、目下の魔物はあっという間に蹂躙されてしまった。
枝道からの魔物の発生も減少傾向にある。今が叩き潰すチャンス!
「ファイヤーボールっ!」
威力を高めるために、魔術の発動の鍵たる呼称のみを叫んだ。
手のひらから瞬時に、灼熱を秘めた火球が飛び出し、枝道の中へ吸い込まれてゆく。
そして吸い込まれてからいくばくもなく、黒い渦が赤く発光したかと思うと、空中で"ドンっ!"と爆散するのだった。
「あ、あなたはもしや……!?」
枝道の破壊を終え、地上へ降り立つや否や、村長と思しき人物がそう声をかけてくる。
俺はあえて、雑嚢から濃い紫色をしたマントを取り出し羽織る。
「王国魔術師のトーガ・ヒューズです。来て早々、村の中で大暴れしてしまって申し訳ない」
「いえいえい! 滅相もございません! まさかこんな辺境の村にまで、王国魔術師様が訪れてくださるなど初めてのことでございます! ありがとうございました!」
村人たちは一斉に傅き、敬意を露わにする。
ピルが側にいるのであまり情けない姿は見せたくないと思い平生を装ってはいるが……やはり内心では、いまだに、皆にこうして平伏されるのは慣れておらず、心臓バクバクである。
(そろそろ王城での王国魔術師の初会合があるし、そろそろこういうのにも慣れておかないとな……)
●●●
「えっと……"一緒に行きたかったです。次はぜひ誘ってください。ピルのことをよろしく頼みます。"か」
指先に止まったイービルアイのマスタングくんから、そう"パル"からの伝言を、意思といった形で受け取る俺だった。
ーー村を助けてお礼として、俺とピル、そして2匹の魔獣たちもまた熱烈な歓待を、長時間受けることとなった。
そのため結局、今夜は村長が用意してくれた空き家にとまることとなったので、一応パルのは状況を報告しておこうと思い、マスタングくんに伝言をお願いしていたのである。
「お疲れ様。お前も今夜はゆっくり休んでくれ」
そう告げるとマスタングくんは窓の外へ飛び去ってゆく。
どうやら表で丸まって寝ている、レオパルドくんのところへゆくらしい。
この2匹も、種族の垣根を超えて、かなり仲良しなようだ。
さてと、流石に今日は疲れたのでもう寝るかなと思い瞳を閉じる。
そして暫く経って、少しモゾモゾとした感触を得て、意識が覚醒する。
「起こしちゃいしましたか?」
何故か俺の布団の中にピルが潜り込んでいたピルが、俺の太もももに両手を添えながら、見つめてきている。
「ど、どうしたんだ、ピル……?」
「ちょっと、今日は魔力をつかいすぎちゃいました……」
「そ、そうか。で?」
「いただいても、いいですか?」
ピルは頬を赤ながらそう聞いてくる。
一応、ここは空き家だから、声を聞かれることもないだろうし、平気だろうとおもって体を起こそうとする。
「あ、あのっ! 今日は、とーがさまはだいじょうぶ、ですっ。ちょっと、わたしも、やってみたいことがあって……」
「やりたいこと?」
「前にとーがさま、おねえちゃんから、そのぉ……ここで……受けてましたよね……?」
そういってピルは、自身の小さな花びらのような唇を指で指し示す。
というか、アレさえも、ピルに見られてしまっていたとは……。
「ダメ、ですか?」
俺の無言が、拒否だとでも思ったのかピルは不安げにそう聞いてくる。
ダメではなく、むしろ……的なことを告げると、ピルは笑顔を浮かべてくれる。
「よかったです! おねえちゃんみたいに上手にできないかもしれませんけど、精一杯がんばりますね!」
そうしてピルはおずおずといった様子で、準備を進めてゆくのだった。
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