若返った! 追放底辺魔術師おじさん〜ついでに最強の魔術の力と可愛い姉妹奴隷も手に入れたので今度は後悔なく生きてゆく〜

シトラス=ライス

文字の大きさ
上 下
44 / 86

ピルと獣たちとおでかけ

しおりを挟む
「にゃむにゃ……とーがさまぁ……だぁいすきぃ……」

「ぐるあぁ、ふわぁ……」

「……」

 とある日差しが暖かい昼下がりのこと。
木陰でピルは、ソードライガーのレオパルドくんのお腹の枕に、肩にはイービルアイのマスタングくんを止まらせて、お昼寝の最中だった。
 レオパルドくんのお腹は白くてふわふわな毛で覆われているため、とても寝心地が良さそうだ。

 気持ちよさそうに寝ているところ悪いし、ピルをデートに誘うのはまた別の日に……と思って、立ち去ろうとした時のこと。

「あ……とーがさまぁ!」

「うごっ!?」

 目覚めるや否や、背中へいきなり飛びついてきたピル。
ピルは言動こそ拙いものの、れっきとした大人なわけで、むやみやたらに抱きつかれれると、結構いい感触が伝わってくるわけで……

「ぐるるる……」

「ーッ! ーッ!」

 レオパルドくんも喉をゴロゴロ鳴らして体を擦り付けているし、マスタングくんも愛情表現なのか、俺の周囲を飛び回ってはしきりに巨眼をパチパチと瞬かせている。

 この魔獣たちも、すっかり俺に好意を寄せてくれているらしい。

「とーがさま、今日お忙しかったんじゃないですか?」

 ピルはギュッと抱きついたまま、そう問いかけてくる。

「その予定だったんだが時間ができたんだ。よかったら出かけないか?」

「おねえちゃんとモニモニも?」

「いや、ピルだけだが?」

「やったぁー! 行きましょ! すぐいきましょ!」

「がうぅん……」

「……っ」

嬉しそうなピルを尻目に何故か元気なく項垂れてしまったレオパルドくんとマスタングくん。

ああ、そうかこの2匹は置いてゆかれると想っているのか……

「安心しろ、レオパルドくん、マスタングくん! 今日は君たちも一緒だ!」

「がうううう!!」

「ーーっ! ーーっ!」

 レオパルドくんは地面に背中を擦り付けながらお腹を見せ、マスタングくんはくるくると俺の周囲を飛び回る。
どうやら一喜んでくれたらしい。

 こうして魔獣たちも一緒ということは、行くべきところはやはりーー

「がぁぁあぁぁ!!」

 ピルと俺と乗せたレオパルドくんは、4本の足で軽快に大地を蹴り、満足そうに駆け抜けていた。

 マスタングくんも追従できるほどの速度で飛んでいるものの、逐一遮蔽物や地形の変化などを俺とピルへアイコンタクトで伝えてくれている。

 さすがにこの2匹を連れて街へ出るわけにはゆかず、俺たちは近くの野山をレオパルドくんの背中に乗って駆け抜けている。
ただそれだけだ。これがデートと言えるか、正直怪しいところではあるが……

「気持ちいいねぇ! あははは!」

「があぁぁぁ!」

「ーーっ! ーーっ!」

 しかしピルと2匹はとても満足そうにしてくれている。
ならばこれはこれで良かった思い、俺をレオパルドくんの上で風を切り続けていた。

そうして暫く走り続けていた時のこと。
不意に、レオパルドくんが走るのをやめた。
そしてグルルル、と唸りを上げ始める。

「このけはいは……とーがさま、たぶんこの先の村が!」

「ああ、そうだな。行こう!」

 ピルと俺もレオパルドくん同様に、魔空の枝道の存在を感知し、そこへ向かってゆく。
 そして感知した通り、近くにあった村の上空には、黒い小さな渦ーー魔空の枝道ーーが発生し、そこから大量の魔物が溢れ出ている。

「ピルたちは村人と下の魔物を! 枝道は俺が叩くっ!」

「はぁーい!」

 俺レオパルドくんの背中なら、風の精霊を力を借りて、宙へ舞い上がった。

「いっくよぉ、レオパルドくん、マスタングくん! 超獣進化ぁー!」

 ピルの叫びと同時に輝きが溢れ、2匹の魔獣を変化させてゆく。

「がァァァァァァ!」

 体毛を鎧のように変化させたレオパルドくんの鋭爪が魔物を引き裂き、次々と踏み潰す。

「ーーーーッ!!」

 マスタングくんに至っては外見状の変化はないものの、代わりに体の大半を占める巨眼から熱線を放って、魔物を焼き切っていた。
普段は可愛いピルの魔獣たちも、ピルの力を受けて、強大な戦力として活躍してくれている。
そのおかげで、目下の魔物はあっという間に蹂躙されてしまった。

 枝道からの魔物の発生も減少傾向にある。今が叩き潰すチャンス!

「ファイヤーボールっ!」

 威力を高めるために、魔術の発動の鍵たる呼称のみを叫んだ。
手のひらから瞬時に、灼熱を秘めた火球が飛び出し、枝道の中へ吸い込まれてゆく。
そして吸い込まれてからいくばくもなく、黒い渦が赤く発光したかと思うと、空中で"ドンっ!"と爆散するのだった。

「あ、あなたはもしや……!?」

 枝道の破壊を終え、地上へ降り立つや否や、村長と思しき人物がそう声をかけてくる。
俺はあえて、雑嚢から濃い紫色をしたマントを取り出し羽織る。

「王国魔術師のトーガ・ヒューズです。来て早々、村の中で大暴れしてしまって申し訳ない」

「いえいえい! 滅相もございません! まさかこんな辺境の村にまで、王国魔術師様が訪れてくださるなど初めてのことでございます! ありがとうございました!」

 村人たちは一斉に傅き、敬意を露わにする。

 ピルが側にいるのであまり情けない姿は見せたくないと思い平生を装ってはいるが……やはり内心では、いまだに、皆にこうして平伏されるのは慣れておらず、心臓バクバクである。

(そろそろ王城での王国魔術師の初会合があるし、そろそろこういうのにも慣れておかないとな……)


●●●

「えっと……"一緒に行きたかったです。次はぜひ誘ってください。ピルのことをよろしく頼みます。"か」

 指先に止まったイービルアイのマスタングくんから、そう"パル"からの伝言を、意思といった形で受け取る俺だった。

ーー村を助けてお礼として、俺とピル、そして2匹の魔獣たちもまた熱烈な歓待を、長時間受けることとなった。
そのため結局、今夜は村長が用意してくれた空き家にとまることとなったので、一応パルのは状況を報告しておこうと思い、マスタングくんに伝言をお願いしていたのである。

「お疲れ様。お前も今夜はゆっくり休んでくれ」

そう告げるとマスタングくんは窓の外へ飛び去ってゆく。
どうやら表で丸まって寝ている、レオパルドくんのところへゆくらしい。
この2匹も、種族の垣根を超えて、かなり仲良しなようだ。

 さてと、流石に今日は疲れたのでもう寝るかなと思い瞳を閉じる。
そして暫く経って、少しモゾモゾとした感触を得て、意識が覚醒する。

「起こしちゃいしましたか?」

 何故か俺の布団の中にピルが潜り込んでいたピルが、俺の太もももに両手を添えながら、見つめてきている。

「ど、どうしたんだ、ピル……?」

「ちょっと、今日は魔力をつかいすぎちゃいました……」

「そ、そうか。で?」

「いただいても、いいですか?」

 ピルは頬を赤ながらそう聞いてくる。

 一応、ここは空き家だから、声を聞かれることもないだろうし、平気だろうとおもって体を起こそうとする。

「あ、あのっ! 今日は、とーがさまはだいじょうぶ、ですっ。ちょっと、わたしも、やってみたいことがあって……」

「やりたいこと?」

「前にとーがさま、おねえちゃんから、そのぉ……ここで……受けてましたよね……?」

 そういってピルは、自身の小さな花びらのような唇を指で指し示す。

 というか、アレさえも、ピルに見られてしまっていたとは……。

「ダメ、ですか?」

 俺の無言が、拒否だとでも思ったのかピルは不安げにそう聞いてくる。
ダメではなく、むしろ……的なことを告げると、ピルは笑顔を浮かべてくれる。

「よかったです! おねえちゃんみたいに上手にできないかもしれませんけど、精一杯がんばりますね!」

 そうしてピルはおずおずといった様子で、準備を進めてゆくのだった。

(さてと……明日あたり、またモニカの勉強もみてやらないとな……)
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...