若返った! 追放底辺魔術師おじさん〜ついでに最強の魔術の力と可愛い姉妹奴隷も手に入れたので今度は後悔なく生きてゆく〜

シトラス=ライス

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犯罪者は容赦なく葬れ!

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「今すぐ城門から離れろ! 巻き込まれるぞぉー!」」

 門番がそう叫んだ途端、固く閉ざされていた城門が吹っ飛んだ。

 入場審査待ちの長蛇の列が真っ二つに割れ、その間を馬車に乗った盗賊集団が駆け抜けてゆく。
 そしてその集団を追って、馬竜に乗った王国騎士団が城門内から追いかけている。

「逃すなぁー! 生死は問わん! 1人残らず捉えるんだぁー!」

 騎士団率いていたのは、長いブロンド髪の綺麗な女性。
間違いない、この間ダンジョンで助けた"ジェシカ・フランソワーズさん"だ。

――ならこんな美味しい状況をみすみす見逃すわけにはいかん!
俺の、俺たちの明るい未来を築き上げるためにも!

「パルとピルはそこで待っていてくれ!」

「お気をつけて、トーガ様!」

「とーがさまがんばれぇ!」

 パルとピルの声援を受けつつ、一気に駆け、そして暴走する盗賊集団の馬車の前へ立ちはだかる。

「ガキ、てめぇどけぇ! 轢き殺すぞおらぁー!!」

 馬車から武装した盗賊風の男が叫んでくる。
 おそらく、今の警告はこちらの身を案じいているのではなく、俺を轢くことで、馬車が減速したり、止まったりすることを恐れているのだろう。
現に馬車は一向に減速する様子を見せない。

「退け! 退けぇぇぇぇ!!」

「いや、退くのはお前たちのほうだ!」

 地面へ手をつき、魔力経路を開放する。
すると俺の考えを迅速に察知してくれた、氷の精霊エルザが望みの力を与えてくれた。

「ブリザードウェイブ」

 燦然と照りつく太陽の下では絶対に発生し得ない"氷の波"が馬車へ向けて突き進む。

「こ、氷!? ひぎゃあぁぁあぁぁーーっ!?」

 荷車を引く馬竜は、あっという間に氷結する。
氷は瞬時に荷車を、そしてそこに乗っていた盗賊集団をも侵食し、一網打尽にはできたものの……

「う、うわぁ、ちょっと!?」

 氷結したまっすぐな道の上を、氷塊となった馬車がつるる~と迫ってきているではないか!?

 氷塊はかなりの大きさなので、軽く横へ飛んだ程度では回避は不可能。
この場合は、氷塊が砕けてしまう覚悟で、魔力障壁にて受け止めるべきか。

「トーガ様っ! ここはパルにおまかせを! たあぁぁぁぁーっ!」

 すると、後ろにいたパルが、ものすごいジャンプ力で俺の頭上を過ってゆく。

「止まり、なさぁぁぁぁいっ!」

 パルは、その綺麗な御足からは想像すらできない圧力を発し、氷塊を地面へ押し付ける。彼女の圧倒的な怪力は、氷塊と地面の間に強力な摩擦力を発生させる。
やがて氷塊は砂塵を巻き上げつつ徐々に減速し、俺の目の前でぴたりと止まるのだった。

「ご無事ですか、トーガ様!?」

 氷塊の上からパルがひょいと顔を出し、心配そうな視線を向けてくる。

「あ、ああ……パルのおかげで……」

「良かったぁ……!」

 パルは心底安堵した表情を見せた。
うん、相変わらずパルはよく気が利いて、おっとりしているところもあって、可愛いし、美人だ。
でも、あの氷塊を片足一品で押し留めてしまう怪力の持ち主。
彼女のことはあまり怒らせない方が身のためだろう……

「こ、このクソガキ! やりやがったな! ぶっ殺してやるぅ!」

 と、不穏な声が聞こえてきた。
どうやら寸でのところで、氷結魔法から逃れた盗賊集団の生き残りが一人いたらしい。

「トーガ様、ここは私が!」

「いや、考えがある。パルは他の皆の安全を!」

「承知しました!」

 俺を守ろうと立ち塞がるパルを下がらせ、自らが前へ出た。
そして無造作に手を掲げる。

「なっーー!?」

 盗賊の剣が、俺の目の前で""ガキィン!"と音をたて、動きを止める。
腕に纏わせた氷が、鎧のように刃を受け止めていたからだ。

「こ、このクソガキがぁ!」

 盗賊は一歩引き、態勢を整えると、あらためてこちらへ斬撃を加えてくる。

(盗賊にしては勿体無いほど、鮮やかで、正確な剣筋だな。もったいない……)

 おそらく、この盗賊の持つ剣術の前では、ほとんどの人間はあっという間に切り殺されてしまうことだろう。
 しかし、俺はそんな斬撃を意図も簡単に、しかも最小限の動作で避け続けている。

「なんであたんねぇんだ! くっそぉぉぉ!!」

 なかなか、当たらない斬撃に憤る盗賊。

 確かにこの盗賊の剣術は素晴らしい。だが、俺を切りつけることはおろか、指一本触れることさえ絶対にできない。
 なぜならば、俺には風の精霊シルヴェストという強い味方がいるからだ。

「ちくしょう! ちくしょう! ちきしょうぉぉぉ!」

 風の精霊シルヴェストは、盗賊の刃が起こす、微弱な空気の流れの変化を掴み取り、次どこに刃が過るかを逐一教えてくれている。
だから俺は、特に意識せずとも、精霊に身を任せていれば、容易に斬撃が避けられるのだ。

「素敵です! トーガ様!」

「とーがさま、すっごぉい!」

「ま、全く……やっぱりトーガ君って、規格外ね……私たちの出番、ないじゃないの……」

 そんな俺のことをパルやピル、他の皆さん、そして"ターゲット"であるジェシカさんも"しっかりと見てくれている"

(狙い通りの展開だ。今の俺はよく目立っているぞっ!)

 俺は内心で、そうほくそ笑みながら、手刀に氷を纏わせ、盗賊の剣を受け止める。
そして勢いよくその手を振り抜けば、盗賊の手から剣が抜け、綺麗な弧を描いたのちに地面へ突き刺さる。

「さぁ、覚悟しろ!」

「は、はは……! 舐めんじゃねぇぞ、クソガキ! これが見えねぇかぁ!」

 焦った盗賊は、俺の狙いーー"目立つこと"ーーをより華やかに演出してくれような行動に出た。
奴は懐から、禍々しい意匠の"魔物寄せの鐘"を取り出してくれたのだ。

「しねぇぇぇ! このくそがきゃぁぁぁぁ!!」

 盗賊が鐘を鳴らす。
その不穏な鐘音はすぐさま地面へ無数の隆起を促し、砂塵を巻き上げる。

「キシャアァァァァァ!!

 魔物寄せの鐘によって引き寄せられたのは、見上げるほどの巨躯を誇る、地中の大みみずーーサンドワーム。
 冒険者界隈、ひいては王国騎士団でさえも、出会ったらまず死を意識してしまうほどの難敵である。
 しかもそんな魔物が3体同時。
かつての俺ならば、この状況に自身の終末を覚えていたことだろう。

 だが、今の俺はーー笑みすら浮かべる余裕がある。
こんな魔物など、造作もなく蹴散らす自信がある。

「さて、どの魔術で仕留めるか……」

 すでに周囲には火のサラマンダー、水のアクアス、氷のエルザ、風のシルヴェスト、光のディアナ、雷のサンダルガといった数多の精霊たちが現れ、俺からの招聘を心待ちにしてくれている。

(ここは一撃必殺の雷の力を使うのが、華々しいか……)

 そう考えると、サンダルガが嬉しそうに俺へ寄り添ってくる……が、突然間に黒い影が現れ、雷の精霊サンダルガがさっと姿を引っ込めた!?

『ワタシをエラベ! ワタシを使え! イトシキ、トーガ・ヒューズぅぅぅ!!』

 代わりに俺へ接近し、行使するよう促す、不穏かつ強大な力の気配はまさか!?
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