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最終章 西の果ての国と魔滅の巫女

次なる旅路へ!

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 外では、英雄の姿を一眼見たいと、多くの観衆が集まっている。
そろそろ出てゆかないと、文句の嵐が吹き荒れそうだ。

「ほら、さっさと行けよ」

 俺はポンとノワルの背中を押してやった。

「な、なぁ、アルビス本気か……? 本当の良いのか?」

「だから何度も良いって言ってるでしょうが! お前達が殿を引き受けてくれたり、魔王のところでも一生懸命戦ってくれたから今があるわけだし」

「……」

「大丈夫だ。お前と、漆黒の騎士団ならまたうまくやってけるって。それに困ったことがあったらまた協力するさ。俺たち……幼馴染なんだから!」

 久々にそんなことをいったものだから照れ臭くて仕方がなかった。
頬も熱いし、今の俺ってきっと顔を真っ赤にしてるんだろうな。

「ありがとう、アルビス! またいつか一緒に!」

「おう! だけど嫉妬して追い出したりするんじゃないぞ!」

「わ、わかっている! それじゃあ、行ってくる!」

 魔王討伐で大活躍した、ノワルをリーダーとする漆黒の騎士団は観衆の前へ進んでゆく。

ーーこうして俺は英雄の座をノワルに譲ることにした。
英雄だなんて祭り上げられた、旅がしづらくなると思ったんだもん。

 だったら俺は無冠だって構わない。

 だって俺はまだまだだから。
 今回だってみんなの協力が無ければ、命が危うかった。
最悪の決断だって仕掛けた……これは俺が弱いからだ。

 だったら俺はもっと強くなりたい。
そして強くなるために、旅を続けたい。

 それが俺のやりたいことで、願いなのだから!

「お帰り! お兄ちゃん!」

「よ、よかったアルさん来てくれた……」

「前から言いたかったのだけれど、ドレのそういうマイナスな考え方はやめた方がいいんじゃないかしら?」

 西の果ての国の国境では、シグリッド、ドレ、レオヴィルの3人が待っていてくれた。

ーー魔王討伐の後、俺は3人へ心からの謝罪を述べた。

 当然ガミガミ言われた。
でも、3人はそれだけ俺を愛してくれているのだと感じた。
だから改めて、俺は彼女達をもう二度と裏切らないとの誓いをたて今に至る。

「シルバルさん、今回は本当にありがとうございました。助かりました!」

 そして3人と一緒にいたシルバルさんへお礼を述べた。

「良かったわ、間に合って本当に……」

 シルバルさんは、俺の手紙を読んで不吉な予感がしてわざわざ西の果ての国にまで来てくれていた。
もしもあの時、シルバルさんは現れてくれなかたっら、俺は魔王に飲み込まれていたと思う。

「すみません……」

「本当に心配だわ……私も着いて行こう……」

「お姉ちゃんはだめぇーっ!!」

 シグリッドの大絶叫が、シルバルさんの声を打ち消した。

「もうアルお兄ちゃんは私のものなんだから! お姉ちゃんになんてあげないんだから!」

「あ、あたしも!」

 ドレもそう声を上げる。

「アルがどれだけ慕われようとも関係ないわ! だって私がアルの第一夫人でご主人様だもの!」

 レオヴィルも相変わらずだった。

……ちなみにレオヴィルは、またラスカーズを無理矢理説得して、俺のと同行を取り付けたらしい。
レオヴィルとラスカーズの夫婦生活は本当に大丈夫なのだろうか、と心配が絶えない俺である。

「ふふ……アル君、モテモテね」

「ま、まぁ、そうっすね」

「でも、まだ居るみたいよ?」

「えっ?」

「アル君のことが大好きな女の子がもう1人!」

 突然、目の前の空間が僅かに歪んだかと思うと、俺の腰元へ誰かが引っ付いてきた。

「ルウ!?」

 魔滅の巫女ルウーー彼女は命をかけずとも、使命をやり遂げた。
恩赦として彼女には自由が許された。
これは一生懸命、勉学に励み、魔術学園への入学を目指すらしい。

「また来てくれる……?」

 ルウは寂しそうにそう聞いてきた。
 俺は少しでもその寂しさが和らぐよう、頭を撫でてやる。

「もちろん! 絶対に来る! その前に、もしも困ったことがあったらいつでも呼んでくれよな!」

「わかった! あ、後、約束……」

「約束?」

「ルウもいつか、お姉ちゃんたちみたいに、アルビスにくっつく! アルビスの役に立つ人になってみせる! だから、待ってって! それまでルウのことを忘れないで!」

「おう。わかった。その日を楽しみにしているぜ!」

「うん!」

 俺たちはシルバルさんと、ルウの見送りを受けつつ新たな旅路を歩み始めた。

 もっと強くなるために。
そして少しでも困っている人々を救うために!

「5人目だね?」

 シグリッドがにやにやしながら俺の脇腹を小突いてくる。

「5人目ってお前な……」

「まっ、レオヴィルじゃないけど、お兄ちゃんの良さをわかってくれる人が1人でも増えたならそれでいいよ! だけど……今は目の前に私たちがいるんだから、しっかり愛してよね?」

「もちろんだって!」

 俺は3人を思い切り抱き寄せた。
3人も嬉しそうに俺を抱きしめ返してくれるのだった。


おわり
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