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屋敷の中で
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部屋はギルアスさんが気遣ってくれたようでスイと一緒だった。
「ひろいおへやだね!」
「あぁ、そうだな。」
二人で使うにしてはかなり広い部屋で勿体ないくらいだ。
コンコンッ
…と、ドアをノックする音がした。
「はーい!」
スイが元気よく返事をすると四人の使用人さんが入って来た。三人が女性で一人は男性だった。
「この度、お二人のお世話を担当することになりました。私はイリヤと申します。ご用がありましたら私か、この三人の誰かにお申し付けください。」
男性の使用人さん……イリヤさんがそう言った。
……これ、どうすればいいんだ……ハッキリ言ってイリヤさん達に手伝ってもらうようなことはない……でも、この人達の仕事だもんな……
「よろしくお願いします。えっと……ひ、響です。」
「スイだよ!よろしくね!ねぇねぇ!このおやしきっておっきいね!ボクいっぱいみてみたい!」
初めて見た『屋敷』に興奮しているスイはぴょんぴょんと跳ねながらおねだりした。……可愛い!!
「ふふふ、そうですね。ではご案内いたします。ヒビキ様はどうされますか?」
「い、いえ……部屋で待ってます。スイ、迷惑かけたらダメだぞ。」
「はーい!」
イリヤさんと一人のメイドさんにスイを任せて俺は部屋に残ることにした。スイと一緒に行かなかったのには理由がある……そう!スイのポシェットを作るためだ!ちなみに、一気には作れないから少しずつ作業を進めていこうと思っている。じゃあ、まずは生地をカットするところからだ。
「あの……ヒビキ様……」
部屋に残っていたメイドさんの一人が遠慮し気味に俺の名前を呼んだ。
「ど、どうかしましたか……?」
「あの…何かを作られるおつもりでしょうか?」
「えっと……は、はい…そうですけど……」
……?なんなんだ?
「では、それは我々にお任せいただけないでしょうか?」
「…?どうしてですか?」
何が言いたいのかよく分からないな……
「貴方様のような高貴なお方に針仕事をさせるなどありえません!我々に任せるのが心もとないと思われるのでしたらせめて専門家にお任せください!」
いや……だから高貴って……俺のどこがだよ!
「えっと…その……皆さんには俺のどこが高貴な身分に見えますか……?」
ぶっちゃけて聞いたほうが早いよな。
「全てです!言葉遣いに所作や立ち振舞いはまさしく貴族のそれです。」
「その通りでございます!ヒビキ様がご身分を隠されているのであれば我々もそのように振る舞いますが、そうでないのなら是非我々を貴方様の専属侍女として置いてくださいませ。」
さっきまで話していなかったメイドさんも食い気味に会話に入ってきた。
「えっと……ギルアスさんから俺について聞いてたりしますか……?」
「いえ…特には……」
「そうですか……あの、実は…俺、ギルアスさんに会う前の記憶がなくて……身分とかよく分からないんです。なのでもっと気軽に接してくれて大丈夫ですよ。」
ここは記憶喪失の設定で乗り切ろう!
「そう…だったのですね……申し訳ありません、出過ぎたマネでした……」
「いえ…あまり気にしないでください。俺も気にしてませんから。」
俺がそう言っても、どこか二人はシュン…としてる。
「…あ……じゃあ、お二人に手伝って欲しいことがあるんです。」
「「!!はい!なんなりと!」」
「あの、実はスイにポシェットをプレゼントしたくて生地を買ったのはいいんですけど……手芸に関しては基礎がある程度出来るだけで難しいことが出来ないので教えてもらってもいいですか?他にもお二人が気付いたことも聞きながら作ってみたいんです。」
これは俺も悩んでいたことだったからちょうどいい。
「そのようなことでいいのですか!?」
「誠心誠意お手伝いさせていただきます!」
「はい、よろしくお願いします。ちなみに、スイには秘密なのでまだ話さないでくださいね?」
「「はい!」」
……と、いうことで俺に手芸の先生が出来たのだった……
「ただいま~!」
ひとしきり屋敷を見終わってスイが部屋に帰って来た。もちろん、生地や手芸用品は隠してある。
「おかえり、スイ。どうだった?楽しかったか?」
「うん!なんかね!おはながいっぱいさいてたよ!あとあと!きしさんもいっぱいいた!ほかにもいっぱいみてきたよ!」
お花がいっぱいっていうのは庭園だったり温室のことだろうな。きしさん…っていうのは騎士さんってことだよな。訓練所あたりか?
「そうか、よかったな。……あの…スイが迷惑かけませんでしたか…?」
イリヤさんに問いかけるとイリヤさんはニッコリと微笑んだ。
「そんな…迷惑などとんでもない……スイ様は聞き分けがよく、助かりました。」
「ならよかったです。」
そう言って俺がスイの頭を撫でていると……
コンコンッ
「どうなさいましたか?」
スイと一緒に屋敷を回っていたメイドさんがドアを開けて対応してくれた。部屋の外にいたメイドさんと少し話した後、俺の前に来た。
「ヒビキ様、スイ様。そろそろ夕食のお時間です。食事には御当主様も参加なさるようですので準備を始めましょう。」
「……分かりました。」
だよなぁ……どこかのタイミングで会わないといけないのは分かってたけどいきなり今日来て今日会うとは思わなかった……
「ひろいおへやだね!」
「あぁ、そうだな。」
二人で使うにしてはかなり広い部屋で勿体ないくらいだ。
コンコンッ
…と、ドアをノックする音がした。
「はーい!」
スイが元気よく返事をすると四人の使用人さんが入って来た。三人が女性で一人は男性だった。
「この度、お二人のお世話を担当することになりました。私はイリヤと申します。ご用がありましたら私か、この三人の誰かにお申し付けください。」
男性の使用人さん……イリヤさんがそう言った。
……これ、どうすればいいんだ……ハッキリ言ってイリヤさん達に手伝ってもらうようなことはない……でも、この人達の仕事だもんな……
「よろしくお願いします。えっと……ひ、響です。」
「スイだよ!よろしくね!ねぇねぇ!このおやしきっておっきいね!ボクいっぱいみてみたい!」
初めて見た『屋敷』に興奮しているスイはぴょんぴょんと跳ねながらおねだりした。……可愛い!!
「ふふふ、そうですね。ではご案内いたします。ヒビキ様はどうされますか?」
「い、いえ……部屋で待ってます。スイ、迷惑かけたらダメだぞ。」
「はーい!」
イリヤさんと一人のメイドさんにスイを任せて俺は部屋に残ることにした。スイと一緒に行かなかったのには理由がある……そう!スイのポシェットを作るためだ!ちなみに、一気には作れないから少しずつ作業を進めていこうと思っている。じゃあ、まずは生地をカットするところからだ。
「あの……ヒビキ様……」
部屋に残っていたメイドさんの一人が遠慮し気味に俺の名前を呼んだ。
「ど、どうかしましたか……?」
「あの…何かを作られるおつもりでしょうか?」
「えっと……は、はい…そうですけど……」
……?なんなんだ?
「では、それは我々にお任せいただけないでしょうか?」
「…?どうしてですか?」
何が言いたいのかよく分からないな……
「貴方様のような高貴なお方に針仕事をさせるなどありえません!我々に任せるのが心もとないと思われるのでしたらせめて専門家にお任せください!」
いや……だから高貴って……俺のどこがだよ!
「えっと…その……皆さんには俺のどこが高貴な身分に見えますか……?」
ぶっちゃけて聞いたほうが早いよな。
「全てです!言葉遣いに所作や立ち振舞いはまさしく貴族のそれです。」
「その通りでございます!ヒビキ様がご身分を隠されているのであれば我々もそのように振る舞いますが、そうでないのなら是非我々を貴方様の専属侍女として置いてくださいませ。」
さっきまで話していなかったメイドさんも食い気味に会話に入ってきた。
「えっと……ギルアスさんから俺について聞いてたりしますか……?」
「いえ…特には……」
「そうですか……あの、実は…俺、ギルアスさんに会う前の記憶がなくて……身分とかよく分からないんです。なのでもっと気軽に接してくれて大丈夫ですよ。」
ここは記憶喪失の設定で乗り切ろう!
「そう…だったのですね……申し訳ありません、出過ぎたマネでした……」
「いえ…あまり気にしないでください。俺も気にしてませんから。」
俺がそう言っても、どこか二人はシュン…としてる。
「…あ……じゃあ、お二人に手伝って欲しいことがあるんです。」
「「!!はい!なんなりと!」」
「あの、実はスイにポシェットをプレゼントしたくて生地を買ったのはいいんですけど……手芸に関しては基礎がある程度出来るだけで難しいことが出来ないので教えてもらってもいいですか?他にもお二人が気付いたことも聞きながら作ってみたいんです。」
これは俺も悩んでいたことだったからちょうどいい。
「そのようなことでいいのですか!?」
「誠心誠意お手伝いさせていただきます!」
「はい、よろしくお願いします。ちなみに、スイには秘密なのでまだ話さないでくださいね?」
「「はい!」」
……と、いうことで俺に手芸の先生が出来たのだった……
「ただいま~!」
ひとしきり屋敷を見終わってスイが部屋に帰って来た。もちろん、生地や手芸用品は隠してある。
「おかえり、スイ。どうだった?楽しかったか?」
「うん!なんかね!おはながいっぱいさいてたよ!あとあと!きしさんもいっぱいいた!ほかにもいっぱいみてきたよ!」
お花がいっぱいっていうのは庭園だったり温室のことだろうな。きしさん…っていうのは騎士さんってことだよな。訓練所あたりか?
「そうか、よかったな。……あの…スイが迷惑かけませんでしたか…?」
イリヤさんに問いかけるとイリヤさんはニッコリと微笑んだ。
「そんな…迷惑などとんでもない……スイ様は聞き分けがよく、助かりました。」
「ならよかったです。」
そう言って俺がスイの頭を撫でていると……
コンコンッ
「どうなさいましたか?」
スイと一緒に屋敷を回っていたメイドさんがドアを開けて対応してくれた。部屋の外にいたメイドさんと少し話した後、俺の前に来た。
「ヒビキ様、スイ様。そろそろ夕食のお時間です。食事には御当主様も参加なさるようですので準備を始めましょう。」
「……分かりました。」
だよなぁ……どこかのタイミングで会わないといけないのは分かってたけどいきなり今日来て今日会うとは思わなかった……
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