【完結】藤華の君 あかねの香

水樹風

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25 番の契 *

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 ──熱い………熱い……熱いよ……。


 おなかの奥がグツグツと疼く。
 口の中で混ざりあった僕たちの甘さを飲み込むと、それが通る喉の奥まで熱を感じた。


「あ、あぁぁ!孝龍様ぁ!」


 秀を……番を求めて、双丘の隙間から溢れる蜜は、僕の脚を伝い落ち、ぐっしょりと濡らしている。


 ──欲しい!全部!僕のナカに……!


 頭がボーッとして、ただそれしか考えられなくて。


「重臣たちの目を盗んで会いに来たが……。まさか、しずに求められるとはな……。」


 孝龍様が妖艶に笑い、僕を抱き上げ歩き出した。
 僕を連れて入ったのは、藤棚の一角。
 白い光が棚の上から御簾を下ろしたように流れ落ち、秘密の小部屋が出来ていた。中に入れば柔らかな敷布が広げられている。


 ──これ、雀玲が……?


 何とか思考が繋がったのはそこまでだった。
 孝龍様が荒々しく僕の帯を解き、素肌の感触を求め出す。


「朱寧、そなたを貪る!許せ!」


 そう言った孝龍様に頭を横に倒された。
 その刹那。項に懐かしくも悩ましい痛みが襲う。


「────ッ!!」


 声にならない悦びに、僕は必死に敷布を掴んだ。
 立ち上がった孝龍様が、僕を見下ろしながら装束を脱ぎ捨てて行く。
 一糸纏わぬ姿になった僕たちは、肌と肌を重ね合った。


「こんな庭の片隅で、実に背徳的だな……。」
「あ、……ん、ふぁっ……あぁ!」


 孝龍様の殿方らしい節くれ立った大きな手が、汗ばむ僕の肌に吸い付くように体を撫で上げる。
 口づけは首筋から胸へと下がり、赤くなるほどに吸い付き舌で転がされ、僕は敷布を掴んだままひたすらに喘いだ。
 苦しいほどの快楽……。番の甘く焦がす香りは、媚薬となって僕を狂わせる。


「奥ばかりでなく、たまにはこちらも可愛がらねば、朱寧も辛いだろう?」
「えっ?あ、待って……今は……あぁっ!」


 お臍の周りをぐちゃぐちゃに濡らす程に昂っていた屹立を孝龍様に咥えられ、淫らな水音に僕の体はあっという間に波打ってしまう。
 乱れる息に震える僕の目の前で、コクリと喉を鳴らした孝龍様。
 その目がいつになく嗜虐的に細められ、逃れられない賤の性に、後孔の蜜はとろみを帯びる。
 達した快感が抜けない体。大きく脚を割り開かれて、雄の長い指が隘路を広げ始めた。


「あぁぁ、ダメェ!ん、ああんっ!」
「そなたの体は、そうは言っていないぞ。こんなにも、食い締めて……。」
「ひゃぁぁ!……いじわる、しないでぇ……!」


 自然に溢れてしまう涙をちろりと舐められ、僕をあやすように柔く甘く唇を塞がれる。
 だけど、孝龍様の指はまた増やされ、グッと曲げたそこで堪らない凝りをいじめ続けていた。


「朱寧、もっと乱れてみせろ。」


 耳に直接与えられた甘美な言葉どく……。
 そして、また大きく波打つ僕の体。
 満足げに指を抜き去った孝龍様は僕を抱き起こし、敷布の上で胡座をかいた。


「ほら、自分で挿れてごらん。」


 僕が欲しくて堪らないのを知っていて、またいじわるに耳朶を食む。
 僕は腰を持ち上げ、そそり立つ獰猛な楔をぬかるみに当てがってみた。
 ゆっくりと腰を下ろすと、息が止まる程に苦しく隘路が塞がれていく……。


「んぅんっ……あっ、あん……あぁっ!」
「朱寧は本当に……私を誘う表情かおをするな!」
「えっ!?あぁっ!そんな深く………!いやぁっ!」


 孝龍様が僕の腰を掴んで一気に楔を突き刺した。
 あまりの衝撃に体がガクガクと震え、番の首へと必死に手を伸ばす。
 そこから、孝龍様は秀の欲望を剥き出しにして、何度も僕の胎内なかを突き上げていった。
 双丘がその茂みに押し付けられ、奥の入口がぐぷりとこじ開けられる。
 深く深く一つになって、舌を絡めながら体を揺らされて……。
 喘ぎさえも奪われ、ただ熱い息遣いだけが耳に響いた。
 やがて後孔の入口が秀の痼で塞がれ、逃げ場のない絶頂が近いことを知らされる。


 ──愛してる、貴方だけ……。孝龍様っ!


 それは、何より愛しい熱だった。
 孝龍様のお顔が快楽に歪む。
 この方の……僕の秀の欲望は、全て僕のものだから……。



 いつもならとめどなく求め合ってしまうのに、この番のちぎりは幸せ過ぎて……。

 番の欲望が果てたのを感じると、僕はそのままプツリと意識を手放していたのだった。










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