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10 甘い夜
しおりを挟むエルシャは恍惚の波に漂うように、しどけなく身体をシーツに埋めていた。
花芽から芽吹き、蔓を伸ばして身体中を這うように広がっていく快感。
レイナートが絶え間なく与え続けたそれは、彼女の身体を逃げ場なく縛り上げていく。
そして次の瞬間──。
エルシャは快感だけが支配する世界へと押し出されたのだった。
「逃げずにイケて偉いな。上手だよ、エルシャ……」
一気に弛緩する艶めかしい白い身体。
エルシャはまるで呼吸の仕方を忘れてしまったようにハクハクと口を動かし、自分を褒め愛しそうに髪を撫でてくれる彼へと縋るような視線を送る。
「大丈夫だ。このまま俺に委ねて、素直に感じていればいい……」
「……ん、あ……レ、イさ……や、んぅっ……」
レイナートはエルシャの隣で横になり、恥じらい閉じようとする脚に自身の足を絡めて止め、すっかりぬかるんだあわいへと再び手を伸ばした。
そして節の張り出した中指を、ゆっくりと蜜の溢れだす場所へと沈めていく。
十分にとろけてはいても、これまで何一つとして受け入れたことなどない場所だ。恐怖に慄き固く閉じようとするそこを、彼はゆるゆるとほぐしだす。
「エルシャ? 痛いか?」
耳元でそう優しく問われても、彼女には「いいえ」という一言を絞り出すことすらできなかった。代わりに首を小さく横に振り、その手は必死に枕を掴む。
背中を反らせるように自然と持ち上がる胸。レイナートはすかさずその隙間に腕を滑り込ませると、まわしたその手で白い果実の上、誘うように揺れる薄桃の愛らしい種を爪の先で弾いた。
「あんっ、あ、やぁ……」
堪らずにこぼれた甘い嬌声。
「エルシャはここが好きみたいだ。いいね。俺も好きだよ」
嬉しそうにもう片方の種を舌先で捏ねられ、いつの間にかぬかるみに目いっぱい入った指が内側をくるりとかき回すようにして出し入れされる。
三か所から同時に巡る甘美な痺れに、乙女の隘路の入り口は次第に綻び始めていた。レイナートはそれを感じ取ると、迷いなく薬指も添えてぬかるみをまさぐり、花芽の裏側を指先で押し上げいじめだす。
何もかもが初めてで、このどうしようもない悦楽から逃れる術を知らない彼女は、微かに身をよじるくらいのことしかできず、ひたすらにとろけきった声をあげ続けた。
「あぁん、や、ダメぇ……。レイさまっ、抜いて……!」
「ん? 可愛いエルシャのお願いでも、それは聞けないよ? 俺を受け入れられるようになるまではね? ほら、頑張って」
レイナートを受け入れるというのが何を意味するのか。そして受け入れた先に何が待っているのか。
今の悦びに支配された思考でなければ、エルシャは容易に理解することができただろう。
しかし身体の深淵を行き来する恍惚の波だけではなく、彼の指が大きく響かせるとろりと淫美な水音と自身の嬌声までもが、彼女を頭の芯まで甘く煮溶かしていたのだ。
「は、あぁぁん!……頑張るの……っ、頑張るから……お願い……キス、して! あぁっ!」
「っ、エルシャは本当に……素直すぎるだろう!」
クチュリと淫猥な音を立て、一度指が引き抜かれる。そしてレイナートは腕を背中から抜き去ると、エルシャを組み敷くようにのしかかった。
荒々しく塞がれた唇。レイナートだけでなく、エルシャもまた夢中で彼の舌を追いかけキスを貪っていく。
「ん、あぁ……愛してる、エルシャ……ん……」
「わた……も……ん、んぅ……」
心は満たされ尽くした。
あとはもう、一つになるだけだと思った。
エルシャが離れていく夫の身体をさびしそうに見上げれば、彼は悠然とほほ笑み、その逞しい身体の全てを晒してくれたのだ。
生々しく欲望を見せつける剛直に僅かにたじろぎながらも、エルシャはぬかるみの奥深くが疼くのを感じ息を呑む。
レイナートはそんなエルシャの左足を持ち上げると、足首に巻きつく愛と執着の証に口づけ、まだ色濃く残る傷痕に舌を這わせた。
すると、ピクリと震えつま先を丸める彼女。その可愛い反応に目を細め、彼は脚の内側をスーッと舐め上げてから、柔い内腿に赤い痕を幾つも刻み付ける。
そうして与える刺激の一つ一つに素直に震える妻を堪能したレイナートは身体を起こすと、彼女の膝に手をおいて深く曲げさせ、ゆっくりと大きく割り開いた。
あらわになる蜜に濡れた秘めやかな谷間。エルシャの脚の間に身体を割り入れて膝をついた彼が当てがったその先端は、とろりと蜜を纏いながら入り口を探していく。
そして訪れたその瞬間──。
もう二人に、言葉は必要なかった。ただ見つめ合い、許し合って、一つになっていく……。
唇を噛みしめたエルシャの、鼻を抜けてもれ出る呻き声。
レイナートもまた苦しげに顔を歪め、それでも躊躇いなく腰を押し進めていった。
焼けつく痛みと苦しさ。自分でも知らなかった身体の内側を押し広げる、硬く熱い欲望。その全てが愛しくて、こぼれ落ちた一筋の涙がエルシャの耳を濡らす。
『レイ、さま……』
音もなく小さな唇が紡いだ、最愛の名前。
レイナートはこの湧き上がり続ける愛しい想いが苦しくて、泣きそうな表情で笑っていた。
そして時間をかけ、深く深く彼を奥まで受け入れたエルシャもまた、涙と共にほほ笑み返す。
両手をそれぞれに重ねて指を絡め、お互いの温もりを確かめ合うように肌を重ねる二人。
溶け合う熱が次第に一つになった場所の痛みをも溶かしだし、切ない疼きにエルシャの内側がキュッと彼を締めつけた。
(そろそろ、いいな……)
おもむろに始まった抽送は、じっくりとその剛直で絡みつく内壁から身体の隅々まで、エルシャに悦びの種を植え付けていく。
「ん、んぅ……ふぅ、ん……」
「まだ、痛む?」
「す、こし……だけっ、んんっ……」
指は絡めたまま、また少し身体を起こしたレイナートは、それを聞くと最奥まで楔を穿ち、更に腰を押し込むようにして奥の快感を教えていった。
「ここ、どう? 気持ちいい?」
「あっ、はぁ……っ、わからな……」
「そう? でも奥をつくと俺を締めつけてくるよ? ほら……!」
「あ、あぁ、ダメ……! レイさ……や、待ってぇ……」
「あぁ、可愛い……本当に、どうしようもなく、可愛い……! エルシャっ、もっと啼いていいよ?」
「ひゃっ、あ、んん!」
次第に大きく激しくなっていく抽送。
水音を立てて腰を打ちつければ、白に赤みが差した双丘が胸の上でふるりと揺れ動く。
やがて絡めた指をほどき、折れそうに細い腰を掴んで自分へと引き寄せたレイナートは、その双眸に激しい劣情を映して、滾る本能のままにエルシャを貪りだした。
(啼かせたい……。もっと、もっとだ……)
エルシャの潤んだ瞳も、もう取り繕うこともできず快楽に溺れていく淫らな姿も、左の足首に絡みつく過去も未来も全て……。
「愛してる! 俺の、エルシャ!」
「あっ、やぁ……──っ!」
彼女の身体で、植え付けられた全ての種が一気に弾ける。
そして次の瞬間──。
彼もまた満たされながら、愛情と欲望の全てを最奥へと注ぎ込んでいったのだった。
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