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第三話「保存」
「保存」(10)
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ほぼ同時刻、飛行機の屋根では。
四方八方から襲いかかる分裂剣に身を斬られながら、ミコは前へ走った。
「刀剣衛星! 刀を落としなさい! ウィングの! 真上に!」
ミコの叫びの意味を理解しかね、ウィングは首をかしげた。
「やっぱり頭がおかしいんですかぁ!?」
ウィング、いや飛行機そのものを標的にして、ミコは衛星軌道上から武器を投下したのだ。このままでは投下された長刀〝闇の彷徨者〟は、旅客機を貫いて撃墜する。
ミコのあらゆる攻撃を受け流す翼を所定の形に展開しながら、ウィングは吠えた。
「わかったぁ! あたしに刀を受け止めさせるつもりですねぇ!? ざぁんねん! あたしは刀をかわしまぁす! みんななかよくぅ、空のもくずになってくださぁい!」
0.5秒でウィングの頭上に刀が現れると同時に、ミコは跳躍した。
空中で抜き身の刀を掴み取ると同時に、刀本体の制動噴射と、ミコ自身の制動噴射は同時に起動している。真上からウィングの視界を焼いたのは、はでに吹き出した呪力と電力の炎だ。
逆噴射を切ると同時に、重力の法則に従い、ミコは刀ごともの凄い勢いで落下した。
「そんなぁ。投下物に逆にブレーキをかけるなんてぇ……なんて中途半端な動きぃ?」
気づいたときには、ウィングの体は頭頂から下腹部までを刀で串刺しにされていた。
ウィングそのものを緩衝材にし、ミコは刀を手放して後方へ転がっている。武器の投下に何段階ものクッションを敷いたおかげで、飛行機には傷ひとつない。
片膝立ちの姿勢のまま、ミコはつぶやいた。
「全身全霊の不意打ちです。この機体の全能力と、刀剣衛星の特性すべてをミックスしたいわゆる〝0.5〟です」
故障の稲妻を全身に走らせ、ウィングは答えた。
「データにありませぇん。愛しい記憶への道はぁ、いやぁ、きっついですわぁ」
じぶんの頭頂に刺さった刀の柄へ、ウィングは手をやった。そのまま白刃を強引に引き抜いた時点で、ウィングは豪快な爆発を起こして粉々になっている。
爆発はもうひとつあった。
ミコの戦いの行く末を見守っていた宗谷の戦闘機が、ウィングの投げつけた刀に動力部を貫かれて爆裂四散したのだ。これで、呪力の結界は完全になくなったことになる。
同時に、通信が入ったのはミコの腕時計だ。
それはまるで、首でもしめられているかのようなヒデトの声だった。
〈脱出、成功だ〉
直後に続く風鳴り混じりの雑音から、ミコはそれを察した。
「ヒデト!」
飛行機の後方翼へ向かって全力で疾走すると、ミコは飛んだ。
四方八方から襲いかかる分裂剣に身を斬られながら、ミコは前へ走った。
「刀剣衛星! 刀を落としなさい! ウィングの! 真上に!」
ミコの叫びの意味を理解しかね、ウィングは首をかしげた。
「やっぱり頭がおかしいんですかぁ!?」
ウィング、いや飛行機そのものを標的にして、ミコは衛星軌道上から武器を投下したのだ。このままでは投下された長刀〝闇の彷徨者〟は、旅客機を貫いて撃墜する。
ミコのあらゆる攻撃を受け流す翼を所定の形に展開しながら、ウィングは吠えた。
「わかったぁ! あたしに刀を受け止めさせるつもりですねぇ!? ざぁんねん! あたしは刀をかわしまぁす! みんななかよくぅ、空のもくずになってくださぁい!」
0.5秒でウィングの頭上に刀が現れると同時に、ミコは跳躍した。
空中で抜き身の刀を掴み取ると同時に、刀本体の制動噴射と、ミコ自身の制動噴射は同時に起動している。真上からウィングの視界を焼いたのは、はでに吹き出した呪力と電力の炎だ。
逆噴射を切ると同時に、重力の法則に従い、ミコは刀ごともの凄い勢いで落下した。
「そんなぁ。投下物に逆にブレーキをかけるなんてぇ……なんて中途半端な動きぃ?」
気づいたときには、ウィングの体は頭頂から下腹部までを刀で串刺しにされていた。
ウィングそのものを緩衝材にし、ミコは刀を手放して後方へ転がっている。武器の投下に何段階ものクッションを敷いたおかげで、飛行機には傷ひとつない。
片膝立ちの姿勢のまま、ミコはつぶやいた。
「全身全霊の不意打ちです。この機体の全能力と、刀剣衛星の特性すべてをミックスしたいわゆる〝0.5〟です」
故障の稲妻を全身に走らせ、ウィングは答えた。
「データにありませぇん。愛しい記憶への道はぁ、いやぁ、きっついですわぁ」
じぶんの頭頂に刺さった刀の柄へ、ウィングは手をやった。そのまま白刃を強引に引き抜いた時点で、ウィングは豪快な爆発を起こして粉々になっている。
爆発はもうひとつあった。
ミコの戦いの行く末を見守っていた宗谷の戦闘機が、ウィングの投げつけた刀に動力部を貫かれて爆裂四散したのだ。これで、呪力の結界は完全になくなったことになる。
同時に、通信が入ったのはミコの腕時計だ。
それはまるで、首でもしめられているかのようなヒデトの声だった。
〈脱出、成功だ〉
直後に続く風鳴り混じりの雑音から、ミコはそれを察した。
「ヒデト!」
飛行機の後方翼へ向かって全力で疾走すると、ミコは飛んだ。
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