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争奪戦勃発!?

54.俺が飛び込みたいんだが

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ふぅ、眠いな。昨夜はユアナの相手をしていて、あまり眠れていない。いやまぁ、相手と言っても例の、アロマの実験だったんだが。
効果としては十分だ、ゆっくりと時間を掛けて身体がリラックスしていく。これはきっと上流階級に流行るぞ。メイニにも協力してもらって是非流行らせたい。間違いなく新しい資金源になる。
それとは別に、昨夜使ったアロマは別の効果も含有していたわけだ。実験は成功と言えるから、後はこれを使ってディディの件を解決出来たらと思っている。
「ユアナってさ。」
「何かしら?」
カウンターで薬の在庫を確認しているユアナに話し掛ける。昨夜の事は無かったかのように、何時ものユアナだ。
「思った以上に甘えんぼ・・・。」
「リアちゃん、時と場所を考えられないのかしら?」
首に軽く刺さった短剣は、それ以上刺さらないのは分かっている。だが、ユアナの目は間違いなく相手の命を獲る殺し屋のようだった。
顔がマジで笑ってねぇ、命の危険を感じるというのは、こういう状況なんだな。
「つまり、うっ・・・」
「リアちゃんは言葉の揚げ足を取って、余計な事を続けて言うわよね。私も殺せはしないけど、五体満足に動けなくするくらいは出来るって知ってる?」
やべぇって、関節が違う方向に極められて、それ以上は無理だって、そっちにはい行かねぇからっ。
「はい、ごめんなさい。」
「うん。」
ユアナは俺を解放すると、いつもの笑みで頷いた。最近、あまり短剣が突き付けられないから油断していたぜ。

「それより、話した件はちゃんと出来そうか?」
「あまり自信は無いけど、それで止められるなら頑張ってみる。」
今回の作戦はユアナに掛かっている。
当然、薬の売り込みという話しで乗り込むのだが、助手という位置づけで行くユアナには別の役割を用意した。
「どちらかと言えば、苦手なのよ。」
「それは分かってるよ。でもユアナなら問題ないと思ってお願いしたんだ。」
「えぇ。」
あまり気乗りしないのは分かってはいるが、俺じゃどう足掻いても無理だからな。

後は準備だな。ディディが来てから何時でも決行出来るようにしておかなければ。そう思い部屋に移動しようとすると、相も変わらず図面と格闘するマーレがダイニングにいる。
「なぁマーレ。」
「何?」
「アロマを作っているんだが、忙しいところ悪いが協力して欲しいんだ。もちろん今すぐにではないが。」
結局アニタを含め試そうと思っているのに、未だに出来ていない。先行して昨日ユアナには使ったが、目的が別なのでこれはこれで確認してもらいたいわけだ。
「アロマ?作れるの?」
「あぁ、ちょっとまってろ。」
エリサに使った余りを確か、この辺に仕舞っていたよな。と思って台所にある棚から、液体の瓶を取り出す。
「試験的に作ったものだが。」
と言ってマーレに渡す。マーレは瓶の蓋を開けて香りを嗅ぐと、驚いた顔をした。
「凄い、作れるのね。ただもうちょっと香りは柔らかい方がいいと思うよ。」
「それな、それが聞きたかった。」
「どういう事?」
「おっさんは生前、ほとんど使った事が無いからさ。マーレなら俺よりも良い方向にもっていけるんじゃないかと思ったんだ。」
「なるほど。」
「でだ、一応数種類作るつもりなんだが、率直な感想を聞かせて欲しいと思ったわけだ。」
「そういう事ね。気分転換にもなるし、全然いいわよ。」
なるほど、気分転換ね。工場と違って、大分悩んでいるみたいだから、丁度良かったのかもな。
「そりゃ助かる。新店舗では商品として並べようと思っているからな。」
「それいいね。」
「ただ、手間が掛かるから値段は高くなるんだよな。でも上流階級の嗜好品として売れれば、それだけでも有りだろ。」
「そうね。」
俺の案に頷きはしたものの、マーレは何か腑に落ちないのか腕を組んで考え始めた。

「だったら、安価な1回分を体感できる部屋でも作ってみる?」
「体感できる部屋?」
いまいちピンと来ないな。
「つまり、1回いくらで利用出来るリラクゼーションルームみたいなもの。それだったら、ちょっと疲れた人とか、気持ちを落ち着けたい人がその時だけ利用できるでしょ。瓶を丸々買うお金は無いけど、体感はしたいって人向けね。」
なるほど。
逆にそっちの方が少ない量で金も取れるか。
「有りだな。」
「でしょ。」
「それ、やってみよう。失敗したらその部屋は別に使えばいいしな。」
従業員の休憩所にしてもいいだろうし、客の喫煙部屋にしてもいいだろう。在って困る事はない。
「決まりね。それじゃ店舗から直結の部屋を追加してみるわ。」
「あぁ、頼む。それと、部屋をもう少し増やして欲しいんだ。今のところ使い道は考えて無いんだが。」
「大丈夫、ちゃんと予備の部屋は確保しているわ。」
「さすがだな。」
「ううん、ありがと、私もいい気分転換になった。」
「なら良かった。」
再び図面と向き合うマーレを残し、俺は部屋に移動した。こっちの香りはユアナに試してもらっているから、そんなに問題ないだろう。というか、マーレに嗅がせるわけにもいかない。
後は最終調整だけだな。



「ご主人、高級肉はいつ食うんだ?」
最終調整も終わり、時間が出来たのでカフェに休憩をしに来た。一緒に連れて来たエリサが覚えていなくてもいい事を、まだかとばかりに口にする。
「まぁ待て。ディディの依頼が片付いて、時間に余裕が出来てからだ。」
「それはいつだ?」
「おそらく、数日以内には終わるだろう。」
問題は、ディディが何時来るかにもよるが。多分、来るとしたら城を抜け出せる夜だろうな。
「楽しみだなぁ。」
「そん時は、店を休みにしてみんなで行こうぜ。」
「いいなそれ!」
余程楽しみなのか、エリサが嬉しそうに声を大にした。よくよく考えれば、そんな事をした事は無かったな。仕事では何かに理由を付けて、飲みに行ったりしていたものだが。
「何だか楽しそうですね。」
「まぁな。」
珈琲を運んで来たレアネに、相槌を打っておく。
「ところでリアさん。」
「どうした?」
「私、まだお金を返せてません。」
あぁ、あったなそんな事。
「別に返さなくても良いって。」
「いえ、服も食費も住む場所も安定して、返せるお金も用意出来ています。私の区切りとして、ちゃんと返したいんです。」
真面目な顔でそんな事を言われるとな、適当にあしらうわけにもいかないよな。真摯な態度にはちゃんと礼を以て接しなければ。昔、爺さんが言っていたな。
・・・
いや、俺が生まれる前に死んでたっけ?まぁいいか。
「分かったよ、いつでもいいぞ。」
「はい。今度お店に持って行きますね。」
しかし、人との会話にならない奴が、普通に会話するだけでここまで変わるものなのか。良い傾向ではあるのだが、あの日何があったのかは気になるな。
今までまったく人の話しを聞かなかったレアネを、ここまで変化させるなんて。

「あ、そうだ。レアネは店を休む事は可能か?」
「はい?店長次第ですが。どうかしました?」
今のレアネなら巻き込んでもいいだろ。
「俺が持っている工場の方で、今度肉を焼きながら宴会をしようと思っていてな、良かったら来ないかと思って。その日はうちも、店を休みにしてみんなで行く予定だ。」
「え・・・」
「あたしはいいぞ、いっぱいの方が楽しいもんな。」
犬に同意は求めてないが、勝手に賛同したのでもう確認するまでもない。問題は、レアネが驚いている事だ。
「あの、私が行っても、いいんですか?」
「駄目なら誘ってねぇよ。自分で言い出したんだろ?話しをしたいって。良い機会じゃねぇか。」
「はい、喜んで。凄く嬉しいです、リアさんの方から誘われるなんて、思ってもみなかったので。」
笑みを浮かべながら、同時に涙も頬を伝った。
面倒くせぇな。
しかし、神発言がなければ普通なんだけどな。なかなか弾力のある胸と尻も良いし、それだけが残念だ。
「ってことでグラード、そのうちレアネを1日借りるからな。」
カウンターの奥で洗い物をしているグラードに、声を大きめにして言う。
「え、何だって?洗い物していたから聞こえなかったよ。」
このやろ。

「嘘付け!いつも聞き耳立ててんのは知ってんだからな!」
真面目な話しをしている時は、弁えているのか聞こえないようにしているが、雑談やレアネと会話している時はよく聞いていやがる。別に聞かれて困る事は話してねぇから問題無いが。
「うーん、リアちゃんのお願いじゃ断れないな。」
「断れないな、じゃねぇ。たまには息抜きさせてやれ。」
「誤解が無いように言うけど、休日はちゃんと取ってもらてるからね。」
当たり前だ、無休で働かせてたら労基署に訴えるぞ。
・・・
無ぇわっ!そんなもん。
「今回のはそれとは別に特別休暇な。」
「分かってるって。」
本当かよ。まぁでも、グラードの許可も下りたし、何時でも行けるな。いや待て、念のため釘を刺そう。
「あ、休日と被ってたら別の日に振り替えろよ。」
「私はそこまで悪どくないって。」
ならいいが。
毎日来ているわけではないが、レアネの居ない日をほとんど見かけないからな。
「リアさーん。」
げっ・・・
涙ならまだいいが、鼻水まで垂れ始めてやがる。
「好きです!」
「だぁっ、抱き着くな!まず鼻水を拭け!」
「ご主人は鼻水付きのボロ切れを手に入れた。」
「黙れクソ犬!」
面白い事を言ったつもりかアホが。いや、あれはきっと報復という名の嫌がらせだろう。



-二日後-

レアネをバーベキューに誘った日の夜、ディディが店を訪れた。そこで詳細を伝えて、今回の作戦で問題無い事を確認した。
アホ貴族二人に杭を打ち込む事で、今後の行動にも制限を掛ける内容だ。もちろん、次に同様の事をした場合は爵位剥奪もチラつかせる。今回、ディディが発端とは言え、領同士の争いにまで発展している以上、それくらいの覚悟は持ってもらわねばならない。
加えて、アホ女のしでかした事も有耶無耶にしてしまおうという魂胆もある。自分たちの落ち度を突き付けられれば、それを棚に上げて抗議するなんて事はしないだろう。
というのは、一応両貴族とも今回の件以外では良識のある貴族である、という前提のもとなのだが。

翌日は、二人の貴族にディディから予定を伝えてもらっていたため動けず、今日に至る。とりあえずは、アイエル地区から近いカノンエス侯爵家、ニアリームを訪ねる事にした。
カノンエス侯爵の領はアイエル地区の東に位置し、その北にレブレスト伯爵の領が存在する。

「でけぇ・・・」
「本当に大きいわ。」
鉄門の奥に見える屋敷がかなり遠い。敷地内も当然、馬車で移動可能なように、門から広い石畳が続いている。
「ユアナの家も大きかったがな。」
「上流階級とはわけが違うのよ。」
「リア様とユアナ様ですね。伺っております、直ぐに馬車をご用意しますので、少々お待ちください。」
門の前に着いて呆気に取られていると、門の横にいた男に声を掛けられた。おそらく生前でもこんな扱いをする場所はあったのだろうが、庶民には関係のない世界だったわけだ。
それはこの世界においても同じだが、まさか体験するなんて思ってなかったぜ。はっきり言って、城に行った時より緊張するわ。

馬車で運ばれ、一番大きな建屋の前に着くと、降りるように促される。無駄に大きい観音開きの扉は、使用人らしき人物が既に開け始めてた。
・・・
出来過ぎていて落ち着かねぇ。
「ようこそおいでくださいました。」
開いた扉からは、芝居がかった物言いで優男が現れる。服装も生前に見た事のあるような、貴族然とした服装だ。刺繍や装飾のあしらわれた服装で、首元からはひらひらした部分が下に伸びている。
うぜぇ。
「これは!?なんと見目麗しい女性方、こんな美しい女性に訪ねて頂けるとは、私も至福の極だ。」
死ね。
「おっと、美しさに我を忘れ、立ち尽くさせてしまうとは失礼。こちらへどうぞ。」
道を開け中へと合図される。
扉が閉まると、ニアリームは先導して通路を進んで行く。
(飛び蹴り入れていいか?)
(やめなさい、台無しになるでしょ。)
(だったらお前も短剣から手を離せよ。)
(う・・・)
「どうかされましたか?」
「いえ、何でもありません。多少緊張しているだけです。」
「美人を緊張させるなど何たる失態、自分の家だと思って気楽にしていただいていいですよ。」
「はい、ありがとうございます。」
俺は何も言わんぞ、喋られるだけ鬱陶しい。
「さ、こちらの部屋です。」
大きな観音開きの扉の前に着くと、ニアリームは自ら扉を開けて入るように促した。

大きなソファに座らされると、ニアリームが向かい側に座る。用意が良いようで、直ぐに紅茶と焼き菓子がテーブルの上に置かれていく。
「クローディア姫より聞きましたが、薬を売りたいという事でしたね。」
茶番には入らずに本題に入ったところだけは褒めてやろう。
「あぁ。常備薬としても普通の薬よりは精度に関して自身がある。それに、今回新たな嗜好品も紹介したく、姫にお願いしたところだ。」
「ほう。古くより諸侯連中にはお抱えの薬師が居る。それよりも上質だと言うのか?」
それは知らん。ただの口上だからな。
「ギルドでもそれなりの地位には。」
「その歳でか?俄かには信じがたいな。」
ま、そりゃそうだろう。
「私、少し前まで本部勤めだったのですが、リアちゃん程のレベルに達した人を見た事がありません。マスターが行う試験での結果ですから、実力は間違いありません。」
そんな事もあったなぁ。
「なんと、人は見かけによらぬものよ。しかし、貴女はその本部を辞めてしまったのか?」
「えぇ。これほどの薬師、出会った事がないもので、憧れて共に働かせてもらっています。」
おぉ、良く言う。もっと言え。
「リアちゃんもギルドからは離れていますが、つい最近の事ですので、調べればまだ記録には残っているかもしれません。」
「いや、そこまでする必要はない。多少驚いただけで、信用していないわけではないのだ。それより早速だが、紹介したい品とは?」
お、やっと話しが進んだか。
「これだ。薬草から抽出した液体だが、薬と違って香りを楽しみつつ気分を落ち着かせるものだ。」
俺は鞄から取り出した小瓶をテーブルに置き、蓋を取る。ニアリームは瓶に手を付ける事無く、掌で空気を自分の方に流して匂いを嗅いだ。
「おぉ、この様な香りは初めてだ。確かに、落ち着くような香りだな。」
「あぁ。嗅いで終わりではなく、部屋の中に漂わせて、その中で寛ぐものだから、効果が現れるまでには多少の時間を要する。」

ニアリームは幾度か深呼吸して目を開くと、俺の方に視線を向けて来た。
「私にこれを紹介する理由は?」
「この液体を抽出するには手間と時間が必要だ。だが、嗜好品として世には出したいと思っている。例えば食後に葡萄酒を飲みながら寛ぐ時間を、さらに気分よく優雅に、とかな。」
だがニアリームの反応はいまいちだった。おかしいな、さっきの態度を見る限り乗って来そうな気がしたんだが。
「例えば女性との食事の後、この香りを漂わせた部屋で寛ぐのも、普段よりも良い時間を過ごせるかと。」
と、言ってみると目を見開いた。分かった、やっぱこいつ馬鹿だ。
「なるほど!確かにそれは甘美な一時を過ごせそうだな。」
そこまでは言ってねぇよ。
「独りでも、家族とでも、恋人とでも、落ち着いた気分で時を過ごす、その空間を創るための液体だ。」
「悪く無い、試しに1つ買ってみよう。」
お、やったぜ。
「値段はいかほどだ?」
「大金貨で3枚。」
「高いな。」
「先ほども言ったが、抽出に手間と時間がどうしても掛かってしまう。まだ売るほどは出来てないんだ。これは試作段階だが、買ってくれるならこれよりも大きい瓶に入ったものを持って来よう。これは飽くまで嗜好品、必需品ではない。」
嗜んでこその品。
「よし、買おう。」
手間なのは確かだ。が、大金貨3枚で売れるなら儲けもんだ。

「時にリアさん。姫から聞いているのだが、表立って売れない薬もあるとか、ないとか・・・」
良い食いつきだな。おそらくこっからが本題だろうな。丁度いい、まだ時間が必要だからな。
「あぁ、聞いてしまったのか。確かに・・・」
「それは、毒と捉えていいだろうか?」
直球だな。まぁ、それ以外に無いか。
「例えば、食事に混ぜても気付かれない毒など、あったりするのだろうか?」
自分で手を下せない奴は、自分がやった事すら気付かれたくないんだろう。ん?実はこの抗争、放っておけば自然消滅するんじゃねぇか?
「もちろんあるぜ。どんな状況が望みなんだ?」
「あ、いや聞いただけだ。今はその、必要なわけでない。何かの折に、頼むやもしれんという程度だ。」
あっそう。
なら別にいいや。
「リアちゃん、この部屋ちょっと暑くない?」
まったく暑くねぇよ。
そう思って隣を見ると、ユアナがシャツのボタンを1個外し始めた。いや待て、まだ早ぇって。
どうやって止めようかと思っているうちに、露わになって胸の谷間に掌で風を送っている。まだアロマの効果が出てねぇだろ・・・って、まさか!
おかしいな、効果が出にくくなる薬は飲んでもらったんだが、こいつ効きやすい体質か?
「あ、すまん。ちょっと暑がりなんだ。」
「いや、私も暑いと思い始めたところだ。すまん、換気をした方が良さそうだな。」
「あ、大丈夫だ。おそらくこの香りの所為でそう感じるんだ。」
余計な事をすんなと思ってニアリームを見たら、窓何て開けに行く気配はない。むしろユアナの谷間をガン見だよ。
うむ、成功かな。

ユアナも回っているとは言え、一応教えた通りにはやっている。少し身体をもじもじと動かせば、この大陸ではまだ見た事の無いタイトスカートが徐々に上にあがり、白い太腿が露わになっていく。
男の俺が教えたんだ。このアロマも在って、この光景にそそられない男なんてまず居ないだろう。
やべ、俺が飛び込みたいぜ。
と思った瞬間、ニアリームが立ち上がりユアナの前に跪いた。
「ユアナさん!」
「え、な、なに?」
ぼーっとしていたユアナが、突然声を掛けられてびくんとする。
「貴女の様な美しい女性は見た事が無い。最早運命以外の何物でもないと私の心が叫んでいる。貴女程の女性にはもう出会えないと!」
「え、え?」
・・・
作戦じゃなきゃ飛び蹴り入れてんだけどな。
「良かったら私と、婚姻を前提にしたお付き合いをお願いしたい!」
言っている事は真面目なんだが、お前の視線はユアナの胸の谷間と、スカートから出ている太腿を往復しているだけだからな。まったく説得力ねぇよ。
「そんな、私なんかが・・・」
「その恥じらう顔もなんと美しい。」
スカートの中が見えないか必死だけどな。
「貴族だからと言って気兼ねする必要はありません。むしろ爵位があるからこそ不自由はさせませんし、今のお仕事も続けていただいて構いませんので、どうでしょうか?」
「う、うーん。私ねぇ、結構我儘言っちゃうけどいいのかなぁ?」
・・・
いかん、甘えん坊が出始めた。
「もちろんです!」
もちろんじゃねぇ、ちょっと黙れ。

「ニアリームさん、確かクローディア姫と懇意にしていると聞いたのですが?」
これ以上はいかん、そろそろ止めと行くか。
「え、あ・・・」
お、狼狽えた。
「姫とは、晩餐会の時に、一時の迷いというか。」
嘘付け。
「俺にもユアナは大事なんだ。そういう迷いがあってもらっては困るな。」
「違いますぞ!姫に誘われて一晩だけ、魔が差したのだ。一時の気の迷いであり、今ユアナさんに抱いている気持ちとは別なのだ。私は誓ってもいい、この気持ちは本物だと!」
はい、良く出来ました。
俺がそう思ったと同時に、部屋の扉が開け放たれる。その光景に、ニアリームだけが驚いて、入って来た人物を見て石像になった。
「へぇ、あたしは遊びだったって事なのね?」
だが返事は無い。
効果があり過ぎたのか、石像になったニアリームがそれに応える事は出来なかった。
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