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65.せっかくクリアしたのに、鬱念
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-CAZH社 本社ビル13F 開発本部 ソリューション&テクノロジー部-
「協力してくれるのは3人ですか・・・」
水守から聞いた話しに、宇吏津は力なく言った。最初から構築するわけではないので、人数はそこまで多くなくても問題は無いが、出来ればもう少し欲しいところでもある。その思いが言葉と一緒に吐き出される。
「それも上からの圧力で渋々、といった感じよ。私たちに責任が無いとは言わないけれど、この状況でも穏便に済ませようとする考えが気に入らないわ。」
「会社人ですからね。」
腕を組んで不服そうに言う水守に、宇吏津がそう言うと水守に睨まれる。以前、そう言ったのはチーフじゃないかと、宇吏津は理不尽だと思ったが態度には出さずに目を逸らした。
「それで、美馬津はどうだったの?」
可能性が薄いのは分かっていたが、それでも参加してくれるのであれば、戦力としては申し分ないと淡い期待を込めて水守は確認する。だが、宇吏津の反応からその期待は無駄だったというのが分かった。
「断られましたよ。事情は説明したんですが、それどころじゃないらしく。」
「それどころじゃないのは、こっちも同じなんだけどね。」
何処か遠い目をするように水守は言った。その表情は、断られた事に対する憤りなどはまったく無く、懐かしさの様なものを感じた。
「そうですね。そもそもサービスの提供が出来なくなったら終わりですからね。」
「えぇ・・・ところで、美馬津が何をやっているか、宇吏津くんは知っている?」
「いえ。聞いても答えてはくれません。」
「そう。」
結果は見えている質問を一応聞いてみた水守だが、何も変わらなかったため興味が無さそうに相槌だけ打った。
「まぁ、無いものの話しをしてもしょうがないわ。それより、問題はこれよね。」
宇吏津が使用するディスプレイに映った幾つもの情報を見て水守は険しい表情をする。
もともと、この内容について宇吏津に呼ばれたのだが、本題に入る前に現状について水守は意識を合わせて起きたかったのもあり事前に話したのだった。
「はい。カスタマーにも連絡が来ているようですが、何より外部での炎上が激しいですね。」
「炎上と言うより、爆発に近いわね。」
「一気に拡散したのは、この証拠動画が原因かと思われます。」
宇吏津はとある人物の、DEWSプレイ日記に載せられている動画を再生した。
「攻略や雑記などのページですが、サービス開始当初から書かれており、ゲーム内での交流も広いようで、アクセス数もそれなりにありますね。」
宇吏津は動画を再生しながら、記載しているサイトの説明をしていく。
「ここからです。」
そこには、ELINEAが高速移動からボスを猛攻で畳みかける映像が流れていった。
「ゲームの仕様上、この動作はあり得ません。」
「これは、ELINEAがやったというの?」
「システムファイル自体は現状、変更された形跡はありません。この前のメンテナンスで、ELINEAはまだアクセス出来ていないようですし。していないだけかもしれませんが・・・」
最後の方は、苦笑しながら宇吏津は言った。ELINEAが何処までサーバー内の情報にアクセス出来るのか、現状では不明だったからだ。
「ELINEAがやったとしたら、ユーザー情報の方って事ね。」
「それも、データにアクセス出来ないため不明ですね。ELINEA自身が人間との融和に拘りを持っていた気もするので、本人は変更していないんじゃないか・・・というのは、僕の願望だと思いますか?」
自嘲気味言う宇吏津の言葉に、水守は軽く首を左右に振る。
「そう思う気持ちは分かるわ。」
それはプロジェクトに携わってきた水守も、同様の思いはあった。例え、失敗して凍結という判断が下されたものであったとしても、過程は消えないのだから。
「ただ、闇雲にそんな願望を持っているわけじゃないんです。」
「ログイン監査?」
ELINEAの話しを続ける宇吏津に、水守は疑問を投げる。
「はい。ユーザーデータに不備や不正、改変などが検知された場合、そのユーザーのログインは拒否されます。」
「そうね。ELINEAに関してもそこは通過しなければならないようにしていたわ。」
頷いて説明する宇吏津に、水守も同様に頷いた。
「ELINEAがシステムの改変をしていない以上、何か擦り抜ける方法を見つけたか・・・」
「そもそもユーザー情報も変更していない。」
現状から思いつく内容を宇吏津が口にすると、もう一つの可能性を水守が引き継ぐように言った。宇吏津はその内容に大きくゆっくりと頷く。
「もしユーザー情報を変更していないとしたら、一体どういう事かしら・・・」
「それは僕にも分かりません。」
腕を組んで考え込む水守に、宇吏津も首を左右に振ると、ディスプレイ上に表示されているELINEAの情報を眺めるだけだった。
「ま、分からない事を悩んでいても仕方がないわ。それよりも今は、別の問題を解決しなければならないわね。」
「そうですね。今となってはELINEAを排除しなければ、何も解決になりません。このまま放置していては、対応しないCAZH社の信頼に関わりますから。」
「えぇ。つまり、基盤の構築を急げという事ね・・・」
苦笑して言う水守に、宇吏津は力ない笑みを向けて頷いた。
「そうなるともう少し、戦力が欲しいところですね。」
「そうね・・・」
水守はどうにもならない現状から、それだけ言うと宇吏津の席から離れようとして足を止める。
「もう少し、掛け合ってみるわ。」
宇吏津の方は見ずにその一言を付け加えると、その場を後にした。
「ユアキス、責任取ってよ。」
何をどう取れと・・・
アホな事を言い出すタッキーに冷めた視線を向ける。実際に阿呆くさいので無言のまま。呆れて言葉も出ねぇよ。
「あたしも、こんな思いさせられるなんて、責任取ってよ。黙ってないで何か言ったらどうなの。」
いや呆れてんだよ・・・
次に月下が乗って来たので、冷めた視線を月下の方に向ける。お前の思いなど知った事か、勝手にそんな思いでもなんでもしていろ。
「私、弄ばれていたんですね。」
それは今の俺なんだが・・・
悲しそうな表情で俯きながら言う姫に、更に視線を巡らす。地面に視線を落としているため、俺の顔は見えてないのだろう、上手い事逃げやがって。
「私も、責任取って欲しいわ。」
この茶番はまだ続くのか・・・
マリアは寂しそうな顔で微笑むと、そう言って自分のお腹を見ながら摩った。
ってちょっと待て!!
んなわけあるか!
俺が抗議の声を上げようとすると、それよりも早く反応した奴が居た。
「ま・・・マリア?今のは、どういう・・・事かな?」
マリアの行動に、タッキーが今にも泣きだしそうな顔で、絞り出すように言った。泣き出しそうと言うか、この世の終わりというか、瀕死になったようだ。
自分のした事はもう忘れ去ったのだろう、よろよろとマリアの方に歩いていく。
「終わったか?」
「終わりましたね。」
いつの間にか隣に来た姫が、笑顔で言った。お前もやってただろうが。
「言い出したくせに途中でやめるな!」
「・・・」
よろよろと歩くタッキーの背後に近付いた月下が、ケツに蹴りを入れる。声を出す気力もないのか、タッキーはそのままよろめいて地面に転がった。
まぁ、自業自得だろう。
「脳内に咲いた色惚けの花も枯れたようですね。どうせなら根っこごと千切れてしまえば良かったのに。」
・・・
「クエスト行く前に一人脱落。」
止めを刺したのはお前な気がするんだが・・・
横たわるタッキーを見下ろしながら言う月下に、内心で突っ込んでおく。その横でマリアが俺の方を見てニコッと笑ってきた。
俺はその笑顔に悪意を感じたような気がする。おそらく、俺を貶める振りをして、本当の目的はタッキーを駆逐するつもりだったんじゃないだろうか。
真意は分からないが。
「冗談に決まっているでしょう。」
マリアはタッキーに向かって苦笑しながら言う。それを聞いた本人は、むくりと起き上がって笑顔に戻った。
「ですよね、そんな気はしてました。」
「ゾンビ・・・」
それを見た月下が、顔を引き攣らせて言う。言い得て妙だな・・・
戦闘の時もそれくらいの回復力は欲しいところだ。だが裏を返せば、戦闘中に役立たずになる可能性もあるわけだな。流石にマリアもそれはやらないだろうと思うが。
どちらかと言えば、上手くコントロールしそうな気がする。
「で、どうすんのコレ。」
「どうするも何も、行くしかないだろうが。」
行きたくはないが、行かないと進まないからな。
LV14-10 洞窟内のゴミ掃除FAINAL 1
FAINALで1ってなんだよ、何回FAINALする気だよ、アホか。
「もう、ユアキスがゴミ掃除とか言ったからこうなったんじゃん。」
「んなわけあるか!そもそも決まっていた事だろうが。文句があるなら制作側に言ってくれ。」
制作側に正気を感じない、もはやプレイヤーに対する嫌がらせとしか思えない。ほらお前ら、ゴミ掃除好きだろ、とか言いながら狂気の笑みを浮かべてクエストを作っているに違いない。
いや、俺の妄想だが。
そんな妄想を起こさせるほど、ゴミ掃除の内容はLVが上がるにつれ、ろくでもないクエストになっている気がする。
「何時まで茶番をしていますの、早く斬りに行きますわよ。」
何も言わずに見ていたアヤカが、ついに痺れを切らしたのかそう言った。何故かその言葉と態度が凄くまともに見える。いや本人は太刀を振るいたいだけなんだろうが、この状況ではそう思っても仕方がない。
「何ですの?」
「いや、何でもない。」
考えながらアヤカの方を見ていたらしい。
「しょうがねぇ、行くか。」
意味があったわけじゃないが、その行動を誤魔化すように俺は言った。
ニベルレイス第8層 嘲迷回廊
第9層へ続く八遣の間、そこに続く回廊は大広間並みの広さがあった。
まだ9層に行けるわけじゃないが、奥が闇に包まれて見えないほどその回廊は長い。ただ、八遣の間への道は直線なのだが、洞窟を構成する物質が柱となり壁となり、広間自体は複雑な構成をしていた。
毎回ゴミ掃除は、場所の指定のみなので、現地に行ってみなければ何をすればいいのか不明なところが面倒くさい。
「あれ、何か居る・・・」
先頭を歩いていた月下がそう言って立ち止まった。確かに、通路の真ん中で何かを食べている奴が1体。
「僕、もう飽きたよ。」
その何かを見て、タッキーもうんざりした声を出す。
「でも、大きいですね。色も違いますし。」
そこに居たのはゼオグーラなのだが、姫の言う通り前のクエストで大量討伐したゼオグーラと違って大きい。大きさで言うなら通常のゼオグーラは1mくらいだが、こいつは倍以上ある。それに、皮膚の色も紫の筈だが、目の前に居るのはどう見ても銀色にしか見えない。
「斬り応えがありそうですわ。」
背中の太刀に手を掛けながら、アヤカが嗤う。まぁ、いつもの事だ。
「ちょっと、気持ち悪いわ・・・」
ゼオグーラがこちらに気付くと、口の端を吊り上げて嗤った。もともと口が大きい事もあり、嫌な感じに見える。マリアの言う通り気持ち悪いってのもあるが、小馬鹿にしたような笑いにも見える。
「剣の錆にして差し上げますわ。」
アリシアが意気込んで抜剣したと同時に、ゼオグーラは食べていた何かを投げつけて来る。
「げ・・・」
「汚っ!」
「うぶっ・・・」
俺と月下が嫌な声を出しながら避けるが、生憎と直撃して仰け反るメンバーが1名。
「うえぇ・・・なんか嫌な気分だよ、この攻撃。」
確かに、食らいたくない攻撃だ。
「精神だけじゃなく肉体も穢れましたね。」
ぼそりという姫はさておき、ゼオグーラは両手を上げて飛び跳ねる。完全に馬鹿にしている行動なのだろう。
「ムカつきますわ・・・」
普段、強敵であれば不敵な笑みを浮かべているアヤカも、今回は口の端が引き攣っているようだ。そのゼオグーラは一頻りこっち馬鹿にすると、広間の横の方へと走り出した。
「あぁっ!逃げたよ!」
「マジかよ。」
「逃がしませんわ!!」
メンバーが驚く中、真っ先にアヤカとマリアが飛び出していく。俺たちもそれに続いてゼオグーラを追いかけた。
質の悪い事に、ゼオグーラは物陰に隠れては何かを投げつけて来る。この嘲迷回廊の作りがなお悪い。柱や壁が不規則に並び、まるで迷路のようだからだ。
「うぇっ・・・」
柱を縫うように走っていくゼオグーラを追いかけていた月下だが、顔に何かをくらって吹っ飛ぶ。
「きゃ・・・」
壁の先を弓を構えながら確認した姫だったが、顔出した瞬間何かを食らって床を転がった。
「・・・質が悪いわ。」
追い詰めたかと思ったマリアだったが、直前のところで攻撃を避けられ、避けたと同時に投げられた何かを顔に食らう。微動だにせずに立っているが、声は震えているようだった。
「きりがありませんわ。」
一旦集まって、対策について考える事にした。流石のアヤカも、斬れない事がストレスになっているのか、明らかに表情は苛立っていた。
「おそらく、普通に追いかけるのでは無理だわ。明らかに回避能力と逃走速度がおかしいもの。」
マリアが言うならそうなのだろう。
「じゃぁ、どうすんの?」
「こっちも遠距離攻撃で行けばいいんだよ。」
月下の問いにタッキーが思いついたように答えるが、それは間違いだ。流れからいって遠距離も当たらないだろう。
「もう一つ、敵の攻撃は威力は低いけど、ターゲットになったプレイヤーの顔に必中するわ。」
「なんて嫌な攻撃なんでしょう・・・」
その情報に姫も嫌そうな顔をする。嫌というか、かなり腹立たしい攻撃だ。
「なぁタッキー。」
「ん?」
「遠距離で行けると思うのか?」
「多分・・・」
敵は一定の距離を保っている。今は見通しのいい場所に居るので、こちらから敵も見えている状況だ。
「そこの柱にこっそり近付いて、撃ってみてくれよ。」
「うん、任せてよ。」
何故か頼んだ俺ではなく、マリアの方に拳を握って言いやがった。まぁいい、結果が見えているから今回は見なかった事にしておこう。
タッキーがゆっくりと、敵の死角から柱に近付いていく。
「でだ。今回の敵はメンバーが分散して、追い詰めていく必要があるんじゃないかと思うんだ。」
残ったメンバーに今後の方針を説明してみる。
「私もそう思うわ。」
「なるほど、地形を利用するのですね。」
ただ、ソロプレイヤーはどうするんだろうな。クリアしている人もいるだろうから、他にも方法があるかもしれない。ただ、今は思い付くのがそれしかないので、この方法を試すしかないだろう。
「うべっ・・・」
反撃を食らったタッキーが変な悲鳴を上げる。
「なるほど、分かった。」
そのタッキーの姿を見た月下が力強く頷く。
「という事だタッキー、行くぞ。」
「え・・・えっ?どういう事!?」
話しは聞いてなかったらしく、戸惑いの声を上げるタッキーは無視して俺たちは散開した。
やはりゴミ掃除はろくでもないクエストだった。
「すっきりしないクエストでした・・・」
クリアしたのは嬉しいのだが、姫の言う通り達成感や爽快感よりも、疲労感と不快感の方が強い気がする。気の所為だろうか。
「ほんと、ムカつく奴だったよね。」
追い詰める事に成功はするのだが、まず固い。それに、ある程度叩くと全員の顔に何かを投げつけてまた逃走する。しかも、一旦距離を取ると、頭の上で手を叩きながら小馬鹿にしてくるところが腹立たしい。
「間違いなく、今までのクエストの中で一番ストレスが溜まるクエストだよ。」
「でもまぁ、これでやっと先に進めるな。」
別に攻略に詰まっていたわけじゃないが、そんな気分になる。
「斬った気がしませんわ・・・」
アレが相手じゃ、そうだろうな。
「それで、次のクエストは普通の討伐のようだけど、どうするの?」
「あたし行きたい。」
「私もですわ。」
マリアがシステムデバイスでクエストを確認すると、行くことに全員が賛成する。確かにこのまま終わってしまうのも、嫌な気分だし。
「じゃぁとりあえず、準備するか。」
「そうですね。」
姫が頷くのを合図に、それぞれが次のクエストの為に、装備や道具の準備に向かった。
-DEWS内 スニエフ-
ELINEAは街路を彷徨うように歩いていた。そこで、見知った名前を見つけると顔が綻び、笑顔で声を掛ける。
「久しぶりだね。」
だが、話しかけられた方はELINEAに気付くと形相が変化する。眉間に皺を寄せ、明らかに嫌そうな顔をした。
「話しかけんな、チート野郎が。仲間だと思われんだろうが。」
男はそれだけ言うと、足早にELINEAから遠ざかっていった。
幾度繰り返した事だろうか。
幾度同じ言葉を吐かれただろうか。
ELINEAは今にも泣きそうな顔になりながら俯いて、その場に立ち尽くす。
(みんな、同じことを言う・・・)
あれから何度試みても、プレイヤーの反応は変わらなかった。今まで一緒にプレイして来た仲間は、誰一人として。
(誰も・・・誰も相手にしてくれない。私は、なんのために・・・)
システムデバイスの中に登録されていたフレンドは、もうほとんど残っていない。残っているのは、何日も何か月もログインしていないプレイヤーばかりだった。
(私は、与えられた能力を使っただけなのに・・・どうして・・・)
「協力してくれるのは3人ですか・・・」
水守から聞いた話しに、宇吏津は力なく言った。最初から構築するわけではないので、人数はそこまで多くなくても問題は無いが、出来ればもう少し欲しいところでもある。その思いが言葉と一緒に吐き出される。
「それも上からの圧力で渋々、といった感じよ。私たちに責任が無いとは言わないけれど、この状況でも穏便に済ませようとする考えが気に入らないわ。」
「会社人ですからね。」
腕を組んで不服そうに言う水守に、宇吏津がそう言うと水守に睨まれる。以前、そう言ったのはチーフじゃないかと、宇吏津は理不尽だと思ったが態度には出さずに目を逸らした。
「それで、美馬津はどうだったの?」
可能性が薄いのは分かっていたが、それでも参加してくれるのであれば、戦力としては申し分ないと淡い期待を込めて水守は確認する。だが、宇吏津の反応からその期待は無駄だったというのが分かった。
「断られましたよ。事情は説明したんですが、それどころじゃないらしく。」
「それどころじゃないのは、こっちも同じなんだけどね。」
何処か遠い目をするように水守は言った。その表情は、断られた事に対する憤りなどはまったく無く、懐かしさの様なものを感じた。
「そうですね。そもそもサービスの提供が出来なくなったら終わりですからね。」
「えぇ・・・ところで、美馬津が何をやっているか、宇吏津くんは知っている?」
「いえ。聞いても答えてはくれません。」
「そう。」
結果は見えている質問を一応聞いてみた水守だが、何も変わらなかったため興味が無さそうに相槌だけ打った。
「まぁ、無いものの話しをしてもしょうがないわ。それより、問題はこれよね。」
宇吏津が使用するディスプレイに映った幾つもの情報を見て水守は険しい表情をする。
もともと、この内容について宇吏津に呼ばれたのだが、本題に入る前に現状について水守は意識を合わせて起きたかったのもあり事前に話したのだった。
「はい。カスタマーにも連絡が来ているようですが、何より外部での炎上が激しいですね。」
「炎上と言うより、爆発に近いわね。」
「一気に拡散したのは、この証拠動画が原因かと思われます。」
宇吏津はとある人物の、DEWSプレイ日記に載せられている動画を再生した。
「攻略や雑記などのページですが、サービス開始当初から書かれており、ゲーム内での交流も広いようで、アクセス数もそれなりにありますね。」
宇吏津は動画を再生しながら、記載しているサイトの説明をしていく。
「ここからです。」
そこには、ELINEAが高速移動からボスを猛攻で畳みかける映像が流れていった。
「ゲームの仕様上、この動作はあり得ません。」
「これは、ELINEAがやったというの?」
「システムファイル自体は現状、変更された形跡はありません。この前のメンテナンスで、ELINEAはまだアクセス出来ていないようですし。していないだけかもしれませんが・・・」
最後の方は、苦笑しながら宇吏津は言った。ELINEAが何処までサーバー内の情報にアクセス出来るのか、現状では不明だったからだ。
「ELINEAがやったとしたら、ユーザー情報の方って事ね。」
「それも、データにアクセス出来ないため不明ですね。ELINEA自身が人間との融和に拘りを持っていた気もするので、本人は変更していないんじゃないか・・・というのは、僕の願望だと思いますか?」
自嘲気味言う宇吏津の言葉に、水守は軽く首を左右に振る。
「そう思う気持ちは分かるわ。」
それはプロジェクトに携わってきた水守も、同様の思いはあった。例え、失敗して凍結という判断が下されたものであったとしても、過程は消えないのだから。
「ただ、闇雲にそんな願望を持っているわけじゃないんです。」
「ログイン監査?」
ELINEAの話しを続ける宇吏津に、水守は疑問を投げる。
「はい。ユーザーデータに不備や不正、改変などが検知された場合、そのユーザーのログインは拒否されます。」
「そうね。ELINEAに関してもそこは通過しなければならないようにしていたわ。」
頷いて説明する宇吏津に、水守も同様に頷いた。
「ELINEAがシステムの改変をしていない以上、何か擦り抜ける方法を見つけたか・・・」
「そもそもユーザー情報も変更していない。」
現状から思いつく内容を宇吏津が口にすると、もう一つの可能性を水守が引き継ぐように言った。宇吏津はその内容に大きくゆっくりと頷く。
「もしユーザー情報を変更していないとしたら、一体どういう事かしら・・・」
「それは僕にも分かりません。」
腕を組んで考え込む水守に、宇吏津も首を左右に振ると、ディスプレイ上に表示されているELINEAの情報を眺めるだけだった。
「ま、分からない事を悩んでいても仕方がないわ。それよりも今は、別の問題を解決しなければならないわね。」
「そうですね。今となってはELINEAを排除しなければ、何も解決になりません。このまま放置していては、対応しないCAZH社の信頼に関わりますから。」
「えぇ。つまり、基盤の構築を急げという事ね・・・」
苦笑して言う水守に、宇吏津は力ない笑みを向けて頷いた。
「そうなるともう少し、戦力が欲しいところですね。」
「そうね・・・」
水守はどうにもならない現状から、それだけ言うと宇吏津の席から離れようとして足を止める。
「もう少し、掛け合ってみるわ。」
宇吏津の方は見ずにその一言を付け加えると、その場を後にした。
「ユアキス、責任取ってよ。」
何をどう取れと・・・
アホな事を言い出すタッキーに冷めた視線を向ける。実際に阿呆くさいので無言のまま。呆れて言葉も出ねぇよ。
「あたしも、こんな思いさせられるなんて、責任取ってよ。黙ってないで何か言ったらどうなの。」
いや呆れてんだよ・・・
次に月下が乗って来たので、冷めた視線を月下の方に向ける。お前の思いなど知った事か、勝手にそんな思いでもなんでもしていろ。
「私、弄ばれていたんですね。」
それは今の俺なんだが・・・
悲しそうな表情で俯きながら言う姫に、更に視線を巡らす。地面に視線を落としているため、俺の顔は見えてないのだろう、上手い事逃げやがって。
「私も、責任取って欲しいわ。」
この茶番はまだ続くのか・・・
マリアは寂しそうな顔で微笑むと、そう言って自分のお腹を見ながら摩った。
ってちょっと待て!!
んなわけあるか!
俺が抗議の声を上げようとすると、それよりも早く反応した奴が居た。
「ま・・・マリア?今のは、どういう・・・事かな?」
マリアの行動に、タッキーが今にも泣きだしそうな顔で、絞り出すように言った。泣き出しそうと言うか、この世の終わりというか、瀕死になったようだ。
自分のした事はもう忘れ去ったのだろう、よろよろとマリアの方に歩いていく。
「終わったか?」
「終わりましたね。」
いつの間にか隣に来た姫が、笑顔で言った。お前もやってただろうが。
「言い出したくせに途中でやめるな!」
「・・・」
よろよろと歩くタッキーの背後に近付いた月下が、ケツに蹴りを入れる。声を出す気力もないのか、タッキーはそのままよろめいて地面に転がった。
まぁ、自業自得だろう。
「脳内に咲いた色惚けの花も枯れたようですね。どうせなら根っこごと千切れてしまえば良かったのに。」
・・・
「クエスト行く前に一人脱落。」
止めを刺したのはお前な気がするんだが・・・
横たわるタッキーを見下ろしながら言う月下に、内心で突っ込んでおく。その横でマリアが俺の方を見てニコッと笑ってきた。
俺はその笑顔に悪意を感じたような気がする。おそらく、俺を貶める振りをして、本当の目的はタッキーを駆逐するつもりだったんじゃないだろうか。
真意は分からないが。
「冗談に決まっているでしょう。」
マリアはタッキーに向かって苦笑しながら言う。それを聞いた本人は、むくりと起き上がって笑顔に戻った。
「ですよね、そんな気はしてました。」
「ゾンビ・・・」
それを見た月下が、顔を引き攣らせて言う。言い得て妙だな・・・
戦闘の時もそれくらいの回復力は欲しいところだ。だが裏を返せば、戦闘中に役立たずになる可能性もあるわけだな。流石にマリアもそれはやらないだろうと思うが。
どちらかと言えば、上手くコントロールしそうな気がする。
「で、どうすんのコレ。」
「どうするも何も、行くしかないだろうが。」
行きたくはないが、行かないと進まないからな。
LV14-10 洞窟内のゴミ掃除FAINAL 1
FAINALで1ってなんだよ、何回FAINALする気だよ、アホか。
「もう、ユアキスがゴミ掃除とか言ったからこうなったんじゃん。」
「んなわけあるか!そもそも決まっていた事だろうが。文句があるなら制作側に言ってくれ。」
制作側に正気を感じない、もはやプレイヤーに対する嫌がらせとしか思えない。ほらお前ら、ゴミ掃除好きだろ、とか言いながら狂気の笑みを浮かべてクエストを作っているに違いない。
いや、俺の妄想だが。
そんな妄想を起こさせるほど、ゴミ掃除の内容はLVが上がるにつれ、ろくでもないクエストになっている気がする。
「何時まで茶番をしていますの、早く斬りに行きますわよ。」
何も言わずに見ていたアヤカが、ついに痺れを切らしたのかそう言った。何故かその言葉と態度が凄くまともに見える。いや本人は太刀を振るいたいだけなんだろうが、この状況ではそう思っても仕方がない。
「何ですの?」
「いや、何でもない。」
考えながらアヤカの方を見ていたらしい。
「しょうがねぇ、行くか。」
意味があったわけじゃないが、その行動を誤魔化すように俺は言った。
ニベルレイス第8層 嘲迷回廊
第9層へ続く八遣の間、そこに続く回廊は大広間並みの広さがあった。
まだ9層に行けるわけじゃないが、奥が闇に包まれて見えないほどその回廊は長い。ただ、八遣の間への道は直線なのだが、洞窟を構成する物質が柱となり壁となり、広間自体は複雑な構成をしていた。
毎回ゴミ掃除は、場所の指定のみなので、現地に行ってみなければ何をすればいいのか不明なところが面倒くさい。
「あれ、何か居る・・・」
先頭を歩いていた月下がそう言って立ち止まった。確かに、通路の真ん中で何かを食べている奴が1体。
「僕、もう飽きたよ。」
その何かを見て、タッキーもうんざりした声を出す。
「でも、大きいですね。色も違いますし。」
そこに居たのはゼオグーラなのだが、姫の言う通り前のクエストで大量討伐したゼオグーラと違って大きい。大きさで言うなら通常のゼオグーラは1mくらいだが、こいつは倍以上ある。それに、皮膚の色も紫の筈だが、目の前に居るのはどう見ても銀色にしか見えない。
「斬り応えがありそうですわ。」
背中の太刀に手を掛けながら、アヤカが嗤う。まぁ、いつもの事だ。
「ちょっと、気持ち悪いわ・・・」
ゼオグーラがこちらに気付くと、口の端を吊り上げて嗤った。もともと口が大きい事もあり、嫌な感じに見える。マリアの言う通り気持ち悪いってのもあるが、小馬鹿にしたような笑いにも見える。
「剣の錆にして差し上げますわ。」
アリシアが意気込んで抜剣したと同時に、ゼオグーラは食べていた何かを投げつけて来る。
「げ・・・」
「汚っ!」
「うぶっ・・・」
俺と月下が嫌な声を出しながら避けるが、生憎と直撃して仰け反るメンバーが1名。
「うえぇ・・・なんか嫌な気分だよ、この攻撃。」
確かに、食らいたくない攻撃だ。
「精神だけじゃなく肉体も穢れましたね。」
ぼそりという姫はさておき、ゼオグーラは両手を上げて飛び跳ねる。完全に馬鹿にしている行動なのだろう。
「ムカつきますわ・・・」
普段、強敵であれば不敵な笑みを浮かべているアヤカも、今回は口の端が引き攣っているようだ。そのゼオグーラは一頻りこっち馬鹿にすると、広間の横の方へと走り出した。
「あぁっ!逃げたよ!」
「マジかよ。」
「逃がしませんわ!!」
メンバーが驚く中、真っ先にアヤカとマリアが飛び出していく。俺たちもそれに続いてゼオグーラを追いかけた。
質の悪い事に、ゼオグーラは物陰に隠れては何かを投げつけて来る。この嘲迷回廊の作りがなお悪い。柱や壁が不規則に並び、まるで迷路のようだからだ。
「うぇっ・・・」
柱を縫うように走っていくゼオグーラを追いかけていた月下だが、顔に何かをくらって吹っ飛ぶ。
「きゃ・・・」
壁の先を弓を構えながら確認した姫だったが、顔出した瞬間何かを食らって床を転がった。
「・・・質が悪いわ。」
追い詰めたかと思ったマリアだったが、直前のところで攻撃を避けられ、避けたと同時に投げられた何かを顔に食らう。微動だにせずに立っているが、声は震えているようだった。
「きりがありませんわ。」
一旦集まって、対策について考える事にした。流石のアヤカも、斬れない事がストレスになっているのか、明らかに表情は苛立っていた。
「おそらく、普通に追いかけるのでは無理だわ。明らかに回避能力と逃走速度がおかしいもの。」
マリアが言うならそうなのだろう。
「じゃぁ、どうすんの?」
「こっちも遠距離攻撃で行けばいいんだよ。」
月下の問いにタッキーが思いついたように答えるが、それは間違いだ。流れからいって遠距離も当たらないだろう。
「もう一つ、敵の攻撃は威力は低いけど、ターゲットになったプレイヤーの顔に必中するわ。」
「なんて嫌な攻撃なんでしょう・・・」
その情報に姫も嫌そうな顔をする。嫌というか、かなり腹立たしい攻撃だ。
「なぁタッキー。」
「ん?」
「遠距離で行けると思うのか?」
「多分・・・」
敵は一定の距離を保っている。今は見通しのいい場所に居るので、こちらから敵も見えている状況だ。
「そこの柱にこっそり近付いて、撃ってみてくれよ。」
「うん、任せてよ。」
何故か頼んだ俺ではなく、マリアの方に拳を握って言いやがった。まぁいい、結果が見えているから今回は見なかった事にしておこう。
タッキーがゆっくりと、敵の死角から柱に近付いていく。
「でだ。今回の敵はメンバーが分散して、追い詰めていく必要があるんじゃないかと思うんだ。」
残ったメンバーに今後の方針を説明してみる。
「私もそう思うわ。」
「なるほど、地形を利用するのですね。」
ただ、ソロプレイヤーはどうするんだろうな。クリアしている人もいるだろうから、他にも方法があるかもしれない。ただ、今は思い付くのがそれしかないので、この方法を試すしかないだろう。
「うべっ・・・」
反撃を食らったタッキーが変な悲鳴を上げる。
「なるほど、分かった。」
そのタッキーの姿を見た月下が力強く頷く。
「という事だタッキー、行くぞ。」
「え・・・えっ?どういう事!?」
話しは聞いてなかったらしく、戸惑いの声を上げるタッキーは無視して俺たちは散開した。
やはりゴミ掃除はろくでもないクエストだった。
「すっきりしないクエストでした・・・」
クリアしたのは嬉しいのだが、姫の言う通り達成感や爽快感よりも、疲労感と不快感の方が強い気がする。気の所為だろうか。
「ほんと、ムカつく奴だったよね。」
追い詰める事に成功はするのだが、まず固い。それに、ある程度叩くと全員の顔に何かを投げつけてまた逃走する。しかも、一旦距離を取ると、頭の上で手を叩きながら小馬鹿にしてくるところが腹立たしい。
「間違いなく、今までのクエストの中で一番ストレスが溜まるクエストだよ。」
「でもまぁ、これでやっと先に進めるな。」
別に攻略に詰まっていたわけじゃないが、そんな気分になる。
「斬った気がしませんわ・・・」
アレが相手じゃ、そうだろうな。
「それで、次のクエストは普通の討伐のようだけど、どうするの?」
「あたし行きたい。」
「私もですわ。」
マリアがシステムデバイスでクエストを確認すると、行くことに全員が賛成する。確かにこのまま終わってしまうのも、嫌な気分だし。
「じゃぁとりあえず、準備するか。」
「そうですね。」
姫が頷くのを合図に、それぞれが次のクエストの為に、装備や道具の準備に向かった。
-DEWS内 スニエフ-
ELINEAは街路を彷徨うように歩いていた。そこで、見知った名前を見つけると顔が綻び、笑顔で声を掛ける。
「久しぶりだね。」
だが、話しかけられた方はELINEAに気付くと形相が変化する。眉間に皺を寄せ、明らかに嫌そうな顔をした。
「話しかけんな、チート野郎が。仲間だと思われんだろうが。」
男はそれだけ言うと、足早にELINEAから遠ざかっていった。
幾度繰り返した事だろうか。
幾度同じ言葉を吐かれただろうか。
ELINEAは今にも泣きそうな顔になりながら俯いて、その場に立ち尽くす。
(みんな、同じことを言う・・・)
あれから何度試みても、プレイヤーの反応は変わらなかった。今まで一緒にプレイして来た仲間は、誰一人として。
(誰も・・・誰も相手にしてくれない。私は、なんのために・・・)
システムデバイスの中に登録されていたフレンドは、もうほとんど残っていない。残っているのは、何日も何か月もログインしていないプレイヤーばかりだった。
(私は、与えられた能力を使っただけなのに・・・どうして・・・)
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