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6.なんかずれてんだろ、思考
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吸血コウモリ10体退治
ブラッドバイパー5体退治
闇イノシシ1体討伐 【BOSS】
鉄鉱石の納品
闇夜草の納品
銅石の納品2
薬草の納品2
つるはしの作成
回復薬の調合
街道のごみ掃除
システムデバイスのクエスト欄に現在表示されているクエストを見てどれにするか悩む。
(最後のごみ掃除ってなんだよ、ゲーム内に来てまでボランティア活動かっての。)
戦闘は人数が多い方が有利だ、それは昨日で分かったからアヤカと合流してからでもいいだろう。夕食前の今の時間は、簡単に出来るクエストがいい。特に納品は重要な気がする。
必要数納品すれば、採集した残りは手持ちアイテムとして残る。作成や調合に必要な事を考えれば、自分のクエストとアヤカのクエスト、2回行う事で数を増やしやすい。
まてよ、クエスト報酬がそれぞれ貰えるなら、やれるだけやって、他人のクエストに合流する方がお得じゃないか?
試してないから分からないけど、後でアヤカのクエストに合流する事で確認しよう。
(ヘルプ読むの面倒だしな・・・)
(ん?)
クエスト欄の右下に、達成報酬という小さなボタンがあり、それが光っているのでタップしてみる。
(おおっ。)
クエスト達成報酬。クエストを完了した数により、達成報酬が受け取れると書いてある。
初めてのクエスト達成
クエスト達成数 3
そこが光っているので、タップしてみるとアイテムが貰えた。3の方はお金だったけど。次に表示されている、クエスト達成数 6、はグレーアウトしている。
(なるほど、おまけみたいなもんか。)
出来るクエストから始める事にした。手始めに街の中で出来そうな、つるはしの作成。
クエストをこなしていかないと、そもそも先に進めないというか、何も揃わないというか、つまりまだチュートリアルの様な気がした。
だから、きっと闇イノシシが最初の関門じゃないかと俺は予想した。
(予想はしてたが・・・)
つるはしの作成に来た俺は、予想通りの展開だと気付く。前回納品した銅石により、つるはしの作成が出来るようになった。その作成に、さらに銅石が必要・・・と。
(えーと、作成には2個必要なんだな。手持ちは4個だから作れるな。)
鍛冶屋のつるはし作成画面には自分の所持個数が表示されている。画面内には、作成するのボタンがあり、タップすれば作成されるのだろう。
(ってか鍛冶屋、俺の鞄の中身は承知って事じゃねーか。)
よくあるゲームの構成だが、携帯でやっているのと違い、データとはいえ自分もNPCも疑似生成され向かい合っている。そのNPCが俺の鞄の中身を把握しているってのには違和感を感じた。
言い換えれば、買い物に行った先の店員が、俺の財布に入っている金額を知っているようなものだ。そう考えると気持ち悪いな。
ゲームだから現実と比べる事自体、無駄だと思うが違和感があるのはしょうがない。
(まあいいや、とりあえず作るか。)
俺は作成ボタンをタップしてつるはしを手に入れた。所持品は全てシステムデバイスにデータとして格納されているため、減った銅石も増えたつるはしの感覚もない。
ゲームなのだからそこまでの現実感は無くてもいい。あまりにリアル過ぎたら、それはそれで面倒だし、ゲームをやる爽快感や楽しみが苦痛に変わりそうだ。
さて次は、鉄鉱石かな。これも予想通りだった。
クエスト情報にはご丁寧に、鉄鉱石を採掘するにはつるはしが必要と記載があった。となれば、鉄鉱石を手に入れれば鍛冶屋で作成できるものが増えるだろうと思う。何が作れるようになるか分からないが、戦闘するのにアイテムや装備を整えるのは優先するものだろう。
(よし、納品クエストに行ってみるか。)
「ふぅ、疲れた。」
VR-HMDを外して部屋から出る。ダイニングに行くと、母さんがちょうどテーブルの上に料理を並べているところだった。
「親父はまだ帰ってないのか。」
夜7時を過ぎた事を示している時計を見ながら、俺は誰に聞くでもなく呟いた。
「昨日がたまたま早かったのよ。」
料理を並べている母さんが、俺の言葉に相槌を打つ。
「ヒナは今日も部活か。」
「ええ、でももうすぐ帰ってくる頃だと思うわ。7時くらいまでって言っていたから、今帰っている途中じゃないかしら。」
別に居ないからと何かあるわけじゃない。単に居ない事を確認しただけだ。
3歳下の妹、雛子は小学校からやっているバスケを、中学になってからも続けている。入学後直ぐに部活に入り、毎日遅くまで部活をしている。
小生意気な妹と顔を合わせなくて済むなら、それに越した事はない。
「じゃあ先に頂きます。」
「ええ。」
帰ってくる時間がバラバラなんで、食事の時間もバラバラだ。ただ食事は1食分を人数分注文するので、それぞれが好きなタイミングで出来立ての料理を食べられるから、時間が合わなくても冷めた料理を口にしなくてもいい。
母さんは親父が帰って来てから一緒に食べるので、テーブルの上にあるのは俺の分だけだ。
「ただいま。」
食べている最中にヒナが帰って来た。
「おかえり、ご飯すぐ食べる?」
「んー、先にシャワー浴びる。部活で結構汗かいたから、さっぱりしたい。」
「それじゃ、その間に用意しておくわ。」
母さんと妹の会話にさして興味も無いが、ちょっと待て。
「俺、飯食ったら風呂行くつもりだったんだよ。早めに終われよ。」
「うざ、きも・・・」
冷めた目線でヒナが言ってくる。俺の扱いはいつもそんなもんだ。何時からなのか憶えていない、気付けばそういう態度をとられていた。
「おにぃはどうせゲームやりたいだけでしょ。疲れて帰った妹に優しさは無いの。」
「うん、ない。」
ヒナは俺が座っている椅子の足を蹴りながら浴室に向かって行った。どうも見下されているようにしか感じない妹の発言だが、そういや最近、そんな事が増えたな。
あいつに関わった所為なんだよな・・・。と思って、鳳隆院の事を思い出す。
この後、クエストに付き合う事を考えると気が重い。
ヒナは母さんに良く似ていて、さらっとした黒髪ストレートで見た目だけならかなり可愛い。ただ目付きが良くない。態度も。まぁ、俺にだけかもしれないが。
面倒なので、家族だとしても家の中で出来れば顔を合わせたくない人物だ。
食べ終わってテレビを眺めながらそんな事を考えていると、ヒナがダイニングに来たので、俺は入れ替わりで浴室に向かった。
部屋に戻ると8時半、約束の時間までもう少しあるが、ログインして準備をしておこうと思った。準備と言ってもそんなに無いが。
クエストはボス以外、ご飯前に終わったので今はやる事がない。次のクエストは、どうやら今表示されているクエストを全て終わらせないと出ないようだった。
(そういや、鉄鉱石で新しい武器が作れた気がするな。)
それを思い出して鍛冶屋に向かう。
(お、あったあった。)
今装備しているのが、ゲーム開始時に貰ったショートソードで、作れるのがアイアンソードだ。鉄鉱石だから無難な名前だな。
(ん?)
その下にアイアンブレードという片手剣があったが、グレーアウトしている。見た目は片刃の片手剣だが、そっちの方が攻撃力が上だった。
(作るなら強い方がいいよな、でもグレーアウトしているって事は、材料が足りないんだろうな。)
アイアンソードは鉄鉱石4、銅石2、動物の骨。ブレードの方は鉄鉱石4、銅石3、闇イノシシの牙。つまりあれか、ボス倒さないと作れないって事か。材料の数もギリだし、作りたいならボス倒してからだな。
今出ているクエストなら、ショートソードでも十分だし、作るのはボスを倒してからにするか。プレイヤーレベルも10になって、ステータスも上昇したし、同じクエストをやるなら二人だったら直ぐに終わるだろう。
そんな事を考えながら、9時も近付いて来たのでクエスト屋に向かった。
クエスト屋に近付くと、既にアヤカが待っているのが見える。
げ・・・
遅いとか言われないだろうな、まだ9時前なんだけど。
理不尽な事を言われそうな気がしてならないが、行かない方が後で怖いのでアヤカの前まで移動する。
「急にクエストが増えましわ。」
第一声がそれだったので、少しほっとした。
「まだチュートリアルレベルだから、今後数も増え難易度も上がっていくだろうな。」
「お互い昨日から始めたばかりなのに、随分と偉そうに言いますわね。」
ゲームをやっている数が違うんだよと言いたいが、面倒だから相手にしない事にしよう。昨日から学んだじゃないか、理不尽には向かって行かない方がいいって。
「どのクエストから行くんだ?」
「何を言ってますの、それを決めるのがユアキスの役目でしょう。」
「俺はアヤカの付き人でも、使用人でも無いっつーの。」
あほか。何を言い出してんだこいつは。
「手伝うと言ったのは嘘ですの!?」
うざい・・・面倒だ・・・
「ゲームは基本自分でプレイするもので、クエスト受けるのも決めるのも本人がやる事だ。手伝うってのはそれをサポートするようなもので、俺がアヤカの行動を決めるのが手伝うじゃない。」
流石にこの辺ではっきりしておかないと、後々面倒な事になりそうだ。
「そう・・・ですわね。」
あれ、妙に大人しい反応だな。もっと理不尽な事を言い返されるかとも思ったんだけど。
「何分、初めての事だらけで甘えていたのは事実ですわ。刀を振りたい、それだけで始めたのですが、それをするためにいろいろ覚える事が必要ですのね。」
まぁ、その通りなんだが。今更感は拭えないが、すんなり受け入れるとは思って無かった。
「じゃぁ、行くクエストを選んでくれ。俺はあくまでそれを手伝うという形だからな。」
「分かりましたわ。」
今日、教室に居た時とは随分と印象が違うな。言っている事が阿呆な事に変わりないが、金持ちの高慢さが無いと言うか。
「これにしますわ、闇イノシシ。昨日は小さい的で、対峙している感が無かったんですの。子供と記載が無いという事は、きっと大きい予感がしますわ。」
うん、まずセオリーから説明が必要なようだな。
・・・疲れて来た。
「BOSSって書いてあるだろ。ゲームのセオリーとしては、最後の方に受けるクエストなんだよ。戦う為に必要な準備ってのが、その他のクエストで、地を固めから挑むのがオーソドックスなパターンだな。」
「そういう事ですのね。」
お、納得したか。
「つまり、勝てる可能性もあるって事ですわね。」
そっちに行ったか!
俺も試してないから無いとは言えないけど、なんで可能性の薄い方に行くかな。俺の説明は逆のつもりだったんだけど、我を優先して都合のいい解釈しやがったな。
「ユアキスの説明した内容は理解しましたわ。それでも、一度対峙してみたいのが武士というもの、付き合って頂けますわね?」
俺の説明必要無かったよな、これ。
しかも武士ってなんだよ、ただの高校生だろうが。いや、ただのじゃなくて令嬢だけど。
それはどうでもいいが、どうせ言っても聞きそうに無いしな、選択権はアヤカにあるって言ったのも俺だし。
「しょうがない。行ってみて駄目だったら、他のクエストから消化するんだぞ。」
「分かりましたわ。」
アヤカのクエストに参加して、俺とアヤカは街の出口へと向かった。俺もレベルは上がっているし、他のクエストも終わっているから、倒せないって事は無いだろうと思っていた。
そうじゃなかったら、自分主導で他のクエストやってたわ。
・・・
「今日は来ないのかと思いましたわ。」
居たよ、そう言えばもう一人令嬢が。
街の門前で佇んでいるアリシアが目に入ると、俺のモチベーションが下がって行くのが分かった。
ブラッドバイパー5体退治
闇イノシシ1体討伐 【BOSS】
鉄鉱石の納品
闇夜草の納品
銅石の納品2
薬草の納品2
つるはしの作成
回復薬の調合
街道のごみ掃除
システムデバイスのクエスト欄に現在表示されているクエストを見てどれにするか悩む。
(最後のごみ掃除ってなんだよ、ゲーム内に来てまでボランティア活動かっての。)
戦闘は人数が多い方が有利だ、それは昨日で分かったからアヤカと合流してからでもいいだろう。夕食前の今の時間は、簡単に出来るクエストがいい。特に納品は重要な気がする。
必要数納品すれば、採集した残りは手持ちアイテムとして残る。作成や調合に必要な事を考えれば、自分のクエストとアヤカのクエスト、2回行う事で数を増やしやすい。
まてよ、クエスト報酬がそれぞれ貰えるなら、やれるだけやって、他人のクエストに合流する方がお得じゃないか?
試してないから分からないけど、後でアヤカのクエストに合流する事で確認しよう。
(ヘルプ読むの面倒だしな・・・)
(ん?)
クエスト欄の右下に、達成報酬という小さなボタンがあり、それが光っているのでタップしてみる。
(おおっ。)
クエスト達成報酬。クエストを完了した数により、達成報酬が受け取れると書いてある。
初めてのクエスト達成
クエスト達成数 3
そこが光っているので、タップしてみるとアイテムが貰えた。3の方はお金だったけど。次に表示されている、クエスト達成数 6、はグレーアウトしている。
(なるほど、おまけみたいなもんか。)
出来るクエストから始める事にした。手始めに街の中で出来そうな、つるはしの作成。
クエストをこなしていかないと、そもそも先に進めないというか、何も揃わないというか、つまりまだチュートリアルの様な気がした。
だから、きっと闇イノシシが最初の関門じゃないかと俺は予想した。
(予想はしてたが・・・)
つるはしの作成に来た俺は、予想通りの展開だと気付く。前回納品した銅石により、つるはしの作成が出来るようになった。その作成に、さらに銅石が必要・・・と。
(えーと、作成には2個必要なんだな。手持ちは4個だから作れるな。)
鍛冶屋のつるはし作成画面には自分の所持個数が表示されている。画面内には、作成するのボタンがあり、タップすれば作成されるのだろう。
(ってか鍛冶屋、俺の鞄の中身は承知って事じゃねーか。)
よくあるゲームの構成だが、携帯でやっているのと違い、データとはいえ自分もNPCも疑似生成され向かい合っている。そのNPCが俺の鞄の中身を把握しているってのには違和感を感じた。
言い換えれば、買い物に行った先の店員が、俺の財布に入っている金額を知っているようなものだ。そう考えると気持ち悪いな。
ゲームだから現実と比べる事自体、無駄だと思うが違和感があるのはしょうがない。
(まあいいや、とりあえず作るか。)
俺は作成ボタンをタップしてつるはしを手に入れた。所持品は全てシステムデバイスにデータとして格納されているため、減った銅石も増えたつるはしの感覚もない。
ゲームなのだからそこまでの現実感は無くてもいい。あまりにリアル過ぎたら、それはそれで面倒だし、ゲームをやる爽快感や楽しみが苦痛に変わりそうだ。
さて次は、鉄鉱石かな。これも予想通りだった。
クエスト情報にはご丁寧に、鉄鉱石を採掘するにはつるはしが必要と記載があった。となれば、鉄鉱石を手に入れれば鍛冶屋で作成できるものが増えるだろうと思う。何が作れるようになるか分からないが、戦闘するのにアイテムや装備を整えるのは優先するものだろう。
(よし、納品クエストに行ってみるか。)
「ふぅ、疲れた。」
VR-HMDを外して部屋から出る。ダイニングに行くと、母さんがちょうどテーブルの上に料理を並べているところだった。
「親父はまだ帰ってないのか。」
夜7時を過ぎた事を示している時計を見ながら、俺は誰に聞くでもなく呟いた。
「昨日がたまたま早かったのよ。」
料理を並べている母さんが、俺の言葉に相槌を打つ。
「ヒナは今日も部活か。」
「ええ、でももうすぐ帰ってくる頃だと思うわ。7時くらいまでって言っていたから、今帰っている途中じゃないかしら。」
別に居ないからと何かあるわけじゃない。単に居ない事を確認しただけだ。
3歳下の妹、雛子は小学校からやっているバスケを、中学になってからも続けている。入学後直ぐに部活に入り、毎日遅くまで部活をしている。
小生意気な妹と顔を合わせなくて済むなら、それに越した事はない。
「じゃあ先に頂きます。」
「ええ。」
帰ってくる時間がバラバラなんで、食事の時間もバラバラだ。ただ食事は1食分を人数分注文するので、それぞれが好きなタイミングで出来立ての料理を食べられるから、時間が合わなくても冷めた料理を口にしなくてもいい。
母さんは親父が帰って来てから一緒に食べるので、テーブルの上にあるのは俺の分だけだ。
「ただいま。」
食べている最中にヒナが帰って来た。
「おかえり、ご飯すぐ食べる?」
「んー、先にシャワー浴びる。部活で結構汗かいたから、さっぱりしたい。」
「それじゃ、その間に用意しておくわ。」
母さんと妹の会話にさして興味も無いが、ちょっと待て。
「俺、飯食ったら風呂行くつもりだったんだよ。早めに終われよ。」
「うざ、きも・・・」
冷めた目線でヒナが言ってくる。俺の扱いはいつもそんなもんだ。何時からなのか憶えていない、気付けばそういう態度をとられていた。
「おにぃはどうせゲームやりたいだけでしょ。疲れて帰った妹に優しさは無いの。」
「うん、ない。」
ヒナは俺が座っている椅子の足を蹴りながら浴室に向かって行った。どうも見下されているようにしか感じない妹の発言だが、そういや最近、そんな事が増えたな。
あいつに関わった所為なんだよな・・・。と思って、鳳隆院の事を思い出す。
この後、クエストに付き合う事を考えると気が重い。
ヒナは母さんに良く似ていて、さらっとした黒髪ストレートで見た目だけならかなり可愛い。ただ目付きが良くない。態度も。まぁ、俺にだけかもしれないが。
面倒なので、家族だとしても家の中で出来れば顔を合わせたくない人物だ。
食べ終わってテレビを眺めながらそんな事を考えていると、ヒナがダイニングに来たので、俺は入れ替わりで浴室に向かった。
部屋に戻ると8時半、約束の時間までもう少しあるが、ログインして準備をしておこうと思った。準備と言ってもそんなに無いが。
クエストはボス以外、ご飯前に終わったので今はやる事がない。次のクエストは、どうやら今表示されているクエストを全て終わらせないと出ないようだった。
(そういや、鉄鉱石で新しい武器が作れた気がするな。)
それを思い出して鍛冶屋に向かう。
(お、あったあった。)
今装備しているのが、ゲーム開始時に貰ったショートソードで、作れるのがアイアンソードだ。鉄鉱石だから無難な名前だな。
(ん?)
その下にアイアンブレードという片手剣があったが、グレーアウトしている。見た目は片刃の片手剣だが、そっちの方が攻撃力が上だった。
(作るなら強い方がいいよな、でもグレーアウトしているって事は、材料が足りないんだろうな。)
アイアンソードは鉄鉱石4、銅石2、動物の骨。ブレードの方は鉄鉱石4、銅石3、闇イノシシの牙。つまりあれか、ボス倒さないと作れないって事か。材料の数もギリだし、作りたいならボス倒してからだな。
今出ているクエストなら、ショートソードでも十分だし、作るのはボスを倒してからにするか。プレイヤーレベルも10になって、ステータスも上昇したし、同じクエストをやるなら二人だったら直ぐに終わるだろう。
そんな事を考えながら、9時も近付いて来たのでクエスト屋に向かった。
クエスト屋に近付くと、既にアヤカが待っているのが見える。
げ・・・
遅いとか言われないだろうな、まだ9時前なんだけど。
理不尽な事を言われそうな気がしてならないが、行かない方が後で怖いのでアヤカの前まで移動する。
「急にクエストが増えましわ。」
第一声がそれだったので、少しほっとした。
「まだチュートリアルレベルだから、今後数も増え難易度も上がっていくだろうな。」
「お互い昨日から始めたばかりなのに、随分と偉そうに言いますわね。」
ゲームをやっている数が違うんだよと言いたいが、面倒だから相手にしない事にしよう。昨日から学んだじゃないか、理不尽には向かって行かない方がいいって。
「どのクエストから行くんだ?」
「何を言ってますの、それを決めるのがユアキスの役目でしょう。」
「俺はアヤカの付き人でも、使用人でも無いっつーの。」
あほか。何を言い出してんだこいつは。
「手伝うと言ったのは嘘ですの!?」
うざい・・・面倒だ・・・
「ゲームは基本自分でプレイするもので、クエスト受けるのも決めるのも本人がやる事だ。手伝うってのはそれをサポートするようなもので、俺がアヤカの行動を決めるのが手伝うじゃない。」
流石にこの辺ではっきりしておかないと、後々面倒な事になりそうだ。
「そう・・・ですわね。」
あれ、妙に大人しい反応だな。もっと理不尽な事を言い返されるかとも思ったんだけど。
「何分、初めての事だらけで甘えていたのは事実ですわ。刀を振りたい、それだけで始めたのですが、それをするためにいろいろ覚える事が必要ですのね。」
まぁ、その通りなんだが。今更感は拭えないが、すんなり受け入れるとは思って無かった。
「じゃぁ、行くクエストを選んでくれ。俺はあくまでそれを手伝うという形だからな。」
「分かりましたわ。」
今日、教室に居た時とは随分と印象が違うな。言っている事が阿呆な事に変わりないが、金持ちの高慢さが無いと言うか。
「これにしますわ、闇イノシシ。昨日は小さい的で、対峙している感が無かったんですの。子供と記載が無いという事は、きっと大きい予感がしますわ。」
うん、まずセオリーから説明が必要なようだな。
・・・疲れて来た。
「BOSSって書いてあるだろ。ゲームのセオリーとしては、最後の方に受けるクエストなんだよ。戦う為に必要な準備ってのが、その他のクエストで、地を固めから挑むのがオーソドックスなパターンだな。」
「そういう事ですのね。」
お、納得したか。
「つまり、勝てる可能性もあるって事ですわね。」
そっちに行ったか!
俺も試してないから無いとは言えないけど、なんで可能性の薄い方に行くかな。俺の説明は逆のつもりだったんだけど、我を優先して都合のいい解釈しやがったな。
「ユアキスの説明した内容は理解しましたわ。それでも、一度対峙してみたいのが武士というもの、付き合って頂けますわね?」
俺の説明必要無かったよな、これ。
しかも武士ってなんだよ、ただの高校生だろうが。いや、ただのじゃなくて令嬢だけど。
それはどうでもいいが、どうせ言っても聞きそうに無いしな、選択権はアヤカにあるって言ったのも俺だし。
「しょうがない。行ってみて駄目だったら、他のクエストから消化するんだぞ。」
「分かりましたわ。」
アヤカのクエストに参加して、俺とアヤカは街の出口へと向かった。俺もレベルは上がっているし、他のクエストも終わっているから、倒せないって事は無いだろうと思っていた。
そうじゃなかったら、自分主導で他のクエストやってたわ。
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街の門前で佇んでいるアリシアが目に入ると、俺のモチベーションが下がって行くのが分かった。
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