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クルライリア大陸編

六話 なんかムカツク

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すっかり馴染んでしまっているようね。ケイもしっかりとついていってるし。すぐ終わるなんて思っていた私が甘かった。メイの奴以外としぶといわね。最近よく思う。私も素直に同行すれば良かったかなと。アリィは思う。なんで私がこんなことで悩まなければならないんだ!あほメイ!


あたしたちはランチの卓にオヤジさんを迎え話しを聞くことにした。
「早速だが、一昨日から家のネコが行方不明でな、探して欲しいんだ。」
なんてことない普通の出来事だが、旅人に頼むことか?などと思いつつ、
「はぁ、ネコですか?」
などと相槌を打つ。正直旅の最中で猫探しなんてしたくない。
「うむ、それは冗談何だが。」
なるほど、冗談ね・・・って、殺そうかしら、このオヤジ。人の食事のおかず勝手に摘んでるし。ケイもなんだかイヤそうな顔をしている。
「まあ、そんな熱くなるでない、小娘よ。」
悪気があって言ってるんだろうか、このオヤジ。
「今からが本題だ。この村の先の山に、靜暗洞ってところがあるんだがな。」
を、なにやらまじめな話しっぽいぞ。
「靜暗洞っていやぁ、良く瞑想の為に使う洞窟の一つで有名だな。」
なんてことをケイが言ってる。ってあんた知ってるのか・・・。むしろそっちの方があたしにとって事件だわ。
「そうだ。だが最近妙な音がしてな、村人すらも気味悪がって近付きたがらないんだよ。」
妙な音ってどんな音だ・・・?
「呻き声のような、断末魔のような、よく説明出来ん。」
出来ないのか。でも気になるな。それに困ってるようだし、報酬もありかも。ケイはなんか胡散臭そうな顔していたが。
「気になっていたところへ、お主たちが現れたわけだ。」
ほほう、あたしってばこの村の救世主になったりして、えへへ。
「お主達ならば、赤の他人だし、どうなっても構わんからな。」
・・・このオヤジ、やっぱ殺るか?
「どうだろう、引き受けてはくれないか?報酬はちゃんと払う。」
まあ、このオヤジはいいとして、他の村人も困ってるんなら助けたいし、あたしに出来るかどうかわからないけど、やってみようかな。
「わかった。明日行ってみるよ。それと、」
「宿なら心配いらん。家に泊まればいい、部屋は空いてるし。明日、靜暗洞までは誰かに案内させよう。」
あたしの言葉を遮ったのはムカツクが、聞きたいことにたいしての回答だったのでよしとしよう。このオヤジなかなかやるな。
「準備が出来たら家にくればいい。俺の名はアクイス。村の者に聞けばわかる。」
「わかりました。」
と、返事をする。アクイスね。まあどっちみちオヤジに変わりないからオヤジでいいや。
「それでは、また後でな、まな板娘。」
と言いオヤジは店の出口に向かっていった。あたしはケイを見て首を傾げる。ケイは微妙に笑っていたが、あたしの行動を目にするとあたしを指さした後、自分の胸を撫で下ろす。ああ、そうゆうことか・・・。理解したあとオヤジ
を殴り倒したことは言うまでもないね。

刻は夕暮れ、ランチを食べ終わったあたしたちは、村の中を散歩していた。別にただ散歩していたわけではない。あの後オヤジの家に行って荷物を置いて、村の人にいろいろ聞いてまわっていた。どうやらオヤジの言っていた異
変は本当らしい。あたしはちょっと半信半疑だったが。そろそろ日が沈みそうなのでオヤジの家に戻ることにした。

この日はオヤジの家で夕食をご馳走になった。奥さんいい人だ。なんでこんなオヤジにってばっちり思っちゃったよ。オヤジは相変わらず、余計なことを言いまくりだった。
特にあたしをガキ扱いする発言が多かったが、ご馳走になってるし、奥さんがいい人だから静かにしていたが、あたしは思った。後でかならず殺ると・・・。まではいかないが、また殴っておかないと。ご飯をご馳走になった後は、少しゆっくりしてから明日に備えて就寝した。


さてと、あたしたちは今山道を歩いている。山道と言っても広いし、緩やかな勾配だから別にきつくもない。ここを行けば靜暗洞につくらしい。別に案内がいるほどのことでもないなと思った。
「見えてきました、あれが靜暗洞です。」
案内役の村人エイさんが言う。そのとき、
ゴォォォァァァ・・・
などと聞こえてきた。村人エイさんはちょっと怯えた感じで、
「すいません、ここまでで良いですか?」
などと聞いてきた。場所もわかったし別にこれ以上一緒にいる必要も無いでしょう。もともと案内だけなのだから。
「ああ、場所さえわかれば十分だ。」
「それでは、失礼します。」
ケイの言葉にそそくさと去る村人エイさん。去っていく後ろ姿はどうでもいいので見ずに、靜暗洞に目を向ける。
「じゃあ、行きますか。」
あたしの言葉にケイが頷く。

「特に変わったとこもないわね。」
あたしは靜暗洞入り口のところで、そんなことを呟く。まあ、入り口しかまだ見てないのだけど。
「早速入ってみようぜ。」
ケイが言うと、あたしはランプに火を灯す。
「明かりの魔法使えよ・・・ってお前のじゃ、ホタル並の光しか出ないか・・・」
うっさいなぁ、もう。とぼやきつつ中へ入る。こんな感じは初めてだ。外と中の空気が違う。それに寒いし。
「基本的に洞窟の中は涼しいもんだ。」
それはわかってるけど、突然がらりと変わるのもどうかと思うんだけど。
「中は一本道だそうだ。」
それから十分ほど歩いていくと結構広めの空間に出た。なかなかいい空間じゃん。なんて思って先へ進もうとしたら、ケイがあたしの方を掴んで引き寄せる。ダメだよ、こんなところじゃ・・・なんて冗談はさておき、
「先になんかいるぞ。」
げっ、マジ?いやだなぁ、あんま脅かさないでよね。なんて思っていたら向こうの暗がりから何かが出てきた。
「うひゃぁ!」
「なに悲鳴上げてんだよ。」
だってやっぱ恐いじゃん。そしてそれがなにか判別出来るほどにまで近づいた。
「ケ・・・ケルベロス!」
ガスッ!
・・・いったぁ~。なんで殴るかなぁ、もう。
「飛躍し過ぎだっつーの、ただの犬じゃねーか。」
なんだ、犬か。脅かしやがって。こんな暗い洞窟で生物に出くわしたら驚くのが普通だっての。
「アホ・・・いいから先に進むぞ。」
へいへい。

ケルベ・・・もとい、ワンちゃんに遭遇してから十五分くらい歩いたところで行き止まりに着いた。行き止まりというか最深部か、家一件くらい入りそうな勢いの広さだった。
「此処が噂の瞑想場所か。」
中央の広場には人の手が加えられたあとがあった。ケイの言うとおり、そうなのだろう。
ゴオオオオオ・・・
突然もの凄い音と共に洞窟内が共振する。
「なんなの、これ!?」
出てきた台詞は普通だが、内心ドキドキだ。ってゆうかかなりびびった。
「さあな、音の正体はわからんが、なんか出そうな雰囲気だな。」
「勘弁して、冗談でも。」
あたしはイヤだ。例え冗談でも出てくるな。いや、出てきたら冗談じゃなくなるんだけど。
「とりあえず調べるか?」
「一応請け負ったしね、適当に調べて帰ろう。」
「適当かい・・・」
あたしは広場の中央へ向かった。そして広場の真ん中には大きな魔法陣みたいなのが描いてあった。描いてあると言うよりは、掘ってあるといった感じだ。その陣にあたしが足を踏み入れたとたん、陣の中央にうっすらと白く光る人型みたいのが現れた。
「うわぁぁぁっ!」
あたしは叫んで、「でたよぉ」と言いながら後ろを振り返った・・・ってケイ?・・・
「いやぁぁぁぁぁぁっ!なんでいないのよぉっ!!?」 
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