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気を失うように眠りについたマリカが次に目を覚ました時、レオンハルトとブリュンヒルデの言い争う声が聞こえてきた。
「マリカが憐れだ。親兄弟にも会えず、たった一人異国の地で命を落とすなんて」
「絶対に死なせるものか」
「私だってマリカに死んでほしくない。だが、今の状況を冷静に考えてくれ。せめてもう一度、家族に会わせてあげたいと思わないのか」
「俺がマリカの家族だ。ライルもいる。ヒルデだってマリカを家族同然に思っているんじゃないのか」
「私もマリカを妹のように愛している。だが、彼女の幸せを思えばこそ、霧の国に帰してやるべきだと言っている」
「嫌だ。俺はマリカを失ったら生きていけない」
レオンハルトの悲痛な声が室内に響いた。
「レオンハルト様……」
マリカの意識が戻ったことに気付いたレオンハルトが駆け寄ってきた。
「マリカ……俺のマリカ……」
漆黒の瞳から涙が零れ落ちる。やせ細ったマリカの手をレオンハルトの大きな手が包み込んだ。
「死ぬな。俺にはおまえが必要だ。死なないでくれ」
溢れる涙を拭いもせずレオンハルトはむせび泣いた。
可哀想に、こんなに取り乱して――…。
大きな逞しい体が、ひどく頼りなく見える。
このままマリカが死んだら、この人も駄目になってしまうかもしれない。
そんなの駄目――。
マリカは必死に力を入れ、レオンハルトの手を握り返した。
自分が死ぬのは犯した罪の報いだと思っている。
だからマリカはそれでいいと思っていた。
けれど、レオンハルトを道連れにするわけにはいかない。
生きる気力を失い、水も薬も自分から求めたりはしなかった。
無理に飲まされても、ここ2日は吐いてしまって体内に取り込むことはできずにいる。
このままならマリカは数日中に命を落とすだろう。
けれど――…生きなければ。
この方一人に苦しみを背負わせて楽になることはできない。
「お薬を」
掠れる声でそう告げると、マリカの手に縋るように泣き崩れていたレオンハルトがハッとしたように顔をあげた。
レオンハルトがマリカを抱き起こし、吸い口を唇に押し当てた。
吐いてしまわないように、少量ずつ時間をかけて飲み下していく。
「少しだけ、こうしていてください」
薬がすっかりおなかの中におさまるまで背を支えて貰う。
その間も、レオンハルトの涙は止まらなかった。
「大丈夫。私は死にません。貴方をおいて死ねない」
涙に濡れた頬に手を伸ばすと、壊れ物を扱うようにそっと抱きしめられた。
こみあげる嘔気を必死に抑え、こまめに水分を補給し眠る。
それを繰り返すうちに、マリカの身体はゆっくりと回復していった。
「マリカが憐れだ。親兄弟にも会えず、たった一人異国の地で命を落とすなんて」
「絶対に死なせるものか」
「私だってマリカに死んでほしくない。だが、今の状況を冷静に考えてくれ。せめてもう一度、家族に会わせてあげたいと思わないのか」
「俺がマリカの家族だ。ライルもいる。ヒルデだってマリカを家族同然に思っているんじゃないのか」
「私もマリカを妹のように愛している。だが、彼女の幸せを思えばこそ、霧の国に帰してやるべきだと言っている」
「嫌だ。俺はマリカを失ったら生きていけない」
レオンハルトの悲痛な声が室内に響いた。
「レオンハルト様……」
マリカの意識が戻ったことに気付いたレオンハルトが駆け寄ってきた。
「マリカ……俺のマリカ……」
漆黒の瞳から涙が零れ落ちる。やせ細ったマリカの手をレオンハルトの大きな手が包み込んだ。
「死ぬな。俺にはおまえが必要だ。死なないでくれ」
溢れる涙を拭いもせずレオンハルトはむせび泣いた。
可哀想に、こんなに取り乱して――…。
大きな逞しい体が、ひどく頼りなく見える。
このままマリカが死んだら、この人も駄目になってしまうかもしれない。
そんなの駄目――。
マリカは必死に力を入れ、レオンハルトの手を握り返した。
自分が死ぬのは犯した罪の報いだと思っている。
だからマリカはそれでいいと思っていた。
けれど、レオンハルトを道連れにするわけにはいかない。
生きる気力を失い、水も薬も自分から求めたりはしなかった。
無理に飲まされても、ここ2日は吐いてしまって体内に取り込むことはできずにいる。
このままならマリカは数日中に命を落とすだろう。
けれど――…生きなければ。
この方一人に苦しみを背負わせて楽になることはできない。
「お薬を」
掠れる声でそう告げると、マリカの手に縋るように泣き崩れていたレオンハルトがハッとしたように顔をあげた。
レオンハルトがマリカを抱き起こし、吸い口を唇に押し当てた。
吐いてしまわないように、少量ずつ時間をかけて飲み下していく。
「少しだけ、こうしていてください」
薬がすっかりおなかの中におさまるまで背を支えて貰う。
その間も、レオンハルトの涙は止まらなかった。
「大丈夫。私は死にません。貴方をおいて死ねない」
涙に濡れた頬に手を伸ばすと、壊れ物を扱うようにそっと抱きしめられた。
こみあげる嘔気を必死に抑え、こまめに水分を補給し眠る。
それを繰り返すうちに、マリカの身体はゆっくりと回復していった。
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