薄氷が割れる

しまっコ

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春になり、マリカは15歳になった。 
レオンハルト本人はもちろん、ブリュンヒルデとジークフリートも晴れやかな笑顔でマリカの成人を祝ってくれた。 
目覚めてから三月、マリカは自分の存在が、この国では異物であることを感じ取っている。
いつもそばにいてくれるレオンハルトとブリュンヒルデ、侍医のカフカ、数人の側近たちを除いてマリカが心を許せる者はいない。
それでも皇帝であるレオンハルトの寵愛を受けているマリカに対して表立って暴言を吐く者はいなくなり、人々はマリカに恭しく傅くようになった。 

マリカが成人したことで、二人の婚儀が執り行われることとなった。 
婚儀では、互いを伴侶として心を捧げることを誓った後、レオンハルトの手でマリカの頭に皇妃の冠が載せられる。 
「おまえは俺の生涯ただ一人の妃だ。この先、俺がおまえ以外の女を抱くことはない」 
レオンハルトは参列する臣下たちの前でマリカに跪き、マリカの手を取ってそう宣言した。 
あの時の言葉通り、レオンハルトはマリカをこの上なく大切にしてくれる。 
マリカは感謝の涙を流し、レオンハルトへの愛と忠誠を誓った。
 
婚儀の次は床入れの儀だ。 
しかし直前になり、悶着が勃発した。 
慣例通り、重臣たちに二人の床入れを公開し皇妃の蜜壺に子種が注がれたのを確認することを、レオンハルトが拒んだのである。 
「最愛のつがいを晒し物になどできるわけがない。マリカの身体をなぜおまえたちに見せねばならない?」 
怒りの滲む声で吐き捨てるレオンハルトに、重臣たちは苦い顔をした。 
「しかし、皇妃殿下をたった一人の妃となさるなら、陛下の嫡子をお産みできるのも皇妃殿下おひとりです。子種を受け止め子を孕める身体であることを証明していただかなければ」 
「ならば侍医にマリカの診察をさせ、見届け人とする」 
レオンハルトは食い下がる家臣を不穏な目で睥睨し、それ以上の反論を許さなかった。 

こうして迎えた初夜であるが、意外なところからも反論があがった。 
ブリュンヒルデとカフカである。
二人は行為の最中から見届け人として立ち会うと言って譲らなかった。 
「君がマリカを壊してしまわないか心配だ。カフカにはマリカの身体を守るための助言をさせる」 
姉ともいうべきブリュンヒルデにそう言われ、レオンハルトも受け入れざるを得なかった。 
「……わかった。カフカの立ち合いは認めよう。しかし、ヒルデまで立ち会う必要はない」 
「君が暴走した時、カフカには止めることができない。私が立ち会うのはそのためだ」 
「……」 
人に見られた状態で男を受け入れる初夜は、マリカにとってつらい時間になるかもしれない。しかし、マリカの身を守るためと言われれば、レオンハルトには反論できなかった。 
実際レオンハルトはあの蜜壺を貫く日を心待ちにしていたし、その日を夢見て無邪気に眠るマリカの隣でいきり立つ雄芯を自身の手で何度も慰めてきたのだ。
今だってマリカの薄紅色の花弁や可愛らしい花芯を思い出しただけで体の中心に熱が溜まり、歩くのも不自由するほど雄芯が腫大する。
そんなレオンハルトが夢中になってマリカを壊してしまうことを、ブリュンヒルデは危惧しているのだ。 
「わかった」 
結局、二人の立ち合い下、レオンハルトとマリカの床入れが行われることになった。
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