10 / 36
10
しおりを挟む
春になり、マリカは15歳になった。
レオンハルト本人はもちろん、ブリュンヒルデとジークフリートも晴れやかな笑顔でマリカの成人を祝ってくれた。
目覚めてから三月、マリカは自分の存在が、この国では異物であることを感じ取っている。
いつもそばにいてくれるレオンハルトとブリュンヒルデ、侍医のカフカ、数人の側近たちを除いてマリカが心を許せる者はいない。
それでも皇帝であるレオンハルトの寵愛を受けているマリカに対して表立って暴言を吐く者はいなくなり、人々はマリカに恭しく傅くようになった。
マリカが成人したことで、二人の婚儀が執り行われることとなった。
婚儀では、互いを伴侶として心を捧げることを誓った後、レオンハルトの手でマリカの頭に皇妃の冠が載せられる。
「おまえは俺の生涯ただ一人の妃だ。この先、俺がおまえ以外の女を抱くことはない」
レオンハルトは参列する臣下たちの前でマリカに跪き、マリカの手を取ってそう宣言した。
あの時の言葉通り、レオンハルトはマリカをこの上なく大切にしてくれる。
マリカは感謝の涙を流し、レオンハルトへの愛と忠誠を誓った。
婚儀の次は床入れの儀だ。
しかし直前になり、悶着が勃発した。
慣例通り、重臣たちに二人の床入れを公開し皇妃の蜜壺に子種が注がれたのを確認することを、レオンハルトが拒んだのである。
「最愛のつがいを晒し物になどできるわけがない。マリカの身体をなぜおまえたちに見せねばならない?」
怒りの滲む声で吐き捨てるレオンハルトに、重臣たちは苦い顔をした。
「しかし、皇妃殿下をたった一人の妃となさるなら、陛下の嫡子をお産みできるのも皇妃殿下おひとりです。子種を受け止め子を孕める身体であることを証明していただかなければ」
「ならば侍医にマリカの診察をさせ、見届け人とする」
レオンハルトは食い下がる家臣を不穏な目で睥睨し、それ以上の反論を許さなかった。
こうして迎えた初夜であるが、意外なところからも反論があがった。
ブリュンヒルデとカフカである。
二人は行為の最中から見届け人として立ち会うと言って譲らなかった。
「君がマリカを壊してしまわないか心配だ。カフカにはマリカの身体を守るための助言をさせる」
姉ともいうべきブリュンヒルデにそう言われ、レオンハルトも受け入れざるを得なかった。
「……わかった。カフカの立ち合いは認めよう。しかし、ヒルデまで立ち会う必要はない」
「君が暴走した時、カフカには止めることができない。私が立ち会うのはそのためだ」
「……」
人に見られた状態で男を受け入れる初夜は、マリカにとってつらい時間になるかもしれない。しかし、マリカの身を守るためと言われれば、レオンハルトには反論できなかった。
実際レオンハルトはあの蜜壺を貫く日を心待ちにしていたし、その日を夢見て無邪気に眠るマリカの隣でいきり立つ雄芯を自身の手で何度も慰めてきたのだ。
今だってマリカの薄紅色の花弁や可愛らしい花芯を思い出しただけで体の中心に熱が溜まり、歩くのも不自由するほど雄芯が腫大する。
そんなレオンハルトが夢中になってマリカを壊してしまうことを、ブリュンヒルデは危惧しているのだ。
「わかった」
結局、二人の立ち合い下、レオンハルトとマリカの床入れが行われることになった。
レオンハルト本人はもちろん、ブリュンヒルデとジークフリートも晴れやかな笑顔でマリカの成人を祝ってくれた。
目覚めてから三月、マリカは自分の存在が、この国では異物であることを感じ取っている。
いつもそばにいてくれるレオンハルトとブリュンヒルデ、侍医のカフカ、数人の側近たちを除いてマリカが心を許せる者はいない。
それでも皇帝であるレオンハルトの寵愛を受けているマリカに対して表立って暴言を吐く者はいなくなり、人々はマリカに恭しく傅くようになった。
マリカが成人したことで、二人の婚儀が執り行われることとなった。
婚儀では、互いを伴侶として心を捧げることを誓った後、レオンハルトの手でマリカの頭に皇妃の冠が載せられる。
「おまえは俺の生涯ただ一人の妃だ。この先、俺がおまえ以外の女を抱くことはない」
レオンハルトは参列する臣下たちの前でマリカに跪き、マリカの手を取ってそう宣言した。
あの時の言葉通り、レオンハルトはマリカをこの上なく大切にしてくれる。
マリカは感謝の涙を流し、レオンハルトへの愛と忠誠を誓った。
婚儀の次は床入れの儀だ。
しかし直前になり、悶着が勃発した。
慣例通り、重臣たちに二人の床入れを公開し皇妃の蜜壺に子種が注がれたのを確認することを、レオンハルトが拒んだのである。
「最愛のつがいを晒し物になどできるわけがない。マリカの身体をなぜおまえたちに見せねばならない?」
怒りの滲む声で吐き捨てるレオンハルトに、重臣たちは苦い顔をした。
「しかし、皇妃殿下をたった一人の妃となさるなら、陛下の嫡子をお産みできるのも皇妃殿下おひとりです。子種を受け止め子を孕める身体であることを証明していただかなければ」
「ならば侍医にマリカの診察をさせ、見届け人とする」
レオンハルトは食い下がる家臣を不穏な目で睥睨し、それ以上の反論を許さなかった。
こうして迎えた初夜であるが、意外なところからも反論があがった。
ブリュンヒルデとカフカである。
二人は行為の最中から見届け人として立ち会うと言って譲らなかった。
「君がマリカを壊してしまわないか心配だ。カフカにはマリカの身体を守るための助言をさせる」
姉ともいうべきブリュンヒルデにそう言われ、レオンハルトも受け入れざるを得なかった。
「……わかった。カフカの立ち合いは認めよう。しかし、ヒルデまで立ち会う必要はない」
「君が暴走した時、カフカには止めることができない。私が立ち会うのはそのためだ」
「……」
人に見られた状態で男を受け入れる初夜は、マリカにとってつらい時間になるかもしれない。しかし、マリカの身を守るためと言われれば、レオンハルトには反論できなかった。
実際レオンハルトはあの蜜壺を貫く日を心待ちにしていたし、その日を夢見て無邪気に眠るマリカの隣でいきり立つ雄芯を自身の手で何度も慰めてきたのだ。
今だってマリカの薄紅色の花弁や可愛らしい花芯を思い出しただけで体の中心に熱が溜まり、歩くのも不自由するほど雄芯が腫大する。
そんなレオンハルトが夢中になってマリカを壊してしまうことを、ブリュンヒルデは危惧しているのだ。
「わかった」
結局、二人の立ち合い下、レオンハルトとマリカの床入れが行われることになった。
0
お気に入りに追加
265
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
君は僕の番じゃないから
椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。
「君は僕の番じゃないから」
エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが
エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。
すると
「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる
イケメンが登場してーーー!?
___________________________
動機。
暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります
なので明るい話になります←
深く考えて読む話ではありません
※マーク編:3話+エピローグ
※超絶短編です
※さくっと読めるはず
※番の設定はゆるゆるです
※世界観としては割と近代チック
※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい
※マーク編は明るいです
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました
しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。
そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。
そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。
全身包帯で覆われ、顔も見えない。
所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。
「なぜこのようなことに…」
愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。
同名キャラで複数の話を書いています。
作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。
この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。
皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。
短めの話なのですが、重めな愛です。
お楽しみいただければと思います。
小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる