忘却の勇者と魔女の願い

胡嶌要汰

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第17話「合否と初の依頼」

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 試験開始の合図と共に飛び出した少年だが、

「主人よ! 今、主人は剣士ではない!」
 念話で聞こえるコルディスの呼びかけにより少年は走るのをやめた。

「どうした? かかってこないのか? なら、本物の太刀を見せてやるよ!!」
 ラグディアの勢いのある前傾姿勢の攻撃は少年に向かって走る。

「【竜族魔法】〈硬鱗〉!!」
 少年に攻撃が当たる寸前、コルディスの竜族魔法で強化された竜の鱗はラグディアの太刀を弾き返した。

「クッ! 小竜ミニドラゴンが!! 硬ぇ!!」
 ラグディアは弾き返されながらも太刀を構え、次へ次へとコルディスに攻撃を繰り返した。
 耐えていたコルディスは防御と攻撃を繰り返すも、小さいままの姿でいるせいか、少しずつ体力が消耗して行った。

「ほら! どうした!? ペットの小竜ミニドラゴンがやられちまうぞ!? お前は攻撃しないのかよ!?」
「【竜族魔法】! 〈竜の咆哮〉!!」
 コルディスは口から青く煌びやかな炎をラグディアの顔目掛けて放つ。

「おっと、そんな技じゃ当たらないぜ! おら!」
 コルディスに向け力強く叩きつけた太刀は硬い鱗のあるコルディスを気絶させた。

「主人よ、無念。」
 コルディスはそのまま動かなくなった。

「さて、次はお前だぞ?」
 ラグディアはゆっくり、少年に向かって歩く。
 少年もラグディアが近づくに連れ、太刀を構えるが、ラグディアの殺気に剣先が震えていた。
 エルフの修行を受け、更に強くなった少年。
 なのに、コルディスがやられ、意図していない恐怖が少年を怯えさせた。

「決まりだな。」
 ラグディアは太刀を真上に上げ、少年に振り下ろす。
 少年はラグディアの太刀を受け止める様太刀を横に構えた。

「お前、合格。」
「……?」
 少年はラグディアの言っている事について行けなかった。

「あれ? わからなかったか? ノーディス、お前は冒険者として合格だ。」
「ッな、ッなんで?」
 ラグディアは何故か少年に合格通知を出した。

「お前は強い、それだけだ。」
 ラグディアは少年に一言言い残して、去って行った。

「あ、終わりましたか?」
 決闘場に入ってきた受付嬢は少年に近づき、カードを渡した。

「ラグディアさんがトドメを刺さずに合格を出したかわかりますか?」
 受付嬢の質問に少年は食い気味に首を横に振った。

「ふふ、ラグディアさんは技能スキルの他に恩恵ギフトがあるんです。」
「ッぎ、ッ恩恵ギフト?」
恩恵ギフト技能スキルと違い、後天的に身に付かない生まれながらに恵まれた能力の事なんです。」
「ッラグ、ッディアは、ッな、ッなんの、ッ恩恵ギフト?」
「ラグディアさんは【分析鑑定アナリシス】と言う恩恵ギフトを持っているのです。これは相手の能力、技能スキルを全て見透かすことができるのです。あなたはラグディアさんが認める程の実力の持ち主なんですね。」
 受付嬢は微笑み、決闘場から元の職場に戻った。

「主人よ、申し訳ない。我は我の強さを過剰していた。故に、我もこの身体で戦える様、努力を惜しまない。」
 コルディスの誓い。
 それは少年とコルディスの従属魔法を強くさせた。
 誰もいない決闘場。
 その真ん中に位置する少年とドラゴンが1匹。従属の力が強くなり、ドラゴンが青く、光り、通常の姿から鱗が倍以上に鋭く大きくなった。

「これは、、、そうか、我は主人と共にいる事で進化が。我は主人との出会いに感謝する。」
 心竜コルディス、従属魔法の契約、そして主人であるノーティとの信頼関係、経験値により心鑑龍コルディスへと進化を遂げた。

 魔物の進化は魔物使い。いわゆる、〈テイマー〉の冒険者登録に必須の条件だった。
 少年は冒険者ギルドの受付に向かった。

「あら? ノーディスさん。どうされたんです?」
 受付嬢はコルディスを見るたび、ハッ、とした表情で察した。

「わかりました。ノーディスさんはランクを1段階上げてE級冒険者のカードにしますね。」
 受付嬢は少年のカードを受け取り、カードの登録を行なった。

「あ、言い忘れてました。私はナナミって言います。これから頑張ってくださいね。はい、これノーディスさんの冒険者カード。」
 ナナミはニッコリとノーディスの冒険者カードを渡した。

「何か、依頼を受けますか? 1つ上のDランクの依頼まで受けることができます。掲示板に貼られている依頼を選んで持ってきてください。」
 少年は頷き、受付横の掲示板に足を運ぶ。
 E級の依頼は迷い猫の捜索依頼にスライムやゴブリンの最弱魔物の討伐。しかも魔物使いテイマー指定の依頼は荷物運びのみだった。

「主人よ、これなんかどうだろうか?」
 コルディス念話で話し、依頼用紙を手に取り少年に渡した。

「これは、『荷物運び』?」
「えぇ、初めての依頼にしてはいい報酬金です。やるには打ってつけだと。」
「わかった。」
 少年は受付に依頼用紙を提出した。

「あら? この依頼を受けるのですね。受諾しました。明日の朝方、アカサカ邸に行ってください。」
 少年は依頼を受け、その日は孤児院に帰って行った。
 その道中。

「ノーティ、依頼受けれた?」
 エスティは少年に笑顔で冒険者の依頼について話し出した。

「ッう、ッうん。」
「何の依頼?」
「主人は『荷物運び』の依頼を受けたぞ。」
「荷物運びかぁ。悪くないんじゃない? コルディスもいる事だし。」
 3人は笑顔で帰り、次の日に備えてゆっくりと寝た。

 翌日。
 少年達は依頼を受けたアカサカ邸に着いた。
 早朝からの依頼だった為、少年達は眠たそうにしていた。

「おやおや、朝早くからすみませんねぇ。」
 玄関先で少年達が待っているとゆっくり大きい歩幅でこちらに来るアカサカ邸の主人らしき人が来た。

「初めまして、私はここ、アカサカ邸の主人をしております。ノリフミ=アカサカと申します。」
 老け気味のアカサカは丁寧にお辞儀をして少年達を別室に案内した。

「あなた、ドラゴンの魔物使いテイマー何ですね。初めて見ました。依頼を出してよかったです。」
 初めて見れた喜びか、コルディスを見て笑顔でいた。

「さぁ、ここの荷物を運んで欲しいのです。」
 着いた扉を開けるとそこには大量の日用品や回復薬、書物などが積まれていた。

「これを私の経営する『赤坂商店』に運んで欲しいのです。少しずつで構いません。道は私が案内しますので着いてきてください。」
 少年は依頼の品を魔法袋マジック・バックにあるだけを詰め込もうとした。
 だが、最後の1つだけ入らなくなってしまった。

「ほぅ、魔法袋マジック・バックを持っている方だったとは。いやぁ、ありがたいです。ですが、それは劣化版ですね。容量制限がかかった物ですと粗悪品扱いになってしまいますね。」
 アカサカは少年の魔法袋マジック・バックをじっくり見るなり、そう言った。
 少年は最後の1つを魔物使いテイマーの様にコルディスに持たせてアカサカと共に外に出た。
 赤坂商店にはそう遠くなかった。
 すぐに荷物を運び、アカサカから報酬金の銀貨80枚を少年に手渡した。

「いやぁ、ありがとうございます。お陰で助かりました。また機会がありましたら。」
 アカサカはまた丁寧にお辞儀をして、少年と別れた。
 その後、少年達は孤児院に帰った。

「ノーティ、今日の依頼どうだった?」
「主人は見事な働きをしたぞ! ほれ、この報酬金を見てみろ!」
 コルディスは自慢気に報酬の入った袋をドサッ、と置く。

「す、すごい。銀貨80枚。私も負けてらんないわ。明日はノーティの倍稼いでやるんだから。」
「主人は負けんぞ。」
 こうして少年は、帝国内で冒険者の登録をし、依頼も受けられる様になった。


 ~その一方で~

「おい、あのガキの所在はわかったか?」
「えぇ、もちろん。私のこの【分析鑑定アナリシス】の能力ちからを使い調べましたが、間違いなく彼が我らの敵でしょう。」
 襖越しで話す男の声の者と男は少年について話していた。
 それもまた少年に向かう災難の1つであった。
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