忘却の勇者と魔女の願い

胡嶌要汰

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第4話「豪邸とギルド」

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 ラーニャ達と共に少年達はクレニア街に入って行った。
 領主の娘の護衛依頼として無償で村に入れてくれた。
 クレニア街は武具の売買から雑貨の商業まで冒険者で賑わっていた。
 その街の1番大きな建物、領主宅の前へ馬車は止まった。

「ささ! ここが私の家! 上がって上がって!」
 かなりの豪邸だ。

「おお! これがお嬢さんの豪邸か! すげぇな!」
「こんな家、初めてだ」
 ゴルダ、ユリス共に目を輝かせている。
 そして、少年も目をキラキラと輝かせていた。

 少年達3人は、門をくぐり豪邸内に入って行った。
 そこには家政婦が数十人働いていた。

「おいおいマジかよ。こんなに家政婦って働いてるもんなの?」
 ゴルダ以上にユリスははしゃいでいた。

「それでは御3方は私と共に」
 オリバーが3人を別室に連れて行く。

「ここで、あなた達は宴までの間休息をしていただきます。」
「へぇ、やっぱ部屋も豪華だな!」
 ユリスが更に目を輝かせる。

「ほほほ、まぁ支度が済みますまで心地よい時間をお過ごしください」
 オリバーは扉を閉めて何処か行ってしまった。

「はぁ~疲れた。」
「魔物との戦闘で疲労が溜まったか?」
「そうだよ。だから今こそ! ダラダラする時だ!」
 ユリスは意外とダラけている暗殺者アサシンだった。
 そこからは各自の休息をとった。
 主に武器の手入れだった。
 大剣、太刀、短剣をそれぞれ丁寧に手入れした。

「おい、小僧。その太刀、少し見せてくれんか?」
 少年はゴルダに太刀を見せた。

「かなり年季が入っているが、これは業物だな。しかも、帝国の名刀工が打っているな」
 ゴルダの刀への知識は博識で、ずっと太刀を見ている。

「あぁ、すまんすまん。俺はあらゆる刃物が好きでな、色々調べているんだ。」
「こいつは昔からそうだよ。」
 ソファで寝転がっていたユリスが話しかける。

「ま、そう言う事だ。その太刀が気になるなら帝国に行けば良かろう」
 コクリ、と少年は頷く。
 
 その会話から数分後。

「お待たせいたしました。宴の支度が整いました。」
 オリバーが3人を会場に連れて行った。

「お、やっときた!」
 そこには可憐な姿のラーニャと従者達、そしてクレニア領、領主……

「これはこれは、今回の護衛任務ご苦労様です。私クレニア領、領主、アーステルダ=クレニアと申す。以後お見知り置きを」
 アーステルダの威厳はピリピリと少年に向けられた。

「これはほんの御気持ちですので気兼ねなくお食べください」
 卓上には肉料理、魚料理と豪勢な料理が並んでいた。
 少年達はムシャムシャと掻き込むように食べる。

「ゲホッゲホッ」
 少年のご飯が胸につっかえたようだ。

「そんなに焦らずとも料理は逃げませんよ?」
 少し微笑むアーステルダ領主。
 だが、先程から少年の事ばかり見続けている。
 いや、監視されているような気分だった。

「おい、ゴルダ。リーダーとの約束の時間じゃね?」
「お、そうだった。あと1時間ほどか」
「どうかされましたか?」
 ゴルダとユリスの話にラーニャが問い訪ねる。

「いや、折角のところ悪いんだが今日は迷宮ダンジョン攻略の約束があるんだ。」
「なるほど、今から迷宮ダンジョン攻略するのにそんなに食べて大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。こう見えて胃袋でかいんだぜ」
 意気揚々にユリスが答える。

「では、また何処かで創造神の加護があらんことを」
「創造神の加護があらんことを」
「じゃあな小僧!」
 オリバーから依頼料を貰い、手を振る2人。
 そして、2人はクレニア領宅を後にした。

「さて、ここから本題に入ろうか」
 領主が少年に鋭い眼光を向ける。

「お前は、悪魔憑きか?」
 領主の殺気立つ一言で少年の鼓動が早くなり、額に汗が出て何より恐怖心が心の中を埋め尽くすようだった。

 ゆっくり、少年はコクリ、と頷いた。

「やはりそうか、すまないがこの家から出て行ってもらおうか」
「ちょっとお父様!」
 ドン、と机を叩いたラーニャは領主に怒りの眼差しを向けた。

「ラーニャ、私が悪魔憑きを好かない事はお前がよく知っているだろう。」
 領主は頭を抱えラーニャに訴える。

「そんなの知らない! でも、ノーティは私の命の恩人でもあるの! その人を侮辱するなんて許せない!」
「ラーニャ、落ち着いてくれ悪魔憑きはいつ忘虐化するかわからないんだ。それに娘を巻き込みたくないのは親の勤めだ」
 親子の口喧嘩を聞いた少年は徐に席を立った。

「ありが、ッと、ッとう、ござい、ッました」
 そう言って少年は領主宅を出て行こうとした。

「わかればいいんだ」
 領主は安堵の表情を見せた。

「お待ちください。」
 少年を呼び止めるようにオリバーが少年に駆け寄ってきた。

「こちらを」
 今回の依頼料だった。
 それもかなりの額が入っていそうな重さであった。

「今回の依頼料ですが、あなた様は冒険者でない故、3割ほど減らしてあります。それでは、お気をつけて。創造神の加護があらんことを」
 少年は領主宅を出て行った。

 領主宅を出て少年が最初に向かったのは冒険者ギルドだった。
 馬車で聞いたことを頼りに冒険者ギルドを探す少年だった。

(ここか)
 酒場の隣、冒険者ギルドの看板を見つける。
 少年は冒険者ギルドの扉を開けた。

 そこには冒険者で溢れかえるほど人集りがあった。
 少年は受付カウンターに続く列に並んだ。
 かなり時間がかかりそうだった。
 少年の番がもうすぐ回ってくる時のことだった。

「おいしょ、いやぁ~今日の依頼も疲れたなぁ。」
「そうですねぇ、アニキ!」
 少年の前を割り込む蛮族のような男とそれに従える背の低い男。
 少年はトントン、と男達の肩を叩く。

「んあ? なんだテメェ?」
 男は鋭く睨みつける。

「ッぬ、ッ抜かした。」
「あ? 知らねぇな! 俺はずっとここにいたぞ? それともなんだ? この俺様に喧嘩売ろってのか?」
「そんなはずねぇですぜアニキ! こいつがアニキに勝てるわけねぇですぜ!」
 2人は笑っている。
 悪い笑い方だ。
 あの男のことを思い出す。
 イライラしてくる。

「あ? なんだその目? 本当にやろうってのか?」
 少年の目は憤りを感じていた。

「気にくわねぇな! 死ね!」
 男は持っていた剣を少年に向けて振り下ろす。
 少年はそれを難なくと防いだ。

「や、やるじゃねぇか。ならもう1発!」
「やめろ!」
 ギルドの受付の奥から貫禄のある男が怒鳴りながらこちらにやって来る。

「レイバント、お前ここで剣を抜くとはわかってるよな?」
「あ、あぁ!? うっせぇ!」
「はぁ、相手は見たこともない素人だ。」
「ギルド長! 俺はこいつに苛立ってんだ! こいつをぶちのめしてやりてぇ!」
 どうやら、2人を止めたのはこの冒険者ギルドのギルド長のようだ。
 
「ふむ、冒険者ならば決闘で決めるべき。だが、そいつは冒険者ではない。少年よ、ここで登録をするか?」
 少年はコクリ、と頷く。

「なら、好都合。ギルド長権限で決闘と登録試験を同時に行う!」
 この瞬間、ギルドが騒ついた。
 そして、少年達は決闘場へ案内された。
 
「両者、位置に。」
 それぞれ、立ち位置に着く。

「今回の決闘ではこの模擬刀で試合をしてもらう。そして、どちらかの決着がついた時決闘もとい、冒険者登録を完了とする。」
 ギルド長の指示の元、2人に木で出来た模擬刀が配られた。
 軽く、しなやかな模擬刀は少年の使う太刀とは長さが短すぎた。

「は!、これでお前をぶちのめせるってわけだ。」
 レイバントとと言う男は人差し指と薬指を少年に向け、クイっと曲げて挑発した。

「これより、Cランク冒険者、レイバント対受験者の決闘を始める!!」
 この声に決闘を見に来た多少の観客がパチパチ、と手を叩いた。

「両者、構え!」
 各々、武器を構えた。

「決闘、開始!!」
 その合図で男は少年に飛びかかった。
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