死霊術師の人生日記

胡嶌要汰

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第5章

第四十六話「魔王」

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 コツコツ、と革靴で歩いているかのような足音でこちらに向かってくる。

「ヨウという者は貴様か?」

 牢獄の目の前に立って聞いてきたのは高身長のタキシードをきた人だった。

「ヨウは俺です。」

 俺が答えるとタキシードをきた高身長の男の人は俺の方をギロッと睨みつけた。

「魔王様がお呼びだ。今から転移魔法を使う。それまでにそこの人間どもをどうするか決めろ。」

 暗闇で見えなかったが、よく見たらこいつは吸血鬼ヴァンパイアだ。

 それも上位種の魔物。魔王の使いだった。

 俺は吸血鬼の答えは決まっていた。

「連れて行きます」
「……わかった。では魔法を施行する! 【転移魔法】〈帰還リターン〉」

 俺達は吸血鬼の魔法によりどこか見知らぬところに転移された。

 そこは王城の王座の部屋によく似ていた。
 だが、違うのは全体的に暗く、シャンデリアの火が消えかかっている。

 そして、王座には筋骨隆々きんこつりゅうりゅうの魔族が座っていた。

「ガハハッ! よくぞ帰ったヴァイス! そして、お前が【死霊術師ネクロマンサー】か?」

 ひょうきんに笑っていた魔族だったが、俺のことを見て圧倒的な威圧をかけてきた。

「は、はい。俺が、【死霊術師ネクロマンサー】です。」

 俺は威圧に耐え抜いてなんとか答えた。

「ガハハッ! 我の威圧に耐えるか! 他の者は倒れているというのに。」
「うわッ!!」

 後ろを振り向くと春樹達が気を失って倒れていた。

「ガハハッ! お前、気に入ったぞ! 我は魔王グラン=インガル=シファーだ! シファーと呼んでくれて構わない。」
「は、はい」
「んー、そうだなー、人間の死霊術師ネクロマンサーヨウよ。お前、俺の部下になる気はないか?」
「魔王様の部下ですか。」
「そうだ。なんせ今のこの城には俺とヴァイスしかおらんからのぉ! ガハハッ!」

 全然、笑い事じゃない気が……

「お前とその人間達で1つの部隊を作れ。」
「部隊……ですか。」
「そうだ。部隊だ。遊撃隊とでも言えばいいのか? 行動は自由だ! そして衣食住はこちらで用意する。それでどうだ?」

 良い条件だ。

「わかりました。我々は遊撃隊として人間の町に潜り込みましょう。」
「あぁ、是非ともそうしてくれ。」

 交渉成立だ。
 これで俺達の身の安全が確認された。

「ヨウ。遊撃隊として1つ頼まれてくれんか?」

 魔王様は俺に頼み事をした。

「はい。なんでしょう。」
「実は……資源が足りなくてな。金でもなんでも良い。金属を持ってきてもらいたい。」
「金属ですか?」
「そうだ。金属は武具になるからな。今後部下が増えた時の装備くらい作っておかないとな!」
「わかりました。やってみます。」
「おう! 任せたぞ!」

 そんなことは言ったものの、何をすれば金が手に入るかわからない。

 俺とアルバータ達は悩んでいた。
 金は冒険者だと国の人たちにバレてしまう可能性もあるし、学院のクラス対抗で賞品が貰えるわけでもない。

 数分経っても俺とアルバータ達は悩んでいた。
 そんなところに春樹がやってきた。

「よう。陽平。」
「なんだ? 春樹」
「あのさ、俺、【錬金術師アルケミスト】だからさ、【等価交換】のスキルを持ってるんだ。」

 【等価交換】か、某アニメの主人公みたいなスキルだな。

 ん? 待てよ? 【等価交換】……!?

「ま、まさか!?」
「そう! そのまさかだ! 俺は鉄と同価値の物が有れば交換できる!!」

 そうか! その手があったか!!

「なら! 俺が持ってるこの小石を鉄に変えてくれ!」
「試してみる」

 春樹は集中し始めた。

「はぁ……【等価交換】!」

 春樹の【等価交換】のスキルは使え、小石から出てきた鉄の量は……

「こ、これだけ?」

 指で持っても見えないくらいに小さい物が出来てしまった。
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