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五章
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「ミスティリスがあの子に興味を示したの、ネックレスのせいかなって話しただろ?」
タビアの策略を突き止め、十四番目の正体「トワ」を暴いた一向は次なる街を目指して歩いていた。道中、そういえば、とビーイングはアメティスト達を振り返る。
「したな、本人には言ってないけど。それで?」
相槌を返したのはそのすぐ後ろ歩くクオーレだ。思い返すのは、レコ達が初めてミスティリスと邂逅したあの日のこと。光と共に降り立ったミスティリスは、無感情のまま何故か最後にレコを見ていた。
当人達の不安を煽らないよう、あえて話はしなかったが、レコが持つ「彗星」と呼ばれるエネルギー結晶を用いたネックレスが目を引いたのではないか、ということで決着がついた筈だった。
「違うんじゃないかな~って今思ってる」
その、自分達で出した結論を覆すビーイングの口調は軽い。
「じゃあレコ自身に何かあるってこと?」
「確証ないけど、人を惹きつける魔力かなって。」
「『魅了』持ちってことか?」
多分ね、と続けてその会話はあっさりと終わる。人を惹きつける魔力、「魅了」の魔法。かっこいい、可愛い、美しい、人の目を惹くのは何も容姿だけじゃ無い。その振る舞いや発言、生まれ持った素質が自然と視線を集めるのだ。
「うーん、よくわかんないけどレコに何もないといいねぇ?」
アメティストの返答にクオーレはそうだな、ともう興味ないと言いたげにそっけなく返している。良くも悪くも人を集める能力、それが魅了。そんな人間が平坦で面白みのない、代わり映えしない毎日を歩めるとは到底思えないが、正直彼と関わることはもうないかもしれないのでこれ以上の言及はしない。
「そんなことより鍵は回収できたのか?」
「当然でしょ。やっぱりあの蝶の人が持ってた、研究所まで持ち出してくれてて助かったよ」
アメティストが自身の鞄を漁り取り出したのは、アンティーク風の鍵だった。それはフリンデルが大切に保管し、管理していたもの。サーフィーヤが首からかけているのもと同じ、運命の鍵だ。アメティストからそれを手渡されたクオーレが、へぇと声を上げる。
「創造の鍵だ。……わざわざ嘘までついた甲斐があったな。」
嘘、の部分を強調しながら前を歩くビーイングに声をかける。
「人聞きが悪い。半分くらい本当だったでしょ」
表情は変えないまま、彼はその半分の嘘を肯定する。存在しないはずの十四番目、正体不明のエネルギー源を探していた、というのも確かに嘘ではない。だが、それはついでだ。本当の目的はフリンデルの持つ、鍵だった。混乱に乗じて奪い取れた、気付かれずに、しかも恩まで売って。
「この調子で残りも集めたいもんだな」
「そうだね」
「ほら、さっさと行こう。盗ったの気付かれる前に」
to continue?
タビアの策略を突き止め、十四番目の正体「トワ」を暴いた一向は次なる街を目指して歩いていた。道中、そういえば、とビーイングはアメティスト達を振り返る。
「したな、本人には言ってないけど。それで?」
相槌を返したのはそのすぐ後ろ歩くクオーレだ。思い返すのは、レコ達が初めてミスティリスと邂逅したあの日のこと。光と共に降り立ったミスティリスは、無感情のまま何故か最後にレコを見ていた。
当人達の不安を煽らないよう、あえて話はしなかったが、レコが持つ「彗星」と呼ばれるエネルギー結晶を用いたネックレスが目を引いたのではないか、ということで決着がついた筈だった。
「違うんじゃないかな~って今思ってる」
その、自分達で出した結論を覆すビーイングの口調は軽い。
「じゃあレコ自身に何かあるってこと?」
「確証ないけど、人を惹きつける魔力かなって。」
「『魅了』持ちってことか?」
多分ね、と続けてその会話はあっさりと終わる。人を惹きつける魔力、「魅了」の魔法。かっこいい、可愛い、美しい、人の目を惹くのは何も容姿だけじゃ無い。その振る舞いや発言、生まれ持った素質が自然と視線を集めるのだ。
「うーん、よくわかんないけどレコに何もないといいねぇ?」
アメティストの返答にクオーレはそうだな、ともう興味ないと言いたげにそっけなく返している。良くも悪くも人を集める能力、それが魅了。そんな人間が平坦で面白みのない、代わり映えしない毎日を歩めるとは到底思えないが、正直彼と関わることはもうないかもしれないのでこれ以上の言及はしない。
「そんなことより鍵は回収できたのか?」
「当然でしょ。やっぱりあの蝶の人が持ってた、研究所まで持ち出してくれてて助かったよ」
アメティストが自身の鞄を漁り取り出したのは、アンティーク風の鍵だった。それはフリンデルが大切に保管し、管理していたもの。サーフィーヤが首からかけているのもと同じ、運命の鍵だ。アメティストからそれを手渡されたクオーレが、へぇと声を上げる。
「創造の鍵だ。……わざわざ嘘までついた甲斐があったな。」
嘘、の部分を強調しながら前を歩くビーイングに声をかける。
「人聞きが悪い。半分くらい本当だったでしょ」
表情は変えないまま、彼はその半分の嘘を肯定する。存在しないはずの十四番目、正体不明のエネルギー源を探していた、というのも確かに嘘ではない。だが、それはついでだ。本当の目的はフリンデルの持つ、鍵だった。混乱に乗じて奪い取れた、気付かれずに、しかも恩まで売って。
「この調子で残りも集めたいもんだな」
「そうだね」
「ほら、さっさと行こう。盗ったの気付かれる前に」
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