彗星の降る夜に

れく

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三章

「アオイ」

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そんなこんなで新たなキャラクター四人と友好的関係を築けたレコは現状を端的に伝えた。振り返るとこうだ、首無し魔女アウレーゼとの対話後、転移の為に通ってきた扉をロットに破壊されたのだ。

「なるほどねぇ、……扉か」

レコの話を聞きながら、ビーイングが見つめる先にあるのは埃っぽい瓦礫の山。ふむ、と彼は何かを考え始め、その隣に佇むクオーレは無言のままじっとこちらを伺っている様子。

「いや~ダメだな!俺達じゃどうにも出来ない、正直建て直すくらいしか思いつかない」

数秒の思考で根を上げたビーイング。建て直すくらいならもはや新しく家を作るか、いっそ徒歩で帰った方が速そうだ。

「そう言えばメアってここからどうやって学校まで?」
「ん~…うさぎさんに乗ってひとっ飛びだったから」

そのうさぎさんとやらも不在な今、最後の望みは絶たれぶっちゃけ万策尽きた感がある。いっそ引き返してアウレーゼに最寄りの街への道を聞くのもありなのだが、ついさっきの会話を思い出すと顔を合わせづらい。

「お、もういいのかメリー。怪我は大丈夫か?」

そんな最中、ひょこっと立ち上がったのはロットと激しい戦闘を繰り広げていたメアリーだ。

「……大した怪我じゃなかったから。」
「そうか、無理はするなよ」

本当に大したことではなかったかのように、メアリーは軽くワンピースの土を払った。出血は既に止まっているようだが、体に残った傷跡は痛々しい。

「そうだ、扉ってあそこじゃダメなのか?」

ビーイングとメアリーの会話が終わるタイミングを待ち、クオーレが指さしたのは現在顔を合わせたくないアウレーゼの、もっともアウレーゼには合わせる顔が物理的にないのだがともかく会いたくない人物図鑑トップに名を馳せる、アウレーゼ宅その玄関の扉だった。

「上手く繋がるかわからないが……、この際だ試してみよう」

ルスワルが一瞬だけちらっとこちらを見た後、すぐにアウレーゼ宅に向き直る。

「さっきからお前、俺と目を合わせようとしないな」

そんな不自然な視線の動きに、ビーイングが変わらない声音でルスワルに問いかけた。彼の言う通り、先程からルスワルはこちらを見ようとしない、それは神と対峙した畏怖の感情、というより嫌いな人間と目を合わせたくないようなそんな仕草に思えた。
思い返せばルスワルから最初に大精霊の話を聞いた時も、彼は大精霊を「物の怪」だと表現していた。何か、そう印象づけさせる出来事でもあったのだろうか。
ルスワルは、ビーイングを睨みつけていた。

「………アオイという名前に聞き覚えはないか?」

絞り出すような声だった、普段のルスワルからは想像もつかないような低い、獣が唸るような怒気を孕んだ声だった。ルスワルと向かい合ったビーイングは、目を細めると小さく口を開いた。

「知らないな」

彼の回答は、ルスワルの求めていたものと違っていた。

「昔あんたを呼び出した女性の名前だ、あんたが……!」
「……最近忘れっぽくてな」

今にも殴りかかりそうなルスワルの雰囲気とは裏腹ビーイングは特に悪びれもなく肩をすくめた。その返答は、事情を知らないレコ達から見ても些か不誠実に思えた。

「っ!記憶の神が忘れっぽい?ふざけたことを!」

ルスワルはビーイングを、そしてその間に割り込んできたクオーレを睨みつけた後、自分を落ち着かせようと深呼吸する。だが、怒りは収まりそうにない。

「何が神様?何が大精霊?どいつもこいつも化け物ばかりじゃないか……!」

吐き捨てられた言葉に、ビーイングが少し顔を顰めたが、特に何かを言及する素振りはない。

「……早く繋げろ、」

クオーレがルスワルを急かしたその瞬間、クオーレも含めた全ての大精霊達が一斉に空を見上げた。
釣られるようにしてレコも空を見る、そこには何もなかった。

何を見ているんだと声にしようとした直後、地響きが起きた。
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