彗星の降る夜に

れく

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一章

招待状

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学校に着くなり、教室には向かわずそのまま植物園に直行する。運良く丁度昼休みの時間帯だったため、廊下を歩いていても不審には思われずに済んだ。たまにすれ違う学生達に、肩に乗せるリムを好奇な目で見られたが特に気にすることもない。差し込む陽光が、少し暖かった。
小屋を訪れると、中にはフリンデルとその向かいに座る学園長ルスワルが待っていた。

「招待状は来ましたカ?」
「これのことですよね」

カバンからその手紙を取り出し、フリンデルに手渡す。フリンデルが中身を確認して、満足そうに頷くとまた中に入れ直しレコに返す。

「では行きましょうカ」

席を立つ二人、フリンデルはともかく無関係そうな学園長も来るのだろうか。

「転移魔法ってご存知ですかネ?学園長サンはそのためにお呼びしたんですヨ~。つまり扉係ですネ!」

転移魔法、とはその名の通りある地点から別の地点まで「ワープ」する魔法のことだ。実際はワープや瞬間移動ではなく扉を媒介にして行う、空間同士を繋ぎ合わせる魔法だ。どの属性にも当てはまらないという特殊な魔法のため、使いこなせる人間はそれなりに希少だった。

「じゃあ改めて自己紹介をしよう、俺はルスワル。この学校の管理者であり、野良の精霊だ。よろしく」

扉係、という紹介が気に入らなかったのかルスワルは改めてレコに向かって自己紹介をした。気障ったらしいウインクも忘れない。

「こちらこそ……、頼りにしてます」

そんなルスワルの自己紹介なんてどうでもいいフリンデルは、さっさと扉の方へ歩いて行ってしまう。
視線の先にあるのはレコが入っきたばかりの重厚そうな扉だ。

「扉ここで良いですカ?」
「ん~?あっち側が見えないならなんでも。さて」

ルスワルは扉に手を触れた。目を閉じる彼の手を中心に展開されるのは魔法陣だ。淡い紫色に輝き、そしてゆっくりと消えて行った。

「繋がった、いつでも」

魔法の痕跡というものは、能力が有れば有るほど強く刻まれる。リムが魔女の気配を察知出来たのもこれが理由だ。
だが、魔法陣は魔力が高ければ見えなくなるのだ。ルスワルの魔法陣が現れて消えたのは、それなりに彼が能力者だからだろう。

「レコサン、どうぞお先に。」

レコは頷くと唾を飲み、そっとドアノブを握った。思えばここ数日、扉を開けるたびに緊張してしまうな、なんてくだらないことを考えていた。
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