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気付いたら転生してました。
15.魔力と魔法と白玉と
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まさか昨日の今日でこんな事になるなんて……。
いや、ずっとその片鱗はあったのだ。
彼は待っていた。昨晩の私の発言を!
レイモンドもいつか通る道だったのだから、巻き込まれたなどと、文句を言われることは無いと信じたい。
共に立ち向かおう!
お父様が連れて来た家庭教師に!!
はい。そんなこんなで、ただ今、私とレイモンドは書庫にて、魔法の基礎を学んでおります。
先生は牧師の様な白いローブを着た老人、ラウム先生で~す。この人どっかで見たなぁと思ってたら、私が目覚めた時に「記憶を無くしている」と説明?してくれたおじいさんでした。
「魔力とはエネルギーの1つであり、強弱はあっても誰しも魔力を持っています。」
ラウム先生の説明は、ゲームでお馴染みの内容だった。
魔力には属性があり、大原則として、水・火・風・土の4つだ。
ほとんどの者が1つの原則に属しているが、
稀に2つ以上の原則に属す者がおり、その中で極々稀に、上位原則の光・闇に属す者がいる。
なお、魔力は誰しも持っているが、みんなが魔法として使えるわけではない。
魔力が低ければ魔法は使えない。
ゲームで言うところのMPが少なければ魔法使えないのと同じだ。
さて、メリーラントさんは何属性でしょう?
魔法は使えるのでしょうか?
ゲームでは、エメラルドちゃんの邪魔ばかりしていたメリーラント。属性や魔法が使えるに関しての情報は出てこなかった。
「属性の判定は、この水晶を使います。」
そう言うと、ラウム先生はソフトボール大の水晶玉と香水瓶のようなものを鞄から出した。
水晶に対して、香水瓶から1滴透明な液体を垂らした。
「この水晶に手をかざすだけです。さ、メリーラント様からどうぞ。」
ちょっと緊張しつつ、机に置かれた水晶に手をかざす。
3秒ほどで、水晶の真ん中が茶色に染まった。
「なるほど、メリーラント様は土に属していますね。」
「私、魔法使えますか!?」
「さて、どうでしょうね。もう一つテストがあるので、お待ちくださいね。」
自分の属性を知り興奮する私をかわし、水晶にまた香水瓶から1滴垂らす。
「さぁ、レイモンド様もどうぞ。手をかざしてみてください。」
「は、はい。」
レイモンドは緊張しているようだ。
手をかざすレイモンド。
瞬く間に、透明だった水晶が緑色に染まった。
少し遅れて、水晶の中心から赤色が広がってきた。
赤・緑にそれぞれ均一なる幅で染まった水晶。
(2色ってことは2属性かしら?)
ちらりとラウム先生をみると、2色に染まった水晶を見つめたまま固まっています。
「あの、これって、火と風の属性ってことですよね?」
中々、戻って来ない先生を案じてか、レイモンドが声を掛けた。
「……え?あ、はい。そうです。火と風の2属性です。」
おかえりなさい。ラウム先生。
「先生、2属性って珍しいんですよね?」
「そう、そうですよ!!2属性なんて、久々に見ましたよ。旦那様から、魔力が強いと伺っておりましたが、2属性持ちとは…。」
「レイモンド、すごいじゃない!!」
喜びのままに、レイモンドの両手を握りブンブン振ると、困ったように少し微笑んだ。
レイモンドさんあまり嬉しくないようです。
「さて、もう一つ魔法にして確認しなければなりません。…もしものこともありますので、次は庭でやりましょう。」
3人で庭に出る。
庭の開けたところにテーブルと椅子が3脚。いつもはテラスに置かれているテーブルセットだが、わざわざ庭まで出してきたようだ。
3人が席に着くと、ラウム先生が懐から白玉を取り出した。
真っ白で、耳たぶぐらいの大きさで、ちょっと真ん中がへこんでおり…。
まさに白玉だ。
「次は、魔力量を確認します。」
「「はい。」」
「この石に、手をかざして、"浮け"と唱えてください。」
「それだけですか?」
「はい、それだけで結構。お二人の魔力量に合わせて、石が浮き上がります。まずはメリーラント様からやっていただきましょう。さぁ、どうぞ。」
白玉を私の前に置くと、コツッと小さな音が鳴った。
(手をかざして、浮けと唱える…。ホントに浮くのかしら?浮いちゃうのかしら!?)
ひとまず、白玉に手をかざす。先生とレイモンドの視線が白玉に注がれる。
一つ小さく息を飲み、
「浮けっ!」
私が唱えると、白玉は音も無くスーッと50センチほど浮いて、少し停止した後、落下した。
「ホントに浮いたわっ!!レイモンド、見た!?白玉が浮いたわ!!」
「見ましたよ。浮きましたねっ!シラタマ?」
思わず手を叩いて喜ぶ私に、我が家の天使が困惑した微笑みを返してくれる。
その微笑みに、少し我に帰る。
「先生、浮きましたけど…、どうですか?」
「この石は人の魔力量を測る物です。浮き上がる高さで、魔力量がわかります。先程も、お伝えしたように、誰しも魔力を持っていますので、誰しもが高低あれど、浮き上がらせることができます。そうですね…、先程のメリーラント様の高さですと、初歩的な魔法は使える魔力ですね。」
「なるほど。初歩的…。でも魔法は使えるんですねっ!」
「ええ。まずは、魔法の勉強頑張りましょうね。」
「…、はい…。」
ニコッニコ顔で圧を掛けてくる、おじいちゃん先生。
「さて、レイモンド様もどうぞ。」
「はひぃっ!」
今度は、レイモンドの前に白玉が置かれると、緊張からか、レイモンドが盛大に噛んだ。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。」
先生が優しく声を掛けると、レイモンドが大きく息を吐き出した。
「…はい。」
レイモンドが白玉に手をかざし、しばらくすると、小さな呟きが聞こえた。
「浮け。」
…。
……。
………。
白玉に変化は見られない。完全に沈黙を守っている。
レイモンドが不安そうに先生を見た。
先生も白玉を見つめたまま、固まっている。
「…。レイモンド様、もう一度やっていただけますか?」
「はい…。」
レイモンドが再び白玉に手をかざす。
固唾を飲み見守る。
「浮け!」
さっきより力強く唱えたが、白玉はかわらすテーブルにある。
「なんで?うけっ!浮けっ!!浮け……。」
最後の方は涙声で叫んでいた。
それでも白玉はびくともしない。
「レイモンド様!?」
レイモンドのかざす手を先生がとった。
「大丈夫ですよ。火と風の属性がありましたので、魔力があることは間違いありませんから安心してください。もしかしたら、この石が不具合を起こしているかもしれませんからね。」
優しく諭す先生。
ポトリと手を落としたレイモンドは、下を向き、今にも泣き出しそうだ。
私はずっと落ち着きなく、その姿を見ていることしかできなかった。
いや、ずっとその片鱗はあったのだ。
彼は待っていた。昨晩の私の発言を!
レイモンドもいつか通る道だったのだから、巻き込まれたなどと、文句を言われることは無いと信じたい。
共に立ち向かおう!
お父様が連れて来た家庭教師に!!
はい。そんなこんなで、ただ今、私とレイモンドは書庫にて、魔法の基礎を学んでおります。
先生は牧師の様な白いローブを着た老人、ラウム先生で~す。この人どっかで見たなぁと思ってたら、私が目覚めた時に「記憶を無くしている」と説明?してくれたおじいさんでした。
「魔力とはエネルギーの1つであり、強弱はあっても誰しも魔力を持っています。」
ラウム先生の説明は、ゲームでお馴染みの内容だった。
魔力には属性があり、大原則として、水・火・風・土の4つだ。
ほとんどの者が1つの原則に属しているが、
稀に2つ以上の原則に属す者がおり、その中で極々稀に、上位原則の光・闇に属す者がいる。
なお、魔力は誰しも持っているが、みんなが魔法として使えるわけではない。
魔力が低ければ魔法は使えない。
ゲームで言うところのMPが少なければ魔法使えないのと同じだ。
さて、メリーラントさんは何属性でしょう?
魔法は使えるのでしょうか?
ゲームでは、エメラルドちゃんの邪魔ばかりしていたメリーラント。属性や魔法が使えるに関しての情報は出てこなかった。
「属性の判定は、この水晶を使います。」
そう言うと、ラウム先生はソフトボール大の水晶玉と香水瓶のようなものを鞄から出した。
水晶に対して、香水瓶から1滴透明な液体を垂らした。
「この水晶に手をかざすだけです。さ、メリーラント様からどうぞ。」
ちょっと緊張しつつ、机に置かれた水晶に手をかざす。
3秒ほどで、水晶の真ん中が茶色に染まった。
「なるほど、メリーラント様は土に属していますね。」
「私、魔法使えますか!?」
「さて、どうでしょうね。もう一つテストがあるので、お待ちくださいね。」
自分の属性を知り興奮する私をかわし、水晶にまた香水瓶から1滴垂らす。
「さぁ、レイモンド様もどうぞ。手をかざしてみてください。」
「は、はい。」
レイモンドは緊張しているようだ。
手をかざすレイモンド。
瞬く間に、透明だった水晶が緑色に染まった。
少し遅れて、水晶の中心から赤色が広がってきた。
赤・緑にそれぞれ均一なる幅で染まった水晶。
(2色ってことは2属性かしら?)
ちらりとラウム先生をみると、2色に染まった水晶を見つめたまま固まっています。
「あの、これって、火と風の属性ってことですよね?」
中々、戻って来ない先生を案じてか、レイモンドが声を掛けた。
「……え?あ、はい。そうです。火と風の2属性です。」
おかえりなさい。ラウム先生。
「先生、2属性って珍しいんですよね?」
「そう、そうですよ!!2属性なんて、久々に見ましたよ。旦那様から、魔力が強いと伺っておりましたが、2属性持ちとは…。」
「レイモンド、すごいじゃない!!」
喜びのままに、レイモンドの両手を握りブンブン振ると、困ったように少し微笑んだ。
レイモンドさんあまり嬉しくないようです。
「さて、もう一つ魔法にして確認しなければなりません。…もしものこともありますので、次は庭でやりましょう。」
3人で庭に出る。
庭の開けたところにテーブルと椅子が3脚。いつもはテラスに置かれているテーブルセットだが、わざわざ庭まで出してきたようだ。
3人が席に着くと、ラウム先生が懐から白玉を取り出した。
真っ白で、耳たぶぐらいの大きさで、ちょっと真ん中がへこんでおり…。
まさに白玉だ。
「次は、魔力量を確認します。」
「「はい。」」
「この石に、手をかざして、"浮け"と唱えてください。」
「それだけですか?」
「はい、それだけで結構。お二人の魔力量に合わせて、石が浮き上がります。まずはメリーラント様からやっていただきましょう。さぁ、どうぞ。」
白玉を私の前に置くと、コツッと小さな音が鳴った。
(手をかざして、浮けと唱える…。ホントに浮くのかしら?浮いちゃうのかしら!?)
ひとまず、白玉に手をかざす。先生とレイモンドの視線が白玉に注がれる。
一つ小さく息を飲み、
「浮けっ!」
私が唱えると、白玉は音も無くスーッと50センチほど浮いて、少し停止した後、落下した。
「ホントに浮いたわっ!!レイモンド、見た!?白玉が浮いたわ!!」
「見ましたよ。浮きましたねっ!シラタマ?」
思わず手を叩いて喜ぶ私に、我が家の天使が困惑した微笑みを返してくれる。
その微笑みに、少し我に帰る。
「先生、浮きましたけど…、どうですか?」
「この石は人の魔力量を測る物です。浮き上がる高さで、魔力量がわかります。先程も、お伝えしたように、誰しも魔力を持っていますので、誰しもが高低あれど、浮き上がらせることができます。そうですね…、先程のメリーラント様の高さですと、初歩的な魔法は使える魔力ですね。」
「なるほど。初歩的…。でも魔法は使えるんですねっ!」
「ええ。まずは、魔法の勉強頑張りましょうね。」
「…、はい…。」
ニコッニコ顔で圧を掛けてくる、おじいちゃん先生。
「さて、レイモンド様もどうぞ。」
「はひぃっ!」
今度は、レイモンドの前に白玉が置かれると、緊張からか、レイモンドが盛大に噛んだ。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。」
先生が優しく声を掛けると、レイモンドが大きく息を吐き出した。
「…はい。」
レイモンドが白玉に手をかざし、しばらくすると、小さな呟きが聞こえた。
「浮け。」
…。
……。
………。
白玉に変化は見られない。完全に沈黙を守っている。
レイモンドが不安そうに先生を見た。
先生も白玉を見つめたまま、固まっている。
「…。レイモンド様、もう一度やっていただけますか?」
「はい…。」
レイモンドが再び白玉に手をかざす。
固唾を飲み見守る。
「浮け!」
さっきより力強く唱えたが、白玉はかわらすテーブルにある。
「なんで?うけっ!浮けっ!!浮け……。」
最後の方は涙声で叫んでいた。
それでも白玉はびくともしない。
「レイモンド様!?」
レイモンドのかざす手を先生がとった。
「大丈夫ですよ。火と風の属性がありましたので、魔力があることは間違いありませんから安心してください。もしかしたら、この石が不具合を起こしているかもしれませんからね。」
優しく諭す先生。
ポトリと手を落としたレイモンドは、下を向き、今にも泣き出しそうだ。
私はずっと落ち着きなく、その姿を見ていることしかできなかった。
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