拳闘哀歌

人生真っ逆さま

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第1ラウンド

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『只今より、ミドル級8回戦を行います、青コーナー、身長180センチ体重72キロ、7戦7勝7KO、パーフェクトレコード、エディ・アラムプロモーション所属、スカーフェイス!対して赤コーナーより、なんと現役の警察官!、身長178センチ、体重72キロ、8戦8勝6KO、Jプロモーション所属、ダニエル・J・コーベット!』

毎度、リングアナウンサーの口上に観客達も沸き立つ。
しかし、戦うのが、警察官になるとはな、これも、ある種の必然なのだろうか。
リングアナウンサーが退陣したあと、レフェリーから試合への注意喚起がなされ、俺達は、リングで相対する。

「コーベット、そんな奴さっさと倒しちまえ」

「コーベット、頑張れーー!」

「スカーフェイスになんか負けるなよ」

今回もアウェイか…だが、関係ない。
俺は出来る事をするだけだ。

カーンと、ゴングが鳴る。
第1ラウンドの始まりだ。
相手は右利きのオードソックスのスタイルで、こちらへ左ジャブから左ボディに繋げて様子を見る気だ。
こちらも左ジャブから右ストレートのワンツーを放つもブロックされる。
互いにリング内をサークリングし、攻撃するも、決定打にはならず、1ラウンドは終えた。
インターバルに、ブレンダンからは、もっと積極的に攻めるべきだと、言われる。

「スカーフェイス、いつもなら、打ち合いになる所が、今日はおとなしめじゃないか」

「ああ、コーベットの奴が不気味でな、カウンターを取られるんじゃないかと、少し、奥手になったのかも知れない」

「いいか、カウンターが怖いのは誰でももっと攻めろ、じゃないとアイツはお前よりもっと攻めてくるかも知れないぞ」
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