拳闘哀歌

人生真っ逆さま

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ラリー・フィールド

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ラリー・フィールドは最高のボクサーだった。
闘争心溢れるボクシングスタイルで会場の客を熱狂させて、KOの山を積み上げる人気ボクサー。
人格も申し分なく、俺や未経験の練習生にも、なんの隔たりもなく接し、特に当時、荒れていた俺が横暴な態度で、接しても意に介さなく、ボクシングの練習でも、良く助言をしてくれた。
だが、そんな最高のボクサーが、今はこの世にいない。
世界ランキング一位になり、世界王者に挑戦することになったのだ。
世界王者…パウンド・フォー・パウンドでTHE・ONEとも呼ばれた男と試合し、その試合でKO負けで、亡くなり、リング禍としてこの世を去ったのだ。
ボクシングではありえる話だ。
試合中、打ちどころ悪かったとか、その日のコンディションで体調が優れない状態であがり、脳へのダメージからか、試合後に帰らぬ人となったとか、あり得る話しなんだ。
親しくしていた人が、もう動かなくなるを目の当たりにするのは、それが初めてだった。
…2年後、俺はプロボクサーになった。
でも、試合後に親友でマネージャーのマークを亡くし、犯人であるマフィア、ユースティティアへの復讐を胸に誓って……。

武者修行しにあれから一ヶ月立っていた。
「スカーフェイス!力み過ぎている、もっとリラックスしろ……良し、ナイスファイトじゃ」

スパーリングをしているとダマトのおっさんから檄が飛ぶ。
スパーリングパートナーは、リカルド・クエバス、ズィクタトリア、フェリクス州出身で、俺と同じBクラスのボクサーで、オードソックスなスタイルで丁寧なボクシングをする!
俺がジャブを飛ばせば、パーリングで弾き、ある一定の以上は、距離を詰めさせない。
そう思っていたら、右ストレートをダッキングで躱し、カウンターで左アッパーを繰り出してきた。
まだまだ、手の内を明かしていないな…どうこれから、展開するんだろうか。
すると、ブザーがなり、休憩にはいる。

「ここまでにしておけ、練習相手替えて、もう30ラウンドこなしてるじゃないか」

「ああ、そうだな…そうする」

俺はリングを降りて、グローブを外した。
練習生やプロが混じって、練習するジムは、汗でむせ返るような暑さがある。
そんな中に、タケシがジムに入り、俺に近づくと、次の対戦相手が決まったことを報告しに来たのだ。
しかも、中々の興奮気味だ。

「どうした、タケシ、そんな興奮気味で…」

「ちょいと、デーモスクラトスに戻ってな、あんたの対戦相手を物色してたのさ」

しばらく、見ないなと思ってたら、マネージャーらしく仕事していたのか。

「そうしたらよ、次の対戦相手はあのビクター・タイソンだぜ」
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