2 / 38
プロローグ
デマントイド王国
しおりを挟む
ここデマントイド王国は、ほんの60年ほど前まで、近隣諸国との火種が絶えない国だった。
不幸だったのは、この国が周囲をイグニス、アウルム、ソルムという3カ国にぐるりと囲まれており、拮抗するどの国もが同等の国力だったことだろう。
どこも突出した力をもっていないだけに、各国はギリギリの攻防を繰り返すばかりで、なかなかに決着がつかなかった。
そうこうするうちに月日ばかりが経ち、常に戦火に晒された4カ国の国力は最低ラインまで下がり続けていたのだが、それに気がづいた頃には、まさにどの国もが「振り上げた剣の収め方が分からない」状態だった。
全ての国がこのまま滅びへの道を歩むしかない、そんな暗闇に一筋の光をもたらさんと立ち上がったのが、デマントイド国第28代目国王、つまり前王であるローズベルト・ミルトニア・グレートフィールドだった。
「我々は最も愛すべき、優先すべき自国の民をも傷つけていることから、これ以上目をそらしてはならぬ。また、その罪を己の代で…我々の代で償うべきである。それが分からぬ愚王は、この場にはいないと信じている。友よ、争いはここまでた。」
後世にも残る有名なこの言葉とともに、終戦と不可侵条約の締結を各国に直接申し出た。
終わりなき戦いの日々に限界を感じていた周囲3カ国は、真摯な王の説得を受け、とうとうこれに応じた。
4カ国の王は、自国の復旧と発展に国力を注ぐよう指示した後、条約に則って次代にその跡目を譲り、王の座を辞した。
その先王達の偉業からおよそ10年後。
現デマントイド王であるオスカー・ジニア・グレートフィールドは、周囲3カ国の条約国と新たな条約を結んだ。
『デマントイドを唯一国とし、イグニス、アウルム、ソルムはその都市国家とする』
3つの都市国家には独立政治権を認めるものの、国としてはデマントイド国に統一するという前代未聞の大技を、若き王がわずか一代で、しかも無血で成し得た衝撃は国内に留まらず、傑物オスカー王の名は遠く異国の地にまで轟くこととなる。
国民は彼のことを、恐れと敬意を表して「悪魔の叡智」と称した。
それから30年、現在のデマントイド王国は、3つの大きな都市国家を有する世界トップクラスの先進国として発展を続けている。
不幸だったのは、この国が周囲をイグニス、アウルム、ソルムという3カ国にぐるりと囲まれており、拮抗するどの国もが同等の国力だったことだろう。
どこも突出した力をもっていないだけに、各国はギリギリの攻防を繰り返すばかりで、なかなかに決着がつかなかった。
そうこうするうちに月日ばかりが経ち、常に戦火に晒された4カ国の国力は最低ラインまで下がり続けていたのだが、それに気がづいた頃には、まさにどの国もが「振り上げた剣の収め方が分からない」状態だった。
全ての国がこのまま滅びへの道を歩むしかない、そんな暗闇に一筋の光をもたらさんと立ち上がったのが、デマントイド国第28代目国王、つまり前王であるローズベルト・ミルトニア・グレートフィールドだった。
「我々は最も愛すべき、優先すべき自国の民をも傷つけていることから、これ以上目をそらしてはならぬ。また、その罪を己の代で…我々の代で償うべきである。それが分からぬ愚王は、この場にはいないと信じている。友よ、争いはここまでた。」
後世にも残る有名なこの言葉とともに、終戦と不可侵条約の締結を各国に直接申し出た。
終わりなき戦いの日々に限界を感じていた周囲3カ国は、真摯な王の説得を受け、とうとうこれに応じた。
4カ国の王は、自国の復旧と発展に国力を注ぐよう指示した後、条約に則って次代にその跡目を譲り、王の座を辞した。
その先王達の偉業からおよそ10年後。
現デマントイド王であるオスカー・ジニア・グレートフィールドは、周囲3カ国の条約国と新たな条約を結んだ。
『デマントイドを唯一国とし、イグニス、アウルム、ソルムはその都市国家とする』
3つの都市国家には独立政治権を認めるものの、国としてはデマントイド国に統一するという前代未聞の大技を、若き王がわずか一代で、しかも無血で成し得た衝撃は国内に留まらず、傑物オスカー王の名は遠く異国の地にまで轟くこととなる。
国民は彼のことを、恐れと敬意を表して「悪魔の叡智」と称した。
それから30年、現在のデマントイド王国は、3つの大きな都市国家を有する世界トップクラスの先進国として発展を続けている。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
【完結】夫は王太子妃の愛人
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵家長女であるローゼミリアは、侯爵家を継ぐはずだったのに、女ったらしの幼馴染みの公爵から求婚され、急遽結婚することになった。
しかし、持参金不要、式まで1ヶ月。
これは愛人多数?など訳ありの結婚に違いないと悟る。
案の定、初夜すら屋敷に戻らず、
3ヶ月以上も放置されーー。
そんな時に、驚きの手紙が届いた。
ーー公爵は、王太子妃と毎日ベッドを共にしている、と。
ローゼは、王宮に乗り込むのだがそこで驚きの光景を目撃してしまいーー。
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる