上 下
16 / 21

14.5ーエゾギクー

しおりを挟む
「いい?カミラ……女性の幸せは結婚だけよ?だから…貴方は男性に好かれる女性になりなさい」

「はい、お母様」

「カミラはいい子だな……結婚して父さん達を安心させてくれよ」

「分かりました、お父様」

子供の頃から、耳が痛くなるほどに言われた言葉…今でも脳裏に思い出せる程にこの言葉を聞き続けてきた。
私はこの両親からの言い聞かせに一切の疑問を持っていない、幼い頃から結婚のために女性としての魅力を磨き続けてきた、そして当時は公爵家ではなく伯爵家の1人だったグロウズと出会い、恋をして、結婚をした。


伯爵家として公務に励むグロウズを傍で支え、彼の活躍が認められて公爵としての爵位を頂いた時は心の底から幸せだった…

これが女性の幸せだと、私は両親の言っていた通りに思ったし、それ以外の選択肢なんてないと思っていた………
結婚こそが、女性が生きる上で至上の役目


だから、アメリアさん………貴方の言っている事は全く理解できなかった
女性の役目は結婚、教師の夢など持つべきではないと罵った私に、彼女は一切の動揺もなく言った

「女性だとか、男性だとか………関係ありません、夢を目指すことに役目を考える必要がありますか」と

理解できなかった………
離縁されたアメリアさんは、きっとベンジャミンとの復縁を望んでいると思ったから、私も自身の息子の想いを尊重したかった、子供は養子を迎えればいい、復縁を迫れば彼女は泣いて喜ぶ…


結婚が一番だと思っていた私は拒否をするアメリアさんを一切理解できなくて……怒りの声を上げた


と同時に……


羨ましいと、思ったの………


私も、子供の頃はピアノが好きで、みんなの前で演奏をして楽しませたい
そんな仕事に就きたいと思った…

でも、結婚には必要がないからと諦めた



服を作る仕事に就きたいと思った事もあった…私が作った服を色々な人に着てもらいたいと…

でも、結婚には必要がないと………………また諦めて




色々な事を諦めた、女性の幸せは結婚だと自分に言い聞かせて…

だからこそ、夢を見るアメリアさんの真っ直ぐな瞳に、若く綺麗な考え方に……

羨ましいと素直に思い、同時に怒りも沸き起こった………
私の人生が否定されているようで、結婚こそが至高の幸せでなければ…私の人生はどうなるの?



ずっとそのために生きてきた、結婚のために捨てて捨てて、諦めて…
そんな私だから、彼女に怒り、羨ましいと心の底から思った。








故に、いま目の前の光景を見て………私が取るべき行動は一つだけ

ベンジャミンとグロウズに付いて来たのはアメリアさんを連れ戻すため、でも敢えて私は何も言わずに俯瞰して見て

気づいた……自分の行っていた愚行を…恥ずべき行為に後悔した。







私達が行ってきたのは、彼女の夢の邪魔でしかない…





私は貴方の考えを認めない、夢を諦めない貴方を認めると…私の人生が否定されるようで………


でも、アメリアさん…貴方の夢を羨ましいと思う私も確かに存在する。
だって、貴方の人生は………私が捨てた女性としての新たな道だから…

貴方の素敵な夢を邪魔するような下劣な行為をもうこれ以上、私の家族がする事を許せない…




今更、私なんかに味方されても貴方は困るかもしれないけど…
貴方のその芯の強い、覚悟の決まった夢を…私の家族の下劣な行為から守るために、母として…

女性として…今この瞬間だけは貴方の夢のために


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

旦那様は離縁をお望みでしょうか

村上かおり
恋愛
 ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。  けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。  バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

処理中です...