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「カミラ様………」
私が彼女の名前を呼ぶと、カミラ様は頭を下げた。
その姿勢や所作には確かに謝罪の気持ちが込められているのが分かった
「私を含めて、家族が迷惑をかけてごめんなさい…アメリアさん………」
「お、おいカミラ!!何を言って!?」
「黙ってください!!」
慌てて頭を下げるカミラ様を止めようと近寄るグロウズ様だったが、それをカミラ様自身が一喝して制す。
そして、再び顔を上げて私を見るその姿は確かに公爵夫人としての気品が垣間見えた
「貴方とこの間、話をして私も考えたの………沢山の時間、貴方の言葉を私なりに考えてみた…」
「答えは、でましたか?カミラ様」
私の言葉に、彼女は「ふふ」と笑って首を横に振った
「いえ、やはり理解できなかったわ、女性の幸せは結婚……なのに、なぜ貴方は自分の夢を優先するんだろうって、そうやって認めたくない気持ち…が本音…」
「そうですか……」
「でもね、気づいた事もあったの、私が馬鹿だったって…理解しなくてもいいのね、幸せの道なんて人それぞれで、貴方の進みたいように進めばいい、私達が面倒を見るなんてお節介で…貴方の夢の邪魔でしかなかったのよね」
彼女の言葉に、私はただ頷いた……
理解してもらおうなんて思っていなかった、貴族の令嬢達の間に広がるのは結婚至上主義……結婚こそが女性の幸せであり、それこそが一番なのだと幼少より身に付く思想だから
実際に、私もベンジャミンに突き放されるまではその思想に染まっていた。
でも、カミラ様は自分なりに考えて…本当の意味で私のためになる選択を考えてくれた事に今までの憎しみや恨みはありながらも、嬉しいと思う気持ちも確かに存在した。
「さて、ではグロウズ、ベンジャミン……私達がすべき事はただ一つです」
「カ、カミラ」「母さん?」
私との会話を終えて、振り返ったカミラ様は手を振りかざしてグロウズ様とベンジャミンの頬を平手打ちした。
軽快な音が鳴り、空気に響いた破裂音………私に迫った男性2人は赤くなった頬を抑え、うろたえていた
カミラ様も、普段彼らに手を出す事などないのだろう…慣れない行為に手が震えていた、でも勇気を出して私のために行ってくれた行為にただ純粋に嬉しさを感じる。
「先程も言いました!!呆けていないで私達、公爵家がしでかした事を反省すべきです!!早く離縁状に判を押してグロウズ!!」
「し…しかし、ベンジャミンの想いは…」
「アメリアさんの想いを無視している状況で、ベンジャミンの意思は尊重すべきではありません………これ以上、公爵家の醜態を晒す事はやめましょう……」
カミラ様の一喝によって…あれ程、強情そうであったグロウズ様もしおらしくなってしまっている。
「私はただ、息子の望みを叶えようとしたのだ………復縁をしたいと、ベンジャミンがあれだけ頼み込んできたのは初めてだったから…アメリア嬢も、きっとそれを受け入れると思っていた」
有り得ない……と私は言おうとしたが、カミラ様がため息を吐きつつも私の代わりに応えてくれた
「それは私達、公爵家の身勝手で自分勝手で最低で下劣な考え方です。私達は貴族として影響力を持ち、力を持っています………代償として、思い上がりの思想で相手の考えを認められない愚か者になってしまいました…」
「カミラ………」
「グロウズ、思い出してください……私達は公爵の爵位を与えられる前の時を…その時の貴方と私は若い淑女を貶めるような出鱈目な噂を流すことなんて……考えた事もなかった、ただまっすぐに若き力で民の為に働きこの爵位を頂きました…でも公爵として力を持ち、変わってしまった…何でも思い通りになる影響力や周りの忖度につけあがって………彼女を苦しめていたのよ」
「若い…頃…………」
グロウズ様は昔の記憶を思い出すように空を見上げて、静かに頷いた
「そうだ…そうだなカミラ、私達は立派な家庭を築こうと…いつしか、思い上がり、自分達こそ至上だと思い込んでいた、自分達だけが助かろうと………すまない」
「私も、貴方も………謝る相手が違いますよ」
2人はお互いが納得したように、私を見る。
グロウズ様は先程までの言動を思い出し、気が引けていたがカミラ様の小突く肘に押されて頭を下げた
「アメリア嬢………此度のこちらの強行を心から謝罪したい…申し訳ない」
「グロウズ様…いえ、私はもういいのです………離縁状に判を押してください、それで貴方達との関係は終わりにしましょう…今度こそ、本当の意味で」
「あぁ、もちろんだ…そして君に伝えておきたい事がある…私達公爵家は……」
離縁状を見つめながらグロウズ様が喋っていた最中
ベンジャミンがその離縁状を手に取り、自身の胸に抱きしめた
「ダメだ!!俺とアリーは………離縁をしない!!」
「ベンジャミン!」
カミラ様やグロウズ様の制止の言葉を無視し、抱きしめるように離縁状を持ったベンジャミン様は駄々をこねる子供のように首を横に振った
「アリー………俺はどうすればいい?どうすれば君に愛してもらえる?………離れたくない、もう手放したくないんだ………なんでもする、だから、だから俺を受け入れてくれ!!」
ベンジャミンは涙を浮かべ、私に叫んだ………
「はぁ…」と口癖のようになったため息と共に私は睨みながら言葉を吐いた
「どうしたらいい?こちらの言葉ですよ、今までの貴方を見て………どうすれば再び愛せますか?私が教えて欲しいです。」
「アリー………愛しているんだ、本当なんだ!!もう一度俺を愛してくれ!!お願いだ、お願いだ…お願いだから!!愛しているから!」
泣き崩れるように、膝を着いたベンジャミンに近づき言葉をかけたのは………
私でも、カミラ様でも、グロウズ様でもなかった
「え?」
私はその人を見て、思わず声を出してしまった…
「ベンジャミン、お前の愛は虚言だよ…僕は知っているんだ」
そこにいて、ベンジャミンに声をかけたのはクロード兄様だったから
私が彼女の名前を呼ぶと、カミラ様は頭を下げた。
その姿勢や所作には確かに謝罪の気持ちが込められているのが分かった
「私を含めて、家族が迷惑をかけてごめんなさい…アメリアさん………」
「お、おいカミラ!!何を言って!?」
「黙ってください!!」
慌てて頭を下げるカミラ様を止めようと近寄るグロウズ様だったが、それをカミラ様自身が一喝して制す。
そして、再び顔を上げて私を見るその姿は確かに公爵夫人としての気品が垣間見えた
「貴方とこの間、話をして私も考えたの………沢山の時間、貴方の言葉を私なりに考えてみた…」
「答えは、でましたか?カミラ様」
私の言葉に、彼女は「ふふ」と笑って首を横に振った
「いえ、やはり理解できなかったわ、女性の幸せは結婚……なのに、なぜ貴方は自分の夢を優先するんだろうって、そうやって認めたくない気持ち…が本音…」
「そうですか……」
「でもね、気づいた事もあったの、私が馬鹿だったって…理解しなくてもいいのね、幸せの道なんて人それぞれで、貴方の進みたいように進めばいい、私達が面倒を見るなんてお節介で…貴方の夢の邪魔でしかなかったのよね」
彼女の言葉に、私はただ頷いた……
理解してもらおうなんて思っていなかった、貴族の令嬢達の間に広がるのは結婚至上主義……結婚こそが女性の幸せであり、それこそが一番なのだと幼少より身に付く思想だから
実際に、私もベンジャミンに突き放されるまではその思想に染まっていた。
でも、カミラ様は自分なりに考えて…本当の意味で私のためになる選択を考えてくれた事に今までの憎しみや恨みはありながらも、嬉しいと思う気持ちも確かに存在した。
「さて、ではグロウズ、ベンジャミン……私達がすべき事はただ一つです」
「カ、カミラ」「母さん?」
私との会話を終えて、振り返ったカミラ様は手を振りかざしてグロウズ様とベンジャミンの頬を平手打ちした。
軽快な音が鳴り、空気に響いた破裂音………私に迫った男性2人は赤くなった頬を抑え、うろたえていた
カミラ様も、普段彼らに手を出す事などないのだろう…慣れない行為に手が震えていた、でも勇気を出して私のために行ってくれた行為にただ純粋に嬉しさを感じる。
「先程も言いました!!呆けていないで私達、公爵家がしでかした事を反省すべきです!!早く離縁状に判を押してグロウズ!!」
「し…しかし、ベンジャミンの想いは…」
「アメリアさんの想いを無視している状況で、ベンジャミンの意思は尊重すべきではありません………これ以上、公爵家の醜態を晒す事はやめましょう……」
カミラ様の一喝によって…あれ程、強情そうであったグロウズ様もしおらしくなってしまっている。
「私はただ、息子の望みを叶えようとしたのだ………復縁をしたいと、ベンジャミンがあれだけ頼み込んできたのは初めてだったから…アメリア嬢も、きっとそれを受け入れると思っていた」
有り得ない……と私は言おうとしたが、カミラ様がため息を吐きつつも私の代わりに応えてくれた
「それは私達、公爵家の身勝手で自分勝手で最低で下劣な考え方です。私達は貴族として影響力を持ち、力を持っています………代償として、思い上がりの思想で相手の考えを認められない愚か者になってしまいました…」
「カミラ………」
「グロウズ、思い出してください……私達は公爵の爵位を与えられる前の時を…その時の貴方と私は若い淑女を貶めるような出鱈目な噂を流すことなんて……考えた事もなかった、ただまっすぐに若き力で民の為に働きこの爵位を頂きました…でも公爵として力を持ち、変わってしまった…何でも思い通りになる影響力や周りの忖度につけあがって………彼女を苦しめていたのよ」
「若い…頃…………」
グロウズ様は昔の記憶を思い出すように空を見上げて、静かに頷いた
「そうだ…そうだなカミラ、私達は立派な家庭を築こうと…いつしか、思い上がり、自分達こそ至上だと思い込んでいた、自分達だけが助かろうと………すまない」
「私も、貴方も………謝る相手が違いますよ」
2人はお互いが納得したように、私を見る。
グロウズ様は先程までの言動を思い出し、気が引けていたがカミラ様の小突く肘に押されて頭を下げた
「アメリア嬢………此度のこちらの強行を心から謝罪したい…申し訳ない」
「グロウズ様…いえ、私はもういいのです………離縁状に判を押してください、それで貴方達との関係は終わりにしましょう…今度こそ、本当の意味で」
「あぁ、もちろんだ…そして君に伝えておきたい事がある…私達公爵家は……」
離縁状を見つめながらグロウズ様が喋っていた最中
ベンジャミンがその離縁状を手に取り、自身の胸に抱きしめた
「ダメだ!!俺とアリーは………離縁をしない!!」
「ベンジャミン!」
カミラ様やグロウズ様の制止の言葉を無視し、抱きしめるように離縁状を持ったベンジャミン様は駄々をこねる子供のように首を横に振った
「アリー………俺はどうすればいい?どうすれば君に愛してもらえる?………離れたくない、もう手放したくないんだ………なんでもする、だから、だから俺を受け入れてくれ!!」
ベンジャミンは涙を浮かべ、私に叫んだ………
「はぁ…」と口癖のようになったため息と共に私は睨みながら言葉を吐いた
「どうしたらいい?こちらの言葉ですよ、今までの貴方を見て………どうすれば再び愛せますか?私が教えて欲しいです。」
「アリー………愛しているんだ、本当なんだ!!もう一度俺を愛してくれ!!お願いだ、お願いだ…お願いだから!!愛しているから!」
泣き崩れるように、膝を着いたベンジャミンに近づき言葉をかけたのは………
私でも、カミラ様でも、グロウズ様でもなかった
「え?」
私はその人を見て、思わず声を出してしまった…
「ベンジャミン、お前の愛は虚言だよ…僕は知っているんだ」
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