上 下
15 / 21

14

しおりを挟む
思えば彼ら公爵家から、屋敷を追い出された後にローマン父様が離縁状を準備してくださり、私のサインとローズベル家の判を押して公爵家に送っていた、これは父様の配慮で、辛い思いをした私が公爵家と対談して離縁状を書くのは辛いだろうとの判断

その後、私とベンジャミンが離縁したと話は広まっていたが、正式に離縁状にサインと判が押されていた事は見ていない……離縁状は王国に送り担当者によって受理され正式に離縁となるが、貴族の離縁等、滅多に起こることでもないため、あくまでも形式的なものでありしっかりと管理されている訳じゃない…それに公爵家の財源があれば担当者の1人や2人囲い込む事ができるだろう…

改ざんした離縁状が仮に受理されており、私とベンジャミンが復縁した際には管理者の手違いだと……お得意の嘘と出鱈目で有耶無耶にするはず


故に離縁状が不正だと、訴える事は無理があるかもしれない、外堀を埋められている可能性が高い
子が出来ぬ私であるから、誰かと再婚するはずがないというふざけた考えなのだろう…悔しいことに、今の今まで気付けなかったのだけど………
………でも離縁してないからこそ、ベンジャミンには責めるべき有責がある


だからこそ、私は強く言ったのだ
「皆様と話すのがこれで最後になりそうで嬉しいのです」と


「最後だと?アメリア嬢…離縁状を見ただろう?お前とベンジャミンは正式な夫婦関係だ……妻として公爵家に戻ってきなさい」

グロウズ様は私にそう言って詰め寄るが、私は後ずさりしつつ質問に答える。


「ええ確かに確認しました、未だに未練がましく残していた事に血の気が引きました………ですが夫婦だからと言って貴方達の公爵家に戻る必要ありませんよね?」

「なにを言っている!?夫婦は共にあるのが当然だろう!」

「いえ、それは一般的に愛し合う2人だから成り立つ常識であります、私にはベンジャミンに対して愛などありませんので……別居も必然かと」

私の言葉に、わなわなと震えて怒りの表情をみせるグロウズ様…
それもそうだ、敢えて挑発するような小馬鹿にするような態度をとっているのだから

「お前は公爵家が面倒を見てやると言っているのだ!なぜそれを拒否する!!失礼だとは思わないのか!?」

「その話はすでにカミラ様と話しました、何度も言いたくありません………貴方達の庇護など私には一切必要ないのです…まずはご家族で話し合いの場を設けては?少しは冷静に考えられるかもしれませんよ?」

「こ………この!!!」

手をあげようと振りかざされた拳に、私は一切怯む事なく怯える姿を見せずに言葉を発する。

「殴りますか?どうぞお好きに…顔に傷を付けてくだされば、先程のベンジャミン様の平手も含めて暴力で私を支配しようとする方々だと吹聴するだけですので…公爵家の破滅になりそうですね」

「ぐっ!!くそ!!」

苛立ち、地団駄を踏むグロウズ様に…やはりベンジャミンとよく似ていると吞気に思いながら私の手を掴んでいたベンジャミンへと顔を向ける。

「いつまで手を掴んでいるのですか?離してください」

「ダメだ、アメリア…君は俺の妻なんだ!共にいるべきだ!絶対に君を離さない………愛していると分かってくれるまで!」

「………いい加減にしてください!!そうやって子供のように駄々をこねれば、いつか私が貴方になびくと思っているのですか?」

「っ!!」

声を荒げた私に驚いたのか、彼はあっさりと手を離してしまった。
愛していると分かってくれるまで離さない……よく言ったものだ…

「軽々しく、愛だとか言わないでください…………私は貴方の愛程、信用していない言葉はありませんから」

「待ってくれ……アリー…」

「アメリアです、二度とそう呼ばないで」

ベンジャミンと話し終え、忌々し気にこちらを睨んでいるグロウズ様に私は再び顔を向ける。

「と、いうことですグロウズ様………諦めてくださいましたか?」

「例え君に気持ちがなかろうと、離縁状にこちらが判を押さない限り………ベンジャミンと夫婦関係なのは変わりない!」

「その件で、貴方達は見落としていませんか?」

「は?」

「私達が夫婦だというのであればベンジャミン様の不貞の件は確実に離縁の理由に足る事だと思うのですが……ローズベル家としては傷ついた慰謝料を頂いてもよろしいのですよ?」

「な!?………何を言って!?」

「知らなかったのですね、だからまずは話し合いの場を設けるべきだと言ったのです…であれば離縁状に判を押していない事が公爵家としても不利益になると分かるでしょうに」

私はそのまま言葉を続ける。

「といっても、私は貴方達のお金になんて微塵も興味はありません………ですがこれ以上、夫婦関係である事を強調し、強要するのなら話は別です」

「ふざけるな…ふざけるな!!通るか!そんな話!」

「ふざけているのはそちらでしょう………今更、突き放した私に復縁を迫り……こんなに強引な手段で連れて行こうとする……誰に聞いてもおかしな事は明白ですよ?」

苦々しい表情を浮かべ、私を睨み付けるグロウズ様に最後の言葉を投げかける。
私は貴方達の思い通りに連れて行かれるような女性ではない、都合のいい女はもうこりごりだ



「慰謝料はいりません、代わりに離縁状に判を押してください………言っておきますが、無理に連れていこうとしても無駄です、貴方達の思い通りになるぐらいなら舌でも噛み切りますので」

「ぐ………」

「………………」


私の言葉に、彼らは相変わらずの沈黙で答える。
この不毛な時間を早く終わらせたいのだけど、ベンジャミンと今まで接して来ていてよく分かる。

彼らはこうやって黙ると………うんざりする程、長いと………




「早く押してください」と私が言おうと口を開いた




瞬間








「もう……や、やめましょう……あなた、ベンジャミン」


声を出したのは意外な方だった、それは私以外も一緒であり
ベンジャミンもグロウズ様も啞然としている。

先程まで成り行きを見守っていたベンジャミンの母…カミラ様が声を上げたのだから



「この子に私達がすべき事はこのような非道な行為ではありません………罪を償い、心の底から謝罪するべきです」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!

ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。 同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。 そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。 あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。 「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」 その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。 そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。 正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。

旦那様は離縁をお望みでしょうか

村上かおり
恋愛
 ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。  けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。  バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう

天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。 侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。 その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。 ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。

【完結】愛人宅に入り浸る夫が帰ってきたと思ったら、とんでもないこと始めたんだけど

リオール
恋愛
侯爵令息テリーと伯爵令嬢エリスは永遠の愛を誓い合った。その愛は永遠に続くと二人は信じて── けれど三年後、二人の愛は既に終わっていた。テリーの浮気癖が原因で。 愛人宅に居座って戻らないテリーに、エリスはすっかり気持ちが冷めていた。 そんなある日、久々に帰宅したテリーがとんでもない提案をするのだった。 === 勢いで書いたご都合主義なお話です。細かい事はあまり気にしないでください。 あと主人公はやさぐれて口が悪いです。 あまり盛り上がりもなく終わります… ※全8話

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

処理中です...