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クロード兄様と出会ったのは私がまだ8歳の時、伯爵家の令息であったクロード兄様とは社交場でよく出会った、私よりも5歳上だった兄様は当時、社交場に初めて参加して迷子になった私を優しく道案内してくれた事を覚えている。

そんなきっかけで、社交場で気兼ねなく話す事ができる彼をいつしか本当の兄のように慕い
いつしか兄様と愛称を付けて呼ぶようになっていた。
でも、気づけば彼は社交場に顔を出さなくなってしまっていた、公務が忙しいだとか、何か病にかかっただとか色々な噂を聞いたけど、どれも信憑性がなかったために本当の理由を知らない


だからクロード兄様と会ったのは本当に久々であった

「クロード兄様、これまで一体何をしていたのですか?」

「隣国………東の国に行っていたんだ」

東の国………私達の国と友好国で非常に栄えた国だと聞いた事がある。
私がベンジャミンに行きたいと言った隣国とはこの国の事だ、少しだけ嫌な事を思い出してしまったがそれ以上の興味が私の手を引いていた。

「東の国ですか!?気になります………どのような国だったのですか?」

「こらこらアメリア、まずは協力してくれるクロード殿に礼をしないと」

ローマン父様の諌める声に思わず、「あっ!」と声を出す。
好奇心で思わず質問をしていた、父様の言う通りだ………
慌てて頭を下げようとすると、クロード兄様が私を手で制す


「いえいえ、お礼なんて必要ないですよ……僕もアメリアと同じ夢を持っていて、いわば同じ志を持つ同士ですから」

「クロード殿」

「クロード兄様、それでも礼儀としてローズベル家を代表してお礼をさせてください………ありがとうございます。」

私が頭を下げ、ローマン父様も共に頭を下げるが
どこかクロード兄様は気まずそうに苦笑しながら「もう大丈夫…」と言ってくださったので頭を上げる。

「なんだか、アメリアの礼儀正しい姿は新鮮だよ、昔はもっと子供ぽかったから」

「まぁ…私も大きくなっているのですよ!」

「あぁ………もちろん知ってるよ、それが僕の後悔だから」

「え?」

小さく呟かれたクロード兄様の言葉に思わず聞き返す。
聞き間違いでなければ後悔と聞こえた、その真意を聞きたくて口を開いたが遮るようにクロード兄様は話を続けた

「さて、アメリア………よければ東の国について話をしようか」

聞かないでくれ……とクロード兄様が言っているようにみえたので、私もそれ以上は踏み込まないようにする。
誰にでも聞いてほしくない事があるものだ、そう思って好奇心に蓋をする事にした。




クロード兄様から聞いた東の国の話は正に私が目指す理想そのものだった……

貴族達が一方的に力を持つのではなく、民達の就学率も高く地位のある役職に辿り着く道がある。
民の考えと貴族の考えを意見交換し、より国が発展するために協力し合っている
そこに生まれ持った地位の差はなく平等にお互いの知識で国のため、住む人々のために手を取り合っているようだ


その大きな礎となっているのが、国を代表する学園
貴族、民の境目がなく、知識を学ぶ意欲のある者に入学が許される機関

「僕とアメリアの目指す事は、きっとその学園の存在だ」

「はい、まずはこの学び舎から…やがて貴族のご子息や国の子供達を招いて国に認められる学び舎となれば…」

「あぁ、この国は大きく前に進む事ができる……僕は東の国でその凄さを目で見て実感した…だから例え1人になってもこの国に学園を創り上げてみせると思っていたけど………アメリアも君が、独学で考えて同じ志を持ってくれて、共に進む協力者になれて嬉しいよ」

「わ、私も嬉しいです!共に叶えましょう!」

私とクロード兄様は握手をするとお互いの気持ちを固める。
やはり兄様とは上手くやっていけそうだ………
私とクロード兄様が今後について話をしていると朝日はすっかり上に登り、昼になってしまっている。
時間の流れる速さに驚きながらもクロード兄様の話はどれも興味深く、私の好奇心をくすぐった

「もう、こんな時間になってしまいましたね」

「ええ、クロード兄様と話していると時間の流れが早く感じます。」

「僕もだよアメリア、こんなに楽しい時間は久々だ」

お互いが昔のように、気兼ねなく話す事ができるように馴染んできた時に座っていたローマン父様が思い出したように声を出した


「そういえば、話は変わるがアメリア……お前、ベンジャミンと何かあったのか?」

「え!?」

父様からの突然の質問に思わず一驚してしまう、ちらりと見えたクロード兄様の表情が一瞬険しくなるのが気になったが、まずは父様からの質問に答えねばならないだろう。

「ベンジャミン様とは前の一件………離縁後に残した荷物を届けて頂いてからなにもありませんよ」

ローマン父様に吐いた前と同じ噓に罪悪感を感じながらも「仕方ない」ことだと自分に言い聞かせる。
心配をかけたくない、娘としては間違った選択だろうけど、これは大人になった私が解決すべき問題だから

私の返事を聞いて、ローマン父様がどこか不思議そうに頷いた

「そうか…いや、ベンジャミンとその父がこの間………公務中の別邸にまでやって来てな」

「い……いつですか?」

私の鼓動が途切れる間もなく、跳ね上がるのを感じた
もしや、ローマン父様にまで復縁を受け入れるような事を言ったのではないかと……これ以上ローマン父様が心配をするような事が起こらないように、復縁の件をローマン父様には隠していたのに……

「つい、数日前に来たんだベンジャミンとその父がな」

「何を言われたのですか?」

「謝罪されたんだ」


「え?」


「アメリアに行った非道と見放すような離縁のやり方、すべてを謝罪された………心の底から償いたいと、あの我の強い公爵家がな」



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