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「お、俺は…俺は…本当に君を愛して…」
「例え、その言葉が真実であろうと…私が受け入れる事はありません……そんな軽い愛しているという言葉は、遊んでいた女性達に言えばよろしいのでは?」
「彼女達は…………皆が俺から離れてしまった…魅力がないと言って………でもきっと俺が君にしでかした仕打ちを見て…俺では無理だと思われたのかもしれない…」
それもそうか…
妻にした仕打ちを近くで見た女性達が引き続き彼を愛する事はないだろう…
「残念でしたね…私もその女性達と同じ気持ちしか抱けませんよ?」
私がそう告げると、肩を落としたベンジャミン様は諦めたようにうつむいた
「分かっていた、俺のやってきた事は許されない事……君に黙って複数の女性と関係を持っていたのは事実だ…気の迷いだったんだ…子供ができないと焦り、跡取りを残さないといけない…その焦りと苛立ちから逃げだすため」
「後悔の言葉なんていりません、私が望んでいるのは忘れて欲しいと言っています…懺悔も謝罪もいりません、慰謝料もです…貴方のお金なんて要らない…もう好きに生きさせてください」
「……でも、俺は……もう後戻りできないんだ……」
何か言いたげな彼に、若干だが当惑する。
私には微塵も復縁を受け入れる意思はないと確かに気づいてもらったはず、なのに未だに引かない彼の執着心に疑念が浮かぶ………
なぜここまで彼は必死なの?
「ベンジャミン、今日はもう帰りましょう」
「あぁ母さん」
私が疑念を浮かべると同時に、あれほど渋っていた2人がようやく出て行く選択をした。
ここで引き留め、また長い時間を過ごすのだけは避けたい………
なので、私は喉に引っかかっている疑問を我慢して、無言で2人が立ち上がるのを見守ることにする。
「アリー、俺はまだ諦めてない……諦める事はできないんだ」
立ち上がったベンジャミン様がそう呟くので、私は感情をこめずに答える。
これだけ言って、まだその言葉を吐く彼に何を言っても無駄だと悟って…
「お帰りくださいベンジャミン様………私の事はお忘れください」
「………………………そうだ、せめてこれを」
思い出したように、彼は持ってきていたトランクを開き、ゴソゴソと何かを取り出した
「これ、この前にアリーが言っていた花だよ」
ベンジャミン様が手渡すのは、私がこの前に好きだと言ったゼラニウムの花
その白い花弁は美しかった、残念なのは彼が雑にトランクに入れていたせいだろう、茎が折れてしまっていた
贈り物でさえ大切にできない彼に呆れつつも、私はその花を受け取る。
「どうも……頂いておきます」
「君がこの花を好きだと言っていたから、これは確かに覚えているから……」
「覚えていなくても良かったんですけどね……でも少し残念です…ベンジャミン様、私の好きな花はまた変わったんです」
「は?」
「今はチューリップが好きなんです、それも珍しい黒い花弁の…」
私がそう言うと、彼は戸惑いつつも頷いた
「分かった…俺は君に俺自身の愛を信じてもらう、それしか出来ないから…だからまた来る…その時にその花を持ってくるよ」
「…………」
沈黙で返すと、彼はそれ以上なにも言わずにカミラ様と共に屋敷を出ていく
窓から去っていく彼を見ながら、深いため息を吐いた……
「まるで、なにも分かっていませんよ…………分かっていればこの花を渡せませんもの」
私はゼラニウムの花を見つめながら呟く、きっと彼は私の言葉を素直に受け取り、裏の意味を考えようともしないのだろう。
私が好きだと言った花を素直に渡せばいいと思い込んでいる。
直接言っても、遠回しに伝えても彼は諦めない……
その理由はきっと、私が感じた疑念が答えなのかもしれない
「次に会う時は、本当に最後にしましょう………」
誰に聞かれる訳でもない呟き、窓を開けると優しい風が頬を撫で部屋を通り、ゼラニウムの花の白く、綺麗な花びらをふわりと揺らす。
かつて愛していた彼が、今となっては情けなく…泣きわめき…母に頼っている姿
元より消えていた私の愛は、もう二度と再燃することは無いと花を見つめながら、改めて思った
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読んでくださってありがとうございます。
完結まで執筆完了しましたので完結予定日を報告します。
完結予定日
4月29日です
貯め読みされる方のご参考になれば幸いです。
引き続き今作をよろしくお願いします。
「例え、その言葉が真実であろうと…私が受け入れる事はありません……そんな軽い愛しているという言葉は、遊んでいた女性達に言えばよろしいのでは?」
「彼女達は…………皆が俺から離れてしまった…魅力がないと言って………でもきっと俺が君にしでかした仕打ちを見て…俺では無理だと思われたのかもしれない…」
それもそうか…
妻にした仕打ちを近くで見た女性達が引き続き彼を愛する事はないだろう…
「残念でしたね…私もその女性達と同じ気持ちしか抱けませんよ?」
私がそう告げると、肩を落としたベンジャミン様は諦めたようにうつむいた
「分かっていた、俺のやってきた事は許されない事……君に黙って複数の女性と関係を持っていたのは事実だ…気の迷いだったんだ…子供ができないと焦り、跡取りを残さないといけない…その焦りと苛立ちから逃げだすため」
「後悔の言葉なんていりません、私が望んでいるのは忘れて欲しいと言っています…懺悔も謝罪もいりません、慰謝料もです…貴方のお金なんて要らない…もう好きに生きさせてください」
「……でも、俺は……もう後戻りできないんだ……」
何か言いたげな彼に、若干だが当惑する。
私には微塵も復縁を受け入れる意思はないと確かに気づいてもらったはず、なのに未だに引かない彼の執着心に疑念が浮かぶ………
なぜここまで彼は必死なの?
「ベンジャミン、今日はもう帰りましょう」
「あぁ母さん」
私が疑念を浮かべると同時に、あれほど渋っていた2人がようやく出て行く選択をした。
ここで引き留め、また長い時間を過ごすのだけは避けたい………
なので、私は喉に引っかかっている疑問を我慢して、無言で2人が立ち上がるのを見守ることにする。
「アリー、俺はまだ諦めてない……諦める事はできないんだ」
立ち上がったベンジャミン様がそう呟くので、私は感情をこめずに答える。
これだけ言って、まだその言葉を吐く彼に何を言っても無駄だと悟って…
「お帰りくださいベンジャミン様………私の事はお忘れください」
「………………………そうだ、せめてこれを」
思い出したように、彼は持ってきていたトランクを開き、ゴソゴソと何かを取り出した
「これ、この前にアリーが言っていた花だよ」
ベンジャミン様が手渡すのは、私がこの前に好きだと言ったゼラニウムの花
その白い花弁は美しかった、残念なのは彼が雑にトランクに入れていたせいだろう、茎が折れてしまっていた
贈り物でさえ大切にできない彼に呆れつつも、私はその花を受け取る。
「どうも……頂いておきます」
「君がこの花を好きだと言っていたから、これは確かに覚えているから……」
「覚えていなくても良かったんですけどね……でも少し残念です…ベンジャミン様、私の好きな花はまた変わったんです」
「は?」
「今はチューリップが好きなんです、それも珍しい黒い花弁の…」
私がそう言うと、彼は戸惑いつつも頷いた
「分かった…俺は君に俺自身の愛を信じてもらう、それしか出来ないから…だからまた来る…その時にその花を持ってくるよ」
「…………」
沈黙で返すと、彼はそれ以上なにも言わずにカミラ様と共に屋敷を出ていく
窓から去っていく彼を見ながら、深いため息を吐いた……
「まるで、なにも分かっていませんよ…………分かっていればこの花を渡せませんもの」
私はゼラニウムの花を見つめながら呟く、きっと彼は私の言葉を素直に受け取り、裏の意味を考えようともしないのだろう。
私が好きだと言った花を素直に渡せばいいと思い込んでいる。
直接言っても、遠回しに伝えても彼は諦めない……
その理由はきっと、私が感じた疑念が答えなのかもしれない
「次に会う時は、本当に最後にしましょう………」
誰に聞かれる訳でもない呟き、窓を開けると優しい風が頬を撫で部屋を通り、ゼラニウムの花の白く、綺麗な花びらをふわりと揺らす。
かつて愛していた彼が、今となっては情けなく…泣きわめき…母に頼っている姿
元より消えていた私の愛は、もう二度と再燃することは無いと花を見つめながら、改めて思った
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読んでくださってありがとうございます。
完結まで執筆完了しましたので完結予定日を報告します。
完結予定日
4月29日です
貯め読みされる方のご参考になれば幸いです。
引き続き今作をよろしくお願いします。
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