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「し、知らない……なんの事だ?アリー………俺は君が何を言っているのか分からない」
まぁ、流石にベンジャミン様でも正直に白状するはずない、そんな事は知っている。
でも、必死に隠そうととぼけているけど、その泳いだ目を見逃すはずがない、正直、私の中でも確信があった訳ではない………でもこの前の薔薇の事や、私の知っている事と彼の反応を見れば彼の不貞は真実であると断言できる。
「では、まずはあの薔薇についてお聞きしましょうか?」
私が呼び差したのは、彼に頂いた真っ赤な薔薇
ベンジャミン様は意外といったように目を丸くした
「は?薔薇?俺の渡したあの薔薇がどうしたんだ?」
「貴方は言いましたね?私があの薔薇を好きだと言っていたと、でも私は今まで貴方にそんな事を一回でも言った事はありませんよ?」
「な!?」
「さて、改めてお聞きしましょうか?………あの薔薇、好きだと言っていたのは誰ですか?」
冷笑を浮かべて問いかけた私に、彼は汗を流し、酷く動揺している。
傍で見ていた彼の母親であるカミラ様も、その答えを待っていたように見える
「ち、違う………そうだ!庭園!あの庭園に咲いていたからだ!!君が管理してくれていた公爵家の庭園に真っ赤に咲いていたから、てっきり好きなのかと」
杜撰な言い訳過ぎて、思わず失笑してしまいそうになる
言い訳をするにしても、もう少し考えて話せばいいのに………
「私が公爵家で育てていた赤い花はカトレアです、薔薇の花弁とはまるで違います…先程、私の管理していた庭園を好きだとか、熱心に言っておられましたけど、まるで見ていなかったんですね………さて、薔薇が好きだと言っていたのは誰なんですか?」
「っ!?」
驚いた表情を浮かべたベンジャミン様は、もう言い訳が思い浮かばないのだろう。
項垂れ、頭を抱えてしまった、そして………彼がとった行動は最も惨めな物だった
「なぜ、信じてくれないんだ…………アリー…そんな酷い事を、俺が憎いのは分かるが、そんな出鱈目を言わないでくれ!」
泣いて「分かってくれ!!」と懇願する彼に、心はすっかり冷えていた、あくまでも真実を話す気もないのだろう……
「息子のベンジャミンがそんな事をするはずないでしょう!!謝りなさいよ!」
ようやく黙ってくれていたカミラ様も泣いているベンジャミン様を見て再燃してしまった…
それにしても、親子揃って…よく私を責められたものだ
「お言葉を返しますが、出鱈目な噂を流して私とローズベル家に汚名を付けた貴方達に責められる謂れはありません」
何か言い返そうとしたカミラ様を手で黙るように制止し、私は言葉を続けた
「シエラ、フローレンス…これでいい?ベンジャミン様」
とある2人の名前を呟いた瞬間、彼の表情が明らかに青ざめる。
先程まで流していた噓の涙はあっさりと引っ込んでしまい、その青ざめた表情のまま、逃げ癖のお得意の沈黙で返すという、これまた情けない反応に、何度目になるか分からないため息を吐く。
「伯爵家の令嬢であるこの2人は貴方と離縁した後の社交場で自慢気に言ってきましたよ、離縁する前に身体の関係を持っていて、私達はベンジャミン様に愛されている………………と」
「な………なんでそんな事を……」
「さぁ?私には想像もつきませんね?誰かと違って不貞をした事がないので、でも略奪が好きな女性がいるのかもしれません、わざわざ私に言いにきましたよ、口の軽い相手と身体の関係を持っていたんですね」
彼は観念したように、肩を落とす。
全てを知っていた私の顔を見ることすらなくなった、でもここで私は言葉を止める気はない、こんな所で終わるはずもない
「私とではなく、その方々と愛し合えば良いのでは?……それとも愛してもらえない理由でもあったのですか?」
「…………………」
「お得意の沈黙ですか…私が言えた事じゃありませんが、お相手はしっかりと選ぶべきですよベンジャミン様、少なくとも口の堅い方にすべきでしたね」
「………………」
黙っているベンジャミン様を見て、カミラ様がようやく私の言っている事が真実だと気づいたのか……
息子同様に青ざめ、黙ってしまった…ここでこそ、謝罪の言葉を口にしてくれれば少しは溜飲は下がったのだけど、都合が悪いと黙る親子の癖は私の怒りを助長させるだけだ
「それでは、もう一度お聞きしましょうベンジャミン様」
私は言葉を続ける
「公爵家の権力を使って自分の不貞を私になすりつけてローズベル家に泥を付けた貴方の、先程の愛のこもった言葉をもう一度お聞きしましょうか?………どうぞ?」
「ち、違う…俺は本当に君を……」
声を出したベンジャミン様に近づき、耳元で囁いた
「噓をついて、真実を隠していた貴方の愛するを、馬鹿正直に受け取って嬉しいと思う私がいると思うのなら、言葉を続けてください…………もう、言わせないで………消えてください、私の人生から…潔よく」
告げた声に、彼は声にならない嗚咽を漏らすことしかできず、私はそんな彼に一切の慈悲もなく…ただ沈黙で答えた
まぁ、流石にベンジャミン様でも正直に白状するはずない、そんな事は知っている。
でも、必死に隠そうととぼけているけど、その泳いだ目を見逃すはずがない、正直、私の中でも確信があった訳ではない………でもこの前の薔薇の事や、私の知っている事と彼の反応を見れば彼の不貞は真実であると断言できる。
「では、まずはあの薔薇についてお聞きしましょうか?」
私が呼び差したのは、彼に頂いた真っ赤な薔薇
ベンジャミン様は意外といったように目を丸くした
「は?薔薇?俺の渡したあの薔薇がどうしたんだ?」
「貴方は言いましたね?私があの薔薇を好きだと言っていたと、でも私は今まで貴方にそんな事を一回でも言った事はありませんよ?」
「な!?」
「さて、改めてお聞きしましょうか?………あの薔薇、好きだと言っていたのは誰ですか?」
冷笑を浮かべて問いかけた私に、彼は汗を流し、酷く動揺している。
傍で見ていた彼の母親であるカミラ様も、その答えを待っていたように見える
「ち、違う………そうだ!庭園!あの庭園に咲いていたからだ!!君が管理してくれていた公爵家の庭園に真っ赤に咲いていたから、てっきり好きなのかと」
杜撰な言い訳過ぎて、思わず失笑してしまいそうになる
言い訳をするにしても、もう少し考えて話せばいいのに………
「私が公爵家で育てていた赤い花はカトレアです、薔薇の花弁とはまるで違います…先程、私の管理していた庭園を好きだとか、熱心に言っておられましたけど、まるで見ていなかったんですね………さて、薔薇が好きだと言っていたのは誰なんですか?」
「っ!?」
驚いた表情を浮かべたベンジャミン様は、もう言い訳が思い浮かばないのだろう。
項垂れ、頭を抱えてしまった、そして………彼がとった行動は最も惨めな物だった
「なぜ、信じてくれないんだ…………アリー…そんな酷い事を、俺が憎いのは分かるが、そんな出鱈目を言わないでくれ!」
泣いて「分かってくれ!!」と懇願する彼に、心はすっかり冷えていた、あくまでも真実を話す気もないのだろう……
「息子のベンジャミンがそんな事をするはずないでしょう!!謝りなさいよ!」
ようやく黙ってくれていたカミラ様も泣いているベンジャミン様を見て再燃してしまった…
それにしても、親子揃って…よく私を責められたものだ
「お言葉を返しますが、出鱈目な噂を流して私とローズベル家に汚名を付けた貴方達に責められる謂れはありません」
何か言い返そうとしたカミラ様を手で黙るように制止し、私は言葉を続けた
「シエラ、フローレンス…これでいい?ベンジャミン様」
とある2人の名前を呟いた瞬間、彼の表情が明らかに青ざめる。
先程まで流していた噓の涙はあっさりと引っ込んでしまい、その青ざめた表情のまま、逃げ癖のお得意の沈黙で返すという、これまた情けない反応に、何度目になるか分からないため息を吐く。
「伯爵家の令嬢であるこの2人は貴方と離縁した後の社交場で自慢気に言ってきましたよ、離縁する前に身体の関係を持っていて、私達はベンジャミン様に愛されている………………と」
「な………なんでそんな事を……」
「さぁ?私には想像もつきませんね?誰かと違って不貞をした事がないので、でも略奪が好きな女性がいるのかもしれません、わざわざ私に言いにきましたよ、口の軽い相手と身体の関係を持っていたんですね」
彼は観念したように、肩を落とす。
全てを知っていた私の顔を見ることすらなくなった、でもここで私は言葉を止める気はない、こんな所で終わるはずもない
「私とではなく、その方々と愛し合えば良いのでは?……それとも愛してもらえない理由でもあったのですか?」
「…………………」
「お得意の沈黙ですか…私が言えた事じゃありませんが、お相手はしっかりと選ぶべきですよベンジャミン様、少なくとも口の堅い方にすべきでしたね」
「………………」
黙っているベンジャミン様を見て、カミラ様がようやく私の言っている事が真実だと気づいたのか……
息子同様に青ざめ、黙ってしまった…ここでこそ、謝罪の言葉を口にしてくれれば少しは溜飲は下がったのだけど、都合が悪いと黙る親子の癖は私の怒りを助長させるだけだ
「それでは、もう一度お聞きしましょうベンジャミン様」
私は言葉を続ける
「公爵家の権力を使って自分の不貞を私になすりつけてローズベル家に泥を付けた貴方の、先程の愛のこもった言葉をもう一度お聞きしましょうか?………どうぞ?」
「ち、違う…俺は本当に君を……」
声を出したベンジャミン様に近づき、耳元で囁いた
「噓をついて、真実を隠していた貴方の愛するを、馬鹿正直に受け取って嬉しいと思う私がいると思うのなら、言葉を続けてください…………もう、言わせないで………消えてください、私の人生から…潔よく」
告げた声に、彼は声にならない嗚咽を漏らすことしかできず、私はそんな彼に一切の慈悲もなく…ただ沈黙で答えた
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