【完結】潔く私を忘れてください旦那様

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「あ、貴方！自分が何を言っているか、分かっているの！？」

「ええ、考えて話しております…言葉を訂正する気もありませんよ、カミラ様」

キッパリと断った事に再度、怒りが沸騰してきたのか…
カミラ様は耳まで赤くしながら、いよいよ立ちあがり叫ぶように私を責め立てた


「そんな！恥ずかしくない生き方ですって！？できるはずがありませんよ！！女性の幸せは結婚です！旦那様を幸せするために尽くすことだけが女性の幸せなのです！！」

「いえ、違います…それはカミラ様の幸せであり、私の幸せではありません…貴方の考えを私に押し付けないでください」

「お、押しつけていません！！私は貴方のためを想って言っているのです！！」

「それこそ、親切の押し売りです、私自身が望んでいない事をカミラ様の望みと混同しないで頂けますか？」

「だ、黙りなさい！！生意気に言い返さないで！」

「そうやって、不都合な事は相手に黙ってもらうのはベンジャミン様と同様でよく似ておられますね」

「っ！！………………………………」

「沈黙も一緒です、貴方達の考えは似ています、傲慢な考えが私を苦しめる事に気づいて頂けない事まで」

ここまで言って、まだ諦めないのか
カミラ様は再度、私を睨みながら口を開いた。


「確かに貴方の価値は変わらないわね、でも女性として跡取りも残せない事は、大勢の総意では無価値でもあるのよ？それに気づいているの？」

この人こそ、自分が何を言っているのか分かっているのだろうか……
呆れたという思いと、これ以上相手にしたくない気持ちが混ざって複雑な気分だった。

「そうですか………それがどうしたのです？」

「は！？」

「私は確かに子を産めません、でもだからこそ次世代の子供達に数多くの選択肢を手に入れてもらうために教師になる事を目指しております………そうやって別の形で未来に貢献できる事は出来ます」

「何言ってるの？女性の幸せは結婚よ！そんな事は女性の役目ではありません」

「女性だとか、男性だとか……関係ありません、夢を目指す事に性別の役目を考える必要がありますか？」

「ぐ………で、でも…」

「子を産めない事を女性として無価値だと言う貴方の思想を否定する気はありません、勝手に思っておけばいい、でも私はそんな事を気にして立ち止まる気はありません………貴方達に庇護される必要もありません……」

「………………」

私は言葉を続けた、ここまで言ってしまったのだ
もう遠慮なんて必要ない、言いたいことは全て言ってしまおう。

「私が無価値だと、後ろ指を指して笑って生き続けてください、そうやってずっと立ち止まっていたらいい、私は笑っている貴方達を考える事もありませんからどうぞご自由に…………私は前を向いて歩いていきます、だからさっさと私を忘れてください」

最後まで言い切り、黙して語らなくなったカミラ様を置いて、私は紅茶を口に含み一息つく。


「もう、言いたいことはありませんか？カミラ様」

「わ、私は認めません…女性の幸せは結婚です…だから公爵家の私達は貴方を再度受け入れてあげようと」

「最初から理解して頂く気はありませんでしたが、そうやって何度も同じ事を言われても困ります、もう一度私の話を最後まで聞きたいでしょうか？………………貴方の考えを私に押し付けないで、それが言いたいのです。」

「うぐ…………」



認めてはいないが、理解はしてくれただろうか？
私がベンジャミン様と復縁する気なんて一切、微塵もなく可能性がない事を

話が通じない相手だと思っていたけど、ベンジャミン様よりは聞き分けが良くて助かったわ。


さて、もう一人の相手をしないとね……
面倒ではあるけど、黙ってまた居座られては困るから。


「それで、ベンジャミン様………お話は聞いていましたよね？私は復縁する気はありませんし、貴方達の庇護など求めておりません………もう26歳となったのにお母様に会話を任せて沈黙を貫くのは公爵家当主としての姿には見えませんが？」

私がそう言ってベンジャミン様に視線を向ける
その間にカミラ様は割って入った。

「ベンジャミンは心を病んでいて、話せないの！！無理させないで！」
と言っているけど、彼の目を見ればよく分かった
目が泳ぎ、うろたえている………昔から噓をつくのは苦手だったわね。


「本当にそうでしょうか？ねぇ？ベンジャミン様………」


私が揺するように問いかける、私は知っていると思わせるような含みを持たせて、その事に動揺し限界を感じたのか、ベンジャミン様は座っていたソファーから滑り落ちるように土下座をした

「すまない！！アリー！！心が病んでいるのは噓だ！！お母様なら何とかしてくれるだろうと………」

「はぁ！？ベンジャミン！あ、貴方……何を言って！？」

カミラ様の声も無視しながら、ベンジャミン様は顔を上げ私を見つめる。
そしてむせび泣くように語り始めた

「お願いだ、アリー………俺の気持ちを聞いてくれ……」

そう言って、私の答えさえ聞かずにベンジャミン様は一方的な想いを私に告げ始めた。