本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~

なか

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番外編

その後の物語④ アーシアside

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 抱きしめられる両腕から感じる熱に、私自身の鼓動も早くなっていく。
 まさか……こんな事になるなんて。

 
 数日前、ブルーノ閣下の代役として社交界に出て欲しいと連絡があって引き受けた。
 その際、以前の閣下の言葉がちらつき……自らも行動してみるべきかと思案した結果。

 古き風習を思い出し、遠回しに想いを伝えるように彼の色をまとった。
 その効果は、どうやら絶大だったのかもしれない……

「此度の社交界。俺が……ずっと傍にいる。君の護衛としてだけでなく、想い人として」
 
「ありがとうございます。ヴォルフ様」

 再び抱き締められた腕に、私の手を添える。
 熱くなっていく体温と、彼の胸から聞こえる鼓動に思わず笑いながら。
 彼の手を握って、共に歩き出す。

「さぁ、会場に行きましょう。ディノ殿下も待っておりますから」

「そうだな。アーシア」

 以前と同様に、手を繋ぐ行為は変わらないのに。
 お互いの気持ちを伝え合い、知ることが出来た今は……その行為すら特別に感じる。

『先輩!』

 ふと、私の記憶の中にあった。
 前世の思い出、刑事として生きていた日々、共に過ごしていた後輩を思い出す。

 思えばあの時の私達も……以前までの私とヴォルフ様と同じ関係であったはずだ。
 互いに、ほんのりと想う気持ちを抱きながら傍にいた記憶がある。
 
「そうか。だから……居心地が良かったんだ……」

「どうした、アーシア」

「い、いえ。なんでもありません」

 きっと私は前世同様に、居心地の良い時間を享受していたのだろう。
 でも、今はもう違う。

「ヴォルフ様、勇気を出して気持ちを伝えてくださり……感謝しています」

「俺は……ブルーノ閣下から背を押されてようやくだ。情けない事にな」

「それでも、私は幸せです。愛してくれる人が居ると知れたので」

「っ! そうか、なら、嬉しい」

 そんな事を呟き、苦笑を漏らす彼の背を押す。
 本当に、閣下にも……勇気を出してくれたヴォルフ様にも感謝をしたい。

 互いの気持ちを伝えて、想い人として過ごす時間。
 それがとても幸せだと、ようやく気付けたのだから。

「ずっと、傍にいてくれますか?」

「もちろん!」

 望む答えをくれた彼と腕を組み、共に会場へと入って行く。
 誰も阻む者はいない。

 
 『禁じられた愛』に秘められていた危機は退け、これからは私の物語だった。
 そしてそこに、彼との物語も重なった事が、とても嬉しく思える。
 
 そう、私は今……とても幸せだ。

 互いのこれからの幸せを願いながら、その最初のページを刻むように。
 私達は二人で過ごす一歩を、共に歩み始めた。

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