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二巡「変化」
巡りの狭間②
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気付けば……真っ黒な空間にいた。
ここはレオンの記憶で知っている。悪魔と始めて会った場所だ。
『お前はここに来ても……やっぱり驚かないな』
ムト……
ここに呼び出したという事は、もう一度……やり直す機会をくれるの?
『その前にお前には……真実を話しておこう』
ムトは真っ黒の中でも私に存在が分かるように形を表す。
おぞましい姿ではなく、犬の姿だ……
『お前がこれがいいって言ったからだろ』
ありがとう。
『話を戻すぞ。まず……アンネッテについてだ』
アンネッテ、貴方は彼女を知っていたの?
『あぁ。元はあいつが何百と同じ人生を繰り返していたからな』
え……?
『アンネッテの一度目の人生では、お前とレオンは順調に結ばれていた。しかし……突然の事故で二人とも死んだ』
アンネッテの一度目の人生……
私が知らぬ亡き親友についてを、ムトは話していく。
『アンネッテは誰かが二人を殺した事までは分かっていた。だから、親友のお前とレオンを救うため……一度目の人生で降魔の儀式を学び、俺を呼び出して巻き戻しを願った』
アンネッテが、私達のために巻き戻りをムトに願った……
その真実に、彼女に裏切られていたと思っていた気持ちにズブリと釘が刺さったような罪悪感が押し寄せる。
『俺は不幸が見るのを楽しみたくて引き受けた。事実、あいつは数百と繰り返してもお前らを救う事は出来ず、フォンド公爵に辿り着く事すら叶わなかった』
何度も巻き戻しをしていたなら、私達に協力を申し出ても良かったはずだ。
アンネッテはそんな素振りを見せてなかった。
『ルールがあったからな。一つは未来について他者に教える事は禁止。二つ目は巻き戻しを誰かに知られたなら、その時点で俺との契約は終り、運命を元に戻す』
どうして、そんなことを。
そのルールが無ければ……
『時間を戻すのは簡単じゃない。同じ人物となれば、誓約を設けてようやく戻せる』
だから、ムトは、、レオンから私にレオンの記憶を継いだのか。
同じ人物でループを繰り返さなかったのは、嫌がらせではなく理由あってのもの。
『話を戻そう。試行錯誤を繰り返し、アンネッテは二人の関係を裂けば、亡くなるまでの期間が長くなる事に気付いた。事件の解明のため、奴はその道を繰り返し続けた』
親友だと誓った彼女が、どうしてウソまで吐いて私達の仲を裂いたのか。
事実を伝えられて胸が痛む。
アンネッテ……貴方は、私のために……
『だが二人の仲を裂いても結局は死ぬ。それにアンネッテは二人を引き裂く罪悪感に加え、王妃教育ではミランダによってイジメを受ける。そんなループを幾度も繰り返すうちに心が折れた』
……
『だから、最後は自分の命と引き換えにお前達の巻き戻しを願った。新たな契約を俺と結んだんだよ』
その後は、私とレオンが体験した事だ。
アンネッテは結果的に、ムトとの契約のために命を落とした。
だがその死さえ利用され、レオンと私は破滅に追い込まれたのだろう。
『レオンにやり直しの機会を与えたのは、本当は気まぐれではなく。アンネッテとの契約があったからだ』
アンネッテは幾度と繰り返した人生はどれだけ辛く苦しかったのか。
何度も親友の死を経験する辛さは、一度の経験だけで悲しみに押しつぶされた私には想像もできない。
気付いてあげられなかった事がたまらなく悔しい。
親友と誓い合った約束を、アンネッテはずっと守ってくれていたのに……
『これが、俺がお前達に会う前の真実だ。そして、今後の話をしないとな』
今後の話。
もう一度人生を巻き戻してくれる事ね。
『あぁ、これが本当の最後だ。だが……戻せるのはお前の死の間際までが限界だ』
っ……
私にはあの状況を覆す方法なんて簡単に思い浮かばない。
あまりに絶望的だ。
『それに記憶は……あのろくでなしに戻す』
また、レオンが引き継ぐというの?
それでは、私の記憶は……?
『お前がレオンの記憶で変化させた運命は、全て奴に愛想を尽かした上での行動に置き換わる。俺との記憶も消える。これだけ制約を設けて、ようやくそこまで戻せる』
……レオンが……私の代わりに。
『もっと戻してやりたいが、俺にはこれが限界だ』
どうしてそこまでしてくれるの?
貴方は、私の不幸を望んでいたはずなのに。
『気まぐれだ』
ムト……
『それに以前、お前が人は変われると言ったな? あの絶望的な状況で、あのろくでなしが変われるのか試したいだけだ』
っ……
『あんなろくでなしでもキッカケ次第で変われるなら、もう少し人間を信じてみてもいいと、お前を見て俺は思えた』
それが、最後のチャンスをくれる理由なのね。
ムト。
『本音は気まぐれだぞ? 本当は助けたいなんて思ってないし、またお前が殺されたら今度こそ笑ってやる』
……ありがとう、ムト。
私も本音を話すとね、記憶が戻った日は不安だった。
だけど貴方が居たから……緊張の中で安心できたの、実はすごく感謝してたよ。
『聞いてねぇよ』
……私が貴方と会うのは最後なんでしょ?
だから、言っておきたかっただけ。
『………………助かるといいな』
徐々に、意識が途切れるような感覚が訪れる。
もうすぐ、お別れのようだ。
『あいつは、変われると思うか?』
そう信じたい。
私がそうだったように、私の記憶を継いだレオンは変われるはずだ。
でも……本音を言えば、私はアンネッテも救いたかった。
だからムト、最後に聞きたい。
アンネッテは救う方法があれば、教えてほしいの。
『残念ながら、契約を結んだ時点で無理だ』
っ……
『だけど、あいつはお前に生きて欲しいと願っていた。だから、お前はアンネッテの願いを叶えるためにも、自分の幸せだけを祈っておきな』
ごめんなさい……アンネッテ。
私は貴方に裏切られていたと思っていた。
本当は最後まで想ってくれていたのに……なんて恩知らずなんだろうか。
{セレリナ、私達はずっと友達でいましょうね?}
あの時交わした約束通り。
こんな私だけど……叶うならば、貴方を友達だと思って生きたい。
貴方が必死に繋ぎ止めてくれた命を続けるためにも、生き残りたい。
そのためには、レオンにこの想いを託すしかないのが、歯がゆい思いだ。
『さぁ、生きるも死ぬも、これが最後だ。あのろくでなしがお前の代わりに死ぬ覚悟があれば……まだ、助かるかもな』
笑いを含んだムトの呟きを最後に、私の意識はブツリと途切れた。
ここはレオンの記憶で知っている。悪魔と始めて会った場所だ。
『お前はここに来ても……やっぱり驚かないな』
ムト……
ここに呼び出したという事は、もう一度……やり直す機会をくれるの?
『その前にお前には……真実を話しておこう』
ムトは真っ黒の中でも私に存在が分かるように形を表す。
おぞましい姿ではなく、犬の姿だ……
『お前がこれがいいって言ったからだろ』
ありがとう。
『話を戻すぞ。まず……アンネッテについてだ』
アンネッテ、貴方は彼女を知っていたの?
『あぁ。元はあいつが何百と同じ人生を繰り返していたからな』
え……?
『アンネッテの一度目の人生では、お前とレオンは順調に結ばれていた。しかし……突然の事故で二人とも死んだ』
アンネッテの一度目の人生……
私が知らぬ亡き親友についてを、ムトは話していく。
『アンネッテは誰かが二人を殺した事までは分かっていた。だから、親友のお前とレオンを救うため……一度目の人生で降魔の儀式を学び、俺を呼び出して巻き戻しを願った』
アンネッテが、私達のために巻き戻りをムトに願った……
その真実に、彼女に裏切られていたと思っていた気持ちにズブリと釘が刺さったような罪悪感が押し寄せる。
『俺は不幸が見るのを楽しみたくて引き受けた。事実、あいつは数百と繰り返してもお前らを救う事は出来ず、フォンド公爵に辿り着く事すら叶わなかった』
何度も巻き戻しをしていたなら、私達に協力を申し出ても良かったはずだ。
アンネッテはそんな素振りを見せてなかった。
『ルールがあったからな。一つは未来について他者に教える事は禁止。二つ目は巻き戻しを誰かに知られたなら、その時点で俺との契約は終り、運命を元に戻す』
どうして、そんなことを。
そのルールが無ければ……
『時間を戻すのは簡単じゃない。同じ人物となれば、誓約を設けてようやく戻せる』
だから、ムトは、、レオンから私にレオンの記憶を継いだのか。
同じ人物でループを繰り返さなかったのは、嫌がらせではなく理由あってのもの。
『話を戻そう。試行錯誤を繰り返し、アンネッテは二人の関係を裂けば、亡くなるまでの期間が長くなる事に気付いた。事件の解明のため、奴はその道を繰り返し続けた』
親友だと誓った彼女が、どうしてウソまで吐いて私達の仲を裂いたのか。
事実を伝えられて胸が痛む。
アンネッテ……貴方は、私のために……
『だが二人の仲を裂いても結局は死ぬ。それにアンネッテは二人を引き裂く罪悪感に加え、王妃教育ではミランダによってイジメを受ける。そんなループを幾度も繰り返すうちに心が折れた』
……
『だから、最後は自分の命と引き換えにお前達の巻き戻しを願った。新たな契約を俺と結んだんだよ』
その後は、私とレオンが体験した事だ。
アンネッテは結果的に、ムトとの契約のために命を落とした。
だがその死さえ利用され、レオンと私は破滅に追い込まれたのだろう。
『レオンにやり直しの機会を与えたのは、本当は気まぐれではなく。アンネッテとの契約があったからだ』
アンネッテは幾度と繰り返した人生はどれだけ辛く苦しかったのか。
何度も親友の死を経験する辛さは、一度の経験だけで悲しみに押しつぶされた私には想像もできない。
気付いてあげられなかった事がたまらなく悔しい。
親友と誓い合った約束を、アンネッテはずっと守ってくれていたのに……
『これが、俺がお前達に会う前の真実だ。そして、今後の話をしないとな』
今後の話。
もう一度人生を巻き戻してくれる事ね。
『あぁ、これが本当の最後だ。だが……戻せるのはお前の死の間際までが限界だ』
っ……
私にはあの状況を覆す方法なんて簡単に思い浮かばない。
あまりに絶望的だ。
『それに記憶は……あのろくでなしに戻す』
また、レオンが引き継ぐというの?
それでは、私の記憶は……?
『お前がレオンの記憶で変化させた運命は、全て奴に愛想を尽かした上での行動に置き換わる。俺との記憶も消える。これだけ制約を設けて、ようやくそこまで戻せる』
……レオンが……私の代わりに。
『もっと戻してやりたいが、俺にはこれが限界だ』
どうしてそこまでしてくれるの?
貴方は、私の不幸を望んでいたはずなのに。
『気まぐれだ』
ムト……
『それに以前、お前が人は変われると言ったな? あの絶望的な状況で、あのろくでなしが変われるのか試したいだけだ』
っ……
『あんなろくでなしでもキッカケ次第で変われるなら、もう少し人間を信じてみてもいいと、お前を見て俺は思えた』
それが、最後のチャンスをくれる理由なのね。
ムト。
『本音は気まぐれだぞ? 本当は助けたいなんて思ってないし、またお前が殺されたら今度こそ笑ってやる』
……ありがとう、ムト。
私も本音を話すとね、記憶が戻った日は不安だった。
だけど貴方が居たから……緊張の中で安心できたの、実はすごく感謝してたよ。
『聞いてねぇよ』
……私が貴方と会うのは最後なんでしょ?
だから、言っておきたかっただけ。
『………………助かるといいな』
徐々に、意識が途切れるような感覚が訪れる。
もうすぐ、お別れのようだ。
『あいつは、変われると思うか?』
そう信じたい。
私がそうだったように、私の記憶を継いだレオンは変われるはずだ。
でも……本音を言えば、私はアンネッテも救いたかった。
だからムト、最後に聞きたい。
アンネッテは救う方法があれば、教えてほしいの。
『残念ながら、契約を結んだ時点で無理だ』
っ……
『だけど、あいつはお前に生きて欲しいと願っていた。だから、お前はアンネッテの願いを叶えるためにも、自分の幸せだけを祈っておきな』
ごめんなさい……アンネッテ。
私は貴方に裏切られていたと思っていた。
本当は最後まで想ってくれていたのに……なんて恩知らずなんだろうか。
{セレリナ、私達はずっと友達でいましょうね?}
あの時交わした約束通り。
こんな私だけど……叶うならば、貴方を友達だと思って生きたい。
貴方が必死に繋ぎ止めてくれた命を続けるためにも、生き残りたい。
そのためには、レオンにこの想いを託すしかないのが、歯がゆい思いだ。
『さぁ、生きるも死ぬも、これが最後だ。あのろくでなしがお前の代わりに死ぬ覚悟があれば……まだ、助かるかもな』
笑いを含んだムトの呟きを最後に、私の意識はブツリと途切れた。
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