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彼を見つけるのは容易だった。
訓練場の陰で一人佇み、空を見上げているマルクの肩を叩く。
「待たせました……マルク」
「っ!? リール……いや、本当は違うのか?」
「私の本名はリルレット・ローゼリアです。騎士に憧れ、性別を偽って騎士団に入団していましたが、軍律違反で今日から除隊になりました」
「ほ、本当か?」
「はい……でも、今は特命騎士として活動を続けさせてもらいますので、しばらくはこのままです」
「そ、そうか。はは……何がなにやら」
自嘲気味に乾いた笑い声を上げながら、彼は俯く。
「ずっと、騙していたのか?」
「ごめん、マルク」
悲痛な表情を浮かべる彼を見ながら、私は口を開く。
「貴方を騙していたせいで、余計な悩みを抱えさせてしまった事を謝らせてください」
「……要らないさ、どうせ実らない想いだと知っていた。それに君が女性だと聞いて妙に納得できたよ」
「もし、話して楽になる事があれば話してください。マルク」
「分かって言っているのか?」
マルクは私を壁際に押して壁を叩く。
怒りと悲しみの混ざる、複雑な表情で私の肩を掴んだ。
「楽になる? 俺の特別な相手にでもなってくれるのか? この想いを受け入れてくれるのかよ!!」
「……マルク、私は」
「知っている、見ていれば分かる。お前にはユリウス様がいて、俺の想いは実らないのは分かっている!! でもこの気持ちは本気だ!」
彼の感情が痛いほどによく分かる。
その苦しい感情はアルフレッドを見ていた時の私と同じだ。
「この感情が苦しくて仕方ない。お前のせいじゃないと分かっているのに、全てをお前のせいにして、いっそ無理にでも自分のものにしたい……そんな醜い考えさえ浮かぶ」
その苦しさを与えている事に胸が締め付けられる。
心の内を吐き出したマルクは言葉を続けた。
「でも、それがお前の幸せにはならないと知っている。身を引くべきなのは俺自身だと分かってる」
辛く、押し殺すように唇を噛み、彼は私のために言いたくない言葉を口に出す。
諦めるため、答えを聞きたくない質問を私へと問いかける
「お前がずっと好きだった、リルレット。でも想いは叶わないと分かる……だから諦めさせてくれ、お前の言葉で俺の想いに答えてくれ。頼む」
「マルク……ごめん、ごめんなさい」
今から伝える事は、マルクを辛く苦しませると分かっている。
分かっているからこそ、涙がこぼれ落ちて流れていく。
辛いと分かっている、だけど諦めるためには想いをハッキリと伝えないといけない。
好きな気持ちを抑えられない私達には……諦める理由が必要だから。
「私には……他に想っている人がいます。だから……貴方の気持ちには答えられない。ごめんなさい」
頭を下げ、マルクの気持ちに答える。
胸が詰まり、申し訳ないと思う気持ちが溢れて止まらない。
だけど、彼とは恋仲ではなく、友人としてこれからも過ごしていきたいのだ。
「もし、叶うのなら。また友人でいてくれませんか? 僕……いえ、私はマルクと友人のままでいたい」
視線を上げ、問いかける。
マルクは顔を上げ、涙を堪えるように瞳を閉じながらゆっくりと頷いた。
「俺からも友人でいて欲しい、リルレット」
「ありがとう……マルク」
その言葉にどれだけの覚悟がいるだろう。
友人のままでいいと言ってくれる貴方はとても強い。
かつての私であれば、少しの可能性を信じてすがりついていたかもしれない。
「ユリウス様を待たせているんだろ? 行ってこいよ」
肩に手を置き、微笑むマルクの姿はかつて共に時間を過ごした同僚で、友人の笑みに戻っていた。
だが、潤む瞳には諦められない恋情を帯びており、今は私を見ているだけでも辛いはずだ。
「マルク、また……」
「あぁ、またな」
再び会った時は、友人として会おう。
振り返って鼻をすすったマルクにかける言葉はない。
一人にして欲しいはずだ、かつての私がそうであったように。
彼の背にもう一度だけ頭を下げ、私は歩き出す。
もう、振り返る事は無い。
自由に生きていくと決めたのだ。
だから、ユリウス様にも私の想いを素直に伝えよう、この恋情を全て打ち明けよう。
もう、後ろ髪を引かれる事は無いから。
訓練場の陰で一人佇み、空を見上げているマルクの肩を叩く。
「待たせました……マルク」
「っ!? リール……いや、本当は違うのか?」
「私の本名はリルレット・ローゼリアです。騎士に憧れ、性別を偽って騎士団に入団していましたが、軍律違反で今日から除隊になりました」
「ほ、本当か?」
「はい……でも、今は特命騎士として活動を続けさせてもらいますので、しばらくはこのままです」
「そ、そうか。はは……何がなにやら」
自嘲気味に乾いた笑い声を上げながら、彼は俯く。
「ずっと、騙していたのか?」
「ごめん、マルク」
悲痛な表情を浮かべる彼を見ながら、私は口を開く。
「貴方を騙していたせいで、余計な悩みを抱えさせてしまった事を謝らせてください」
「……要らないさ、どうせ実らない想いだと知っていた。それに君が女性だと聞いて妙に納得できたよ」
「もし、話して楽になる事があれば話してください。マルク」
「分かって言っているのか?」
マルクは私を壁際に押して壁を叩く。
怒りと悲しみの混ざる、複雑な表情で私の肩を掴んだ。
「楽になる? 俺の特別な相手にでもなってくれるのか? この想いを受け入れてくれるのかよ!!」
「……マルク、私は」
「知っている、見ていれば分かる。お前にはユリウス様がいて、俺の想いは実らないのは分かっている!! でもこの気持ちは本気だ!」
彼の感情が痛いほどによく分かる。
その苦しい感情はアルフレッドを見ていた時の私と同じだ。
「この感情が苦しくて仕方ない。お前のせいじゃないと分かっているのに、全てをお前のせいにして、いっそ無理にでも自分のものにしたい……そんな醜い考えさえ浮かぶ」
その苦しさを与えている事に胸が締め付けられる。
心の内を吐き出したマルクは言葉を続けた。
「でも、それがお前の幸せにはならないと知っている。身を引くべきなのは俺自身だと分かってる」
辛く、押し殺すように唇を噛み、彼は私のために言いたくない言葉を口に出す。
諦めるため、答えを聞きたくない質問を私へと問いかける
「お前がずっと好きだった、リルレット。でも想いは叶わないと分かる……だから諦めさせてくれ、お前の言葉で俺の想いに答えてくれ。頼む」
「マルク……ごめん、ごめんなさい」
今から伝える事は、マルクを辛く苦しませると分かっている。
分かっているからこそ、涙がこぼれ落ちて流れていく。
辛いと分かっている、だけど諦めるためには想いをハッキリと伝えないといけない。
好きな気持ちを抑えられない私達には……諦める理由が必要だから。
「私には……他に想っている人がいます。だから……貴方の気持ちには答えられない。ごめんなさい」
頭を下げ、マルクの気持ちに答える。
胸が詰まり、申し訳ないと思う気持ちが溢れて止まらない。
だけど、彼とは恋仲ではなく、友人としてこれからも過ごしていきたいのだ。
「もし、叶うのなら。また友人でいてくれませんか? 僕……いえ、私はマルクと友人のままでいたい」
視線を上げ、問いかける。
マルクは顔を上げ、涙を堪えるように瞳を閉じながらゆっくりと頷いた。
「俺からも友人でいて欲しい、リルレット」
「ありがとう……マルク」
その言葉にどれだけの覚悟がいるだろう。
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「ユリウス様を待たせているんだろ? 行ってこいよ」
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だが、潤む瞳には諦められない恋情を帯びており、今は私を見ているだけでも辛いはずだ。
「マルク、また……」
「あぁ、またな」
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振り返って鼻をすすったマルクにかける言葉はない。
一人にして欲しいはずだ、かつての私がそうであったように。
彼の背にもう一度だけ頭を下げ、私は歩き出す。
もう、振り返る事は無い。
自由に生きていくと決めたのだ。
だから、ユリウス様にも私の想いを素直に伝えよう、この恋情を全て打ち明けよう。
もう、後ろ髪を引かれる事は無いから。
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