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二章
69話
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コッコちゃんとの不思議な旅行を終えて、数か月が経った。
あれから、コッコちゃんは私に甘えてくれるようになってくれた。
庭園で会えば必ず膝上に乗ってくれて、身体を摺り寄せてくれる。
可愛くて仕方がない。
「こーこ、きょーもいくの?」
「コケ!」
そんなコッコちゃんは時折、自らの家族を連れて庭園に植えた若木に向かう。
あの子に家族を紹介しているのかもしれない。
その光景を眺めていると、突然後ろから抱きしめられる。
「カティ」
「っ……シルウィオ」
政務が終わったのだろう。彼は私を抱きしめて、そっと口付けをくれた。
そして……お腹を優しく撫でる。
「お腹の子のためにも、安静にな」
「うん、分かってるよ」
そう、私のお腹にはもう一つの命が新たに宿っている。
リルレットの弟か、妹がいるのだ。
「どんな子かな……楽しみだね」
「あぁ」
シルウィオも嬉しいのだろう。
私に甘えるように、身体を寄せて……お腹を撫でてくれた。
「おかたん、おなかにこどもいるー」
リルレットもニコリと笑って、私へと抱きついた。
「そうよ、リルレットもお姉さんになるのよ」
「やた! はやく、おねさまになりたい!」
喜びを身体で表現するように飛び跳ねるリルレットへ、私は忘れないうちに聞いておかなければならない事を問いかける。
「リルレットも、もうすぐ三歳だけど……なにか欲しい物はある?」
「うーー?」
「なんでもいいぞ。リル」
「えー。りるのほしいの……なんだろ」
シルウィオも尋ねるけど、リルレットはあまり思いつかないようだ。
首を傾げて暫く考えており、なかなか答えが出ぬまま時間が経ったと思えば。
突然ひらめいたのか、顔を上げた。
「りるね! おかたんの……お国にいってみたいの!」
「え?」
グラナートに行きたいという事だろうか。
突然の提案に驚いてしまうが、シルウィオは意外とまんざらでもなかった。
「いいぞ」
「やた! りるね、たのしみ!」
まぁ、リルレットが望むのなら断る理由もない。
それに……私も亡き母のお墓参りぐらいは行っておきたかった。
母に、私の家族を見てもらいたい。
「では、早速準備をしましょうか」
「あぁ」
リルレットの願いを聞くため、準備が始まった。
今回は流石に帝国を出て行くのだから護衛にはグレインや、彼が選んだ帝国騎士達。
そしてジェラルド様も一緒に向かうこととなった。
万全を期しており、万が一にも危険が及ばぬようにしてくれたようだ。
「みんなとおでかけ! やた!」
「姫様、俺がいますので存分に楽しんでくださいね!」
「ぐーう! おかたのおくにまでおうまさんでいって!」
「そ……それは無理です! 姫様!」
リルレットとグレインが微笑ましいやり取りをして、シルウィオとジェラルド様は準備を整えてくれた。
帝国で新しくできた私の家族……彼らと共に母のお墓参りへ向かうのはなんだか嬉しい。
「準備は出来た。向かうぞ」
「はい、シルウィオ」
「やた! しゅっぱーつ!」
私達は馬車へと乗り込み、先導でグレインやジェラルド様が馬を走らせた。
「グレイン、私は姫様とカーティア様を乗せてもおうまさんになって走れるぞ」
「ジェ……ジェラルド様!? な、なら俺は陛下をのせても!」
そんな張り合うようなやり取りが馬車の中にまで聞こえ、隣に座るシルウィオも頬を緩めていた。
すっかり、帝国の雰囲気は柔らかくなっている。
それは……シルウィオが冷たくも優しく、慕われる皇帝になったからだ。
「……ふざけたことを言っているな」
頬に笑みを浮かべながら呟くシルウィオの隣で、膝にリルレットを乗せて私は呟く。
「ふふ、嬉しそうですけどね。シルウィオ」
「おとた、たのしい?」
「…………まぁな」
返す彼の優しい瞳だけは、私達だけにしか向けない。
それも……なんだか嬉しく思いながら、グラナートへと向かった。
◇◇◇
グラナートにたどり着き、まず向かったのは私が暮らしていた王城だった。
リルレットがお城を遠くから見て、行ってみたいと言ったので寄り道だ。
王城に着けば、直ぐに入城が許可される。
まぁ、当たり前だろう。
今やグラナートは帝国の属国でもあるのだから。
「ここ、おかたんがすんでたの?」
「そうね、ちょっとだけね」
リルレットと手を繋ぎながら、城を見て回る。
捨てた場所とはいえ、半生を過ごしていた場所だ。景色を見ていれば懐かしさは感じる。
「カーティア様……帝国の皆さま、よくぞおいでくださいました」
出迎えてくれたのは、レブナンだった。
彼は前回の活躍以降に再びグラナートの大臣に戻っていた。
人脈が多く、有用な彼をシルウィオが任命したのだ。
「お久しぶりです。レブナン」
「はい、カーティア様、再会できて光栄でございます」
「れうなん?」
「姫様も、お会い出来て嬉しく思います」
「れうなーん! お馬さんになって!」
「えっ!! いやいや……私などが姫様に触れるなどできません!」
リルレットの天真爛漫な要求に、珍しく動揺するレブナンに笑ってしまう。
その後、レブナンはシルウィオ達にグラナート国の近況を報告していた。
「申し訳ありませぬ、今夜はグラナートでの創立会ゆえに城内に貴族達がおります。よろしければ、城を見て回る時間は人払いをいたしますか?」
「いい、配慮は必要ない」
「あり難きお言葉です。……それと、実は特別に来賓される方もおりまして……」
そんな会話が聞こえる中で、私の袖をリルレットが引いた。
「ね、おかた……おかたのおへやみてみたい」
「私の部屋? もう、なにもないよ」
「みせて~」
そう言うので、グレインに護衛をしてもらい、妃部屋へと向かう。
シルウィオもレブナンとの話し合いが終わば行くと言ってくれた。
部屋に着けば、やはり物はもう何も残ってはいない。
ただ……やはり間取りを見るだけでも懐かしさはこみ上げてくる。
ここで……一人過ごしていた時期を思い出せば、今の幸せがより実感できる。
「なにもなーい!」
「ふふ、そうね」
リルレットの言う通り、もうここには何も残ってはいない。
つまり、私の居場所はもうここではないのだ。
「ね、リルレット……このお城の庭園も見てみようか」
「うん!」
部屋には何もなく、せめて庭園に出ればリルレットも楽しめるだろうと思って部屋を出た時。
通路の先にシルウィオの姿が見え、手を振ろうとしたが。
彼の傍に、見知らぬ女性が立っているのが見えた。
そして会話もポツポツと聞こえる。
「お初にお目にかかります。シルウィオ陛下」
「……」
「私は、グラナート公爵家の令嬢、ルフィナと申します」
その名を聞いて思い出す。
ルフィナといえば、過去にアドルフの王妃候補だった一人だ。
私がアドルフに選ばれたことで彼女の縁談は消えたが、それを根に持ってなのか王妃時代によく嫌がらせをされた思い出がある。
ドレスも……何度か汚されたり、暴力もあった、思い出すのも嫌な記憶だ。
もう忘れていたけれど、名を聞いて顔を思い出してしまった。
そんな彼女はシルウィオへと歩み寄っていくが、当の彼は距離を離した。
「……要件は?」
「いえ、アイゼン帝国の皇帝に一度ご挨拶だけでもと……」
「そうか」
シルウィオは最近、怖がらせぬように笑みを浮かべるようにしている。
だから、その癖で少し頬を緩めた姿を見せた時。ルフィナの視線が光った。
「あぁ……皇帝陛下……っ!!」
「……」
突然、よりかかろうとする彼女をさっと避けるシルウィオ。
しかし、彼女は動じずに言葉を続けた。
「私……私が、貴方に真実をお伝えします。カーティアの本当のお姿を……貴方に」
……?
「カーティアと王妃を巡っていた際、私は何度も嫌がらせや、陰口……果ては暴力まで振るわれていたのです」
「……」
「こんな事を打ち明けて良いか迷いましたが……優しき陛下が騙されているとかと思えば、心が痛んでしまいました」
「何が言いたい」
「あの女に騙されないでください……貴方には、私のように清き女性が相応しいのです。陛下さえ良ければ、いつでも相談にのります、それに私は初夜も済ませておらぬ身。いつでも代わりに迎えられる準備もいたしましょう」
彼女は、かつて王妃に選ばれなかった雪辱でも晴らしたいのだろうか。
グラナート王妃だった頃も、事あるごとに嫌がらせをしてきていたので、私に個人的な恨みを抱えているのは知っている。
それにしても、あまりに稚拙な手段にでたものだ。
「陛下……私は貴方様の御身を心配で……」
「緩んでいたな」
「いえ、遅くはありません! 私と共に……カーティアの性根を暴きましょう」
「違う」
「……ぇ?」
「貴様のような愚者には笑みを見せるべきではなかった。緩んでいた、俺の失態だ」
顔を上げるまで、彼女は気付かなかったのだろう。
シルウィオはもう、笑みを消して、真逆の感情を見せていることに。
あれから、コッコちゃんは私に甘えてくれるようになってくれた。
庭園で会えば必ず膝上に乗ってくれて、身体を摺り寄せてくれる。
可愛くて仕方がない。
「こーこ、きょーもいくの?」
「コケ!」
そんなコッコちゃんは時折、自らの家族を連れて庭園に植えた若木に向かう。
あの子に家族を紹介しているのかもしれない。
その光景を眺めていると、突然後ろから抱きしめられる。
「カティ」
「っ……シルウィオ」
政務が終わったのだろう。彼は私を抱きしめて、そっと口付けをくれた。
そして……お腹を優しく撫でる。
「お腹の子のためにも、安静にな」
「うん、分かってるよ」
そう、私のお腹にはもう一つの命が新たに宿っている。
リルレットの弟か、妹がいるのだ。
「どんな子かな……楽しみだね」
「あぁ」
シルウィオも嬉しいのだろう。
私に甘えるように、身体を寄せて……お腹を撫でてくれた。
「おかたん、おなかにこどもいるー」
リルレットもニコリと笑って、私へと抱きついた。
「そうよ、リルレットもお姉さんになるのよ」
「やた! はやく、おねさまになりたい!」
喜びを身体で表現するように飛び跳ねるリルレットへ、私は忘れないうちに聞いておかなければならない事を問いかける。
「リルレットも、もうすぐ三歳だけど……なにか欲しい物はある?」
「うーー?」
「なんでもいいぞ。リル」
「えー。りるのほしいの……なんだろ」
シルウィオも尋ねるけど、リルレットはあまり思いつかないようだ。
首を傾げて暫く考えており、なかなか答えが出ぬまま時間が経ったと思えば。
突然ひらめいたのか、顔を上げた。
「りるね! おかたんの……お国にいってみたいの!」
「え?」
グラナートに行きたいという事だろうか。
突然の提案に驚いてしまうが、シルウィオは意外とまんざらでもなかった。
「いいぞ」
「やた! りるね、たのしみ!」
まぁ、リルレットが望むのなら断る理由もない。
それに……私も亡き母のお墓参りぐらいは行っておきたかった。
母に、私の家族を見てもらいたい。
「では、早速準備をしましょうか」
「あぁ」
リルレットの願いを聞くため、準備が始まった。
今回は流石に帝国を出て行くのだから護衛にはグレインや、彼が選んだ帝国騎士達。
そしてジェラルド様も一緒に向かうこととなった。
万全を期しており、万が一にも危険が及ばぬようにしてくれたようだ。
「みんなとおでかけ! やた!」
「姫様、俺がいますので存分に楽しんでくださいね!」
「ぐーう! おかたのおくにまでおうまさんでいって!」
「そ……それは無理です! 姫様!」
リルレットとグレインが微笑ましいやり取りをして、シルウィオとジェラルド様は準備を整えてくれた。
帝国で新しくできた私の家族……彼らと共に母のお墓参りへ向かうのはなんだか嬉しい。
「準備は出来た。向かうぞ」
「はい、シルウィオ」
「やた! しゅっぱーつ!」
私達は馬車へと乗り込み、先導でグレインやジェラルド様が馬を走らせた。
「グレイン、私は姫様とカーティア様を乗せてもおうまさんになって走れるぞ」
「ジェ……ジェラルド様!? な、なら俺は陛下をのせても!」
そんな張り合うようなやり取りが馬車の中にまで聞こえ、隣に座るシルウィオも頬を緩めていた。
すっかり、帝国の雰囲気は柔らかくなっている。
それは……シルウィオが冷たくも優しく、慕われる皇帝になったからだ。
「……ふざけたことを言っているな」
頬に笑みを浮かべながら呟くシルウィオの隣で、膝にリルレットを乗せて私は呟く。
「ふふ、嬉しそうですけどね。シルウィオ」
「おとた、たのしい?」
「…………まぁな」
返す彼の優しい瞳だけは、私達だけにしか向けない。
それも……なんだか嬉しく思いながら、グラナートへと向かった。
◇◇◇
グラナートにたどり着き、まず向かったのは私が暮らしていた王城だった。
リルレットがお城を遠くから見て、行ってみたいと言ったので寄り道だ。
王城に着けば、直ぐに入城が許可される。
まぁ、当たり前だろう。
今やグラナートは帝国の属国でもあるのだから。
「ここ、おかたんがすんでたの?」
「そうね、ちょっとだけね」
リルレットと手を繋ぎながら、城を見て回る。
捨てた場所とはいえ、半生を過ごしていた場所だ。景色を見ていれば懐かしさは感じる。
「カーティア様……帝国の皆さま、よくぞおいでくださいました」
出迎えてくれたのは、レブナンだった。
彼は前回の活躍以降に再びグラナートの大臣に戻っていた。
人脈が多く、有用な彼をシルウィオが任命したのだ。
「お久しぶりです。レブナン」
「はい、カーティア様、再会できて光栄でございます」
「れうなん?」
「姫様も、お会い出来て嬉しく思います」
「れうなーん! お馬さんになって!」
「えっ!! いやいや……私などが姫様に触れるなどできません!」
リルレットの天真爛漫な要求に、珍しく動揺するレブナンに笑ってしまう。
その後、レブナンはシルウィオ達にグラナート国の近況を報告していた。
「申し訳ありませぬ、今夜はグラナートでの創立会ゆえに城内に貴族達がおります。よろしければ、城を見て回る時間は人払いをいたしますか?」
「いい、配慮は必要ない」
「あり難きお言葉です。……それと、実は特別に来賓される方もおりまして……」
そんな会話が聞こえる中で、私の袖をリルレットが引いた。
「ね、おかた……おかたのおへやみてみたい」
「私の部屋? もう、なにもないよ」
「みせて~」
そう言うので、グレインに護衛をしてもらい、妃部屋へと向かう。
シルウィオもレブナンとの話し合いが終わば行くと言ってくれた。
部屋に着けば、やはり物はもう何も残ってはいない。
ただ……やはり間取りを見るだけでも懐かしさはこみ上げてくる。
ここで……一人過ごしていた時期を思い出せば、今の幸せがより実感できる。
「なにもなーい!」
「ふふ、そうね」
リルレットの言う通り、もうここには何も残ってはいない。
つまり、私の居場所はもうここではないのだ。
「ね、リルレット……このお城の庭園も見てみようか」
「うん!」
部屋には何もなく、せめて庭園に出ればリルレットも楽しめるだろうと思って部屋を出た時。
通路の先にシルウィオの姿が見え、手を振ろうとしたが。
彼の傍に、見知らぬ女性が立っているのが見えた。
そして会話もポツポツと聞こえる。
「お初にお目にかかります。シルウィオ陛下」
「……」
「私は、グラナート公爵家の令嬢、ルフィナと申します」
その名を聞いて思い出す。
ルフィナといえば、過去にアドルフの王妃候補だった一人だ。
私がアドルフに選ばれたことで彼女の縁談は消えたが、それを根に持ってなのか王妃時代によく嫌がらせをされた思い出がある。
ドレスも……何度か汚されたり、暴力もあった、思い出すのも嫌な記憶だ。
もう忘れていたけれど、名を聞いて顔を思い出してしまった。
そんな彼女はシルウィオへと歩み寄っていくが、当の彼は距離を離した。
「……要件は?」
「いえ、アイゼン帝国の皇帝に一度ご挨拶だけでもと……」
「そうか」
シルウィオは最近、怖がらせぬように笑みを浮かべるようにしている。
だから、その癖で少し頬を緩めた姿を見せた時。ルフィナの視線が光った。
「あぁ……皇帝陛下……っ!!」
「……」
突然、よりかかろうとする彼女をさっと避けるシルウィオ。
しかし、彼女は動じずに言葉を続けた。
「私……私が、貴方に真実をお伝えします。カーティアの本当のお姿を……貴方に」
……?
「カーティアと王妃を巡っていた際、私は何度も嫌がらせや、陰口……果ては暴力まで振るわれていたのです」
「……」
「こんな事を打ち明けて良いか迷いましたが……優しき陛下が騙されているとかと思えば、心が痛んでしまいました」
「何が言いたい」
「あの女に騙されないでください……貴方には、私のように清き女性が相応しいのです。陛下さえ良ければ、いつでも相談にのります、それに私は初夜も済ませておらぬ身。いつでも代わりに迎えられる準備もいたしましょう」
彼女は、かつて王妃に選ばれなかった雪辱でも晴らしたいのだろうか。
グラナート王妃だった頃も、事あるごとに嫌がらせをしてきていたので、私に個人的な恨みを抱えているのは知っている。
それにしても、あまりに稚拙な手段にでたものだ。
「陛下……私は貴方様の御身を心配で……」
「緩んでいたな」
「いえ、遅くはありません! 私と共に……カーティアの性根を暴きましょう」
「違う」
「……ぇ?」
「貴様のような愚者には笑みを見せるべきではなかった。緩んでいた、俺の失態だ」
顔を上げるまで、彼女は気付かなかったのだろう。
シルウィオはもう、笑みを消して、真逆の感情を見せていることに。
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