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二章
44話
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晴れ渡る空、今日も清々しい程の晴天だ。
身体も元気ではあるけれど、健康のための軽い運動はする。
「よし……」
大きく息を吐いて、私は庭園へと向かう。
育てた作物を見に行くため。そして、コッコちゃんにも餌をあげないといけないから。
「おはよう、コッコちゃん」
「コケコッコー!」
「コココ」
「コサブもおはよう」
コッコちゃんと一緒にいる鶏。コサブはコッコちゃんのパートナーだ。
城内で飼うのはやはり難しいらしく、代わりにコッコちゃんは庭園での放し飼いの許可を貰った。だけどコッコちゃんだけでは寂しそうだと思い、ジェラルド様に頼んでもうコサブを連れてきてもらったのだ。
コサブはコッコちゃんとの相性も良いみたいで、仲良くやって……
「コケェ! コケェ!」
「コ……コ……」
いや、実際には力関係でいえばコッコちゃんが強すぎて餌を半ば独り占めしている。
コサブはコッコちゃんの残り物を貰っているらしく。鶏界の上下関係は厳しいのだと痛感させられる。
「コッコちゃん、コサブにもちゃんと分けてあげてね」
「……コケ」
分かってくれたのか、満腹になったのか……コサブに餌をゆずるコッコちゃんに笑いかけながら。
今日はなにをしようかと、私は空を見上げた。
私が死の淵から目覚めて、一か月が経つ。
不調がウソのように今は快調だ。
「そうだ、今日は本でも––」
「カティ」
声が聞こえた瞬間、ふわりと身体が浮き上がる。
後ろから抱きしめられて、足が浮いたのだ。
「シルウィオ! 帰ってたの?」
「あぁ」
政務で出ていた彼は、嬉しそうに私を抱きしめる。
「カティのため……頑張ってきた」
「ふふ、ありがとう……ん」
嬉しそうな彼は、そっと唇を重ねてくれた。
口付けしたまま、地面へと下される。
唇が離れ、彼は呟く。
「早く、会いたかった」
「ふふ、私もシルウィオと会いたかったよ」
「……」
相変わらず、無表情のままだけど嬉しそうなのが伝わってくる。
そんなシルウィオに、私からも抱きついてしまう。
「ね、一緒に紅茶でも呑もう……シルウィオ」
「っ……あぁ」
照れたように、視線を逸らす姿も可愛らしい。
手を繋いで、共にいつもの薔薇園近くのテーブルへと歩いていく。
しかし、その道中でシルウィオは自身の懐から何かを取り出した。
「カティ」
「ん? どうしたの?」
「これを」
呟いて、彼が渡してきたのは髪留めだった。
深紅の宝石が輝く、色鮮やかな物。それを手に取って私へと見せてくる。
「これ、くれるの?」
「拾っ……いや、カティのために買ってきた」
前のように照れ隠しで濁したりせず、正直に言ってくれる彼の成長が微笑ましい。
私は受け取った髪留めで、自身の髪をまとめた。
「どう……かな?」
「……ぃぃ」
「聞こえなかった……ちゃんと言って、シルウィオ」
「可愛い」
「ありがとう、シルウィオ……大好き」
「……」
いっぱい心配させて、彼を苦しめてしまった分。私は自分の想いを素直に彼に伝えると決めていた。
だから気持ちを伝えると、彼は無言のまま私を抱きしめてきて、嬉しそうにしてくれる。それが嬉しい。
「ほら、紅茶のみにいこう?」
「あぁ。カティ」
私達は席に座り、薔薇園を見ながら共に紅茶を呑む。
いつものように隣に座りながら……ゆっくりと時間が過ごしていると、シルウィオが口を開いた。
「カティ……」
「どうしたの?」
「……カティはもう医務室から出てきて、俺達は夫婦だ」
「え……」
「だから……夜は、一緒に寝たい」
緊張したように、私の手をギュッと握ってくるシルウィオの言葉に思わず微笑む。
私からお願いしようとしていたけれど、彼が先に言ってくれた。
「うん……私もお願いしようと思ってました。いつからに––」
「今日からがいい。カティ」
「え」
「いいな」
「……ふふ。いいよ」
手を握り、彼は小さく微笑む。
私にだけに向けてくれる笑みが嬉しい。
「……ありがとう」
そう呟き、まるで子犬のように肩を寄せてくる彼に心が惹かれる。
二人で過ごす時間、鼓動は大きく高鳴っているけれど、ほわほわとした雰囲気は心地よく過ぎていく。
そして……私は初めて彼と共に、夜を過ごす事となった。
身体も元気ではあるけれど、健康のための軽い運動はする。
「よし……」
大きく息を吐いて、私は庭園へと向かう。
育てた作物を見に行くため。そして、コッコちゃんにも餌をあげないといけないから。
「おはよう、コッコちゃん」
「コケコッコー!」
「コココ」
「コサブもおはよう」
コッコちゃんと一緒にいる鶏。コサブはコッコちゃんのパートナーだ。
城内で飼うのはやはり難しいらしく、代わりにコッコちゃんは庭園での放し飼いの許可を貰った。だけどコッコちゃんだけでは寂しそうだと思い、ジェラルド様に頼んでもうコサブを連れてきてもらったのだ。
コサブはコッコちゃんとの相性も良いみたいで、仲良くやって……
「コケェ! コケェ!」
「コ……コ……」
いや、実際には力関係でいえばコッコちゃんが強すぎて餌を半ば独り占めしている。
コサブはコッコちゃんの残り物を貰っているらしく。鶏界の上下関係は厳しいのだと痛感させられる。
「コッコちゃん、コサブにもちゃんと分けてあげてね」
「……コケ」
分かってくれたのか、満腹になったのか……コサブに餌をゆずるコッコちゃんに笑いかけながら。
今日はなにをしようかと、私は空を見上げた。
私が死の淵から目覚めて、一か月が経つ。
不調がウソのように今は快調だ。
「そうだ、今日は本でも––」
「カティ」
声が聞こえた瞬間、ふわりと身体が浮き上がる。
後ろから抱きしめられて、足が浮いたのだ。
「シルウィオ! 帰ってたの?」
「あぁ」
政務で出ていた彼は、嬉しそうに私を抱きしめる。
「カティのため……頑張ってきた」
「ふふ、ありがとう……ん」
嬉しそうな彼は、そっと唇を重ねてくれた。
口付けしたまま、地面へと下される。
唇が離れ、彼は呟く。
「早く、会いたかった」
「ふふ、私もシルウィオと会いたかったよ」
「……」
相変わらず、無表情のままだけど嬉しそうなのが伝わってくる。
そんなシルウィオに、私からも抱きついてしまう。
「ね、一緒に紅茶でも呑もう……シルウィオ」
「っ……あぁ」
照れたように、視線を逸らす姿も可愛らしい。
手を繋いで、共にいつもの薔薇園近くのテーブルへと歩いていく。
しかし、その道中でシルウィオは自身の懐から何かを取り出した。
「カティ」
「ん? どうしたの?」
「これを」
呟いて、彼が渡してきたのは髪留めだった。
深紅の宝石が輝く、色鮮やかな物。それを手に取って私へと見せてくる。
「これ、くれるの?」
「拾っ……いや、カティのために買ってきた」
前のように照れ隠しで濁したりせず、正直に言ってくれる彼の成長が微笑ましい。
私は受け取った髪留めで、自身の髪をまとめた。
「どう……かな?」
「……ぃぃ」
「聞こえなかった……ちゃんと言って、シルウィオ」
「可愛い」
「ありがとう、シルウィオ……大好き」
「……」
いっぱい心配させて、彼を苦しめてしまった分。私は自分の想いを素直に彼に伝えると決めていた。
だから気持ちを伝えると、彼は無言のまま私を抱きしめてきて、嬉しそうにしてくれる。それが嬉しい。
「ほら、紅茶のみにいこう?」
「あぁ。カティ」
私達は席に座り、薔薇園を見ながら共に紅茶を呑む。
いつものように隣に座りながら……ゆっくりと時間が過ごしていると、シルウィオが口を開いた。
「カティ……」
「どうしたの?」
「……カティはもう医務室から出てきて、俺達は夫婦だ」
「え……」
「だから……夜は、一緒に寝たい」
緊張したように、私の手をギュッと握ってくるシルウィオの言葉に思わず微笑む。
私からお願いしようとしていたけれど、彼が先に言ってくれた。
「うん……私もお願いしようと思ってました。いつからに––」
「今日からがいい。カティ」
「え」
「いいな」
「……ふふ。いいよ」
手を握り、彼は小さく微笑む。
私にだけに向けてくれる笑みが嬉しい。
「……ありがとう」
そう呟き、まるで子犬のように肩を寄せてくる彼に心が惹かれる。
二人で過ごす時間、鼓動は大きく高鳴っているけれど、ほわほわとした雰囲気は心地よく過ぎていく。
そして……私は初めて彼と共に、夜を過ごす事となった。
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