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18話
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あの日から数日が経った
式場は大きく燃え上がり、鎮火するまでには時間がかかり瓦礫の山となっている
現在も出火場所の遺体捜索は行われているが
2人分の遺体しか見つかっていない
残りの遺体は瓦礫の下に埋まっていると思われ捜索は続いている
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「面会が許されたみたいです、シュルク…行きましょう」
「あぁ…そうだな」
私はシュルクと共に病室で待つ父様……の下に向かう
あの日ワイアット父様は煙を多く吸い込んでしまい数日間寝込んでしまった
何より、真実を私達に告げたことに後ろめたさも感じたのかもしれない
「…ソフィアは…気持ちの整理はついたか?」
シュルクの問いに首を横に振る
「正直…いきなりだったから…まだ混乱してるの…けど、父様は父様だよ」
「…そうだな」
長い廊下を歩いていると、サイレス王子が見えた
彼はこちらを見るなり、いつもの笑顔で手を振る
「やぁ、ワイアット殿に会いに行くのだろう?」
「これは……サイレス王子」「サイレス様…」
「いやいや、かしこまらなくていいよ……腹違いだけどソフィア…僕たちは家族みたいなものだ…シュルクも僕を兄として見てくれ」
「それは……少し抵抗がありますね」
シュルクの答えに、サイレス王子は苦笑するが
改めて、背を正しこちらを見つめてくる
「改めてお詫びに来たんだ…今回の騒動は王族の責任でもある…キュベレイ公爵家は昔から続く家系で、血統主義には気づいていながらここまでの暴走に気づけなかった…なにより君たちの育ちも僕たち王族によって歪んでしまった…父に変わり謝罪させてくれ!」
「そんな、サイレス王子…頭を上げてください」
「それと…君たちに報告があるんだ…本日の朝に現王は息を引き取った」
「!?」
「元より身体が悪かったからね…ソフィア…君に僕の父から預かった伝言がある」
「王様から……ですか?」
「あぁ……【すまない、お前を思わなかった日はなかった、身勝手なお願いだが、幸せに】とな」
「……」
「シュルクとソフィア、君たちの母親達は共に出産時に亡くなっているんだ2人とも身体が弱くてね……だからこそ入れ替えが行いやすかった…母親達もきっと君たちの幸せを願っていると思う」
シュルクと私は手を握り合う
共に私達の幸せを死んでもなお願ってくれた人々を想って
「ありがとうございます、サイレス様…伝えて下さって」
「あぁ、すまないワイアット殿のところに向かうのだろう?邪魔したね」
「いえ、それでは……」
「あぁ」
去っていく私達をサイレス王子は見つめていた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「アレキシス、いるのだろう?」
サイレスの問いかけに、物陰にいたアレキシスが出てくる
「気づいておりましたか」
「もちろんだ、公爵家もお前だけになったな……現王は亡くなって次は僕が王になる……だが正直、お前の影響力は今の僕を超えているだろう、いつでも王の座を狙える」
「ええ、もちろんあなたを引きずり下して王になりますよ」
見つめ合う2人の間に冷たい雰囲気が張り詰めるが
それを壊したのは同じ2人だった
笑いながら、彼らは共に歩きだす
「まだまだ未熟な王だが、後ろは任せたアレキシス」
「ええ、お任せくださいすでに汚れた身です…ソフィアの幸せを守る為にもこの国をより良くしましょう…サイレス王」
2人は歩きだす
共に目指す目標は、1人の令嬢の幸せを守る為に
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「父様……」
扉を開くと、寝台に横になっているワイアット父様が体を起こす
「ソフィア…シュルクも」
私とシュルクは共に父様の近くへ進むと
父様はいきなり頭を下げた
「すまなかった……ずっと……お前たちをだましていた…すまない」
私とシュルクはお互いに見つめ合う
だけど、くすりと微笑んで父様に寄り添う
「私達こそ、ごめんね、苦しかったのはきっと父様なのに」
「ソフィア…」
「私達ね、知ってるよ…父様は私達を心の底から愛してくれたんだって……小さくて怖がりの私が寝れない日はずっと一緒に寄り添ってくれた」
シュルクも、頷いた
「俺も、幼き頃に風邪をひいた日、雪の降る中……医者を呼びに行ってくれた事を、無事だった事に泣いて喜んでくれた事を忘れた日なんてありません」
「シュルク…ソフィア…」
「だから、謝らないで…父様は父様だよ、変わらない私の大好きなたった一人の……」
「俺も……まだ口調は変えられないですが……ワイアット父さんと呼ばせてください……」
父様は、目元を抑え涙を流した
ポツリ、ポツリと流れる涙はほほを流れて布団に落ちていく
「私は幸せ者だな…こんなにも優しい…愛する娘と息子がいるのだから」
「私達も、幸せだよ…最後まで私達を見てくれた、育ててくれた大好きな父様と一緒なんだから」
涙を流す父様につられ、私も涙を流しながら
父様に寄り添う
シュルクもそばで離れずに見守ってくれた
「さぁ……私達も…幸せになりましょう…惨めな日々はもう終わりです」
これから
これからも3人で
私達はようやく、血に囚われた日々から
抜け出したのだから
幸せに
ずっと
式場は大きく燃え上がり、鎮火するまでには時間がかかり瓦礫の山となっている
現在も出火場所の遺体捜索は行われているが
2人分の遺体しか見つかっていない
残りの遺体は瓦礫の下に埋まっていると思われ捜索は続いている
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「面会が許されたみたいです、シュルク…行きましょう」
「あぁ…そうだな」
私はシュルクと共に病室で待つ父様……の下に向かう
あの日ワイアット父様は煙を多く吸い込んでしまい数日間寝込んでしまった
何より、真実を私達に告げたことに後ろめたさも感じたのかもしれない
「…ソフィアは…気持ちの整理はついたか?」
シュルクの問いに首を横に振る
「正直…いきなりだったから…まだ混乱してるの…けど、父様は父様だよ」
「…そうだな」
長い廊下を歩いていると、サイレス王子が見えた
彼はこちらを見るなり、いつもの笑顔で手を振る
「やぁ、ワイアット殿に会いに行くのだろう?」
「これは……サイレス王子」「サイレス様…」
「いやいや、かしこまらなくていいよ……腹違いだけどソフィア…僕たちは家族みたいなものだ…シュルクも僕を兄として見てくれ」
「それは……少し抵抗がありますね」
シュルクの答えに、サイレス王子は苦笑するが
改めて、背を正しこちらを見つめてくる
「改めてお詫びに来たんだ…今回の騒動は王族の責任でもある…キュベレイ公爵家は昔から続く家系で、血統主義には気づいていながらここまでの暴走に気づけなかった…なにより君たちの育ちも僕たち王族によって歪んでしまった…父に変わり謝罪させてくれ!」
「そんな、サイレス王子…頭を上げてください」
「それと…君たちに報告があるんだ…本日の朝に現王は息を引き取った」
「!?」
「元より身体が悪かったからね…ソフィア…君に僕の父から預かった伝言がある」
「王様から……ですか?」
「あぁ……【すまない、お前を思わなかった日はなかった、身勝手なお願いだが、幸せに】とな」
「……」
「シュルクとソフィア、君たちの母親達は共に出産時に亡くなっているんだ2人とも身体が弱くてね……だからこそ入れ替えが行いやすかった…母親達もきっと君たちの幸せを願っていると思う」
シュルクと私は手を握り合う
共に私達の幸せを死んでもなお願ってくれた人々を想って
「ありがとうございます、サイレス様…伝えて下さって」
「あぁ、すまないワイアット殿のところに向かうのだろう?邪魔したね」
「いえ、それでは……」
「あぁ」
去っていく私達をサイレス王子は見つめていた
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「アレキシス、いるのだろう?」
サイレスの問いかけに、物陰にいたアレキシスが出てくる
「気づいておりましたか」
「もちろんだ、公爵家もお前だけになったな……現王は亡くなって次は僕が王になる……だが正直、お前の影響力は今の僕を超えているだろう、いつでも王の座を狙える」
「ええ、もちろんあなたを引きずり下して王になりますよ」
見つめ合う2人の間に冷たい雰囲気が張り詰めるが
それを壊したのは同じ2人だった
笑いながら、彼らは共に歩きだす
「まだまだ未熟な王だが、後ろは任せたアレキシス」
「ええ、お任せくださいすでに汚れた身です…ソフィアの幸せを守る為にもこの国をより良くしましょう…サイレス王」
2人は歩きだす
共に目指す目標は、1人の令嬢の幸せを守る為に
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「父様……」
扉を開くと、寝台に横になっているワイアット父様が体を起こす
「ソフィア…シュルクも」
私とシュルクは共に父様の近くへ進むと
父様はいきなり頭を下げた
「すまなかった……ずっと……お前たちをだましていた…すまない」
私とシュルクはお互いに見つめ合う
だけど、くすりと微笑んで父様に寄り添う
「私達こそ、ごめんね、苦しかったのはきっと父様なのに」
「ソフィア…」
「私達ね、知ってるよ…父様は私達を心の底から愛してくれたんだって……小さくて怖がりの私が寝れない日はずっと一緒に寄り添ってくれた」
シュルクも、頷いた
「俺も、幼き頃に風邪をひいた日、雪の降る中……医者を呼びに行ってくれた事を、無事だった事に泣いて喜んでくれた事を忘れた日なんてありません」
「シュルク…ソフィア…」
「だから、謝らないで…父様は父様だよ、変わらない私の大好きなたった一人の……」
「俺も……まだ口調は変えられないですが……ワイアット父さんと呼ばせてください……」
父様は、目元を抑え涙を流した
ポツリ、ポツリと流れる涙はほほを流れて布団に落ちていく
「私は幸せ者だな…こんなにも優しい…愛する娘と息子がいるのだから」
「私達も、幸せだよ…最後まで私達を見てくれた、育ててくれた大好きな父様と一緒なんだから」
涙を流す父様につられ、私も涙を流しながら
父様に寄り添う
シュルクもそばで離れずに見守ってくれた
「さぁ……私達も…幸せになりましょう…惨めな日々はもう終わりです」
これから
これからも3人で
私達はようやく、血に囚われた日々から
抜け出したのだから
幸せに
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