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17話
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「行こう!ソフィア!このままじゃ!」
「でも…」
「……俺たちに出来ることはない」
燃え広がる会場を後にしながら
ソフィア達は走る
シュルクに手を引かれながら
ワイアットはアレキシスに肩を借りながら
少し遅れてサイレス王子も後ろにきた
そんな中
走る一同にすれ違うように向かってくる女性がいた
「あなたは……」
「これ、迷惑かけたお詫び!使って!」
女性に手渡された数々の宝石類はかなりの額になる
ソフィアは手に持ちきれない程の宝石を渡されながら
動揺する
「あの……いただけません……これは」
「いいから!」
彼女はそう言って
持っていたバケツに入った水を被る
びしょびしょになりながらも
動きずらいスカートを膝上まで破り捨て
炎へと進んでいく
真っ直ぐに恐れることなく
「あの!そっちは…」
ソフィアの問いかけ
彼女は親指を立てて
笑った
「寂しそうな旦那を私ぐらいは…愛してあげないとね」
「やはり、お似合いだよ……君たちは」
アレキシスの言葉に振り返ることなく
その女性は頷いて炎の中へ進んでいった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「♪~~♪~」
聞いた事のある鼻歌が
俺の頭の中で思い出される
小さかったころの思い出
赤ん坊だった頃の、忘れたはずの思い出がよみがえっていく
「デイモンド…私の子」
母様…
幼き頃の母様は泣きながら
俺を抱いていた
眠りそうな俺に子守唄を歌いながら
その瞳からは涙を流していた
「ごめんね…あなたを愛せなくて…あなたを見ていると…ディラン…あの人を思い出してしまうの」
母様は、泣きながら呟く
淡々と話す
幼き俺に自分の想いを俺に伝えていた
「あなたを産んだから……私はようやく暴力から…解放された」
ただ…それだけのために俺は…
「けど…教育は今でも続いてる…デイモンド…きっとあなたが大人になる頃には…私は今の私じゃないかもしれない」
母様は俺を抱きしめ、そっと寝台に置く
「だから……伝えておくわ……」
母様は涙を流しながら
ゆっくりを俺に語りかけた
「ごめんね、あなたを愛せなくて…弱い母親でごめんなさい……あなたを見てあげれなくてごめんなさい」
母様…
泣かないで……
謝らないでよ
俺は…もう……
「あなたは私達と一緒に来ては駄目…あなたは逃げなさい、この血から…呪いから」
母様はそう言ってその場を去っていく
どんどん遠くに
俺の手の届かないところに
まって
と
手を伸ばした時に
母様は真っ赤な炎に包まれながら小さく手を振った
ーあなたは…愛する人と一緒にいなさい…
私達と一緒じゃなくてもいいのー
さようなら
私の子…
あなたを…向こうで想っています
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「んしょ……ちょっと…重いじゃない」
聞きなれた女性の声に
意識が朦朧としながら
目を開く
背中に背負われながら、その女性は燃えていない経路を選んで進んでいく
「ロ……ミエ?」
彼女の名前を呼ぶ
「起きた?……たくっ…お金も失ったし、助けるべきだったのかな?」
笑うように話す彼女は
いつもと口調は違うが、俺を背負う力は強く離さない
「なんで……ここ……に………………」
「あんたには一度助けられたしね…それに外から見てたけど…カッコイイとこあんじゃん」
「俺はここで、家族と…共に」
「あたしが助けたくてきたの、あんたの気持ちなんて知らないわよ」
彼女の目の前は大きく燃え上がる炎の柱が広がっている
前に進めず、他に経路はないかと動く
「俺を置いていけ」
「来た意味なくなるし却下」
「助からないかもしれないんだぞ……」
「それでいいじゃん、あんたが悪い事してきたように、私も盗みとか人をだましたり色々してきた」
ロミエは言葉を続ける
「だから、ここから助かるか…罰を受けて死ぬのか、神様に決めてもらいましょうよ」
「なんだ…それ…」
少し笑ってしまう
こんな状況でも明るい彼女に心が救われた気がした
「きっと、神様は見てくれてるよ、私もあなたを見て、助けに来たんだから」
ーきっと見てくれる者もいるさ……ー
サイレス王子の言葉を思い出す
「あぁ…きっと………見ていてくれるかもな…俺もそう思うよ」
2人は笑いながら真っ赤に燃え上がる炎の中を進んでいく
「なぁ…ロミエ…こんな俺だったが…愛して…くれるか?」
「馬鹿ね、そう思ったからここにいるんじゃない」
「はは…そうだな……ありがとうロミエ」
大きく燃え上がった炎はやがて全てを燃やしていくだろう
俺の涙も一緒に乾いていく
だから
俺達は笑い合いながら
前に、前に進んだ
「でも…」
「……俺たちに出来ることはない」
燃え広がる会場を後にしながら
ソフィア達は走る
シュルクに手を引かれながら
ワイアットはアレキシスに肩を借りながら
少し遅れてサイレス王子も後ろにきた
そんな中
走る一同にすれ違うように向かってくる女性がいた
「あなたは……」
「これ、迷惑かけたお詫び!使って!」
女性に手渡された数々の宝石類はかなりの額になる
ソフィアは手に持ちきれない程の宝石を渡されながら
動揺する
「あの……いただけません……これは」
「いいから!」
彼女はそう言って
持っていたバケツに入った水を被る
びしょびしょになりながらも
動きずらいスカートを膝上まで破り捨て
炎へと進んでいく
真っ直ぐに恐れることなく
「あの!そっちは…」
ソフィアの問いかけ
彼女は親指を立てて
笑った
「寂しそうな旦那を私ぐらいは…愛してあげないとね」
「やはり、お似合いだよ……君たちは」
アレキシスの言葉に振り返ることなく
その女性は頷いて炎の中へ進んでいった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「♪~~♪~」
聞いた事のある鼻歌が
俺の頭の中で思い出される
小さかったころの思い出
赤ん坊だった頃の、忘れたはずの思い出がよみがえっていく
「デイモンド…私の子」
母様…
幼き頃の母様は泣きながら
俺を抱いていた
眠りそうな俺に子守唄を歌いながら
その瞳からは涙を流していた
「ごめんね…あなたを愛せなくて…あなたを見ていると…ディラン…あの人を思い出してしまうの」
母様は、泣きながら呟く
淡々と話す
幼き俺に自分の想いを俺に伝えていた
「あなたを産んだから……私はようやく暴力から…解放された」
ただ…それだけのために俺は…
「けど…教育は今でも続いてる…デイモンド…きっとあなたが大人になる頃には…私は今の私じゃないかもしれない」
母様は俺を抱きしめ、そっと寝台に置く
「だから……伝えておくわ……」
母様は涙を流しながら
ゆっくりを俺に語りかけた
「ごめんね、あなたを愛せなくて…弱い母親でごめんなさい……あなたを見てあげれなくてごめんなさい」
母様…
泣かないで……
謝らないでよ
俺は…もう……
「あなたは私達と一緒に来ては駄目…あなたは逃げなさい、この血から…呪いから」
母様はそう言ってその場を去っていく
どんどん遠くに
俺の手の届かないところに
まって
と
手を伸ばした時に
母様は真っ赤な炎に包まれながら小さく手を振った
ーあなたは…愛する人と一緒にいなさい…
私達と一緒じゃなくてもいいのー
さようなら
私の子…
あなたを…向こうで想っています
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「んしょ……ちょっと…重いじゃない」
聞きなれた女性の声に
意識が朦朧としながら
目を開く
背中に背負われながら、その女性は燃えていない経路を選んで進んでいく
「ロ……ミエ?」
彼女の名前を呼ぶ
「起きた?……たくっ…お金も失ったし、助けるべきだったのかな?」
笑うように話す彼女は
いつもと口調は違うが、俺を背負う力は強く離さない
「なんで……ここ……に………………」
「あんたには一度助けられたしね…それに外から見てたけど…カッコイイとこあんじゃん」
「俺はここで、家族と…共に」
「あたしが助けたくてきたの、あんたの気持ちなんて知らないわよ」
彼女の目の前は大きく燃え上がる炎の柱が広がっている
前に進めず、他に経路はないかと動く
「俺を置いていけ」
「来た意味なくなるし却下」
「助からないかもしれないんだぞ……」
「それでいいじゃん、あんたが悪い事してきたように、私も盗みとか人をだましたり色々してきた」
ロミエは言葉を続ける
「だから、ここから助かるか…罰を受けて死ぬのか、神様に決めてもらいましょうよ」
「なんだ…それ…」
少し笑ってしまう
こんな状況でも明るい彼女に心が救われた気がした
「きっと、神様は見てくれてるよ、私もあなたを見て、助けに来たんだから」
ーきっと見てくれる者もいるさ……ー
サイレス王子の言葉を思い出す
「あぁ…きっと………見ていてくれるかもな…俺もそう思うよ」
2人は笑いながら真っ赤に燃え上がる炎の中を進んでいく
「なぁ…ロミエ…こんな俺だったが…愛して…くれるか?」
「馬鹿ね、そう思ったからここにいるんじゃない」
「はは…そうだな……ありがとうロミエ」
大きく燃え上がった炎はやがて全てを燃やしていくだろう
俺の涙も一緒に乾いていく
だから
俺達は笑い合いながら
前に、前に進んだ
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