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16話
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「な、何をしている!?デイモンド!!!」
痛みに耐えながら叫ぶ、父様の腹に深々とナイフが突き刺す
「がっ!」
痛みでうずくまる父様をよそに
俺はワイアットの腕を握り
ソフィア達がいる方向へ突き飛ばした
「デイモンド様!」
ソフィアの声に、振り返らずに答える
「すまない…せっかくの式を…台無しにしてしまった」
「デイモンドォ!!なにをしているの!!」
怒り狂ったレイチェルが駆け出し
俺に組みかかる
母親としての顔ではなく、正気を失った狂った者の顔で
グサリと、母の握るナイフは俺の腹に突き刺さっていく
激痛が走るが、耐えながら聞きたかった言葉を告げる
「…母様…俺のこと…好きだったか?」
ナイフが刺されたまま
母を抱きしめ、呟いた
「!?……あなたが悪いの!!純血を保とうとしないあなたが!全て!」
抱きしめられながらもがく母を強く抱きしめながら
俺は…包帯に包まれた瞳から赤く滲んだ涙を流した
「愛して…くれたわけじゃ…ないのか」
「あなたの血が純血だから!私もディランから躾を受けずに済んだのよ!!あなたを産めたから!でももう…血が途絶えるなら!あなたなんて要らない!!!」
「………そうか…ごめん…さよなら母様」
「!?」
深々と母の心臓に…ナイフを突き刺す
せめて苦しまないようにと
赤黒い液体がながれ、デイモンドに抱かれたまま
母は目を閉じる、まるで何かに解放されたように
笑みを浮かべながら
「1人だけ逃げる気か?デイモンドォ…」
這いずりながら足を掴むディランに
ただ笑って
涙を流しながら。笑って答えた
「どこにも行かないさ、家族みんなで」
懐から小瓶を取り出した
それをディランへとかけた
可燃性の液体だ、もとより家族全員で死ぬ予定だった
俺たちは呪われてる
この純血だと信じた青い血に…
「やめろ!デイモンド!」
「デイモンド様!!」
アレキシスとソフィアの声が聞こえる
その声に反応する事なく、マッチを取り出し
父に火をつけた
「がぁぁぁぁぁ!!!デイ、モォォド!」
周囲に熱が広がり、父だった人間は燃え盛る炎に包まれた
「あ、アヅィ!!ディ!ダズゲ!!デイモンドォォオ!!」
「さよなら、父様…」
父様を燃やす炎はあたりに燃え移っていく
炎は広がっていく、父を燃やしながら
皮膚を焼き、命を奪い
黒い煙をあげた
「逃げなくては!」「皆!落ち着いて外に出るんだ!」
会場にいた貴族達が炎からにげていく
その様子を見ながら、俺はその場に座った
母に刺された傷口が痛む
もう…動けないな
「デイモンド様!なにをして」
「ソフィア!炎が広がってる!逃げないと!」
「シュルク…でも…」
立ち尽くす彼女に
俺は最後の力を使って叫んだ
「ソフィア!!」
「!?」
「いままで…すまなかった…幸せにな…」
これしか言えないが
これが俺の今の気持ちだ
燃え盛る紅蓮の炎は俺と彼女の間に壁を作り出した
もう逃げることなんて出来ないだろうな
「いこう…ソフィア…彼が救ってくれた命だ…」
「……」
「行ってくれ…俺はここで家族と一緒に…」
耐えきれず、横になる
痛みが広がっていく
もう意識を保つのさえ困難だ
彼女はシュルクとワイアットに連れられ
去っていく
「すまないな…救ってやれなくて」
見えないが、炎の先からサイレス王子が話しかける
枯れそうな声で答えた
「いいんです…これで………」
「変われたよ、お前は」
「そう……です…か…ね?」
「あぁ、きっと見てくれる者もいるさ……」
「……」
そうだといい
そう話そうと思った所で声がでなくなった
サイレス王子が去っていく足音が聞こえる
残ったのは燃えている父様と、動かなくなった母様
真っ赤な血が、地面に広がっていく
青とは程遠い真っ赤な鮮血が
俺も家族と一緒に
この呪われた家系を終わらせよう
解放されよう
この呪いから
青き血を信じた者達は
赤く燃え盛る炎に包まれて、ただ静かに……
この世を去ろう
デイモンドは意識を手放しながらそう考えた
痛みに耐えながら叫ぶ、父様の腹に深々とナイフが突き刺す
「がっ!」
痛みでうずくまる父様をよそに
俺はワイアットの腕を握り
ソフィア達がいる方向へ突き飛ばした
「デイモンド様!」
ソフィアの声に、振り返らずに答える
「すまない…せっかくの式を…台無しにしてしまった」
「デイモンドォ!!なにをしているの!!」
怒り狂ったレイチェルが駆け出し
俺に組みかかる
母親としての顔ではなく、正気を失った狂った者の顔で
グサリと、母の握るナイフは俺の腹に突き刺さっていく
激痛が走るが、耐えながら聞きたかった言葉を告げる
「…母様…俺のこと…好きだったか?」
ナイフが刺されたまま
母を抱きしめ、呟いた
「!?……あなたが悪いの!!純血を保とうとしないあなたが!全て!」
抱きしめられながらもがく母を強く抱きしめながら
俺は…包帯に包まれた瞳から赤く滲んだ涙を流した
「愛して…くれたわけじゃ…ないのか」
「あなたの血が純血だから!私もディランから躾を受けずに済んだのよ!!あなたを産めたから!でももう…血が途絶えるなら!あなたなんて要らない!!!」
「………そうか…ごめん…さよなら母様」
「!?」
深々と母の心臓に…ナイフを突き刺す
せめて苦しまないようにと
赤黒い液体がながれ、デイモンドに抱かれたまま
母は目を閉じる、まるで何かに解放されたように
笑みを浮かべながら
「1人だけ逃げる気か?デイモンドォ…」
這いずりながら足を掴むディランに
ただ笑って
涙を流しながら。笑って答えた
「どこにも行かないさ、家族みんなで」
懐から小瓶を取り出した
それをディランへとかけた
可燃性の液体だ、もとより家族全員で死ぬ予定だった
俺たちは呪われてる
この純血だと信じた青い血に…
「やめろ!デイモンド!」
「デイモンド様!!」
アレキシスとソフィアの声が聞こえる
その声に反応する事なく、マッチを取り出し
父に火をつけた
「がぁぁぁぁぁ!!!デイ、モォォド!」
周囲に熱が広がり、父だった人間は燃え盛る炎に包まれた
「あ、アヅィ!!ディ!ダズゲ!!デイモンドォォオ!!」
「さよなら、父様…」
父様を燃やす炎はあたりに燃え移っていく
炎は広がっていく、父を燃やしながら
皮膚を焼き、命を奪い
黒い煙をあげた
「逃げなくては!」「皆!落ち着いて外に出るんだ!」
会場にいた貴族達が炎からにげていく
その様子を見ながら、俺はその場に座った
母に刺された傷口が痛む
もう…動けないな
「デイモンド様!なにをして」
「ソフィア!炎が広がってる!逃げないと!」
「シュルク…でも…」
立ち尽くす彼女に
俺は最後の力を使って叫んだ
「ソフィア!!」
「!?」
「いままで…すまなかった…幸せにな…」
これしか言えないが
これが俺の今の気持ちだ
燃え盛る紅蓮の炎は俺と彼女の間に壁を作り出した
もう逃げることなんて出来ないだろうな
「いこう…ソフィア…彼が救ってくれた命だ…」
「……」
「行ってくれ…俺はここで家族と一緒に…」
耐えきれず、横になる
痛みが広がっていく
もう意識を保つのさえ困難だ
彼女はシュルクとワイアットに連れられ
去っていく
「すまないな…救ってやれなくて」
見えないが、炎の先からサイレス王子が話しかける
枯れそうな声で答えた
「いいんです…これで………」
「変われたよ、お前は」
「そう……です…か…ね?」
「あぁ、きっと見てくれる者もいるさ……」
「……」
そうだといい
そう話そうと思った所で声がでなくなった
サイレス王子が去っていく足音が聞こえる
残ったのは燃えている父様と、動かなくなった母様
真っ赤な血が、地面に広がっていく
青とは程遠い真っ赤な鮮血が
俺も家族と一緒に
この呪われた家系を終わらせよう
解放されよう
この呪いから
青き血を信じた者達は
赤く燃え盛る炎に包まれて、ただ静かに……
この世を去ろう
デイモンドは意識を手放しながらそう考えた
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