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7話
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「アレキシスはいるか?」
キュベレイ公爵家を出たサイレス王子は
そのままアレキシスのいる
シュワルツ公爵家へとやって来た
「ただいま、アレキシス様を呼んでまいります」
シュワルツ公爵家の使用人達は王子がやって来た事に一切の動揺を見せずに
淡々と自分達の仕事をこなしていく
客室に案内され、席についたと同時に紅茶が出される
(よく教育されている…さすがはアレキシスの使用人達だな)
同じ公爵家でも仕える主によって使用人達は大きく変わる
キュベレイ公爵家の使用人達は主からの不遇な扱いに辟易していたのが分かったが
このシュワルツ公爵家では使用人達の顔は生き生きと輝き
主に仕える事に喜びを感じている
「お待たせいたしました、サイレス王子」
落ち着いた様子で、アレキシスが客室へとやって来た
「かしこまらなくていい、僕とお前の仲なんだ…いつも通りでいいよ」
サイレスの言葉にアレキシスはほほを緩ませ、椅子に座り
足を組む、王子の前ではありえない行為だが
お互いの信頼関係があるからこその行動だ
サイレスも気にする素振りもなく笑いかける
「お前が仕組んだんだろ?アレキシス、ソフィアとデイモンドの婚約破棄を」
「人聞きが悪いですよ、彼自身で決めたことです、口出しなんてしていませんよ」
「よく言うよ、言い逃れができないように大勢の貴族達の目の前で宣言させるなんてな」
「これも、ソフィアのためです…これで彼女はもう誰のものでもないのですから」
二人は目の前の紅茶を一口飲み、しばしの沈黙が流れるが
やがてこらえきれないように笑い出す
「そ、それにしても!デイモンドの勘違いには笑いを抑えるのに必死だったよ!」
「王子はまだマシですよ、現場ではもう誰も堪えきれなかったのですから、はは、あの時の彼の勘違いぶりには皆が笑っていた」
アレキシスは笑いながら、言葉を続ける
「誰も彼を褒め称えてなどいない、我々が本当に喜んだのはこれでようやくソフィアが自由になった事だというのに…………」
「ははは!!彼にふさわしくない、その通りだ……………デイモンド、あいつではソフィアには全く相応しくない」
「そうですね、デイモンドはソフィアに婚約してから暴力をふるって抑圧していた、そんな彼女を助けるために王子がデイモンドを他国に留学させたんですよね?」
「あぁ、広い世界を見てくれば何か変わると思ったが……結界はあの通りだ…どうしようもないよあいつは」
「反対に彼女、ソフィアはデイモンドのいない期間の働きぶりで他貴族達からの絶大な信頼を手に入れた…いまやデイモンドに味方するような者はいないでしょう」
「これからのデイモンドは大変だろうな、帰ってきた両親がこの事を知ったらと思うと……」
サイレスは堪えきれないように笑い出す
アレキシスも同様だ
「アレの親は重度の血統主義ですからね、貴族の純血はいまやソフィアと王族であるサイレス様だけです」
「あぁ、未だに貴族には選ばれた青い血が流れていると信じている者だ、話を聞けば血相を変えるだろうな」
「だが、ソフィアの父上はもうソフィアを引渡すことはないでしょう、それに私がそれを許しませんよ」
アレキシスの言葉に、サイレスは無表情で見つめる
「アレキシス、お前もソフィアを?」
「ええ、彼女のような素敵な令嬢を私は知りません………たとえ、王子……あなたと目的が同じだとしても譲る気はありませんよ?」
「ほぉ?」
サイレスは立ち上がる
「ソフィアには相応しい相手が既にいるとしてもか?」
「それが、あなたとでもいうのですか?」
バチバチと鋭い視線が交差する
お互いの沈黙が空気を冷たく張り詰めさせるが
「く!あはははは!!」
「ふふふ」
二人は笑い出した、まるで少年同士が笑い合うかのように
「恨みはなしですね」
アレキシスの言葉にサイレスは頷く
「その通りだな、お互いが動くしかあるまい、選ぶのは彼女なのだから」
二人は笑い合いながら、再び談笑へと戻った
だが
(残念だが、アレキシスよ、ソフィアと僕は家族になるのは決まっているんだよ)
サイレス王子は心の中で、小さく思うのであった
キュベレイ公爵家を出たサイレス王子は
そのままアレキシスのいる
シュワルツ公爵家へとやって来た
「ただいま、アレキシス様を呼んでまいります」
シュワルツ公爵家の使用人達は王子がやって来た事に一切の動揺を見せずに
淡々と自分達の仕事をこなしていく
客室に案内され、席についたと同時に紅茶が出される
(よく教育されている…さすがはアレキシスの使用人達だな)
同じ公爵家でも仕える主によって使用人達は大きく変わる
キュベレイ公爵家の使用人達は主からの不遇な扱いに辟易していたのが分かったが
このシュワルツ公爵家では使用人達の顔は生き生きと輝き
主に仕える事に喜びを感じている
「お待たせいたしました、サイレス王子」
落ち着いた様子で、アレキシスが客室へとやって来た
「かしこまらなくていい、僕とお前の仲なんだ…いつも通りでいいよ」
サイレスの言葉にアレキシスはほほを緩ませ、椅子に座り
足を組む、王子の前ではありえない行為だが
お互いの信頼関係があるからこその行動だ
サイレスも気にする素振りもなく笑いかける
「お前が仕組んだんだろ?アレキシス、ソフィアとデイモンドの婚約破棄を」
「人聞きが悪いですよ、彼自身で決めたことです、口出しなんてしていませんよ」
「よく言うよ、言い逃れができないように大勢の貴族達の目の前で宣言させるなんてな」
「これも、ソフィアのためです…これで彼女はもう誰のものでもないのですから」
二人は目の前の紅茶を一口飲み、しばしの沈黙が流れるが
やがてこらえきれないように笑い出す
「そ、それにしても!デイモンドの勘違いには笑いを抑えるのに必死だったよ!」
「王子はまだマシですよ、現場ではもう誰も堪えきれなかったのですから、はは、あの時の彼の勘違いぶりには皆が笑っていた」
アレキシスは笑いながら、言葉を続ける
「誰も彼を褒め称えてなどいない、我々が本当に喜んだのはこれでようやくソフィアが自由になった事だというのに…………」
「ははは!!彼にふさわしくない、その通りだ……………デイモンド、あいつではソフィアには全く相応しくない」
「そうですね、デイモンドはソフィアに婚約してから暴力をふるって抑圧していた、そんな彼女を助けるために王子がデイモンドを他国に留学させたんですよね?」
「あぁ、広い世界を見てくれば何か変わると思ったが……結界はあの通りだ…どうしようもないよあいつは」
「反対に彼女、ソフィアはデイモンドのいない期間の働きぶりで他貴族達からの絶大な信頼を手に入れた…いまやデイモンドに味方するような者はいないでしょう」
「これからのデイモンドは大変だろうな、帰ってきた両親がこの事を知ったらと思うと……」
サイレスは堪えきれないように笑い出す
アレキシスも同様だ
「アレの親は重度の血統主義ですからね、貴族の純血はいまやソフィアと王族であるサイレス様だけです」
「あぁ、未だに貴族には選ばれた青い血が流れていると信じている者だ、話を聞けば血相を変えるだろうな」
「だが、ソフィアの父上はもうソフィアを引渡すことはないでしょう、それに私がそれを許しませんよ」
アレキシスの言葉に、サイレスは無表情で見つめる
「アレキシス、お前もソフィアを?」
「ええ、彼女のような素敵な令嬢を私は知りません………たとえ、王子……あなたと目的が同じだとしても譲る気はありませんよ?」
「ほぉ?」
サイレスは立ち上がる
「ソフィアには相応しい相手が既にいるとしてもか?」
「それが、あなたとでもいうのですか?」
バチバチと鋭い視線が交差する
お互いの沈黙が空気を冷たく張り詰めさせるが
「く!あはははは!!」
「ふふふ」
二人は笑い出した、まるで少年同士が笑い合うかのように
「恨みはなしですね」
アレキシスの言葉にサイレスは頷く
「その通りだな、お互いが動くしかあるまい、選ぶのは彼女なのだから」
二人は笑い合いながら、再び談笑へと戻った
だが
(残念だが、アレキシスよ、ソフィアと僕は家族になるのは決まっているんだよ)
サイレス王子は心の中で、小さく思うのであった
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