【完結】婚約破棄された私が惨めだと笑われている?馬鹿にされているのは本当に私ですか?

なか

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3話

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「デイモンド殿!今日は本当にいいものを見せて頂きました」

改めてデイモンドの元に一人の男性がやって来る
よく目立つ真っ赤な髪の毛に黄色の宝石のような瞳の男

アウリス国でデイモンドのキュベレイ公爵家と並ぶ爵位
そしてこの誕生会兼、婚約破棄の場に大勢の貴族達を呼んでくれた張本人

シュワルツ公爵家の当主である
アレキシス・シュワルツだ
若くして当主となり、民衆からの人気も高い
なによりその美麗な顔立ちに見とれる令嬢達も多かった

デイモンドは彼にすこし頭を下げる

「いや、これもアレキシス殿が皆を集めてくれたおかげだ」

「いえいえ、皆、あなたが婚約破棄をすると言ったら喜んで来ましたよ」

「そうか、そうか…やはり俺とソフィアの婚約は皆が反対していたのだな、俺にはふさわしくないと」

「ええ、皆大反対でしたよ!ソフィアにデイモンドと離れろと言った者もいますし!なによりあなたにふさわしくない!!」

アレキシスの言葉に、デイモンドは調子よく笑う

「アレキシス殿はおだてるのがうまいな」

「いえいえ、僕はただ本心を言っただけですよ」

「そうか、では今夜は大いに盛り上がろう!!この日のために酒や料理も豪勢にふるまうように使用人共には言っているしな」

デイモンドが手を数回たたくと
扉が開き
豪華な料理が次々と運ばれてくる
きっと皆が喜んでくれるだろうとデイモンドは思ったのだが


「いや、今日はもう満足したので帰らせていただきますね」

「は?」

思わず素っ頓狂な返事をしてしまったデイモンドだが
そんな彼を気にせずにアレキシスを含め全ての貴族達が料理には目もくれずに帰りだす

「ま、まってくれアレキシス殿、今夜はこれからですよ?」

「いえ、これだけいいものを見せていただいたんだ、僕達は満足ですよ」

「は……はぁ?」

「皆、この婚約破棄を確かめにきていたのですよ、あなたとソフィアが離れるのを皆が待っていたのですから」

「な、なるほど、それほどまでに期待されていたのだな!」

「ええ、その通りです」

帰ろうとしたアレキシスは突然、思い出したように
振り返る


「そういえばデイモンド殿のご両親は婚約破棄の件を知っているのですか?」

アレキシスの質問に
この場に残ってくれるかもしれないと思ったデイモンドは喜んで返事をする

「いや、両親は俺の留学していた国に用があると二人揃って行ってしまってな、今は不在なんだ」

デイモンドの答えに、アレキシスはにこやかな笑顔で
妙に納得したように頷く


「なるほど、納得です…デイモンド様、これから大変でしょうが、どうぞ頑張ってくださいね?」

アレキシスは笑顔のまま
手を差し伸べる

(大変?あぁ、ロミエとの結婚の準備などをねぎらってくれたのだろうな)

デイモンドは心の中で答えを出し
頷きながらアレキシスと手をつなぐ


「あぁ。どんな苦労だろうと乗り越えて、俺はロミエと幸せになって見せるよ」

「ぶっ!!!」

突然、アレキシスが横を向いて噴出した
首をかしげるデイモンドだが

「いえ、すみません…最近は花粉が……それでは」

「あ、あぁ、それでは」

固く握った握手をして二人は見つめ合う
妙に握る力が強く、痛みで悶えたデイモンド

(単純にアレキシス殿の力が強いのだろう)と考えた

アレキシスが手を離し、他の貴族達と同様にその場を去ってしまった


後に残ったのは山のような量の手つかずの料理だけだった


「ねぇ?デイモンド、この料理どうするの?」

「あ…あぁ…どうしようか」


先ほどまでとはまるで違う静まり返る空間の中で
デイモンドの苦笑だけがよく響いていた





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